「綾小路様、本日はご指名ありがとうございます。撫子と申します」
その名に相応しい黒髪黒眼で凛として慎ましい日本人女性の美しさがあった。
(まさかこんな人にマイクロビキニを……)
***
先ほどまでのやり取りを思い出す。
『綾小路君、サバイバル試験お疲れ様。凄かったね、みんな堀北さんの事褒めてるけど、本当は綾小路君が裏で動いてたんだよね』
関係者以外立ち入り禁止の看板が掲げられ、電子キーで施錠された扉の、少し手前の船内通路の一角。そこに3人掛けの少し硬めのソファーが並んでいた。おそらく普段の航海時には喫煙所になっているのだろうが、今は灰皿などは見当たらない。
メインの通路からは程よい具合に死角になっており、大きな声での会話は通路側に漏れてしまうが、近づいて話し合えば他人には聞こえない。それぐらいの絶妙なスペースで櫛田と二人きりで先のサバイバル試験の反省会をしていた。
「表向きは堀北の手柄にしてやってくれ。櫛田さえわかってくれれば俺は十分だ」
『ふふ。じゃあ綾小路君は私がいっぱい褒めてあげるね。おいで、ギューってしてあげる』
櫛田の胸に顔をうずめ、試験の疲れを癒す。ここは俺が占有しているパワースポットだ。
【もう~声にでてるよ。…ちゃんと一日一回は占有にきてね】
櫛田に頭を撫でられ、褒められながら試験についての見解を答えていく。どうも櫛田が相手だと秘密にしようとしていた事まで自然と何でも答えてしまう。
『やっぱり綾小路君はすごいね。婚約者として鼻が高いよ、ふふん』
≪承認欲求≫ 誰もが持ちうる基本的な欲求の一つだが俺にはそれが欠落している、と思っていた。だが櫛田相手にだけはどうしても背伸びしてしまう。俺は櫛田に褒めてもらいたい、櫛田に見限られたくない、櫛田と絶対に結婚したい。
無意識に抱きついた腕に力が入ってしまった。
『どうしたの綾小路君。なんだかいつもより寂しんぼだね。たった1週間二人きりになれなかっただけだよ。ウサギさんかな』
そのまま櫛田は何も言わずに俺を強く抱きしめてくれた。俺の不安やストレスが消えていく。全身を優しく包む温かくて柔らかい櫛田の身体。俺は胎児のように緩やかに流れる時間に身をゆだねた。
『……綾小路君。今日の夜の10時から時間作って欲しいんだけど、大丈夫かな?』
「大丈夫だ、問題ない。どうすればいい」
櫛田とのハグで、俺のHP、MP、SP全て全快した。もう一度サバイバル試験だとしても可能だ。
『うんありがと。じゃあ10時に5階の船尾のテラス席に来てね。えっと事前にお風呂に入って、必ず誰にも見つかないように一人で来ること』
「わかった。任せてくれ」
【清隆君、期待してね】
櫛田が耳元で囁き、小走りで去っていくの眺める。
学校でも寮でも、二人だけの場合でも苗字で呼び合っている櫛田との秘密のルールだ。
どちらか一方が相手の名前を囁き、囁かれた方が名前で返したら、それが俺たちの始まりの合図になっていた。
(櫛田からのお誘いは絶対に断ることができないが、逆に俺からは櫛田に結構おあずけをくらっている)
櫛田と初めての密会も夜の屋外だった。5月8日だった。そして今日はちょうど3か月後の8月8日だ。
下半身が熱を持つ。
俺は今日こそ卒業できるかもしれない。
入学式のバスで見かけたときから、今日にいたるまでの櫛田との思い出が脳内に溢れる。
俺がそこから移動したときには2時間以上たっていた。
***
PM10時 5階テラス席
『発信 櫛田桔梗』
「櫛田、着いたぞ『そのまま船尾の方に向かって、非常階段があるから、誰もいないのを確認して地下1階まで降りてきて。そこで待ってるね。「わかった。状況開始する」…それ誤用だよ、もう切れてるし』
慎重に行動を開始する。気分はスネークだ。ああっ 夜の戦場(船上)は俺を解放してくれる。
無駄な、ローリングや匍匐前進、手すりへのぶら下がりなどを駆使して、目的地へと向かった。
「櫛田っ―――『綾小路君』
目的地で無事合流し、戦場で再会した恋人のような激しい抱擁となった。
