ショップエリアに着き、人目がないことを確認したかと思えばジグが爆発したように声を上げた。
レヴィは慣れたようにポケットの中で端末を操作し、僅かに聞こえるキーボードの音を頼りに何かの操作をしている。
「なんじゃあの対応は……!それにエクストリームパスを配布していないなんて話は本当か?!」
「いや?持ってるけど」
レヴィはもう片方の手で端末を取り出し、アイテムパックにあるエクストリームパスを見せつけるとジグは覗き込んで首を引いた。
「だったら意図的にクエストへ行かせないためか……?何のために……?!」
「あのさ、そんな怒んなくていいよ。こういう対応はいつもの事だから。あんたがいるから有人カウンターに行ったんだけど、いつもは端末使ってクエスト受けてるし……」
(さて……製品番号で端末を特定、ネットワーク回線への介入を確認しウイルスを送信、強制起動。
それから全権限を手に入れ全データを暗号化、自サーバーにコピー後不要ファイルで全上書き、コマンドプロンプトを停止、MBRを置換、BIOSを破壊しパーティションを削除、それから強制再起動……全処理を確認、あとは貰ったデータを後でブラックマーケットに流して終わり)
レヴィはジグの怒りもよそに淡々と先程の女の端末を再起不可能な程に破壊し、処理の終了を確認すると画面を切り替えて真っ黒な画面をジグに見せた。
黒い画面に赤い文字、"DARKMANA SYSTEM"と書かれたそれはまさにレヴィが自作したプログラム言語の一つである"mana-x"で作られたハッキングに最も適したツールである。
先程のウイルス送信起動もこのツールで行われ、そのツールの一つとして端末でのクエスト受注機能があるのだ。
「端末を使ってクエストを受けられるのか?いつの間に?」
レヴィが旗のマークが描かれたボタンを押すと、端に見たことも無い特徴的な曲線の文字のような記号のような物が流れていき、くるくると読み込みしたかと思えばクエストカウンターで見たものとは少し違った見た目をしたクエスト受注画面が開いた。
これはクエストカウンター係員用端末で表示されている画面に、管制で管理しているキャンプシップの運行情報やクエストの受注人数、惑星の探索状況などを追加で表示することが出来るように端にハンバーガーメニューが載ったいわば管理画面に近いものだ。
「あ、いや非公式アプリで……まあ、でもよく考えてみなよ。あの対応されて受けられないならこれ使うしかなくない?」
クエストの受注で行われる処理はキャンプシップのチャーターや設備の貸出、オペレーターの配属など広範囲に渡り、アークスの管制中枢にまで影響を及ぼすため個人でとても手を出してはいけない代物で、レヴィが軽く非公式のアプリと言ったそれは紛れもないクラッキングツールである。
しかし、先程の応対を見たばかりのジグの価値観は歪んでおり頭の中で自然に"そういう事をしても仕方ない"と考えてしまう。
「……それもそうじゃな。お主がアークスとして活動するためには必要な物だし、あれは明らかに不当な差別じゃ」
ジグの結果は彼女を肯定するものであり、ブラックマーケットでの物品の調達や今回のハッキングツールと黒いところを繋げていけば彼女がどれだけ猫被りで醜悪な本性を隠した悪女かなどうっすらとでも分かる話なのだが、それぞれ別の物として受け取ったジグはそのレヴィの「悪事」を「生きるための行動」として受け取ってしまった。
目の前で友人のような相手が穀潰しだのゴミクズだのと罵声を浴びせられている姿を見ていい気分になる人間はそう居ないだろう。
「不当ねぇ……本当に不当ならそれをおかしいって言うやつはもっといると思うんだけどなぁ。ルオン以外にそんなこと言ったやつ居たっけ?」
「しかし正当な訳ないじゃろう?」
「わたしにとってはね。アークスにとっては正当だよ」
「そんなわけが……ううむ……しかし……」
ジグはアークスがレヴィのような障害者であり被差別階級である人間でも適切な支援をして人間として正当な扱いを行っているはずだと信じていた。
しかし現実はこうなのだ。
レヴィが自分の名前を明かし、フォトンアレルギーだということを話した時に何故あれほど怯え、そして諦めていたような顔になっていたのかその理由がよく分かった。
「受けたよ、……クエスト。あの係員に見られると止められそうだし、ブロック変えてもいい?」
「もちろんじゃ」
レヴィは端末で慣れたように操作をして偽造したエクストリームパスの準備を完了しておくと、ジグを連れて歩き始める。
「……わたしが極悪人に見える?」
「アークスの規則からしてみれば……良いとは言いきれないな。しかし、生きていくための戦いならば、差別や規則に反し自らの正義を主張する事も必要だとわしは思うのじゃ。実際、今のアークスたちはそれをやって正義を勝ち取り、見えない権力の支配から開放されたんじゃ。
だからその行いは善ではないが、お主にとっての正義ではある」
「……」
レヴィはジグの言葉選びの丁寧さに少し顔を顰めた。
嘘をついているような相手にここまで必死になれる彼の心理が全く理解出来なかった。
心の底から信頼しているのかと言われたら、こんな所を見せられた時点で殆ど信頼などないに等しいだろう。
それでも何がジグを掻き立てて、レヴィを庇おうとしているのか、レヴィにとって思ったより想定外の返事に困惑した。
「心配しないで」
迷った末、レヴィの出した返事は全く別のものだった。
「わたしが短い生涯にどれだけ足掻こうが、アークスを根っからひっくり返して革命を起こす英雄になんてなれないよ。同時に、こんなちっちゃな悪いことをしたって極悪人にもなれない。わたしはせいぜい些細な悪事を働いて、他のアークスが最初から用意されているスタートラインに立つだけ。目的はそれだけだよ」
完全な嘘を淡々とジグに並べ、レヴィは彼が返事をする前にさらに言葉を被せる。
「それにね、アークスのセキュリティウォールは超強固で穴もないカンペキな造りになってるの。フォトナー時代から試行錯誤して作られた言語やセキュリティシステムはハッキングの類を大幅に減少させ、現在のオラクルではマルウェアやウイルスの概念が過去の物になっているのはもちろんのことハッカーなんて存在も滅多に存在しない。アークスシップ50個あってその中でひとり居たらいい方くらいだよ?こんなものを使おうがアークスの脆弱性を露呈させるには至らないワケ。ただ仕様の穴を着いているだけで、これを使おうが悪意のある行動は出来やしない」
そんなことを言いながらもレヴィはクラッキングを行うし、【敗者】もレヴィの使用しているプログラム言語を理解してレヴィの支援の為に利用を始めている。
彼女のそばに居る存在がダークファルス【敗者】である時点で、極悪人にならないという言葉など全くの嘘でしかないのだ。
レヴィはジグに目を向けた後、なるべく冷静に声を出す。
「アークスにとってあの対応は当然の物であり、あんたが行動を起こそうが覆るものじゃ到底ない。もちろん、それは三英雄や六芒均衡がやろうが同じこと。彼らはわたしの存在や差別を完全に黙認している。アークス共の働きかけで変わる訳が無い。変わるとすれば……」
「すれば?」
「……ルオンは他の人よりちょっとだけトクベツだよ」
レヴィは揺らいだと思っている信頼を取り戻すべく、ジグに優しく声をかけた。
仮に失敗したとしても、自分の存在にどれほど疑いを持たれようが、【敗者】だけはジグの中でただ有能で優しくて可哀想な理由で隠居している人であるべきなのだ。
「ルオンはね、フォトンがなくても生きててもいいって教えてくれたの。
アークスからの扱いは間違っていて、わたしが生きるためにしていることは正しくて、わたしに怒ったりする時だってフォトンがないから、なんて言わない。彼は本当に心の底から凄く優しい人なの」
「うむ、それはお主への対応でよく分かる」
「……最初はね、早く自分の目標を達成して死んじゃいたいって思ってた。生きてるの、楽しくなかった。ずっとそう思ってた」
レヴィは周りから聞こえるひそひそとした声を耳に入れて顔を僅かに歪めた。
ひゅ、と鋭い音が聞こえてもレヴィはそちらを見ることも無く、素直に投げられた石を受け入れた。
「ッ!」
「何も言わなくていいよ。慣れてるから」
頬から血が垂れても、レヴィは特に気にすることも無くジグの方をじっと見ていた。
「こうやってずっと積み重なってたら、毎日ずっとつまらないって思ってて、……でもね、ルオンと出会ってから変わったの。ルオンはわたしが知らなかった沢山の当たり前の事とか、楽しいこと、面白いこと、嬉しいこと、ドキドキすること……いっぱいわたしに教えてくれた。だからね、わたしはルオンがもしどんなに悪い人になってもいいって思ったの」
