「もう随分寒いなあ」
――ルビィはショップエリアを歩きながら、周りを見渡していた。
昨日まで夏のつもりだったのに、いつの間にかもう秋だ。アークスになってからのこの数ヶ月はあまりにも変化が多すぎて、時間感覚がおかしくなってしまったらしい。
アークスとして今日も任務に行こう、と一人で意気込んでいた所で、アナウンスが入る。
全アークス一斉参加の任務だ。
場所は旧マザーシップ。
となると、闇へのいざないだろうか。
ルビィは最高難易度で来る度に参加しているため、比較的他のアークスよりは慣れている方だ。
マトイと共に旧マザーシップに行って最奥へと突き進んだのもあって、内部構造の記憶も十分ある。
今は行方不明でありオラクルの重要指名手配犯であるダークファルス【敗者】の根城であることも含め、ルビィは意識的に参加していた。
【敗者】を見つけたとて、普通のアークスならばダークファルスに太刀打ちなど出来ない。
相対して力を発揮し、確実に討伐するとなると、ルビィの出番になる訳なのだ。
「まあ、いつもの通りスーパーハードで行くかあー」
ルビィはロビーエリアまでの道中、いつもの通りパティエンティアやゼノ、エコーのような知り合いと軽い挨拶のような会話をする。
シャオが申請を出してはいるが、まだマトイは正規のアークスにはなっていない。
戦闘服なども注文しているらしく、早く二人で出撃したい、アフィンとも一緒にクエストに行きたい……などと一人で色々考え込みながらロビーに入ると、クエストカウンターの前で不審な挙動をする背の低い青少年がいた。
その少年は恐る恐るカウンターに近づいたかと思えば、端末を眺め、頭をブンブンと振って逃げ出し、やっぱり振り返ってまたじっとカウンターを見つめている。
「どうした?」
「ひゃっ?!すっすみません!邪魔でしたよね今どきます!」
少年は直ぐにカウンターから離れ、ビクビクと震えていたが、ルビィは迷わず彼の方に近づいていった。
「いや、邪魔じゃないよ。君の事が気になって声を掛けたんだ」
面立ちを見ても16歳くらいの見た目で、銀色の髪に褐色の肌、憂いを帯びたトパーズ色の瞳をしてウォンドを担いだ、不安げな表情の少年だ。
「ぼっ、……ぼく、ですか?」
「あぁ。何か困ってそうな様子を見てたらいてもたっても居られなくなっちゃったんだ!ふふふっ!」
ルビィの澄んだ青い瞳と美しい金色の髪、そして完璧な体型と顔立ちは芸術品のようで、少年はぼんやりとルビィのことを眺めていた。
どこかで見たことがあるような……
「あっ、……あっ、もしや、る、ルビィさんですか?!」
「あぁ。そうだが……」
少年は酷く驚いた様子を見せた後、直ぐに何度も何度も硬いお辞儀をし、それからキラキラと眩しい眼差しでルビィを見上げる。
「ルビィさんが……ぼくなんかにっ、恐縮です!光栄です!」
臆病だがとてもいい子そうだ。
ルビィは目の前の少年をそう判断し、姿勢を低くして少年と目を合わせるとにっこりと笑う。
「ふふっ、じゃあ話を聞かせてくれる気になったか?」
「えっとぉ……その……は、はい。とても恥ずかしい事なのですが……」
あまりの美貌とカリスマオーラに撃ち抜かれて倒れそうになるも、その少年はなんとか振り切り、随分迷って吃りながら恐る恐る話し始めた。
その少年はムルヒャと言う。
ルビィの少し前にアークスに入隊し、活動を始めたのだが、臆病な性格のせいでずっとノーマル区域でのみ活動しており、最近ようやく難易度制限解放試練を受けてハードを受注出来るようになった。
しかし、ハードになっても行くのが怖く何度もやめてしまい、今日こそは今日こそはと繰り返した結果今に至ると。
「殲滅任務……ハードで受けようかな、と思ったんです。でもやっぱりダーカーが多くて、怖くて、でも他の惑星の任務でもダーカーがいることには変わりないし、アークスはダーカーを殲滅するのが役目だから……」
「どんな人の中にも恐怖や怯えがあるのは当然だ。しかし、ダーカーに相対した時動けなくなってしまうようでは自分の命を無意味に投げ出すだけだ。無理せず少しずつ慣らしたり、他の人とパーティを組んだ方がいいんじゃないか?」
「はい……分かってます、でも、ぼく鈍臭くて……パーティを組むと他の人に遅れてしまって、テクターだから支援しないといけないのに……ぼく、もうアークスやめた方がいいのでしょうか……」
ムルヒャは三世代目のアークスだが、彼はテクターに拘っているようだ。ウォンドが使いやすい武器だと判断したからなのか、支援したいという気持ちがそれを作ったのか……
「……でも、ムルヒャはアークスに入隊したんだよな。凄く怖い事だって分かっていただろう?どうしてだ?」
「それは……、誰かを守れる人になりたかったんです」
その言葉にルビィは反応し、目を細めた。
その言葉に籠った感情や、彼の本質を見定めるようにまっすぐ凝視する。
「家族とか、友達とか……そういう感じか?」
「もちろんです。でも、ぼくの知らない人でも、ぼくより強い人でも、ぼくがアークスに適性があって、この力で誰かを守れるっていうのなら、ぼくは守りたいんです!
他の力のない誰かのために、助けを必要としてる人のためになりたくて、ぼくはアークスに入隊したんです!でも臆病で、泣き虫で、鈍臭いぼくには……」
ムルヒャは手を合わせながらぐっと握りしめ、俯いた。
「そうか……」
ルビィは深く頷いたあと、手を差し出しムルヒャの手を優しく包み込んだ。
「あっ……」
「ムルヒャは皆を守りたくて、勇気を出してアークスになったんだな。その勇気は本当に臆病な人が出せるものじゃない」
「ルビィさん……」
「実際戦場に立って、怖くて辛い思いをする事だって沢山ある。知らないことや、知らない敵に会って怪我をすることだって当たり前だ。
でも、そうだと分かっていても、ムルヒャは人を守りたいって気持ちの方が上回ったからアークスになったんだろう?」
「はい、……そう、です」
今のルビィからすると想像も出来ないが、一応彼女にだってそういう恐れを抱いていた時期はある。
人の残虐さやエネミーの無慈悲さ、ダーカーと対峙した時の恐ろしさはどんな人にもあるものだ。
但し、その気持ちを乗り越えるほどの何かがあるからこそ今のアークスたちは気高くあれるのだ。
リサは殺すのを楽しんでいた節があったが、彼女は少数派であり、みんながみんな殺すのを楽しみ、心を無に出来るほどアークスは残酷ではないとルビィは信じている。
ルビィにとってのアークスは助けたがりの優しい人たちだ。
「だったら、その気持ちを無駄にしちゃダメだ。アークスをやめるなんて考えるよりも、時間を掛けてもいいから向き合って、自分の足で少しずつ勇気を出す事が必要だと思うぞ。それはいつかちゃんと、絶対に誰かを守れる覚悟になるんだから」
「……!!」
ムルヒャが顔を上げると、ルビィはにっこりと柔らかく微笑んでいた。
「ムルヒャのようないい子なら、絶対に強くて優しいアークスになれる。だから、私はその手伝いをしてあげたい」
「手伝い……?」
「ムルヒャが勇気を出して一歩を踏み出せるように、私が君の歩く道を整えてあげたいんだ。そうすれば、後は君に歩く勇気があるかどうかになる」
ピコン、と音が鳴るとムルヒャの目の前にウィンドウが現れる。
ルビィからのパーティ招待だ。
「……あっ、る、……ルビィさん?!」
「私とパーティを組んでくれないか、ムルヒャ。一緒に任務へ行こう」
「本当にいいんですか……?!ルビィさんならもっと高難易度で、もっとパーティを組める人だって居るというのに……」
「私は私のやりたいことをする。今は一人だし、やりたいのは任務をすること。強いダーカーを倒すことでも、戦いを楽しむことでもない。だから私の望みはムルヒャと一緒に任務に行くことなんだ」
ルビィがそう言って微笑むと、ムルヒャは少し考えてから招待を受けるボタンを押した。
今までの自分では信じられないほどの待遇に動揺しながらも、ムルヒャはなんとか意識を保ってルビィに頭を下げる。
「ルビィさん……、……っ、ありがとうございます!本当に……本当に……」
そしてルビィはムルヒャにリーダーを譲渡し、時間をチラリと見る。
もう3分だ。任務は始まっている。
「行こうムルヒャ。君がリーダーだから、君が受注しないとな」
「分かりましたっ!……ハード、……難易度、ハード……」
二人はクエストカウンターに向かうと、緊急任務を受注した……
――レヴィの自室。
耳を劈くような数回目のアラームでレヴィは憂鬱そうに起き上がり、布団を掴んだ。
「チッ……」
洗面所に向かい軽い準備だけ済ませると、追われるように栄養剤のサプリメントを水で飲み干して着替えをすませる。
そこに扉が開き、【敗者】が入ってきた。
しかしレヴィは【敗者】を見ることも無く、彼も無言のまま凝視していた。
「任務の事なら忘れてない」
偽装されたニューマンの耳を付け、大人びた面立ちでレヴィはクランシーを腰に携帯し、床を見ながら【敗者】の横を通り過ぎていく。
44番艦のロビーまでの道、レヴィは早足で、そして苛立った様子で足を進めていた。
彼らは――
_______
昨日の出来事。
レヴィはいつものようにジグの工房へ行き、作業をしていたのだが途中で己の効率が異様に低い事を自覚した。
そこで試しにと熱を測ってみると、微々たるものだが熱があるのだ。
人工臓器のバイタルデータを確認すると不調のサインが出ている。
(明日は任務だから……仕方ない、今日はさすがに早く帰って寝よう)
レヴィはジグに事情を話し、早退した。
「体調を鑑みて行動が出来る人間だったのか」とジグが感動していたのは、多分何か勘違いをしているのだろう。
そんなことを思いながら自宅に着くと……
何故か帰宅した瞬間【敗者】に抱きしめられた。
「レヴィ……」
「な、なに?」
【敗者】は何故か酔ったような甘えた声で頬を擦り寄せて来ていたため、匂いを嗅いでみるが全く酒の匂いはしない。
しかし目の色がいつもより紅くないのだ。
なんとなく少し青の混じったようなピンク色になっている気がする、とレヴィは感じた。
「……」
「何、って聞いてんだけど……」
「レヴィィ……」
【敗者】は全体重を掛けてレヴィを倒そうとし、慌てて彼女は支えて【敗者】をベッドに誘導する。
「へ、平気?」
「ン……レヴィ、……可愛い」
「えっ?」
【敗者】はベッドに来たかと思えばレヴィを引きずり込み、己の内側に抱え込んで強く抱き締めた。
「可愛い……レヴィ、お前が可愛くて可愛くて仕方がない……♡」
「ちょっと、【敗者】……ッ、あんたなんか変だよ……」
外に出る前だとこうではなかった。いつものように挨拶して、【敗者】はクランシーの解析をすると言って執務室に消えていき、仕事のモードに入っていたのに、帰ったらなぜこんなことに。
「僕はお前が居なくて寂しいんだ……」
「っしょーもないうわ言ばっかり……なんか薬でも飲んだ?酒は?」
「レヴィィ……、僕は、……僕はレヴィが大好きだ……」
【敗者】はレヴィの言葉には返事をせず、彼女を抱きしめてキスをしまくり、離したかと思えば今度は蕩けた声から一転して元気になった。
「そうだ、レヴィ。早く帰ってきてくれたのか?どうしてだ?レヴィが帰ってきてくれたというだけで本当に嬉しいというのに、想定以上で……こんなにも早く……あぁ……これは正に計算を凌駕する幸福だ!」
「その、風邪……引いて……」
レヴィは困惑しながらも自身の体調不良を何とか訴えるが、【敗者】はレヴィの声を聞いただけで嬉しくなってしまい言葉の内容を無視してまた抱きしめて頬擦りした。
「あぁああッ!!レヴィ……お前は本当に良く出来た子じゃないか……ッ!!」
「わたしの話聞いてよっ!ゴホッゴホッ……」
「僕でもよく分からないんだ……こんな気持ちになったことなど無かった。おかしくなったのは、レヴィと出会ってからだ」
「体調悪いからっ!もう寝たい!」
しかしその言葉もスルーされ、レヴィは【敗者】に尻を撫でられながら顔を顰めていた。
「これはまさにお前との運命……束縛のような何かすら感じるんだ。だろう?我が愛しのレヴィ♡」
「愛しとかいうなら尻撫でないで茶のひとつでも取ってくれば?」
「そうか?アフタヌーンティーでもしたいのか?ならすぐに手配を……」
ようやく意思疎通が取れたかと思えばアフタヌーンティー。
【敗者】の意思は恐らくいちゃつきたくてたまらず、病気で寝なければいけないというシチュエーションは彼にとって不都合なのだろう。
本当に酔っているとしか思えない。それか何かの中毒だ。
「ホットミルクだけでいいよ」
「全く……ミルクだけとは子供みたいで可愛いな♡まるで子供じゃないか♡」
「同じこと何回も言わなくていいしわたしは大人だから」
【敗者】は酔ったままレヴィの額にキスをすると、そのまま去っていく。
彼は異様過ぎて突っ込みきれない。
レヴィは【敗者】が帰ってくる前に急いで寝間着に着替え、ベッドに入り込むとホットミルク片手に【敗者】が帰ってきた。
「ほら、飲ませてあげよう。口移しで……」
「薬飲むから貸して」
レヴィは【敗者】から半ば強引に奪い取り、風邪薬片手に急いで飲み込むと彼を放ってそのまま寝ようとする。
しかし、当然のように【敗者】が後ろから入り込んできた。
「レヴィ……♡」
「酒とか飲んだり、薬飲んだりした?」
「バイアグラの類なら飲んでいないが……僕には必要ないだろう?」
【敗者】はそう言いながら足を絡ませ腰を押し付けてくるが、レヴィは直ぐにもぞもぞと抵抗する。
「いや精力剤じゃなくて。例えばリゼルギン酸ジエチルアミドとか……」
「その類の薬も意味が無いだろう?例えこの器が反応したとて、己の本能がそれを食い荒らすだけだ」
「じゃあなんでそんなにおかしいワケ?」
「可笑しい?僕は正常だが……」
「あっそう。わたしは生憎正常じゃないの。風邪引いてる」
「ならば……」
そう言って【敗者】がレヴィの服に手をかけようとすると、ぶわりと頭に血が昇り彼女は飛び出すようにベッドから離れた。
「本当にそんなつもりないから!明日任務なの分かってる?!」
「任務?任務……僕とレヴィが結婚する……?」
【敗者】はとぼけた様子でそう言うと、レヴィは彼のネクタイを引っ張り引き寄せる。
「〜〜ッ、いい加減にして!!」
レヴィは思い切り手を開くとそのまま【敗者】の頬を全力でビンタした。
バチン、と大きな破裂音と共に、【敗者】の体が揺らぐ。
「えっ、……効いてる……?」
レヴィはビンタごときで【敗者】の軸がぶれたことに困惑していたものの、【敗者】は打たれた頬を抑え俯いた。
「……」
パーソナルデータ更新。
状態異常:グラン中毒――解除。
ダーカー因子侵食度数急上昇……
「貴様……何のつもりだ」
「何のつもりはこっちの方なんだけど?わたしはあと何回同じ事をあんたに言わなきゃいけない訳?あんたと比べたら蟻の方がよっぽど聞き分けがいいよ」
レヴィはいつも以上にキツイ言葉で煽ると、今の瞬間湯沸かし器よりも酷い沸点の【敗者】脳には言葉以上にしっかりと響き、彼は憤慨してレヴィに叫ぶ。
「貴様は僕を虫けら以下だと言うか……?たかがアークスの……捨て駒の分際で……ッ!!」
「そもそもわたしは武器が作りたいのっ!!あんたがワガママ言って開けもしないデータが欲しいとかピーピー喚くからわたしが自分の時間を割いてまで取りに行ってあげるっていうのが分からないワケ?!」
「貴様は僕の駒だッ!貴様の存在価値は僕の命令をこなし僕の利益になることッ!僕の命令に従うのは当然の事だろうがァッ!!」
「そーですよ毎日毎日あんたの言い分聞いてあんたの望んだ事やってるの!だからどうでもいいような絡み合いなんかしてないでやるべき事をさせろって言ってんでしょうが!!」
「そもそも貴様はなぜここにいる?!武器制作を何よりも優先すると言っておきながらこんな場所に居るとはどういうつもりだッ!!」
「だから風邪だって何回も言ってんでしょうがッ!!」
その言葉にようやく【敗者】は彼女と向き合った。
彼女の顔は赤超えて最早青くなっていた。
罵声が飛び交く地獄絵図の後、レヴィは叫び声を上げると酷く咳き込む。
「ゴホッゴホッ……、はぁはぁ……そんなに人の話聞く気がないなら……、わたしと関わらないで……」
レヴィの顔色と歩き出すだけでも倒れ込みそうな程ふらついている様子に【敗者】は手を伸ばしそうになる。
「レッ……」
「触るなッ!」
が、レヴィは露骨に振り退け音を立ててドアを閉めた。彼女は端末で人工臓器の調整を行いながら個人の部屋に入り、シングルベッドで夜を明かす。
「……」
――という訳で、二人は仲直りしないまま任務当日を迎えレヴィは無言で外に出たのだった。
とてつもなく低レベルな喧嘩である。
こんな重要な任務に響くような事をする意味などないのだが、そういう時ほどこのような事態は発生してしまうのだ。
「はぁ……」
ロビーに向かうと一桁番台の過密シップへと移動し、予兆が発生するのをじっと待つ。
人が少ないところで受注して悪目立ちしたくなかったのでという策だ。
レヴィは頭の中で今回の任務を整理する。
目標は【敗者】と協力して旧マザーシップ中枢部付近にある侵食された情報端末からデータを奪う事。
開けない為中身は分からないが、シオンが残した何かの文書データらしい。
しかし旧マザーシップは【敗者】の失踪もあり通常時では絶対立ち入り禁止かつ監視の目が多くある。
なので、レヴィが緊急任務である「闇へのいざない」のクエストを受注することで旧マザーシップに侵入し、作戦を実行する。
全アークス一斉参加の任務は普段受ける任務のような一つのパーティごとに一人のオペレーターという形ではなく、十二人につき一人のオペレーターという形になるため変装状態にあってもレヴィ個人にオペレーターが付くことは無い。
レヴィがいつもいるノーマルで行くと変装していても挙動でバレてしまうかもしれないという懸念から、今回はハードで行くことにしている。
そして、現状発生している問題に関しては現地で対処する事になっている。
それは、闇へのいざないにおいてオペレーターの目を掻い潜りルートを外れるのは難しいという事だ。
そのクエストは旧マザーシップの複雑な構造に反してマップがテレパイプを使用する一本線であるからだ。
逆走したり別のルートに逸れてしまえば直ぐに見つかるし、それで任務の範囲外に行けば問題になるだろう。
しかし、レヴィは抜け道を考えた。
別に逆走してもルートを逸れてもいい。
"本来のルートより早くボスの元まで辿り着けるなら"、アークス側が提示したマップを歩む必要は無いんじゃないか。
(ようは、変なことして無駄な結果になるから文句言われるんでしょ?変な事してもっといい結果になったと言うのなら、文句は無い)
アークスのマップから外れてはいけない、や探索範囲外に行ってはいけないというルールはあるが、最短でボスを倒してはいけないなどという決まりは無いはずだ。
ダーカーも、原生種も、そしてヒトも、親玉を失えば勢いを失う事には皆変わりない。
その進行ルート上において妨害が発生するから対処する必要があるだけで、一番強い奴を一番最初に倒し後から続く者達へ道を開ければ、別に構わないだろう……
というのが、レヴィの考えである。
そしてこの考えを実行するにあたって、レヴィには最高のジョーカーがついている。
「……!」
――アークスロビーの天井が赤く覆われると共に、アナウンスが響きわたる。
『現在、全アークス一斉参加の大規模なエネミー討伐作戦を準備中。
対象は、侵食された旧マザーシップです』
(きた……)
レヴィは腰に携帯したクランシーを起動させ、声を掛ける。
「予定通り緊急任務が発生した。これから準備に入る」
『あぁ。パーソナルデータの偽造も良し、クラスも変更済み、武器も準備済み、それから……僕の用意した服も着ているようだ』
「……ふん」
クランシーもレヴィが今着ている服も、昨日【敗者】が持っていたものだ。
喧嘩をした時取り返したつもりなど無かったのだが、レヴィが寝たあとに部屋に置いたらしくお陰で部屋の中だけで準備を済ませることが出来た。お節介というやつだろう。
この服は背中の空いた真っ黒なゴスロリ服だが防御に優れているらしく、背中もなんだかんだマントで隠れているため露出は少ない。
何より体内のダーカー因子排出を助ける効果もあるらしく、アタッチメントが完成すればダーカー因子が体内に入り込む事もほとんどブロック出来ることになる……ようは、対ダーカー専用防具という事らしい。
『僕がいるとはいえ、相手はダーカーだ。絶対に油断するな』
「はいはい……」
クランシーを閉じぼんやりと待つと、時間がやってくる。
レヴィは時間と同時に受注しようとしたが、モチベーションの高いお局気取りのアークスに自治されるのも不愉快だと思ったので少しだけ遅れて受けることにした。
少し時間を遅れさせるとパーティがバラバラでソロも混じるからか、キャンプシップはパーティ関係なく六人ずつで乗るようだ。
基本的にキャンプシップはパーティー単位で乗る故に許容は四人だが、全アークス一斉参加の任務ともなれば話は別。
「む……、いや、違うか」
レヴィは癖のように荷台に行こうとしたが、変装している身で荷台に乗っていると違和感があるだろうと思い普通のアークスと同じようにキャンプシップの搭乗口に向かう。
変装していないレヴィ本人であればキャンプシップで座席やブリーフィングルームなんかにいたら発進する前に追い出されるからだ。
当然荷台に居てもあれやこれやと言われている。
しかし今は変装して難易度を上げて受注しているからかレヴィは嫌な目を向けられることなく、他のアークスと並んでキャンプシップに乗ることが出来た。
「アイツは……」
なお、ここで問題が発生する。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる