「では、任務の概要を説明しよう」
リビングの中、作戦会議場はソファ。
【敗者】はレヴィの隣に座ると説明を始めた。
「旧マザーシップと呼ばれている領域にはかつてオラクル船団をまとめる大量の情報が存在しており、現在のマザーシップであるシャオのデータ量と比較するとそのほとんどが引き継ぎされているようだ」
「あ、ウルクと会った時に手に入れた奴?」
二人はカジノの試遊回に行った時取材者であるウルクと出会い、インタビューを受ける過程でこっそりウルクの端末からデータを抜き取っていた。
【敗者】はその後そのデータを隅から隅まで確認して計画を立てていたようだ。
「あぁ。しかし、引き継ぎされていないデータもいくつかあり、そこにはシオンの残した重大な文書データらしきものが残されていることを確認している」
「文書データ……?」
【敗者】が言うものだからどんな高尚な研究データやアークスの弱みなのだろうと思ったら、
レヴィは彼が真面目な顔でありながらやっている事が初恋に縋る男のようで、心の中で厭世の籠ったため息をついた。
仮にも好きな相手の恋慕の未練に命を賭けられるほどレヴィは優しくなかったからだ。
「マザーシップの端末のひとつにある物でね。そこの内は僕が開けなかったのはもちろんだが、シャオやあのシオンの縁者達すらも引き継いで中を見ていないんだ。もしかしたら奴らですら見れないか、もしくは把握していない情報がそこにある。貴様に頼みたいことはそれを持ち帰る任務だ」
「持ち帰るっていっても……マザーシップの情報端末ってめちゃくちゃ大きいよね?」
「あぁ。それに、現在その情報端末は侵食汚染されていて起動出来ない状態だ。
しかしあそこを侵食したのは僕であり、僕ならそこにあるダーカー因子を吸収して起動可能状態に持っていけるだろう。だが……」
「マザーシップって、あんたにとっては今一番やばい場所だよね。ウォパルよりも監視が入ってるみたいだし、あんた本人が行くのは危険すぎる……
でも、それならわたしが行くのもやばくない?知られたくないんでしょ?」
「そうだな。僕との関与を疑われた状態で向かっては貴様の身に危険が及ぶ。しかし、現状は何も無い。何も無い今だからこそ、チャンスは今しかないと考えたんだ」
とはいえ、ギリギリ行ける程度には危険である。
「今なら噂とかもないし、要注意人物としての云々もないし、現地のアークスとかに疑われないか……確かに今しかないかも」
「貴様が休んでいる間に刀匠の工房にはレギアスが来ており、アイゼンハートの簡単な情報共有や現状確認を行ったらしい。データベースと照合してもアイゼンハートは本物であるというデータが残っていた。
そして、僕達にとってかなり有利な状態で済んでいる」
「有利って……?」
「あの刀匠はアイゼンハートに関する資料を渡さず口頭で説明し、データに関しては奴本人が解析した物のみ渡したようだ。
そして所有者の記録に関してはレヴィが刀匠に差し出した通りの偽造されたパーソナルデータであり、僕との関与が疑われないように作り替えられたものだけが伝わっている」
アイゼンハートの所有者としてジグに提示したアークスカードは、レヴィ本人の本物のアークスカードではなく、そのデータをほとんどコピーした上で改変して作られたものだ。
それを作るタイミングでレヴィは本物のアークスカードの名前を偽名であるLからレヴィへと変えており、そしてコピーされたアークスカードの方でLという偽名を利用している。
それは出自や家系図などが隠されているのは元々だが、【敗者】と会って以来の出撃記録の多くは捏造された物となっている。
今までの彼女と同じように監禁されていた期間にも出撃し、死亡記録を増やしており、ウォパルや旧マザーシップへの任務も普通のアークスのように赴いている、といった「今までと同じようなLというアークスの」データというわけだ。
あれをいくら探っても【敗者】との関与という黒いところなど出てこないだろう。
元々オペレーターも付けられておらずソロが多い彼女の出撃を証明出来るアークスは少なく、おまけに本物のデータと偽物のデータの出撃記録で一致する物もきちんと用意しているため、目撃情報でこのデータの保証が出来るようになっている。
住所も別の場所だが両方ともレヴィの所有、任務で遭遇して開いてもきちんとその時のパーソナルデータと一致する偽物のレヴィのデータが開かれる、隙の欠けらも無い完璧な偽造データだ。
つまり、レギアスは信頼出来るジグという相手からレヴィの存在の安全を保証されたことになる。
「でも、なんでジグはレギアスに資料を渡さなかったんだろう?普通なら絶対渡すよね……」
「ふむ……アークスのデータベースや映像記録にアイゼンハートの力を使った時の情報が残されていないため、誇張表現や想定に過ぎないと考えて解析された真実のみを伝えたのかもしれない。
或いは、あの資料にある歪さか何かを察知して、本当はレギアスに資料を渡したが秘匿として取り扱いその行為を敢えて記録に残さなかったか……」
「後者の場合だとこっちがハッキングしてくる前提で動いてるってことだよね?それだとかなり不味くない?」
「しかし、その確率は非常に低い。仮にそれが真実であればそもそもレギアスだけでは来ないだろう。疑いを持っているというのなら、ジグはもっと計略に優れたずる賢い奴を呼び付けるはずだ」
「たしかに……」
確か、二代目カスラはそのような奸計に優れていると書かれていた。
ジグがレヴィ達に疑いを持っていて、その資料を確認させたいのならカスラを呼びつけるはずだろう。
レヴィが強制的に休暇を入れられているそのタイミングは資料を見せる絶好のチャンスであり、それを逃せばレヴィの手で資料を破棄されたり、改変される可能性だってあるのだ。
疑ってるならそんな一番いいタイミングを逃すわけが無い。
「実行日は……五日後とかでいい?」
「五日後とは……どういうこだわりだ?」
「え、五日後休みだから」
「四日後だ」
それだけ言うと、【敗者】は横に寝転んで目を閉じた。
「むぅう……」
_______
その後、回収任務に関しては二日後に話が進行し再び二人で会議することになった。
時刻は夜中の四時。懲りずにレヴィが夜中に帰ってきた事から食事などを済ませた後軽く説教し、それが終わったタイミングで話し合いに移行する。
「闇へのいざない、ね」
旧マザーシップにアークスとして行ける任務は少ないが、そのひとつがこれだ。
闇へのいざないとは全アークス一斉参加の大規模なエネミー討伐作戦であり、旧マザーシップ内部に出現したダークファルスかそれに準ずるレベルの大きなダーカー反応と、それに影響されて現れたダーカー達を殲滅する事になっている。
なっている、というのは既に何度か同じ状況が起きている上、その正体はダークファルスの模倣体だという事が判明しているからだ。
しかし模倣体であれど影響力は大きく、討伐する必要がある故に任務に名前をつけ、出現する度にアークスに緊急任務を要請しているのだった。
「でも、いつ来るかとかわかるの?緊急任務なのに」
「この模倣体の出現には一定のサイクルがあるだろう?そこから予測すればいつ何時に出現出来るかも分かるんだ。
そういう意味合いでも貴様の休日出勤は拒否させてもらった」
「この日来ないってなら仕方ないか……」
全アークス一斉参加であることから出撃自体には違和感は無いが、レヴィは本人名義だとフォトンアレルギー故の懸念か嫌がらせか、ノーマルであれど受注不可になっているのだ。
だから今回の任務に関してはアークスとしての任務を装って別行動する関係もあり、変装する必要がありそうだ。
しかし、レヴィには大きな懸念点があった。
それは……
「でも【敗者】……わたし、武器がないよ」
アイゼンハートが壊れて以来、任務に使う武器はナイフや爆弾などダーカーとの戦いに使うにしては不相応な物ばかりだ。普通の武器を持っていても荷物にしかならないし、現在任務の幅は大きく制限されている。
それに難易度関係なく旧マザーシップにいるダーカーは強大であり、創世器なしに立ち向かえる気はしない。
「マザーシップ内部での立ち回りに関しては考えがあるが……武器については新たに用意するしかないな。しかしアイゼンハートレベルとなると難しい物が……フム」
【敗者】は少し考え込んだ後、倉庫から不思議な形をした武器のようなものを取り出した。
それはレヴィが遺跡で見た少女が持っていた武器とよく似ており、創世器のデータにはクラリッサ、と書かれていたものだ。
「これは僕の作った模造創世器だ。偽物だろうがクラリスクレイスほどの実力者でなければ持っても意味が無い。しかし物は試しと言うだろう?」
「でも、壊したら……」
「まだ予備は十分余っている。武器研究に使うだけなら他の予備でも良いんじゃないか」
「まあ、……なら、わかった……」
フォトンアレルギーが創世器を持つ、というのは元々イレギュラーな事だった。
並のアークスでは創世器など扱えば己の肉体のフォトンが吸い尽くされ、戦う間もなく気絶してしまうだろう。
しかし目の前のレヴィはサポートがありながらも創世器を使っていたのだ。
そんな彼女がクラリッサを持てば、何かが変わるかもしれない。
「む……意外と重い」
レヴィは【敗者】からクラリッサを受け取ると、不思議そうに先の形状を見て首を傾げていた。
そして彼女がアイゼンハートを起動する時と同じように力を込めると……バキバキと亀裂が入り、クラリッサは砕けてしまう。
「うわっ……やっぱダメだ」
三つどころか五つほどに砕け、ロッドの先のコアは輝きを失い、コアを覆う二重の殻は外側が粉微塵になり内側の殻だけが残っただけの完全な破損状態に成り果てていた。
「概ね予測通りか……貴様の肉体に負担がかからなかっただけいい方だ」
「でも……」
アイゼンハートを壊したのも自分のせいだ。今クラリッサを壊したのも自分だ。
【敗者】の役に立ちたいと思うほど空回りして、力が身につかないのに当然のやるべきことすら出来なくて、武器がないと馬鹿なことで自分は困り果てている。
「心配するな、そもそもあそこにいるのは僕の眷属であり……」
「ダメだ……こんなんじゃ……絶対だめ……」
レヴィは壊れたロッドの根元を握ってまた力を入れ、更に砕き、何度も力を入れては砕いてしまう。
「わたし、【敗者】の役に立ちたいのに……」
砕けていく灰色の杖の残骸にすがり、レヴィは殻ごとコアを手で包み、胸に寄せる。
「【敗者】の力になりたいのに……ッ!!」
そのまま目一杯思いを込めて力を入れた。
壊れても構わないからとにかく強く。
わたしはどれほど【敗者】によって救われてきたことか。
彼がどれほど幸せな体験をさせてくれて、どれほど心配してくれて嬉しく思ったか。
そんな【敗者】に少しでも報いたい、役に立ちたい。
【敗者】の力になりたい、彼の役に立てるのであれば、どんな報いを受けたって構わない……
「……なッ?!」
その強い抱擁と共にレヴィの体が何かの強いオーラを纏い、光を発した。
【敗者】は瞬間的にモニターを開くと、レヴィを起点に空間に強い歪みが発生し、不明なエネルギーによってダーカーによる空間侵食に近いものが起きている。
そしてそのエネルギーの上昇値はあまりにも大きく、仮にそれをダーカー因子として置換するのであれば市街地一帯を呑み込んでもおかしくないほどの質量だ。
それが空間の歪みによって急激に圧縮され、物質としての概念や構成要素を全て変化させるほどの何かに変質していた。
「うぅう、ッ、うぐううううっ!!」
レヴィの手の内にあるものは最早クラリッサではない。
そのコアは本来のクラリッサのコアである碧でも、模造クラリッサのコアである紫でもない、また別の色……レヴィの瞳にそっくりなピンク色に変化し、そこにネオンの青紫の色味が混じっていき、コアを包む殻は開くどころか鳥籠のように形を変えて閉じていく。
結果として内側からコアの光を漏らすロッドとは完全に違う形の、別の武器のようなそうでない何かとして定着していた。
「はぁはぁ……っ、はぁ、……はぁ……」
レヴィはフォトンを扱う感覚が分からず無に縋って抱きしめていただけであり、力を入れすぎて息を切らしながら離れていると……何故かまた光を放っていることに気づいた。
「え……?」
レヴィが困惑して下を向こうとしたその瞬間、【敗者】に肩を掴まれグラグラとゆらされた。
「レヴィ!今のはなんだ!……どうやった!レヴィ!!自覚はあるか?!説明できるか?!」
「えっ?う、うっ!ちょっとやめて、吐きそ、吐きそう、だからっ」
「吐け!」
「吐瀉物の方だよ?!」
その叫びに【敗者】は一旦手を離すが、興奮しきった様子でレヴィが持っているよく分からない何かを凝視しており、流れるようにレヴィからそれを取るとじっくりと眺めた。
「ほう……」
「はぁはぁ……これ、また使えるようになった?いや、というか……わたし、これ使える?」
「内側から強いフォトンは感じない。しかしこれは何か……コアに生物のような回路が構築されている」
「生物……?」
「このコアには現在人の脳のような高度な演算能力があり、外殻と合わせれば魂を閉じ込め内部で生命活動を行わせることも可能なほど繊細で優れた構造になっている。そして、今この内側には何かが満ちている……」
【敗者】はソレから目を逸らし、レヴィをじっと見つめた。
「な、なに……よくわかんないから聞かれても困るんだけど」
「先程の貴様の肉体から発せられたエネルギーを照合すると、フォトンやダーカー因子ではない別の物だった。他の反応や数値の表れ方から比較すると一番似ているエネルギーは僕が目星を付けていたものになる。しかし、レヴィの力はそのエネルギーとも一致しないようだ」
「え?……えっと……つまり?」
「理屈は不明だが、使える何かにはなったということだ」
「ほんとっ?!でもどうやって使うのこれ?」
「まず、このクラリッサに元々搭載していた機能が使えるかどうかの検証をしてみようじゃないか」
【敗者】はレヴィにクラリッサだった何かを持っていることを命令し、ゆっくりと深呼吸をすると声を出した。
「レヴィ、……レヴィ」
「……うわっ?!」
その瞬間、レヴィは異様な体験をした。
【敗者】が発している声が耳から聞こえるのに、同時に脳からも響くように聞こえるのだ。
「どうなっている?」
「きっ、気持ち悪いから話さないで!なんか声が二重に、別の場所から聞こえるの!だからめちゃくちゃ気持ち悪い!」
「ふむ、それは機能しているということか……」
【敗者】は素の声で話し、レヴィを落ち着かせる。
「なにこの機能……」
「クラリッサを通じて行うテレパシーのようなものだ。本物のクラリッサもシオンの声を聞く事が出来ており、この模造クラリッサも僕の声を伝えて命令を出すことが出来るようになっている」
「へぇー……武器の方と現実のあんたの声が重なってたから凄いことになってたわけね。で、ラグもほとんどないと……それで?これの使い方ってなんなの……?」
「ホールに向かおう。眷属を用意し検証する」
直ぐに【敗者】はレヴィの腕を引っ張り、彼女をホールへと連れていく。
相変わらず強引な手だがもう慣れた。
これでも一応、【敗者】には極大の庇護欲があるのだ。
「それは元々ロッドだったものだが……貴様、テクニックの使い方はわかるのか?」
「え……テクニックの使い方って……テクニックを使うってことだよね?」
「知らないことはわかった」
フォトンを使うアークスやフォトナーにはテクニックを使う感覚が分かるのは当然のことである。
普通の人間は生まれてからずっとフォトンとの親和性があり、フォトンに触れて育ち、小さな頃からその大気中や己の中にあるフォトンの雰囲気を感じ取って、そして研修学校に入るとテクニックディスクやフォトンアーツのディスクを使って具体的にフォトンを扱えるようにするのだ。
しかしレヴィはわからない。
彼女は己の体質がフォトンを拒んでおり、彼女の内側にあるものは溶け込みすぎて自分では認識することも出来ていなかった。
「これを他者が扱えるかという検証も必要だと考えていたんだ。それも兼ねてまずは僕が使ってみようじゃないか」
【敗者】がそう言うと、目の前に小さな眷属が一体現れ、【敗者】の前に佇む。
【敗者】はクラリッサだったものをレヴィから奪って手に持つと、それを介してダーカー因子をエネルギーとして束ね、眷属に向けてテクニックを打ってみる。
並のアークスだと耐えられないであろう量のエネルギーが吸い込まれた後、相当の法撃力を伴ってテクニックが発動した。
中身は普通のロッドなのだろうか?
「お、……【敗者】は少なくとも上手くいくんだ」
レヴィはクラリッサだったものを【敗者】の手から奪い返し、グググーとイメージを膨らませ放出させてみようとする。
しかしそれはテクニックの構築では全くないし、ディスクによって習得もしていない為そもそもまともに使えない。
「何のテクニックを発動させようとしている?」
「とりあえずメギド……」
「きちんと技術としてどうやって構築されているか把握しているか?そうでない場合は、テクニックディスクを使って高度なテクニックを習得したか?」
「いや、どっちも……」
「なら使えなくて当然だ」
【敗者】はクラリッサだったものを奪おうとしたがレヴィはそれを握ったまま【敗者】から離れていき、なんとかテクニックを発動させようとあれやこれやと考え込む。
他のアークスが発動するテクニックなどいくらでも見てきたはずだし、当たった事だってあるのに、その感覚を何故自分は分からないのだろう……
レヴィはクラリッサだったもののコアにエネルギーが集中している事に気づくと、そのままそれを纏めて、粘土みたいに練って、エネルギーを変化させてみた。
「おっ!これはいけそう!」
するとコアと同じ色のエネルギーがレイピアのような形で固着しており、思い切り振ると攻撃力を伴ってダーカーにダメージを与える。
「【敗者】!これどう?!」
「……不安定だな」
そう言われてレヴィが首を傾げていると、己が持っていたレイピアがあっという間に消えて無くなっていることに気づく。
どうやらアイゼンハートのようにイメージで武器を出せるらしいが一撃程度しか持たないようだ。
「テクニックは打てないけどこれなら戦えない訳じゃないよねー……あっでも、これ使って人前で戦うのはちょっとヤバいかな?」
「そもそも……先程話そうとした事だが、あそこにいるダーカーのほとんどは僕の因子を持った眷属だ。僕が命令すれば眷属は貴様を攻撃することもなく、自ら霧散して倒されたフリをさせることも出来る」
「あ……そうだったの?」
「僕の範囲に及ばないダーカーも出現するようだが、それに関しても眷属を使って誘導し他のアークスにヘイトを向けるといった行為も可能だ。だから貴様が無理をして創世器を扱う必要など無かったのだが……これは思わぬ収穫だったな」
しかし、発現された武器もそうだしこのクラリッサもどきもかなり不安定なものだ。
物体として安定しておらずコアは絶えず明滅しており、殻は動き続け武器として継続的に扱うのは不可能そうだ。
「使い捨ての物、か。まあいい……当日までに全てのデータは取らせてもらおうじゃないか。貴様が武器を考える手間をひとつ減らせるかもしれないし、ブラックローズの銃弾に関する問題の解決に繋がるかもしれない」
「現状ブラックローズの銃弾は装填式ってことにしてるけど……」
「このコアの部分の構造を石突きの奥に入れ、そこから銃弾を創造し、攻撃が命中した時点までそれを定着させていれば十分だろう」
「むむ……でもコアの構造の再現ってことはクラリッサのコアの部分の再現ってことで……」
「しかし、貴様がメインとして扱う武器に妥協やデメリットを抱えたいと思うか?本気で向き合う程のやる気があるのなら、思いついた案は適宜取り込んで試行するのが正しい解だ」
「たしかに……難しいけどやってみる!」
素材の選定にすら迷ってる段階だというのにどうするんだとレヴィは少し迷っていたが、多分大丈夫だ。
「それに、骨に関しては教えて貰ったから多分早いよ。ふふっ」
さすがにジグでも分からないところは【敗者】に聞くしかない。
彼はレヴィの考える力を養いたいため拒否しても良かったが、そうするにはあまりにも時間が不足していたため渋々教えることになった。
ただ、そのおかげで全ての休暇を吹き飛ばすような進捗にはならずに済んだのだ。
「じゃあ、戦闘とあんたとの連絡を繋ぐためにコイツを持っていって……、……」
「どうした?」
レヴィは突然止まると、クラリッサだったものを見つめてから閃きを口にした。
「クランシーとかどう?」
「使い捨ての物に名前を付けても意味は無いと思うが……まあ、覚えておこうじゃないか」
「うん!」
二人はナチュラルに指を絡めて手を繋ぎ、リビングまでゆっくりと足を進めていく……
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
-
続編として作品を分ける
-
分けないで一つの作品でまとめる