レヴィの顔は薄ら赤らんでいて、【敗者】のことを思い出して甘く目を細めるとジグの手を優しく包んでキャンプシップの方へ向かう。
「もしこれが全部嘘でも、ルオンのためでしかなくても、わたしはそれでいいの。
世界のため、宇宙のため、アークスの為と真実を謳っている人達にされる事がこんな事なら、わたしはわたしに優しくしてくれる人のそばに居たい。幸せになりたい。自分の為に生きていたい。
それは悪いことじゃないってルオンが許してくれた自分が人間なんだって主張して、自分には生きる権利があるって信じることは当然のことなんだってルオンがわたしに言ってくれた」
「……」
再誕の日に自分を取り戻したのはレギアスや三代目クラリスクレイスだけじゃない。
レヴィもまた、"アークスから"奪われた自分を、【敗者】の手によって取り戻したのだ。
ジグは彼女の言葉を一つ一つしっかり聞いて頷いた。
「だから、ルオンはわたしにとってのトクベツ。どんなに悪いことしても許せるって思える人。
ルオンがわたしの全部を許してくれたから」
レヴィはそう言って締めるとキャンプシップの中へ入っていき、キャンプシップは仮想空間が設置されているフィールドまで動き始める。
「あんたはアークスだから、わたしの肩を持つ必要はないよ。でもね、わたしはルオンの事を心の底から愛してる。あんたとは敵になりたくないけど、あんたがルオンを敵にするっていうのなら、あんたと戦う覚悟は出来てる。最初から。誰と会う時もずっとそう」
ジグはレヴィの言葉に強い圧のような、殺意のようなものを覚えた。
そして思った。レヴィにこんなことを言わせるルオンは一体何なのだろうと。
今のアークスからして、虚空機関の元職員やそれに関係する研究員への風当たりが強いことは知っている。ありもしないことを噂として流され、虚空機関に関係していたという事だけで避けられている。
しかし、レヴィの語るルオンの存在はそれよりもっと大きなものに感じた。
「……ルオンは一体何なんじゃ?」
ジグの言葉に、レヴィは顔色を変えなかった。
「ルオンは……わたしと同じだよ」
レヴィは自分の胸に手を置き、ジグに目を合わせて、声を出す。
「わたしと同じ、この世界で生きることを許されてない人」
キャンプシップから出てVR仮想空間が現れると、レヴィは先程の事は忘れろと言わんばかりにアイゼンハートをくるくると回しながらご機嫌に歩く。
「じゃ、アイゼンハートの戦闘を見せないとね〜」
「……うむ」
「ちょっと移動にも設備が必要だから、待っててくれる?」
レヴィはフィールドへ移動するためのテレパイプをちらりと見てから、ポケットをまさぐる。
「……?」
「移動手段がないといけないから。あといちいちフィールド移動するのもめんどいくさいしちょっと設定もいじらないと」
レヴィはポケットから何かの器具のような物を取り出すと、地面に置いた後に出入口の柵のギリギリまで近付く。
「んー……、えーいっ!」
そしてそれに相対する形の器具を思い切り掴み、投げた。
緩い軌道を描きその器具はクエストフィールド上に落ちるとレヴィは笑顔になり、地面に置かれた器具のボタンを押す。
すると空中に器具から分離した円盤のような物が浮かび上がり、フィールドに置かれた器具と糸のように繋がって掴んで移動するための取っ手が出現する。
「おお、簡易移動装置か」
「そうそう、懐かしいでしょ?」
これは50年前くらいに現役として使われていた移動装置であり、惑星アムドゥスキアの浮遊大陸のような徒歩移動が困難だったり高低差の激しい場所の移動に使われていた移動装置だ。設置移動が面倒で制限もある為新たな移動装置が作られるとすぐに廃れていったが、フォトンに依存していない移動方法のためレヴィでも使用出来る。
「じゃあクエストの方も準備しなきゃね!」
といいつつ、レヴィは表示されたクエストの課題メニューを確認するとすぐに閉じ、端末を使ってカタカタと打ち込む。
クエストのプログラムをハッキングしフリーモードへ変更させた。
「何して欲しい?」
「何、とは……」
「ほら、誰倒したいかとか。これ倒した方が見やすいとかあるの?」
