44番艦の自宅、レヴィは朝っぱらから起きると直ぐに自室へ逃げ端末であれやこれやと検索していた。
(アイツ、……今日わたしと……)
見ていたものはセックスのテクニックだ。
男を喜ばせる方法だとか、正しい愛撫だとか、今更すぎる性教育を己の中に叩き込んでいた。
そんな付け焼き刃で意味が無いのは分かっているが、【敗者】はレヴィに言った。
避妊パッチを外しておくように、と。
それの意味は流石にひとつしかないだろう。
(嘘の恋人とか関係だって言っておきながらこんな所までするの?!でももし断ったら?!養子を取ってきたり、他の女とセックスしちゃったら?!)
そんなことを考えて、子供なんて微塵も欲しくないのにあれこれと調べては顔を赤くしていたのだ。
レヴィは基本性的な事だとされるがままだ。奉仕という概念は思いつかない。
【敗者】から虐められることも大好きだから。
しかし、どうしても何故か、心のどこかで【敗者】を見ると邪悪な心が擽られる。
最近はジグの工房や人の少ないゴーストタウンばかりで、ストレス発散として人を殺す機会が圧倒的に減っているからだろうか。フラストレーションが溜まっているのだ。
「でも……うぅう〜〜!わたしにはむりっ!むりむり!」
レヴィは己の部屋を飛び出すと、大きく暖かいものにぶつかった。
「あっ……」
「全く……何のつもりだ?今日は外に行かせるつもりなど微塵もないぞ」
当然【敗者】だ。彼はレヴィを見下ろして、いつものように素っ気ない言葉をかけるが、彼の瞳はどこか熱っぽかった。
「……こ、子供、作るから?」
「子供を作るという表現は適切でないな。研究に必要な物を調達する、が正確だろう」
「えっ……」
それは確かに【敗者】らしいし、それが正解なことは分かっているがレヴィの感情ではショックを感じていた。
だが。
「しかし、子作りという方が滾るのであれば、その言葉を使ってやろうじゃないか」
「ちっ、ちが!わたし子供なんか欲しくないし!ガキなんか嫌いなの!」
「何、痴呆を生み出すつもりなどない……それに、貴様のココはもう孕みたくて仕方ないんじゃないのか?」
レヴィの繕ったような言葉に反してその内側にある媚びの気配を感じ取るように、【敗者】はレヴィの下腹部をゆっくりと撫でる。
それだけでレヴィは期待に胸が鳴り、下着がじわりと湿った。
「ッ……!!」
「散々精液を飲んでおきながら避妊パッチに阻まれて排卵も出来ないからな。いい加減楽にしてやったらどうだ」
「わたしの体はわたしできめるの……!」
どこからどう見てもいやらしい体と、期待の交じった鳴き声に、あからさまな雌の匂い。
避妊パッチを外し発情期全開の孕袋が【敗者】に抵抗と言う名の挑発をしていた。
「勘違いするなよ。貴様は僕の所有物だ。貴様以上に僕にはその権利がある」
「〜〜ッ……」
その言葉でレヴィのマゾヒズムは著しく刺激された。
暴言を言われるだけでゾクゾクする。この暴虐を全て自分にぶつけられたくなる。
彼が殺意に顔を歪ませるその瞬間はとても美しい……
「いいから来い。たまには僕を限界まで引きずり出してみせろ」
「……【敗者】を、満足……」
いつもいつもレヴィが先に疲れて寝て、後の【敗者】は気絶したレヴィを睡姦するばかりだ。せっかくなら体力付けという意味合いも足して最後までレヴィを犯し尽くしてみたいと思っていた。
一日中犯される程度も耐えられないのに長時間の激しい戦闘など出来てたまるものかと【敗者】は心の中で彼女に悪態を着く。
二人は寝室に入ると、すぐに【敗者】がレヴィを抱きしめ優しく触れ始めた。
「ちょっと……、今更、こんな優しくしたところで……」
「レヴィ……」
【敗者】は昨日の情事も抜け落ちたのかと言わんばかりに強く彼女を抱き寄せて、首筋に噛み付く。
「るぅ、ちょっと……」
レヴィが嫌味の言葉を吐くより先に【敗者】が服に手を掛け、ゆっくりと脱がしていく。
まだベッドも遠いというのに彼はレヴィの生肌を撫でながら下着に手を滑らせ、股ぐらの筋を撫でて下からゆっくりとクリトリスを擦った。
「んっ……♡こら、メッ……こんな、とこで……」
「僕は……自分の思考を受け入れる訳にはいかない……しかし……」
