ここから飛び降りよう!
人体の形状を保ちながら中身の方はグチャグチャになるから、命を抜き取った供物のイメージにピッタリだ。
それに、自分に攻撃を加えるだけでは死にきれない可能性がある。死を前にしては、人間の本能としてどうしても躊躇が生じるだろう。
だから、飛ぼう!
落下地点に魔法陣とか描いといた方がいいかな?
うーん、でも、魔法陣は肉でも血でも効果がなかったし、関係ないのかもしれない。
それとも、本当に絵心がなさすぎてそれっぽく描けなかった?
……ちょっとへこむんだよねぇ、図書館で一生懸命オカルトの本とか調べてたんだからさ〜。
ノートを給水塔の方に置き去り、団地のパラペットに上る。
あとはぴょん! ってして、グチャッ! となるだけ!
「あっはは……!」
これは儀式だ。
こんな血生臭い儀式に応じてくれる偉大なる神様は悪魔に違いない。
こちとら既に一度
一歩踏み出し、かかとで立つ。
夜風は大きな音を立てて屋上で吹き荒れていた。
少しでも慢心したら、飛ぶ以前に風に飛ばされてしまいそうだ。
最後にもう一度夜の都市を見渡すと、世界は巨悪に抗ってきらきらと小さな灯をつけていた。
悔いがあるとすれば、しっかりとこいつらの手で殺されなかったことかな。
ま、この儀式を成功させることが何よりも重要だから、そこはもう取捨選択と考えるしかない。
さあ、落ちよう。
「……!」
ひゅるりと上半身を虚空に差し出すと、貪るように下半身も食われ始めた。
風を切る。切るより、切られている。空気の包丁をもって加速度のリズムで、頭から刻まれていく。
重力に吸われ、地面までの距離が縮んできた。そのアスファルトが、これから鮮血と脳漿で彩る祭壇だ。
あと少し。
あと少しであんたに届く。
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『私は瀬奈みこと。あなたは?』
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『帆奈ちゃんとの拠点だもん。秘密基地みたいじゃない?』
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『人にこんなことしてもらったの、初めてで……それで、本当に嬉しくて』
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『気づいたら、帆奈ちゃんが一番大切な人になっていた。世界で一番』
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なるほど、これが走馬灯なのか。本当に見るんだ。
……あのね瀬奈、あの日から世界はモノクロに戻ったんだ。
それが色を取り戻すにはあんたが必要だ。
たとえあたしがその美しい世界を見ることが二度と叶わないのだとしても、あんたには見ていてほしい。
それじゃ、一足先に――――ハッピーバースデー!
そして、さようなら。
END:召喚失敗