あたしは瀬奈を裏切る。
ずっと一緒の生活を送る――――ふたりでひたむきに追いかけ続けてきた約束を破る。
瀬奈を死なせることなくその滅びの夢を止める。
そんな欲張りな奇跡のために、
この命を捧げよう。
あたしが死ぬことで全てに終止符を打つ。
滅びを望む魔女の意思は変えなければいけない。だから、あたしが魔女に滅びの痛みを教える。
瀬奈は、魔女は意識体の瀬奈を通じてあたしに影響されうると言った。
そうであれば、あたしの命を使って、魔女の魂に爪痕を残すことは可能なはずだ。
「帆奈ちゃん……もう寝ちゃったのかな?」
まぶたを閉じて決意を固めていると、となりから瀬奈の声がした。
「んふふ……おやすみ、帆奈ちゃん。大好き……」
無邪気に瀬奈は囁く。あたしの裏切りに気づかずに。
瀬奈はただ、純粋にあたしを好いてくれていて、純粋にあたしと一緒にいたいだけなのだ。
世界を滅ぼすことを正しいことだと信じ込み、ふたりの未来のために行動しようとしている。
滅びが輝いて見えるから、あたしが賛同してくれると思ったから、夢を分かち合うために魔女の
その優しさを裏切るのは、許されないことだと思った。
だけどもう、許されなくていい。
最初からこんな結末しか迎えられない約束に応じてしまったあたしが悪かったんだ。
叶うはずのない永遠に小指を差し出した時点から、あたしたちは間違い続けてきた。
だから、瀬奈はあたしを許さなくていいし、許してはいけない。
ただその代わりに……心の片隅で希望を信じて、思いとどまってほしい。
世界を滅ぼすことは、あたしを滅ぼした人間たちと同じ行為をすることなのだと、どうか気づいてほしい。
だから、滅びに行こう。
瀬奈を守り抜くと誓った。そして今こそが、
あたしたちは世界を犠牲にする形で叶う永遠など望んでいなかったはずだ。もっとささやかで、どこにでもあるような、そんな日常が送りたかっただけ。
あたしはそんな日常の中で笑っている瀬奈が見たかっただけだし、瀬奈だってそんな日常の中であたしに寄り添っていたかっただけだろう。
ここに来て、ふたりで交わした約束は変質して、絶望の言い訳になった。
ならば、それはもう、貫き通してはならないものだ。
世界からのバースデー・メッセージを瀬奈に伝えよう。
優しい世界を瀬奈に贈ろう。
そして、瀬奈の魂に深い傷痕を残そう。
◇
あたしはこうして運命に反駁することにした。
自身の死をもって、あたしの誓いは果たされる。