【敗者】は独り言のように呟きながらレヴィの胸を揉み、彼女の首筋に顔をうずめる。
股間はもうガチガチに固くなっており、ズボンが張り裂けそうな窮屈感を覚えながらレヴィの体にまとわりついていた。
「なに……?」
「貴様を見ると僕はもう……己の思考が昂って止まらないんだ……」
「もう……」
レヴィは呆れたため息を着くと後ろ手を回し、ズボンから【敗者】の股ぐらを撫でながら彼に声を掛けた。
「いきり立って作業もままならないから発散したいって言ってんの?」
「あぁ……」
確かに、昨日はセックスをしたがココ最近は多少はご無沙汰だった。と言っても一週間位だが……
とはいえ前の頻度と比べれば減少したと言っても差し支えないため、【敗者】がこうなるのも仕方ないのかもしれない、とレヴィは納得する。
レヴィが新しいことに挑戦しているのに対し、【敗者】は既に持っている知識を使う本当に普通の仕事だからだ……
「じゃあ、しなよ。あんたにとっての研究的な利益ってやつもあるんでしょ?子作り、ってのはよくわかんないけど……まあ、それで燃えるっていうなら……好きにすれば」
【敗者】はこくりと頷くと、彼女を持ち上げてベッドの方に持っていく。
レヴィは交尾を期待して疼く体を無理やり隠し休みの時間など勿体ない、早く武器の制作を進めたいと頭の中は違う事でいっぱいにさせた。
いや、意図的に【敗者】のことはあまり考えていなかった。
俗な言い回しをされたり、こうやって体を求められたりするとレヴィは嘘を本気にしてしまいたくなるからだ。
彼に心の底から本気で愛していると何度でも言いたいし、今でも叫んで、彼の唇にしがみつきながら、彼の全てを求めたいのに、それを行えばこの契約関係が終わってしまう。
恋や愛などは彼にとって嘘に過ぎず、利益のない、無償の愛なんて不平等なものを求めてはいけない。
【敗者】は所詮ダークファルスで、彼は知識を求めていて、レヴィが愛を求めれば彼はそれに嫌悪する。
【敗者】の目が周りのアークスと同じように侮蔑や嫌悪に歪み、気持ち悪いと言われることなんて絶対されたくなかった。
それでも離れたくないし、レヴィは自分の中のこの感情だけは嘘にならないと信じられた。
「【敗者】……」
レヴィはそっけなく呟いたつもりだったが、嫌に湿っぽい声になり、憂いな目つきは【敗者】を刺激した。
「寂しいのか?」
「わたしの発言のどこを汲み取ったらそう受け取れるの?あんたの思考は可笑しいよ」
「僕はダークファルスだからな……」
【敗者】はレヴィと手首を絡めて繋ぎ、彼女の首や額、頬に次々とキスを落としていく。
こうやって恋人みたいに甘ったるい行為をしてくるからこそ、レヴィは【敗者】が怖くて仕方ない。
でも、それでも縋ってしまうのだ。
心地よくて苦しい嘘でも、愛されたいと願ってしまうから。
「【敗者】……」
彼はレヴィの甘ったるい声を聞きながら胸に手を伸ばし、柔らかく触れる。
レヴィの胸は彼女のサイズ感からしてみればワガママ過ぎるほど大きい乳だが、【敗者】からすれば手のひらで覆えるほどのおもちゃのようなサイズ感だ。
それは胸だけに限らず、太ましい足もむっちりとした腹も、彼女の体の全てが【敗者】にとっては愛玩目的の作り物の人形のようにしか見えない。それほどに1.4メートルもない女と1.9メートル以上ある男の差は大きい。
「貧乳が好きなんじゃなかったの……?」
「前も言っただろう。それはあくまで要素のひとつに過ぎないと」
「むぅ……」
「本当に貴様は向こう知らずで短絡的な思考ばかりするようだな。だから僕のような相手に孕まされる事になる……」
「は、孕まされる……」
彼のその言葉にレヴィの脳は驚いているものの下の方は今すぐにでもと言わんばかりにキュンと高鳴っている。
意図など分かりきっていると言うのに、彼の声で紡がれると全部が本気に感じてしまう。
「レヴィは……嫌か?」
「……ちが、……その……」
【敗者】の指が彼女の体をしっとりと撫で、柔らかい足や腹をなぞり、いやらしく触れ回る。
レヴィは【敗者】に軽く触れられて話しているだけだと言うのに勝手に体が熱くなり、足をもじもじと動かして発情していった。
「んっ、……るぅさ、……わたしがなんでもかんでも受け入れると思ったら大間違い……んんっ!」
「口だけは、だな」
「うるさいっ!あんたなんか顔だけいいからっていっつも調子乗って……」
レヴィの声も聞かず、【敗者】は口を開けて視界に映る乳首をぱくり、と咥えた。
「ふぁああっ?!やっ、ちょっと!何吸って……んんんぅうっ♡♡」
飴玉のように舌で転がし、胸を揉みながらちゅうちゅうと吸う姿はまるで搾乳のよう。
【敗者】が刺激をひとつ加えるだけでレヴィの体がビクビクと体が跳ねる様子は面白くて仕方がない。
「はっ、やぁあん……るぅさ、だめっ、それだめ……、吸っても何も出ないのに……っ、無駄だって、言ってるでしょ……っ、んぅっ……♡やらぁ……♡」
敏感なそこを舌に掬われ、ざらざらとした感触で舐められ続け、そして暖かく蕩けた口の中で包まれて、歯で甘く噛まれる。
【敗者】はしばらくしてから乳首から口を離すと、口角が上がりっぱなしのまま目は睨むように細めて、レヴィと目を合わせながら声を紡いだ。
「可哀想に……仮に僕が貴様の子ならば食事の度に喘ぐ親などいやらしくて耐えられないな」
「誰があんたみたいな生意気な奴の親になると思う?!子供ってのは弁えてて親が土下座しろって言ったら土下座するもんなの!あんたは従うつもりないでしょ?!」
「それは唯の奴隷と飼い主だな。僕は奴隷などに成り下がるつもりはない」
「ふんっ当然!!あんたはなるとしたら他の奴のパパでしょ?」
「パパ?」
「わたしは生憎父親ってやつが心の底から大っ嫌いなの!だからあんたがなるなら他の奴を溺愛して頭悪くパパーって呼ばれるだけの能無しになれば?」
ポジティブな意味とネガティブな意味で敢えて言い回しを分けたのか。己はポジティブな方なのか。レヴィが「【敗者】が他人の親になる」というシチュエーションを想像しているのは理解出来ていたのだが、それはそれとして【敗者】からすれば子を持つ親が互いに自分のことをパパ、ママと呼び合うようで面白くて仕方なかった。
【敗者】の中ではレヴィとそんなことになる想定は現状出来なかったが、策略の中でそういう嘘を使うのなら、そんな滑稽な言い回しも使う日が来るかもしれない。
「……ふふ、ははははっ!」
「ちょっと!何がおかしいの?!」
何も分からずに声だけ荒らげて反抗した気になっているのも面白かった。
この感覚は【敗者】にとって暖かくて柔らかくて、愛おしい。
こんな無意味な会話でも楽しく感じるのは、なんの機構がもたらしたバグなのだろうか。
【敗者】は彼女に対する感情を包み込んで、柔らかい一言で表現する。
「いや……ふふっ、本当に可愛いなお前は。"ママ"にするにしてはあまりにも惜しい」
「かわッ……、わ、わたしが……?!」
レヴィは顔を赤らめて【敗者】を三度見するほど彼の言った言葉が信じられず困惑していたが、彼はそれ以上に言葉を付け足すことも無く、すぐに話題を切り捨てて先程の話に戻ったため、レヴィの困惑は宙を漂ったまま離れなくなってしまった。
「まあ、親子で生殖行為をするやつなど度し難い。ままごとをしたいならせめて夫婦のフリにしてもらおうか」
「だ……誰がおままごとなんてしたいって言ったの?!あんたが責任取ってよ!」
可愛いと言われた事が頭に残りつつも慌てて切り替えて【敗者】に叫ぶ中、【敗者】は悠々とレヴィの左手を取って薬指を眺め、するりと繋いで撫でながら意地悪に笑う。
「なるほど……責任取って結婚、と。逆プロポーズから始めるつもりか……本格的だな」
「はっ、……はぁああああーー?!!」
「いつもの仕返しだこのバカ女。貴様はいつもこのレベルで飛躍した解釈ばかりしていることを自覚しろ」
「むぅう〜〜っ!!」
「貴様もよく理解している通り、所詮僕達は駒と主人にすぎない。性行為で何をしたとて、その事実は変わらないだろう」
「そんなの知ってるし……」
「代わりに、跡継ぎがなんだと喚くことも無い」
「っ……」
【敗者】は彼女から手を離すと軽くシャツのボタンを外し、レヴィの股ぐらに触れようとするが、そこでレヴィから声がかかった。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる