「ふふっ、変身したよ。ここからは帆奈ちゃんの好きにして」
瀬奈はあたしの足に跨り、ずいずいずいと腰を動かして近づいてきた。
目の前は憧れの魔法少女だ。
美しく育った胸の形を控えめながらも伝える白い前身頃。ハイウエストの黒いスカートでなおさらみっしりとしたボリュームが引き立てられている。
その下にふわりと広がる、幾重ものミニスカート。布地が軽やかに揺れるたび、灰色のタイツに覆われた太ももが見え隠れしている。
生唾を飲み込む。
その姿に唾を飲んだことさえ不敬に思えた。
だけど、確かな熱がお腹の方でうずうずしている。
……抱きたい。
何度目か分からない素直な感想が浮かんだ。
さっきは一方的によくしてもらってたけど、本当はめちゃくちゃに抱きたい。
今の瀬奈は実体を持たないから、できることに限りはある。
それでも、自分からも何かしらのことはしてあげたい。
「……キス。キスするからね、瀬奈」
「! う、うん……はいっ」
初めてあたしから誘ったことに動揺してか、調子外れのかしこまった返事が飛んできた。
いくら瀬奈みことでも
撫ぜるように、軽くほっぺに口づけをした。
皮膚の感覚はないけど、キスしたという事実はふたりとも感じていた。
次は口にしようと、一回離す。
「んっ……」
すると、瀬奈は目を閉じてほんの少しだけ口を尖らせた。
「……っ!」
おねだりされて、心臓が早鐘を打つ。
カノジョがいたらこんな感じになるんだろうという偏見がまるごと実現してしまった。
ちょっと強引めに口づけをせがまれて、愛情を求められる。
そういうのは……その。
けっこう、たまらなくなる。
傷をつけないように、できるだけ優しく瀬奈の唇に自分の唇を当てる。
「ん、ぁ……」
深いものを求めて、嬌声を漏らしながら瀬奈は口を小さく開けた。
その中に舌を入れる。
瀬奈はぴくりと肩を震わした。自分から仕掛けるのとあたしからされるのとで、感じ方も違うんだろう。
舌と舌を絡ませながら、空いている左手で瀬奈の頭を撫でてみた。それはキスに伴って自然に出た動作だった。
「ぁ、帆奈ちゃ、ん……んむっ……」
「ん……はぁ……はっ。瀬奈……」
長いキスを一旦終わりにして、顔を離す。
今度は右手を瀬奈の頬にそっと当てる。両手でナデナデしてみてから、ちょっとだけ自分の方に抱き寄せた。
「……帆奈ちゃんって、エッチするときも優しいんだ」
「え……」
「んふふ。人間だった頃に打ち明ければよかったなぁ……そしたら、ぎゅっとされてるのをちゃんと感じられるのに」
瀬奈は幸福を浮かべた、しかし寂しさも感じられる顔つきでつぶやく。
「それは……」
「いいの。後悔はあるけど、今は本当に嬉しいから……。それより、もっとエッチなことしてもいいんだよ? 私もそれで気持ちよくなれるから」
そう言うと、瀬奈は突然ワンピースの細い肩紐をするりと外した。
胸を覆い隠していた白い布地をゆっくりと下にめくる。
そうして、肌の透けるシースルーのインナー……の下の、豊かに張った胸があたしに差し出された。
「おっぱい見てたよね? 揉んでいいよ」
「……それ、は」
「ほらっ」
お手本を見せるように、瀬奈はインナー越しに胸をふにゅっと掴んだ。
指と指の間から漏れ出る柔肉。
……息を吸い込んだ。
あたしが揉みしだいたところでそのような物理的な変化が表れないのは分かっているのに、それは耐え難い誘惑だった。
「……っ。さ、触るよ……?」
勇気を出して瀬奈に確認すると、微笑みだけを返された。
おそるおそる、瀬奈の胸に両手を当てる。そうしてから指を折り曲げて、いかにもな手つきで二つの実りを包み込んでみる。
物理的感覚としては虚空を掴んだだけ。しかし、あたしが瀬奈みことの胸を揉んでいるのは確かな事実だ。
「瀬奈……っ」
思わず名を呼ぶと、
「んっ……帆奈ちゃん」
同じく名前で返された。
今度はさっきから視線を奪ってしまうピンク色の先っぽを親指の腹で転がした。中指と挟んで、それを摘んでみる。
目を凝らすと、突き出た乳首の先には亀裂が入っていた。
当たり前なことなのに、絶頂に達したばかりの秘部がまた血液の熱にうなされる。
……赤ちゃんに授乳するための場所。
あたしがそれをさせることはないけれど……赤ちゃんができたら、そこからは白い乳が出る。
突如の発見に固まっていると、
「ぁ……あれ、帆奈ちゃん、もしかして結構エッチな気分?」
瀬奈が紅潮した顔で足をもじもじさせていた。
「え……」
「久しぶりにムズムズしてるから……帆奈ちゃんの感覚に影響されたのだと思う」
「――――っ」
我に返る。とんでもない変態的な発想に陥っていた。
「ふふふ。帆奈ちゃんがもっとエッチな感覚になってくれれば、私もちゃんと気持ちよくなれるかも」
「……ご、ごめんっ……」
「なんで謝るの?
それより――――見たい? 下も……」
言うや否や、瀬奈はスカートをたくし上げた。
タイツの下、ほんのりと透ける肌。程よく肉のついた太もものラインをたどっていくと、
「ぁ…………」
見てしまった。
瀬奈の大事なところ。
下着をつけずにタイツだけを上に被せて、すじも二つの隆起も惜しみなくさらけ出している。
タイツ越しに見る、瀬奈のお股。
それが、知らない間にずっとあたしのズボンに押しつけられていたのだ。
胸のときと同様に、瀬奈はむにっとそのお肉をつねって柔らかさを見せつけてくる。
指で大陰唇をくぱっと両端に開いたり、ぎゅっと締めたり。それをスリスリあたしの太ももに擦りつけたり。
脳が動かない。ただ、今すぐそこをいじり倒したいという暴力的な衝動が体中を駆け巡る。
「んっ、ぁ、ん……っ。
はぁっ、は……ごめんね、帆奈ちゃん。本当は指を挿れさせてあげたかったけど、こんな体になっちゃったから……」
「…………それは、いい、けど。瀬奈のせいじゃないし」
辛うじて言葉を紡いだ。
……包み隠さずに言えば、そりゃ、指を挿れてみたい。
その柔肉の感触を確かめて、中のヒダを掻き分けたい。
好きな人の膣に……愛液で濡れて火照ったその狭い場所に、自分の身体をねじ込みたい。
そういう人並みの欲望はあるけど、不可抗力でできないのは承知している。
だから、今はただ見ているだけで満足だ。いや、満足どころか、あたしなんかが見ちゃいけないものを見てしまっているんだから、これ以上は望めない。
視線をそこに固定されてしまっていると、
「……もっと近くで見る?」
瀬奈が少しだけ俯いてあたしに聞いた。
「……えっと」
「いいよ、私も見てほしいし。そこで横になって」
瀬奈の指示に従って、体を後ろに倒してベッドに沈み込む。
すると、瀬奈は逆方向に向いた。
何をするのかと思いきや、ぐっとお尻をあたしの顔に近づける。
「ちょ、ちょっと……!」
そのまま顔面に乗りそうなくらい接近すると、瀬奈は手でタイツを掴み、
――――ピリピリとそれを破いて、あたしの眼前で女性器を露わにした。
瀬奈は指でくぱぁと膣口を広げる。
艷やかな赤に満たされた女の子の穴は、既に愛液でぐっしょりと濡れていた。
おそらくあたしの興奮が瀬奈に伝わったからだろう。そういう体液まであたしの視覚で再現されるようだ。
充血して、埋めるものを欲するようにうねっている。
埋めろ、埋めろ、埋めろと、絶えずにあたしに囁いている。
「ズボンを脱いで? さっきみたいに帆奈ちゃんのおまんこ舐めるから、帆奈ちゃんも自分のをいじって。
それで――――私のおまんこを舐めてみて」
「な、舐め……っ!?」
「嫌? 喜ぶと思ったんだけど……」
ひどい言われようである。
ただ、喜ぶかはさておき……嫌なわけがない。
瀬奈の大事なところに触れられると考えただけで気が狂いそうになるくらいには、あたしも俗物なわけで。
「瀬奈と進んだことをしようとしなかった」は、「瀬奈と進んだことをする場面を一切想像したことがなかった」にはならないってことだ。
それでも、目の前のこの、なんというか秘密の花園的な領域を、実際に舐めろというのは……。
そんなことをしたら、今後どれだけ自制しようとしてもブレーキが効かなくなっちゃう。
「……やっぱり、こういうのは嫌なの?」
「い、嫌じゃ、ないけど……」
「……だったら」
「わ、分かった! 分かったから……っ」
――――もう、どうにでもなれっ!
寝た姿勢のまま身を丸めてズボンとショーツを再び脱ぎ、裸の下半身を瀬奈にさらけ出す。
とたん、瀬奈がちゅるりと音を立ててあたしのクリトリスを吸った。
「……ッ」
奉仕してもらったその部位に手を伸ばす。そうやって自分の性器に触れると、
――――ズンッ。
瀬奈がもっと深く腰を下ろし、あたしの口に秘部をピッタリと当てた。
「――――!」
濃厚な、女の子の空間。
顔面に乗っかった、マシュマロみたいにふわふわした尻肉。
恥ずべき部位まであたしに公開して、愛撫をねだってくる。
……タガが外れた。
揉みしだきながら、本能のままに愛液を吸い込む。
腟内に舌を伸ばし、周りの粘液を掬い取ろうとする。
もちろん、手応えはない。
だから、瀬奈の膣からは切なく体液が溢れてくるばかりだ。
透明な糸は、あたしの顔に触れると虚空に溶けていく。
そう、本物の性行為は異なる次元で同時進行的に行われていた。
一歩引いて見ると単なる自慰だと評価されるような動作をしている。
だけど、瀬奈の腟壁を舌でなぞるたび、瀬奈とセックスをしているというリアルな感覚があたしを襲う。
「んっ、ちゅむっ……んちゅっ……ぁんっ」
「ん、はっ……ちゅっ……んむっ」
めまいがした。
ちゅるちゅると、向こうからも水音が響いてくる。
欲情を告げる音だけが、静かな部屋の中に響き渡っている。
無我夢中でお互いの味を噛みしめていた。
興奮に身を委ね、興奮より深いところまで沈んでいく。そこで、この行為にあるもう一つの意味を知った。
――――募りに募った思慕を瀬奈に手渡す。ようやく再会した瀬奈に、あたしは瀬奈のことを想っていると。
(……そうか)
あたし、瀬奈と結ばれたんだ。
押し寄せてくる快感の中、呆然とそんなことを思った。
手を動かす。
身体を揺らす瀬奈のリズムに合わせて、中指で膨張したクリトリスを擦る。
擦って擦って擦って。
それと同時に、赤ちゃんみたいに瀬奈のおまんこに吸いついて。
同じペースで進行する規則的な動きで、瀬奈の中に自分を埋め込んだ感覚を得る。
愛しい人を迎え入れるための場所に、今、あたしを埋め込む。
白紙に墨を落とす。
瀬奈の初めての相手が、あたしになるのだ。
胸がバクバクと早鐘を打ち、股間が電気を流されたようにゾクゾクと痙攣する。
ぶつけたい。
イキたい。
イカせたい。
一緒に……!
「瀬奈ッ、ゴメンッ、もう……ッ」
「んっ、いいよっ、帆奈ちゃん……! 一緒にイこうっ」
蜂蜜のような甘い声音があたしを許した瞬間、
「――――――ッ」
理性も思考も本能も、全て瀬奈に書き換えられた。
瀬奈しか考えられない。
そんなバカになっている。
瀬奈とセックスした。瀬奈を抱いた。瀬奈を我が物にした。
「ぁ……っ、はぁ……」
極度の緊張から解放された筋肉は、心地いい収縮に浸っている。
まだ上がったり下がったりする胸に釣られ、荒い吐息が口から漏れ出る。
このとき、思い出す。
そうだ、当の瀬奈は――――
「は、ふぅっ、はん、な、ちゃんっ……」
力なくあたしの胸にビショ濡れの股間を乗せ、振り返る。
整いすぎていたその顔は、今は淫らに歪んでいて、少女の愛欲に溺れていた。
……あたしがあれだけ興奮してしまったんだから、瀬奈も同じものを味わったのだろう。
乱れた髪が垂れ糸のように瀬奈の頬にこぼれ落ちる。ぜーぜーと息を弾ませ、ないものを吸い尽くそうと小刻みに腰を震わせている。
「…………!」
搾り取るための膣の収縮にぐらっと来る。
それは、瀬奈があたしを欲していることの象徴に他ならなかった。
しばらく、余韻に浸りながら息を整える時間を設ける。
ようやくふたりとも落ち着いたところで、上体を起こした。
「んふふ……気持ちよかった」
「……あっは、実験は成功したのか……」
「うん……ふふっ」
大きな進展ではあるが、正直あたしも瀬奈も今だけは実験結果なんてどうでもよくなっていると思う。