【グリザイアの楽園】楽園Another~雄二はみんなのもの!~ 作:千月華音
次からその分たっぷりと書かせていただきます。
時計を見た。
――午後4時。
約束の時間だが、まだ姿は見えない。ホテルのロビーでこうやって棒立ちで待っているのはあまりいい気分じゃない。
そもそもなんで俺がこんなところにいるかと言うと……。
「――雄二」
入口から。
普段とはまったく装いを変えた、ドレスアップした姿の一姫が来た。
……言葉もない。
あまりの艶やかな姿に目を見開いて呆然とした。
もともと一姫は容姿の整った美人だが、それは少女ともとれる中性的な魅力がそう見せていた。
しかしこうも大人びた格好をしただけで一瞬で目が奪われるほどの美女になるとは。
ロビーにいる周りの客からもため息が聞こえる。……まるで芸能人か何かを見てるかのような反応だ。
「お待たせ。――どうしたの? そんな顔をして」
「顔?」
「まるで恋に落ちてしまったみたいな顔をしてるわよ」
…………。
そんな間抜け面をしてるのか。
こいつにそんな感情などないが、興が削がれるから付き合ってやるか。
「おまえでも着飾れば化けるのかと思っただけだ」
「あら、雄二は松嶋みちるを着飾らせて楽しんでいたじゃない。お気に召すのかと思って」
「誰がだ。――おい、くっつくな。さっさと会場に行くぞ」
「いいじゃない、こうやって私の弟を周り中に見せびらかせるのが夢だったのよ」
「…………。むしろ逆だ。おまえのほうが注目されてる。よく周りを見てみろ、俺を羨む視線ばかりだ」
「あら、雄二と恋人同士に見えるのね。それはそれでいいけれど、仲のいい姉弟には見えないのかしら」
「……俺は弟じゃなくてむしろ兄だろ。どう見てもおまえのほうが年下だ」
一姫は何か考えこむような仕草をしたが。
やがて嬉しそうに微笑むと、腕をギュッと強く抱きしめるように組んできた。
「おい」
「ふふ、雄二の妹……それもいいわね。紹介するときはそう言って。私も合わせるから」
「おまえな……。向こうだって俺の家族構成は知ってるだろ」
「生憎と、タナトスで雄二の経歴は書き換えてあるの。――白紙。すべての記録から雄二の存在は抹消しているわ」
「…………」
「コードナンバーだけ残してあるけど。風見雄二という名前はどこの記録にも載っていない。それでいいわよね? あなたのことを探ろうとする輩はまだたくさんいるのだから」
「……ああ、問題ない。むしろ有難い。というか、その片をつけるための仕事だろ」
――そう。
一姫とこうしてとある要人と会うことになったのは、その一姫から仕事を依頼されたからだ。
久々の仕事だが、もちろん公のものではないから、JBにも知らせていない。
数時間前。
みちるを潜水艦に運ぼうとしたとき、陰から見ていたのかカメラで見ていたのか知らないが、満足そうな笑みを浮かべた一姫に呼び止められた。
「ずいぶんとお楽しみのところ、申し訳ないのだけど」
「――ならそういう顔をしろ。そこをどけ。こいつを連れていく」
「松嶋みちるは……気絶してるわね」
「あとでJBに見てもらう。まあかなり無茶な抱き方をしたが、こいつは頑丈だから大丈夫だろう」
額の前髪を分けて口づけた。
一姫の目の前で愛おしそうに撫でていると、嫉妬する素振りすら見せず俺の耳元に口を寄せて囁いてきた。
「ねぇ……雄二。あなたと彼女のセックス、たまらなかったわ」
「そりゃどうも」
「一部始終を見せてもらったのだけど、雄二は愛する女には容赦がなくなるのね。……つまり」
「前におまえを抱いたのがそうだとでも言いたいのか?」
生憎だが。
俺はどの女にも容赦しない。
おまえはそう思ってないらしいけどな。
「いいえ。私を抱いたときは、雄二、あなたの――あなたの持つ本来の優しさを感じたの。それがみんながあなたに惹かれる理由でもあるのだけど」
「……俺はおまえを本気で抱いたが」
「いいえ、本気じゃなかったわ。どこかに躊躇いがあった。それはあなたがまだ肉親の情愛を持っているから」
「…………」
むしろ、それはおまえのほうじゃないのか。
俺がどれほどおまえを俺の女にしようとしていたか、ずっと言い続けていたか――それはおまえが俺を弟としてしか見ていなかったからだ。
なのに本来は俺のほうが囚われていたとでもいうのか。
「…………。言いたいことがあるならはっきり言え。俺になにをさせたいんだ」