(もしかしたらこれから櫛田と初めての夜になるのか)
残念ながらすぐに櫛田の言葉で否定される。
『ではこれから作戦の最終目的地を伝えます。この非常出口から、左に進んで、突き当りを右に進むとエステティックサロンがあります。本当は10時で閉店なんだけど、特別に2人分予約させてもらいました。女子限定だから男子は本当は駄目なんだ。あっ、でもお店の人に聞いたら、女子限定なのはこの学校の貸切のときだけで、普段の航海時には男の人も利用できるみたいだから心配しないで。でも誰かに見られると綾小路君も困るだろうから、私が出ていったら10分後についてきてね。絶対、絶~対誰にも見つからないように。入店したら私の事は気にしないでいいから』
【清隆君のための特別なコース予約したから。楽しんできていいよ】
***
予定通り、誰にも見つからずに入店することができた。受付には茶柱先生を優しくしたような凛としてそれでいて、包容力のありそうな綺麗な女性がいた。
「すいません、今日はもう終わりなんです。ごめんなさいね」
「えっと、その……」
いかにも最高級のお店という感じの内装と、女優のような容姿をした女性にたじろいでしまう。
「もしかして櫛田様のお連れの方だったでしょうか?」
「はい。予約してあると聞いてました」
「綾小路様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
待合室へ誘導される。そこに櫛田の姿はない。常連だからだろうか、既に施術に移っているのだろうか。
「こちらのタブレットでアンケートにお答えください。なにかお飲み物はいかがですか」
「えっと……烏龍茶をお願いします」
「かしこまりました」
アンケートへと目を移す。
カウンセリングアンケートと題されたそれには、肩こりや腰痛、足のむくみなど、自分が抱えている症状へのチェックや、普段の運動の有無、食事などへの簡単な記入項目が並んでいた。
デカデカと赤字で書かれた文章がいやでも目に付く。
※当店は健全なお店となります。セラピストへの違法な接触、性行為の強要は警察へ通報させていただきます
1週間のサバイバル生活では発散することなどできず、ここに来るまで、もしかしたら櫛田とできるかもと期待していただけに、下腹部が疼く。
(ヤバい、これ勃起したらどうするんだ。流石にそれだけで警察はないと思うが、結構やばいかも)
受付の女性、藤原と名乗った方から烏龍茶を受け取りアンケートを答えていく。
「櫛田様から、コースは
「その…どのような内容か聞いてもいいですか」
「綾小路様がよろしければお伝えすることは可能ですが…櫛田様からは秘密にして頂きたいと」
「いえ大丈夫です。期待してます」
「ありがとうございます」
最後の項目に手が止まる。
服装変更オプション(無料)
□マイクロビキニ □体操服(のみ) □ベビードール
藤原さんと目があってしまう。心を見抜かれいるようだ。
にっこりと笑い
「では服装について、通常のセラピスト衣装はタイトスカートとなります。私がいま着ているものですね」
茶柱先生の普段のスーツから上着を脱いだような、白のブラウスに黒のタイトスカート姿。
一人がけソファーに座る俺のすぐ横で、片膝立ちで説明する藤原さんの黒の下着が、目に映る。
(胸元開けすぎじゃないのか。茶柱先生よりも開いてるぞ。普通にブラジャーが直接見えてる。ふともももヤバい。ストッキングじゃなく生足だ、少し体制を変えたらスカートの中まで見えそうだ)
「普段は私をご指名いただくことも可能ですよ」
これが大人の女性か。俺の視線を見抜かれてしまった。
「続けますね。マイクロビキニはその名の通りですね。面積の非常に少ない水着になります」
【ほとんど紐です♡】
「体操服は、セラピストの体格より遥かに大きめのTシャツ、4Ⅼ~5Ⅼあたりでしょうか、それとハーフパンツ衣装になります」
【下着は付けません。ノーブラノーパンです♡】
「ベビードールは、下着の上に着るワンピースのようなものですね。透け透けです。下着が上下とも透けて丸見えです」【下着そのものも透け透けです♡】
藤原さんを見つめる。いや目線がその下に吸い込まれる。美しい雪のような北半球が眩しい。南半球と赤道を観察するにはどうすればいいだろうか。
(まずマイクロビキニ、これはポロリに期待できるはずだ。ベビードールはどうだろうか。俺の知らない世界だ。この女性の透け透けの下着はすごく興味がある。最初から乳首が透けている可能性に賭けるか。……Tシャツ、これは罠だ。4Ⅼだとしても、この胸ではそこまで隙間ができず胸ちら、いや乳首チラには期待できない。だが色によっては透けうるか)
「Tシャツは全体が白で、首回りと袖口が赤くなっています。……実は高育の体操服です。ただし男性用の最大サイズになりますので、結構ぶかぶかですね。……私の胸でも♡」
(俺の脳内と会話しているのだろうか。それともさっきから声にでているのだろうか)
「声にでてます」
でていた。
「肌と肌の接触が多いほど、癒し効果が上がります。マイクロビキニがおすすめです」
「わかりました。これで全部できました」
「セラピストへ送信しました。……準備完了のようです。それではご案内致します。」
藤原さんに連れられて、店の奥に案内されると、両側に施術室と思われる個室が並んでいた。イメージはホテルの廊下のように、左右に個室が等間隔で並んでいる。ただし扉は鍵を掛けれるようなものではなく、遮光カーテンで上から下まで隙間なく閉じるだけだ。
手前の個室だけがカーテンが閉まっており施術中になっている。そのカーテンの向こう側からは女性の声が漏れていた。
(櫛田は既に施術中だな。藤原さんは二人の貸切状態だから、声を出しても大丈夫と言っていたが……えっ…あんな声出るの、まじかー)
「綾小路様は一番奥のVIPルームになります。こちらです」
そのまま一番奥の部屋まで誘導される。
この部屋の入口は普通の玄関のようになっており――鍵も掛けれる――ここでいったん靴を脱ぐようだ。
「では綾小路君様、ここで失礼いたします。それでは存分にお楽しみください」
藤原さんと別れ、一人で緊張しながら襖をそっと開けると、正座で凛とたたづむ美しい女性がいた。髪はセミロングの黒のストレート。藤原さんと同じ白のブラウスに黒のタイトスカート姿だ。
「綾小路様、本日はご指名ありがとうございます。撫子と申します。よろしくお願いいたします」
正座でのお辞儀、これは茶道における『真』のお辞儀に近い。正座の姿勢から両手を揃えて頭を下げ、一呼吸おいて戻すまで、その一連の流れに一切の淀みがない。この女性の教養の高さ、いやこのお店の教育の高さに息を吞む。たかがお辞儀、されどお辞儀だ。そこを配慮できるお店が、施術事体が適当なわけがない。それに部屋の内装も和と洋が融合した心を揺さぶられるデザインだ。部屋の奥は2面張りのガラスになっており、外の景色を眺めながらジェットバス付の浴槽でくつろげる仕様になっている。このお店のコンセプトは≪美と癒しのラグジュアリーな空間≫だ。これは最高に期待できる。
「ではこちらに腰掛けてください」
撫子さんの誘導でベッド中央に座る。初めて見たがこれがキングサイズのベッドなのだろうか。俺が両手を広げても全く両端に届かない。これなら縦でも横でも前からでも後ろからでもどんな体勢でも出来そうだ。櫛田とのラブラブな結婚生活を幻想してしまう。
「早速ですが、お着替えお願いします」
撫子さんは俺が脱いだ服を、丁寧にかごの中へと折り畳んでいく。ベッドに腰掛けている俺の正面で、膝立ちで衣服を受け取っていた。そして距離が近い。俺が足を広げていなければ接触してしまうような感じだ。そして例のごとく胸元が大きく開いていた。谷間どころではない。白のブラジャー、その小さなリボンまで確認できる。(藤原さんといい、本当にHなお店じゃないんだよな。茶柱先生の服装が健全に思えてくるぞ)
上半身の服を全て脱がされ、今度は靴下を脱がされた。そして、俺のベルトを緩め、チャックを下げる。
「自分で、自分で脱げますから」
「大丈夫ですよ、そのままほんの少し腰を浮かせてください」
女性にズボンを脱がされる行為に、下半身が緊張する。
「ホットオイルを使いますので、こちらの紙パンツに履き替えください」
渡された紙パンツ。まるで高円寺が水泳で着ていたブーメランパンツのような面積の少なさに驚愕する。(勃起したらはみ出すぞこれ。えっ撫子さんの目の前で履き替えるのか)
紙パンツを両手で広げ、戸惑っていた俺と藤原さんの目が交錯する。撫子さんは少し顔を赤らめ、目を逸らす。
「えっと、…流石に下着はご自身でお願いします。タオルで隠しますので」
顔が赤面する。どうやら盛大な勘違いされてしまったようだ。撫子さんに自分のパンツを脱がさせようとした、と思われてしまった。
(紙パンツ広げて動かないでいたら、早くパンツ脱がせろ。ってことになるよな)
撫子さんは俺の下半身を隠すように、両手でバスタオルを広げていた。
「すいません。すぐに履き替えます」
立ち上がり、パンツを脱ぎ、素早く紙パンツに着替える。女性の目の前で全裸になった事と、紙パンツを履くためまえかがみになった時に、胸の谷間を凝視してしまったことで勃起してしまった。焦りが生まれるが、目の前の女性は、目を閉じて、赤くした顔を若干逸らしていた。
先ほどまでは緊張で撫子さんの顔をしっかり見えなかった。相手が目を閉じているこの状況を利用し、紙パンツからはみ出すチンコを抑えながら顔とおっぱいを確認する。髪は黒のセミロング、薄暗い部屋でもその艶やかさは際立つ。顔立ちはどことなく櫛田に似ていた。櫛田が大人になったら、この人のような誰もが羨む美人になるだろう。
俺のチンコの僅か30cm前に顔を赤らめた女性がいる。正座したふともも、胸の谷間、ブラジャーが全体の6割ほど見えている。そして両手を上に上げていることで、ブラジャーが浮き上がり、両方の乳首が見えていた。チンコがフル勃起する。
初めて見る大人の女性の乳首。
暗くて色はわかりづらいが形は完全にわかる。両方の乳首を様々な方向から観察することができた。
勃起したチンコがタオルに触れる。どうやら気づかれていない。少しだけ腰を前に突き出す。この美しい女性の唇のわずか5cm手前に俺のチンコがある。艶やかな黒髪の頭を掴み、チンコを口内にぶち込みたい衝動が駆け巡る。
「綾小路様、ご準備できましたか?」
「…っはい」
「ふふ大丈夫ですよ。最初はみんな緊張しますから。ではこちら側を頭にしてうつ伏せになってください」
「ではまずは背中側のマッサージから初めていきますね」
背中からバスタオルを掛けられる。そして撫子さんの確かな重さが感じられた。背中に馬乗りになっているのだろう、タオル越しでもわかる、お尻とふとももの柔らかさに意識が持ってかれる。
首から始まり、肩、肩甲骨、背中から腰へと指での絶妙な圧力に癒される。
俺の背中に倒れ込みながら撫子さんが囁く。
【とても硬くなってますね】
心臓が跳ね上がる。違う待ってくれ
「綾小路様、背中から腰に掛けて疲れが見えます。なにか最近ありましたか?」
危ない、身体の話だったか。ばれていないよな。……からかわれてる気がする。
「……実は無人島で1週間テントで寝泊まりだったんです。そこの地面が硬くて…足も結構きてるかも」
「それは大変でしたね。私にお任せください」
お尻からフトモモ、足裏まで丁寧なマッサージを受け、血流が促進される。知らず知らずのうちにかなりの疲労が溜まっていたようだ。この人のマッサージは上手すぎる。あまりの気持ちよさに、意識が持ってかれそうになった。
「無人島ではどのようにお過ごしだったのでしょうか?」
「えっと…その……」
そういえば試験内容を外部の人に話してもいいのだろうか? そもそも外部との連絡不可とはどこまでだ。高育の経済圏にはケヤキモールを中心に何千人も出入りしている。
「大丈夫です。この客船の人間は全て国と秘密保持契約を結んでいて、情報を漏らすなんてことは絶対にありません。そのような契約がなくても、私はお客様の個人情報は絶対に他言いたしません。……綾小路様は私の事、信用できないのでしょうか?」
「そんなことはないです」
「ありがとうございます。じゃあ先に私からも秘密を――」
「この客船には高育の卒業生が多く在籍しております。多種多様な船内施設の運営に様々なスペシャリストが必要ですから」
興味本位で調べたこの船のスペックを思い出す。
たしかこの船の最大乗客数は5,000人以上だ。その数の客を24時間接待するため乗員も2,000人以上必要となる。船の運航に必要な船員や機関士、事務手続きや乗船下船の案内など高い語学力を必要とするオフィス、歯医者から脳外科手術まで多岐にわたる専門医のチーム、2000室以上のベッドメイキングための客室清掃スタッフ、乗員乗客を支える調理スタッフ。そして最長で数か月に渡るクルーズを飽きさせないため、ショーやミュージカル、コンサート、参加型のイベント、オークションなどが日々開催されており、またカジノやフィットネスクラブ、エステサロンなどの娯楽施設も充実している。この船には本当にありとあらゆる人材が必要だ。まるで街そのものだな。ただ街から出ることは出来ない。
……そう考えると高育も自由な出入りが禁止されて、海に囲まれた経済圏だ。この豪華客船と高育は非常に似通った構造をしている。……そして高育の経済圏―――ケヤキモールなど―――には高育の卒業生が多く在職しており、悩みを聞いてもらえたとか、少し優遇してもらった、なんて話も聞いたことがある。(櫛田が言ってた)
今の流れからすると撫子さんは間違いなく―――
「撫子さんは高育の卒業生なんですね?」
「綾小路様。女性に過去の話を聞くのはNGです。次は出禁ですよ」
地雷を踏んでしまった。茶柱先生みたいに高育時代になにかあったのだろうか。
「ふふっ冗談ですよ。ここでの事は絶対に外には漏れません。愚痴でも悩みでも、楽しかったことや悲しかったことなど綾小路様が感じた事を何でもお聞かせください」
何でも……か。何でもは以外に難しい。テーマを絞ってもらった方が話しやすいな。
「どういった話が好きですか?」
「そうですね~やっぱり思春期の高校生らしく男女の話題でお願いします。櫛田様とはそういう関係だと伺っております。大自然の中では男女とも開放的になりますよね。甘い甘いラブロマンスを期待しております」
やはり女性に人気なのはいつでも恋愛関連の話題なのだろう。だが――
「櫛田とは…その……彼女は男子にも女子にも人気で、いつも周りにだれか一緒にいて、そのいう事は一切できなかったんです」
「…もしかしてお二人は付き合ってる事を学校では秘密にしていらっしゃるのでしょうか?」
「まだクラスが団結できていなくて、それで櫛田から『私たちが付き合ってる事は暫くは秘密にしようね』って事になってます」
「そうなんですね。……クラスが大事ですから仕方ないですよね」
本当は学校でみんなが見ている前で櫛田とイチャイチャしたい。お昼ご飯も毎日一緒に食べたい。……俺はこんなに自己顕示欲が強かったのか⁉ いや違う、櫛田を見せびらかしたいのではないはず。普通に四六時中一緒にいたい…だけだ。
「それでは無人島で苦労したエピソードは無いですか?」
撫子さんにマッサージされてると何でも喋ってしまいそうだ。それぐらい気持ちが緩んでしまっている。根拠はないが、この人になら話しても大丈夫だ、という安心感が凄い。
「その五日目ちょっとした事件があって……クラスの女子の下着が盗まれる事件があったんですが――」
「許せないですね。私も下着盗まれた事あります。窃盗犯は死刑にすべきです」
撫子さんの指の圧力が凄い。痛い。
「それで男子が疑われて荷物検査をすることになったんですが、……俺の鞄に女性用下着が入ってたんです」
「今からでも自首しましょう」
まってくれ⁉ 腕が曲がっちゃいけないほうに
「違います! 俺は無実です。俺は嵌められたんです。犯人は別にいたんです」
「詳しく聞いてあげます」
撫子さんによる事情聴取が始まった。