※この作品はR-18です。

Shining Storage   作:誕生日おめで灯

67 / 74
選択肢「瀬奈を裏切らない」を選んだ場合の続きです。


7-6-1 約束の果て

 あたしは、瀬奈を裏切らない。

 瀬奈が何よりも大切にしているその願いを、踏みにじることがどうしてもできないから。

 

 たとえ約束の日とはもはや違うあたしたちであって、純粋だった想いが歪んでしまったとしても、あたしはあたしの唯一の希望を守り抜く。

 その成し遂げ方が絶望そのものでも、約束の陽だまりが瀬奈の人格を保ち続けてくれるなら……瀬奈を生かしてくれるなら、あたしはそれに縋る。

 他の全てを捨てても、瀬奈の命だけは譲れない。

 だからあたしは、ずっと一緒の生活を送る――――この罪深い約束のために、

 

 世界を捧げよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふ、そう、手で触れて……。私を与えるような気持ちで……」

 

 意識体の瀬奈を鏡の魔女に返した。

 するすると、瀬奈はあたしの中から抜けていく。本来あるべき容器の中……魔女の中へ。

 

 これで鏡の魔女は完全になった。

 他の魔女と違って人格を後から受容したこの魔女は、今から人格の部分を消滅させるようなことはせず、魔力のコントロールを自らに適合した意識体に委ねた。

 だから、瀬奈の人格は膨大な魔力の塊の手綱を握った。

 

 瀬奈の意識体は相変わらずあたしに見えるけど、その拠り所はあたしのソウルジェムではなく、魔女に戻っている。

 あたしはもう、瀬奈を止める術を持たなくなった。

 

◇  ◆  ◇

 

 きらきらと、光がこぼれる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 柔らかな布地に頭を乗せて、真上の彼女をぼんやりと眺めた。

 永遠に沈まない太陽と、永遠に優しい思い人の笑顔。

 

 なのに、どうして何も感じないのだろう?

 いや、あたしは何を見ているんだろう?

 あたしは……誰?

 

「んふふ……今日も一緒にいられたね」

「……?」

「でも、もう私の名前を呼んでくれないんだね……。人間の心って、脆いなぁ」

 

 ……?

 意味が分からないけど、彼女が寂しそうにつぶやくので、手を伸ばして頬に触れる。

 すると、彼女は目を閉じて、撫でるあたしの動きに身を委ねた。

 

「こうしてくれるところは変わっていない……何も変わっていない。心はちょっと壊れちゃったけど……何も変わっていないならいいや」

「……?」

「んふふ、キスしよう、帆奈ちゃん」

 

 彼女はあたしをそう呼んで、身を屈めた。

 唇が触れるが、その意味合いがよく分からない。

 ただ……彼女が幸せそうにしてくれるなら、それでいいと思った。

 

 あたしは一体どこにいるんだろう?

 何をしているんだろう?

 この世界は暖かい。

 なんで暖かいんだろう?

 忘れてはならないことを忘れた気がする。

 でも、そうすべきだから忘れたのだろう。

 

 目を閉じていよう。このゆりかごの中で。

 明日も同じように、停滞した時の中で、ずっとずっと。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

END:約束の果て

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。