「二つあるわ。一つはまた抱いて欲しいのだけど、今度はローションも薬も使わないわ。雄二をちゃんと女として受け入れてあげる」
「……本当か?」
まじまじと一姫を見た。
表情からは分かりにくいが、嘘を言ってるようには見えない。……もし本当なら。
こいつをみちるや他の女たちと同じように孕ませて、俺のものに出来るのか。
一姫を、俺のものに――。
「俺のオナペになると?」
「……それはどうかしら。性玩具的な扱いをされることには少し抵抗があるのだけど」
「もちろん酷いことはしない。快楽のすべてを味あわせてやる。だが俺の好きなようにさせてもらうぞ」
「いいわ。雄二のオモチャにしてもらって構わない。私をあなたの所有物にして」
「一姫……」
「もう一つあると言ったでしょう」
忘れていた。
「なんだよ」
「仕事を頼みたいの。アシュリー・ウィルクス准将――知ってるわよね?」
「……昔の仕事の依頼主だが」
「その男を殺して欲しいの。あなたの過去を探ろうとしている危険人物よ。引き受けてもらえるわよね?」
あの男。
まだ俺を諦めてなかったのか。
昔、アメリカでこの男の娘のボディガードをやったが、あろうことか俺にモーションをかけてきたやつだ。
しきりと俺を手に入れようとしたので、殺さない程度に痛めつけてやったが。……懲りないやつだ。
「わかった。そいつを殺したらすぐにおまえを抱いてやる」
「待って。一応、それなりの地位にいる人物よ。下手に怪しまれないように手を回す必要があるわ。一番手っ取り早いのは、あなたがこの男に接触することなのだけど」
「……むしろ怪しまれるだろ」
「向こうはあなたに近づこうとしている。こちらから近づいたほうが油断しやすいわ。……どうかしら。あなたの気が乗らないのなら、別の方法を探してみるけど」
知っているのか。
そうか、タナトスシステム――過去に俺とあの男が密会したホテルにある監視カメラから推察したか。
もっとも部屋の中まではカメラはなかったと思うが。
「…………。変な勘違いをするな。要するに外部犯だと思わせたくないわけだろ。あの男は敵も多いから、そいつらの仕業に見せかけてやろうというわけか」
「共和党に名乗りをあげてるし、次の選挙での有力候補だから騒ぎを起こしたくないのよ。まあ彼がいなくなればこちらにも有利になるわけだけど」
「わかったよ、――接触する。ただしおまえも一緒だ。女連れだと思わせたほうが都合がいいからな」
「あら、私も? ……ふふ、いいわよ。せいぜい雄二と仲のいいところを見せつけてやりましょう」
「ちゃんとそれなりの格好をしろよ。今のおまえはどう見ても中学生だ」
「失礼ね、これでもあなたより年上なのだけど」
「う……うぅん」
「あら、気がついたかしら」
「いや、……また寝たな。よしよし、待ってろ。しばらく一姫と付き合ったらまたたっぷりと可愛がってやるからな」
みちるを抱きしめ口づける。
いやらしくねっとりと舌を掻きまわすキスを目の前で見せてやるが、可愛げないどころか微笑ましく俺たちを見ていた。
このホテルの最上階でいま外国の要人を集めた迎賓パーティが行われていた。
エレベーターホールからすでにクラシックの生演奏が聴こえてくる。すでに盛況のようだが、偽造した招待客のIDを見せるとすんなりと通された。
会場に入った瞬間、周りの注目を浴びた。――俺はともかく、一姫の正装はそれだけ人目を惹きつけた。胸は相変わらず控え目なのに、この歩いてるだけで漂う気品と優雅さはなんだ。どこぞの王族か。
できるだけ目立つようなことはしたくないのに、一姫を連れてきたのは失敗だったか。
そう思っていると。
ターゲットのほうからこっちに近づいてきた。……相変わらずニヤけた顔で俺を見ている。一姫には目もくれていない。
ちなみに。
こいつは英語しか話せないのでこっちが合わせている。
「ユージじゃないか、久しぶりだな。……そちらのお嬢さんはどなたかな?」(※英語)
俺の隣にいるのが気にくわないのだろう、あからさまな嫌悪を一姫に向けていた。
「はじめまして。妹の一姫です。兄からあなたのことは伺っております」
「妹……?! ……そうか、兄妹がいたとは聞いたが、妹だったのか。こちらこそ、麗しいお嬢さん。まさかユージにこんな綺麗な妹がいたとはね」
「恐れ入ります。……ほら、雄二」
……くそ。
一姫から小声で耳打ちされ、仕方なく手を差し出した。仕方ない、本来の目的はこいつを殺すことだ。
すると嬉しそうに握手を返してきたが、手の中にあるものに気づき、一瞬目を見開くと、口の端を凶悪に釣り上げて作り笑みを浮かべた。
「――今夜、ここで。……お待ちしてます」
「……! ユージ……そうか、わかった。たぶんそれほど待たせず行けるはずだ。では、後ほど」
すぐさま踵を返すが、ねっとりとした視線が背中越しにも伝わってきた。
……耐えろ。
あの男を殺せる機会が来たのだと思えばいい。
一姫の腰を引き寄せ、見せつけるように抱きしめながら歩いた。
「雄二? あの男が見てるわよ」
「構わない。妹だと言ったのだから、そう思わせておけばいい」
「ちょっと……服の中に手が」
「なんだよ、この胸の開いたドレス。おまえに全然似合わないぞ。ブラもしてないじゃないか」
「や、やめ……乳首を触らないで」
「あの男に会う前におまえを抱くぞ」
「女の匂いをさせてる状態で会うつもり?」
「シャワーでも浴びればバレないだろ」
「バカね、わかるわよ。女を抱いた痕跡なんて、匂いだけじゃないもの。我慢なさい、今夜始末するまで」
「その後はおまえを抱いてもいいんだな?」
「好きにするといいわ。別のホテルを予約してあるから」
「場所はどこだっていい。殺した興奮をおまえで紛らわせる」
「仕方のない子……。日下部麻子もそうだったのかしら」
呆れるようなため息を吐く一姫を引っ張り、エレベーターの中に乗り込むとそのまま口づけた。
全面窓ガラスのエレベーターから眼下に夜景を見下ろしながら。
一姫のスリットから足を持ち上げ、激しい口づけを交わしていた。
「……どうぞ」
部屋に招きいれると、鍵を閉めると同時に唇を塞いできた。
貪るような咥内の舌の動きに、こいつがどれほど飢えていたのかがわかる。数年ぶりとはいえ、もはや性欲を隠そうともしないその態度に、もはや呆れて抵抗する気も失せた。
それをどう勘違いしたのか、嬉しそうに背中をさわさわと服の下から手を差し込んできた。
「嬉しいよ、ユージ。やっと私の求めに応じる気になったのか」
昂った下半身を遠慮なく俺のに押し当ててくる。その硬さに気づいたのか、男は目を見張って嬉しそうに微笑んだ。
「そうか、君も待ちきれなかったのだな」
「ミスター・ウィルクス。勘違いしないでください。今夜ここでお会いしようと思ったのは」
すぐさま。
一瞬で身を屈めると、狙い通りにセットしたMK11から発射された銃弾が過たず男の眉間を貫いた。
場所も時間もピッタリだったから、こいつがキスしてこなければもっと早く避けられたが、まあ間に合ったから良かった。
「俺が抱く女がここにいるからですよ」
倒れた男を見ようと近づいてきた一姫を胸の中に抱きしめた。
「ちょ…、雄二」
「見るんじゃない」
「死体の確認をしないと」
「即死だ。こいつはもう死んでる。確認なら俺がした」
「あんな遠距離から撃ってきてるのに?」
「射程内ギリギリだったが、遠隔操作でもなんとかなった。今日は風もなかったからな」
「…………」
「一姫、こいつが死んだらすぐに警備が気づく。逃げるぞ。手配は済んでるか?」
「ええ、屋上にヘリが」
「途中で降ろしてもらうぞ、おまえと一緒に」
「……まだ私を抱く気?」
「当たり前だ、なんのために殺したと思ってる」
「私のため?」
「違う、おまえを俺のものにするためだ」
一姫の顎を持ち上げ、さっきの男より激しく貪るように口づけた。
はふ、と呼吸を荒げながらもキスから一姫の気持ちが伝わった。――いける。これでこの女はもう俺のものだ。
「ゆ、うじ……」
「一姫、もう一度だ」
「あ、の……ボディガードが外にいるんじゃ」
「だからこの部屋にしたんだ。窓から逃げるぞ。噴射カイトを持ってきている。一回だけの使いきりだが、おまえを抱えて屋上まで行ける分のガスはある」
「なら、はやく」
「一姫……キスだ。ほら、もう一度。俺の舌に応えろ」
「んん、ぅ……」
待ちきれない。
早く、――早く一姫を俺のものにしないと。
そうしないとこの女はまた俺を肉親としか見なくなる。
もうそんなのは御免だ。
母さんは俺を身代わりにした。だけどあんたは昔からずっと俺だけのものだった。
それを。
身体で分からせてやるからな。
続きます。
前に一姫とのセックスを書きましたが、あれではまったく物足りないので。(作者が)
少し時間がかかると思いますが、お待ちいただけると嬉しいです。
タイトルが某ラノベみたいですが、もうこれしか思い浮かばなかった。