1つはCP。クラスの順位を決める大事な指標だ。
もう1つはPP。つまりお金、この学校における通貨だ。
そしてもっとも大切なKP。
CPもPPも、KPを獲得するための手段でしかない。
世界はまだ気づいていない。
あの時、完全に合意だったはず。
櫛田からの中出し懇願、そしてそれに応えただけ。
だがあの音声データでは完全にレイプだ。
パソコンで編集するような時間はなかったはずだ。
状況を整理し、可能な手段を考察する。
(………ワイヤレスイヤホンそしてボイスレコーダー2台か)
簡単だ櫛田が二人いればいいだけだ。一人は喘ぎ声で俺を誘導、もう一人が悲鳴を上げる。つまりボイスレコーダーにあらかじめ櫛田の声を録音して、その録音データの櫛田の声に合うように(レイプされたように)、櫛田本人が俺の言葉を誘導する。
あらかじめボイスレコーダー(B1)に櫛田の声を録音(悲鳴、拒絶、号泣)
櫛田自身はベッドで ワイヤレスイヤホン左耳(L)+俺との通話
廊下には ワイヤレスイヤホン右耳(R)+ボイスレコーダー(B1)+ボイスレコーダー(B2)
B1を再生しB2録音開始 櫛田はベッドで俺との通話を開始
ベッド上ではラブラブセックスが 廊下ではいやいやレイプが行われた。
ベッド 廊下
(櫛田)好き好き綾小路君大好き (B1)いやいやいややめて
(L)好きだ櫛田好きだ (R)好きだ櫛田好きだ
(B2)録音中●
ボイスレコーダー1の櫛田の悲鳴、号泣に合わせておれを誘導
ベッド 廊下
(櫛田)中出して 妊娠したい (B1)中出しいや 妊娠いや
(L)中出しする 妊娠しろ (R)中出しする 妊娠しろ
(櫛田)好き 綾小路君大好き (B1)いやああああ ウウ もうやめて
(B2)録音中●
声優のアフレコ。都合が合わない時は、会話しているAとBの声優が別々に収録することもあるそうだ。既に録音していた櫛田の音声に俺があとから音声を追加したわけだ。
つまりこういうことか。
櫛田が予め録音していた、途切れ途切れの拒絶音声を再生しているボイスレコーダーのそばで、(櫛田に誘惑されて)無理やり中出ししたような俺の声がワイヤレスイヤホンから流れ、それを2つ目のボイスレコーダーで録音された。
俺の言葉使いから、声のテンポ、射精のタイミングまで完璧に誘導された。
まるでチェスだ。初手からチャックメイトまで全てが櫛田の手のひらの上だった。
ありえない、全て読み切ることなど。
…いや違う。そもそもゲーム事体成り立っていない。櫛田の声に合わせてしこって、射精するゲーム…なんだこれは。
あの時はすでに最初からテンションがおかしかった。学校で見えた櫛田の乳首チラがあって、さらに風呂に入っていた時にも櫛田の声を思い出し(『じゃあ9時半ぐらいにお風呂に入るといいよ。ふふ私と同じ時間だね。今日は一緒に入っろっか。』)、櫛田の事で頭がいっぱいだった。
さらに櫛田が仕込んだエロ画像で、もう我慢の限界だった。
そこに櫛田からの電話だ。あのとろけるような甘い声で囁かれ、俺の脳は溶けていた。
ルールを承諾した時点で、いや着信時点で俺の負けは決まっていた。
それはそうだ。櫛田の事が気になって気になってオナニーしていた人間が、射精寸前で電話に出たのだから。難易度的には1手でチェックメイトだ。
こんな状況では誰でも、ほんの少し甘い声で囁けば簡単に発射するだろう。
広角が上がる。
この状況を作り上げた櫛田に対して。
だが体が震える。
俺の体はもはや櫛田の声に逆らう事ができないかもしれない。
***
『綾小路君、じゃあ今度は左耳だよ』
櫛田の声に従い、体を90度反転させ、正面に聳える櫛田連峰をながめる。
双耳峰と呼ばれる頂上が二つ美しく並ぶ様はまさしく、高育三名山の威容にふさわしい。
現在も著しく成長を続ける活火山であり、大気圧により膨張と収縮を繰り返している。
『もう、変なこと考えてないで早くして』
(高育3名山 ※ が一つ櫛田連峰 果たして俺は、人類がまだなしえない未踏峰を攻略できるのだろうか。人々を魅了する櫛田信仰の総本山は、数えきれないほどの登山者を強毒性の火山ガスで殺してきたのだろう。だが俺にはこの毒は効かなっ……………)
山が落ちてきた。まずい呼吸ができない。
……………… はっ…はっ…
『はやくして』
『はい楽にしていいよ』
「なあ櫛田、どうしてこんな状況になっているんだ」
櫛田の膝枕の上でこの幸運について尋ねる。
『綾小路君、女の子にどうしてとかはNGだよ。減点1』
(以前に櫛田から言われた事を思い出す。男女間では言葉にすることはとても大事。以心伝心は甘え。)
「櫛田ありがとう。料理すごくおいしかった。耳かきすごく気持ちよかった」
『うん。どういたしまして』
「それで俺はもう一度、いやできるなら毎日でも櫛田と過ごしたい。この状況に至ったわけが知りたい。何があったか。なにか悩みでもあるのか。どうしたらまたできる。おしえてくれ」
『うん正直だね。+2点。これは綾小路君へのお祝いです。KPが規定を超えたから。いわゆる隠しイベントのフラグがたったってやつだね』
「フラグとは博士がいつも言っているやつか、同級生プールフラグでござる。デュフフフだったか」
『そうだね。外村君もちょっと声が大きいかな…』
外村の普段の行いを思い出したのだろう。櫛田の声が若干引いている。すまん博士。
『それはおいといて、今回佐倉さんとの3人での買い物デートで、綾小路君が50KPを超えたんだ。それで手料理と膝枕耳かきのフラグがたったんだよ』
「KP… 櫛田ポイントか」
『桔梗ポイントだよ』
『ヒントをあげるね。私の胸がキュンキュンするとポイントが貯まります』
桔梗ポイントの時点でそれはそうだろうが
「採点基準はまあ主観的なものだろうからいいとして、仮に0点になると……ああもちろん退学だよな」
『えっ0点になったら死に決まってるじゃん。普通にバッドエンドは死だよね』
マイナスは考えるな。プラス思考で行こう。さきほど櫛田は50点を超えたお祝い、そして減点1と+2、現時点では51以上は確定。大丈夫だ。
「なあKPには上限とか消費の概念はあるのか?」
『PPみたいに消費してなにかするとかはできないよ。これはCPとおなじだね。ただ上限が100で、一度100になったらもう二度と下がらないよ』
(端的に言ってしまうとKPとは櫛田の好感度だな)
「つまり100KPになったら櫛田と付き合えるということでいいのか?」
おっぱいの谷間から櫛田の顔がのぞく。
部屋の照明で櫛田の顔がよく見えない。
『ねえ綾小路君、私の事好き?』
「ああ櫛田、大好きだ」
『アリガト…私も綾小路君大好きだよ』
櫛田が両手で俺の顔をマッサージしてくれる。少し痛いかも。いや明確に痛い。
『ねえ綾小路君。私は綾小路君のなに?』
もしかしたら櫛田は怒っているのかもしれない。
「……櫛田は俺にとって……一番大切な………友人。親友だ」
『…………目を閉じて少し顎を上げて』
櫛田の言葉に従い首を後ろに逸らし目を閉じる。
櫛田の両手が俺の頬を優しく包む。
光と音が遮断され思考が加速する。
(俺は今、櫛田に膝枕されている。横向きではなく、正面から櫛田の両足の間に頭を置く形だ。いや膝枕っておかしくないか。俺の頭は櫛田のすべすべのふとももを枕にしている。……腕枕はあっても肘枕はない。…いやそれはまたの機会に考えよう……………この俺が目を閉じ無防備に首を差し出している。もし櫛田がナイフを持っていたら俺は終わりだ。だがそうはならない。俺の人生で睡眠や休息はただの脳と体の回復にすぎなかった。本当の意味での安寧など存在しなかった。そうかこれが……)
櫛田の唇が、俺の唇に触れる。少し開いた俺の口の下唇に櫛田が優しくキスをする。そのまま今度は上唇にキスを。本当に少し触れる程度の接触だ。
焦らされ焦らされ、櫛田を求めて顔を、口を、舌を前に突き出そうとしても櫛田の両手がそれを許さない。
「桔梗、桔梗、桔梗、頼むキスしてくれ、桔梗、桔っ…………………………ん……………はっはっ…ん………………………………」
櫛田との普段しているお互いの舌を優しく絡ませ合うようなディープキスとは違う。初めてキスした屋上の時のような、侵入してきた異物を排除しようと激しく絡み合う舌。唇も俺の知っている櫛田の動きとは違かった。
『…はあ…はあ……スパイダーキスだよ。…普通と全然違うね……清隆君の…別の姿みたいで興奮しちゃった』
1分以上キスしていたかもしれない。乱れた息を整える。
『綾小路君。私とこうして二人きりでお話したり、身体をさわられて…キスされたりするの嫌かな?』
頭を、櫛田の胸とふとももに圧迫され、両手で顔を押さえつけられて、普段と違う櫛田に無理やり口づけされた。だが一切の不快感はない。むしろ幸せだった。
「そんなことはない。凄く好きだ。櫛田になら何されてもいい」
『うんうん。私も綾小路君と一緒にいるの好き。綾小路君にならさわられてもいいよ』
『…ねえ綾小路君。私たちは、お互いの部屋を行き来して、こうしてキスして身体をさわり合ったりしてる男女だよ。友人…なのかな?』
人は誰しもパーソナルスペースと呼ばれる「他人に近づかれると不快に感じる空間」を持っている。そしてそれは相手との親密具合によって4つの距離に分けられる。
面識のない他人との 「公衆距離」(3.5m以上)
社会的に接点がある人との「社会距離」(1.2m~3.5m)
友人など親しい人との 「個体距離」(45cm~1.2m)
カップルや家族などごく親密な人との「密接距離」(0~45cm)
親密度が足りない相手が、この距離以下に近づいたとき、大抵の場合拒絶反応が出てしまう。
櫛田にはどれだけ近づかれても不快感など感じない。櫛田も俺のことを嫌がったことなどない……と思う。二人きりでいるときは必ず身体が触れ合っていた。玄関でハグをして、そこからベッドまでの僅かな距離でも必ず手を繋ぎ、勉強しているときは肩を寄り添って、テレビを見ているときは櫛田が俺を背もたれにし、俺は抱き枕の様に櫛田を後ろから強く抱きしめていた。
どうして気付かなかった。
「もしかして、俺たちは恋人関係なのか?」
『正解だよ。…綾小路君は友人も彼女もいたことがないから距離感がおかしいんだよ。友人だと思っていた私に、キスしたりHな写真を要求したり下着を脱がせたりしてたってことだからね。……他の女の子にしたら絶対許さないから』
「櫛田と恋人になりたくて、…その…スキンシップを多くとっていたんだ。…そうか既に恋人だったんだな」
『あと堀北さんとの距離感も気を付けて。学校でみんながいる所で女の子の額を触ったりしたらダメだよ。そんなのカップルだからね』
「そうだったのか」
『綾小路君は、学校で山内君が私の額に触れてたらどう思うの?』
「すごく嫌だな。山内の首を絞めてしまうかもな」
『ねっ、次やったら本当に怒るよ』
「わかった」
そう考えると堀北との距離感も「個体距離」いや「密接距離」なのか。
………まさか……いやそれはないな。
『綾小路君。起き上がってこっちを向いて』
櫛田に起こされ振り返る。胡坐で座る俺に櫛田が抱きつき耳元で囁く。
【櫛田桔梗は綾小路清隆の彼女、綾小路清隆は櫛田桔梗の彼氏だよ。次は間違えないでね。テストにでるよ】
「ああっ」
『問題です。綾小路君の初めての彼女が目の前にいます。…ん』
抱きついた櫛田が俺を見つめてから目を閉じる。可愛い。反則だ。日本で一番可愛い。
今度は俺が櫛田を抱きしめ、唇を奪った。
キスをしながら、胸を揉み、スカートで抱きつく櫛田の下着に俺の陰茎部を押し付けた。
【…ん…清隆君は私とHしたいの……】
あの夜の屋上の記憶が鮮明によみがえる。
だがあの時とは違う。俺は櫛田桔梗の恋人だ。
「桔梗先生……エッチがしたいです」
『ちょゴメン……ふふっあはははっ、…もう~なにそれ。須藤君にでも借りたの?』
櫛田に噴き出すほど盛大に笑われてしまった。なぜ須藤が出て来る。バスケの話なのか。
俺の身体に抱きついていた櫛田がさらに力強く抱きつく。両手両足でぎゅっとだ。
『清隆君このまま聞いてね。私は、初めては相手も初めてじゃなきゃ絶対嫌。そしてその人と必ず結婚するって決めてるの。だから私にとっては Hする=結婚 なんだよ。清隆君は大好きだけど、まだHはダメ。ごめんね。でももう少しだから』
「わかった。つまり100KPは…」
『うん。100KPになったら、……清隆君が望むなら……結婚して綾小路桔梗になります。清隆君の子供も産みます』
『Hもいつでもどこでも何回でもしてあげる。教室でも屋上でも、この部屋でも、……清隆君の好きにしていいよ』
そうか……俺がこの学校に来たのはこのためだったんだな。
「櫛田、おれは100KPを目指す」
『うん頑張って。私も協力する』
「いや櫛田はいつも通りで頼む。俺が目指すのは忖度のない完璧な100KPだ」