「ふむ……とりあえず、小型と大型の出力差は見たいかのう。装甲が多いエネミーは弱点部分との数値差が激しくなってデータ整理が面倒だから避けて貰うとして……ダーカーでも原生種でも、お主が慣れている物を10体ずつ程度で倒して貰いたい……というのは可能かのう?」
「超余裕!」
レヴィはジグに笑ってピースするとアイゼンハートを手にし、そのまま移動装置を使ってフィールドへ降りていく。
ジグはモニターで様子を確認しようとすると、レヴィがアイゼンハートを取り出して形を決めていた。
ブラックローズの練習をしているからか、選んだ形は似たような大きさと形の片手剣だ。
「行くよ」
レヴィは片手で操作を行うと、惑星ナベリウスの小型原生種であるウーダンやナヴラッピー、イエーデなどが現れる。それぞれジグが指定した通りの10体ずつだ。
レヴィはエネミー相手の戦闘はあまり得意では無いため、ジグが何を求めているだとかいう配慮は特にせずまっすぐ向き合って一体ずつ相手をする。
一体ずつ斬りかかり、刃をめり込ませ肉を裂くとエネミーが消滅していく。
「あ、ごめん。100くらいないとなんかつまんなくて寝そう」
「ん?」
レヴィはアイゼンハートを拳銃に変え打ちながら片手で端末を操作する。
レヴィの肉体に大きな変化は無いが銃を撃つ瞬間に空間のフォトン係数が減少している。
慣れた的打ちのように目を背けたまま銃を使い、端末を弄りながら悠々と歩き出す。
周囲からの攻撃は当然のように降り掛かってくるが当たる瞬間にすぐに避け、アイゼンハートの転換能力を使って刃を作り貫くとレヴィは操作が終わったのか端末を仕舞う。
「全く……」
レヴィは再び片手剣へ戻し、エネミーの攻撃を避け続けながら次々に倒していき、指を曲げたり動かしたりすることで止まることなく増援のエネミーを増やしていく。
戦闘訓練をしていても全く成長している気がしない、とレヴィが言っていたのは相手が【敗者】だからであって、このような弱い相手なら成長を直ぐに理解出来る。
対多数の雨のような攻撃を避けて急所に向けて攻撃する訓練は最初からずっとしつこく行っていた。
ジグから見るそれは非常に奇妙なものだった。
彼女はフォトンが無いから一度の被弾は命取りにもなる。
それは分かっているが、まるでエネミーの方から攻撃を避けているのではと思うほど正確に回避し続けて攻撃を加えていた。
中型のエネミーが現れてもそれは変わらず、機を伺うように回避を行い、隙を見つけて急所を突くというやり方だ。
そのせいかレヴィのエネルギーA(仮称)がなにか反応している様子は一切なく、ログを確認してもアイゼンハートの起動状態のエネルギーを何かで賄っている様子はない。
(どういう事じゃ?想定と違う……創世器は持つだけでも装者からのフォトンを必要とするはずじゃ。その分のエネルギーを担っていないとなると一体どうやってアイゼンハートを動かしている?)
レヴィは最初は作業のように倒していたものの強いエネミーを召喚したことで段々楽しくなってきたのか、踊るようにステップを踏みアイゼンハートをダブルセイバーに変化させ片手でステッキのようにグルグルと回し攻撃を防いでいた。
中型エネミーも蹴散らしたところでレヴィはようやくボスを出現させる。彼女の言う100とは、ボスを100体倒すという訳だが、果たしてどのようにそれを成すのだろうか。
目の前に惑星ナベリウスを象徴するボスエネミーが複数出現するとレヴィは動きを止める。
するとレヴィの周囲には複雑に糸が張り巡らされ、ボスエネミーは拘束されたかと思えばレヴィが懐から取りだした爆弾によって倒される。
その瞬間、アイゼンハートの出力が一気に上昇し次に現れたエネミーに対してレヴィはようやく本気の転換能力を使うようで、彼女の周囲には半球型の大きなドームのようなものが現れた。
「そうかッ!」
レヴィは武器を鎌や銃、ソードなどに次々と変形させていきながら急所を狙って確実な一撃を加え、ドームの内側に魔法陣のような物を出し、一点一点にフォトン弾を投下する。
全てが出鱈目ではなく確実に相手を狙った攻撃であり、補助装置や天才的なオペレーション、高度な戦略プログラムなどのオプションを積んでるとしか考えられない。
しかし、レヴィには戦略OSも搭載していなければオペレーターも着いていない完全ソロアークス。
転換の指定もアイゼンハートが自動でしている訳ではなくレヴィが指定している。
「倒したエネミーの残留素子からエネルギーを供給しているのか……!」
自分やエネミーの位置マッピングで思考し、戦術で思考し、武器変化で思考し、転換で思考し、転換により発生させた攻撃フィールド内で思考し、回避を思考する。
戦闘時において補助装置に頼らずここまで同時並行処理を行いエネミーを倒せる思考回路こそがアイゼンハートをフォトン無くして扱える技術なのだ。
そして、さらに戦闘が激化するとようやく転換ログにエネルギーAの数値が現れる。
「……!」
レヴィの外見に一切変化はないが、彼女はイキイキとしていて自分の世界に入り込み酔いしれるように舞っていた。
ジグは空間や彼女のデータを開き色々と見比べてみるが、空間のフォトン係数が著しく下降したと思えば突然上昇しという激しい波の動きを繰り返し、レヴィのパーソナルデータには変化が無いように見えて"何か"の数字が膨れていた。
ジグはその数字をよく見ていると、彼女のパーソナルデータに一つ見えないものがある事に気付く。
「む……?」
タイトルも文字化けしたよく見えない物であり、試しに開いてみようとするとパスワードが掛かっていて開かない。
「……レヴィ!」
「ん〜?どーしたのぉ?」
レヴィは間延びしたような上機嫌な喋り方で振り向き、ジグに向けて声をかけながら背後でボスに攻撃していた。
「パーソナルデータで、見えない物があるんじゃ。開いて貰えるかのう?」
「んー?見えないものって家系図とか?……いや、肉体の数値だよなぁ……?ちょっと待ってね」
レヴィは片手で忙しなく攻撃フィールドの操作を行いながら、もう片方の手では端末で己のパーソナルデータを眺めていた。
「グラン類似エネルギー……?あーうん、よくわかんないからいいよ」
レヴィはそのウィンドウをジグに共有したあと、戦闘を再開する。
【敗者】が用意して観察していたデータの為ジグに渡していいものでは到底ないのだが、【敗者】はそういう情報共有をレヴィには行っていなかった。
【敗者】は自分の詳細な研究内容を人に全て言うことにはまだ恐れがあったからだ。
いくらレヴィが絶対的な味方とはいえ、よくわからない思考回路をしたよく分からない変人に研究内容や過去、作戦の全てを委ねてもいいと思えるほどの信頼は流石にない。
「なんかそろそろ100体終わりそうなんだけどどうしようかなぁ……」
ジグはグラン類似エネルギーの数値を確認する。
現在はほとんど一定の数値を保っているが、つい先程まではかなり上昇した数値を出していた。
エネルギーという共通した名前がついているところもあり、数値の出方もあり、エネルギーAとやらがグラン類似エネルギーであることは確実だ。
その数値をレヴィも認知していないということは、大方これの数値を把握していた存在は"あっち"だろう、なんてジグは考えながら見守った。
しかし、どちらにせよレヴィの言っていた菌に該当する素粒子には値しないようだ。
「仮にこのグラン類似エネルギーが彼女にとってのフォトンだったとして……」
「ねぇ、終わったよ。なんか分かった?」
ジグが考え込んでいるところにレヴィから声が掛かり思考が引き戻される。
レヴィは退屈そうにアイゼンハートを杖にしてクルクルと回していたが、体がふらりと揺らいだかと思えばそのままゆっくりと座り込んでいた。
「レヴィ?」
「あぁ、……暇すぎて座っちゃっただけ。で、どうなの?」
「そうじゃな……転換機構の制作に影響するような物の発見は出来なかった。エネルギーAについては、多分ルオンに聞いた方が詳しいじゃろう」
「ふぅーん、……やっぱり菌の開発しかないか……」
レヴィは目を閉じてゆっくりと考え込む。
菌だとか武器だとか、思考の濁流の中でぼんやりと責任だの価値だの退屈な言葉が浮かんでくる。
(こんなこと考えてるからまともに思いつかないんじゃないの……?)
レヴィが静かに瞑想している中、ジグはデータを整理して退場を促そうとしたが、背後から特有の足音が聞こえて思わず振り向く。
「おっ……、お主は……」
「……ジグ。こんな所に居るとは……」
三英雄の一人であり六芒均衡の一、かつてアークスの頂点と謳われたキャスト……レギアスがそこに立っていた。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる