※この作品はR-18です。

Shining Storage   作:誕生日おめで灯

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7章
Intermission


 夢を見る。

 

 ギラギラ燃え上がる炎に飲まれていく、貢物の少女。

 祭壇に手足を固定されて、天に座する主に捧げられようとしている。

 

 大気がぼわっと焼ける。

 焦げた大気はカラメルの苦く甘い匂いに満ちて、誘(いざな)うように揺らめいている。

 歪んだ空間の中、集落の人間たちは手拍子を打ちながら踊る。

 回る回る。歌う。

 

 少女は魔女だ。

 魔女は狩られる運命だ。

 これは、世のため人のため、善性を信じ続けた少女の最後の功徳(くどく)だ。

 杯を交わそう。

 魔女の血を搾って、次なる処女に飲ませよう。

 そうしてその悪は五臓六腑に染み渡り、処女を絶望に染め上げる。

 魔女は狩るべきもの。

 焼き殺し、その灰燼を主に献上すべきもの。

 全ての善を担い、全ての悪を担うべきもの。

 希望から始まり、絶望に終わるもの。

 

 少女は飲まれていく。炎に、人に、社会に、世界に。

 愛があった分恨みが募る。夢を見た分現実を見る。

 

「どうして」

 

 私がそう聞くと、踊り狂っていた人々は立ち止まり、ギロリと私を睨む。

 人間がやってくる。

 金縛りに遭ったように、動けない。

 人間どもがやってくる。縄を持って、殺ってくる。

 

 ぎしぎし肉に食い込む縄。

 手足を縛られて、祭壇に運ばれる。

 金切り声が、喉に突っかかったまま、出てこない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 気づけば私は十字架に固定された状態で、立ち上る炎を見下ろしていた。

 焚き火がどんどん上がってくる。

 立ち込める煙の熱さを肌に感じた瞬間、これは夢なんかじゃないと知る。

 温度も痛みもあるなら、これは現実だ。

 だとしたら、この炎は――――

 

「や……やめてッ! やめて、離してッ……離してよッ!」

 

 足元まで来た熱に狂わされる。生死の瀬戸際で、ようやく声帯が働いてくれた。

 しかし、何の意味もない。なぜなら私の声には何の価値もないから。

 ぱくりと。

 氷が足指を食む。

 炎が冷たい。冷たいほどに痛いのかもしれない。

 

「――――――ッ! ――――ッ!」

 

 神経が融けていく。魂が熔けていく。

 無意識のうちに噛みしめた唇から鉄の味がして、過大の情報を処理する脳にノイズが走る。

 息が、苦しい。

 息苦しい。

 息苦しい生き苦しい生き苦しい息狂わしい生き狂わしい息苦しい生き苦しい狂しい逝き苦しい生き苦しい息ぐるわシイ逝き狂しいイキグル死い息苦し苦生き逝きたい逝きたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死なせ死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虫。

 虫が私を食べている。

 雨。

 腐臭。

 腐った私を食べる。

 自然の摂理。

 有るものは無いものになる。

 腐った私は見つめる。空を。

 腐った眼球で見つめている。

 雨が眼球に当たる。空はぼやける。

 思う。

 昨日があるから今日がある。

 昨日があるから痛い。

 昨日があるから祈祷する。

 昨日があるから願いが生まれる。

 だから今日は腐る。

 私は願う。

 昨日がないことを。

 魔女は考える。

 昨日がなければいい。

 炎に焼かれる前に焼けばいい。

 虫が食む。

 命が痛くなる。

 命は責苦(せめく)だ。

 在ることは責苦だ。

 天国も地獄も輪廻も要らない。

 要るのは無だ。

 要るのは滅びだ。

 滅ぼすしかない。

 この世界を。

 

 魔女は視る。

 痛苦の過去を。

 痛苦の未来を。

 だから少女は視る。

 最後の希望(カケラ)は視る。

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