「必ず卒業までに、いや1年以内に100KPをとる。桔梗、…俺と結婚してくれ」
櫛田は答えない。ただ俺を見つめている。顔を目を、俺の心を。
『……綾小路君の彼女は腹黒で八方美人でHもできない嫉妬心が強い重い女なんだよ』
「櫛田桔梗は物事を様々な視点で見れる思慮深い女の子だ。八面玲瓏で貞操観念が高く一途でその心は一生変わらない。そんな彼女の彼氏ってだけで綾小路清隆は幸せ者だ」
「だけどそれじゃ足りない。彼氏ではなく、俺は桔梗と家族になりたい。ダメ…か?」
【……ダメじゃないよ…………はい……グス……】
櫛田が破顔し、涙が溢れる。
櫛田は俺の肩で暫く泣き続けた。
『…清隆君のお願いは反則だよ。捨てられた子犬みたいな目で見つめられると絶対断れないんだからね』
泣き止んだ櫛田が理不尽なことを言ってくる。これまで一体どれほどの櫛田の【お願い】で俺が死にかけたか。いまも櫛田と抱き合ってるだけで心臓が張り裂けそうだ。可愛い。
『問題。綾小路清隆と櫛田桔梗はどういう関係でしょうか?』
「恋人だ。カップル。彼氏彼女だ」
これはさっき櫛田先生に教わったばかりだ。間違えるはずがない。
『不正解です』
「なん…だと」
挑発的な目線で見つめてくる櫛田。
『結婚を約束した男女は婚約者になります。フィアンセだね。清隆君は私のフィアンセ…………もーーーー』
櫛田が自分で言って、恥ずかしさと嬉しさに耐えれず抱きついてくる。
俺も凄い顔になっている気がする。嬉しすぎる。桔梗は婚約者、フィアンセだ。
未来の妄想が押し寄せる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「もしかして綾小路君と桔梗ちゃんって付き合ってるの?」
『急にどうしたのさつきちゃん』
「そのっ…距離感だよ。なんかもう熟練夫婦みたいじゃん」
櫛田と俺はカフェテリアで二人並んでメニューを見ながら話し合っていた。俺は若干めんどくさそうに、櫛田はそんな俺に少し怒っていた。
『え~そうかな。…うんそうかもね。さつきちゃん、ちょっと耳かして』
【清隆君は私のフィアンセだよ。もうずっと前から結婚の約束してるんだ。高育じゃなかったらとっくに結婚届出してるから、夫婦っていうのは間違いではないかな】
篠原は顔を真っ赤にして口をパクパクしている。面白い。
『もう~冗談だよ。清隆君は…まだ…友人だよ。でも……さつきちゃん協力してね。』
「ビックリしすぎて口から泡ふくとこだったよ。……桔梗ちゃん。任せて」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
みたいな感じでクラスメイトをからかう櫛田の姿が視えた。
『清隆君、婚約は契約です。婚約破棄には当然、慰謝料が必要です。慰謝料は2000万PPです』
櫛田の言わんとしていることを敢えて聞いてみる。
「慰謝料の2000万PPでAクラスに行って、それで卒業後の進路はどうするんだ?」
『清隆君のお嫁さん』
櫛田を抱きしめる。可愛すぎる。これは世界一かもしれない。
「俺は一生、桔梗から逃げられないのか?」
しまった。言ってから少し後悔する。
『なに…逃げる気なの』
背中に痛みが走る。櫛田の爪が俺の背中に突き刺さる。
『あんたは…清隆は私の獲物。私は捕まえた獲物は死ぬまで離さないから。清隆の家族にも警察にも絶対に渡さない。清隆は、私と子供たちのために一生を捧げるの』
肩に痛みが走る。櫛田が俺の肩に嚙みついてきた。甘噛みではない。普通に痛い。
今日の朝、蜘蛛の巣にかかり藻掻いていた蝶を思い出す。小さな檻のような蛹から、自由を求め、世界に飛び立った蝶の冒険は……
To Be Continued
※高育三名山
一ノ瀬山 未踏峰。見るものを圧倒する高育の最高峰。現在もその領域を拡大している。
男女問わずその山の頂を目指す。誰でも5合目まで登れるが、それ以上は…
その山の全容は夏休みに知れ渡った。
長谷部岳 未踏峰。幻の山。その麓すら歴史上確認された事はない。
櫛田連峰 未踏峰。その山はいつでも手に取れそうなとこにある。
一歩でも踏み込めば生きては帰れない 死の山。
呼び方推移
白櫛田 綾小路君 清隆君♡ パパ♡♡♡
黒櫛田 あんた 清隆♡♡♡ あなた♡♡♡♡♡