レヴィがリリーパに到着し、チームルームに入るとそこにはディナン一人だけが残っていた。
確か前はディナンの親友の男が一人でいた気がした。
アイツからは不愉快な目に遭わされた……とレヴィは過去の記憶を思い出して苛立っていると、ディナンから静かに声が掛かる。
「妹。今日はどうしたのかな」
「……襲撃された」
「襲撃?」
「被差別階級だから……、ガン付けられて、……ボロボロって訳、はぁ…」
レヴィは服にまだ残る血液を見せてため息をついた。
実際は返り血なのだが、一応レヴィはあちこちに痣があって見てくれはだいぶ痛々しい。
しかし、ディナンはそんなことを考慮する男ではない。
「だから、任務をこなさず帰ったと?」
「……帰らなきゃ……死んでた、から」
「チッ……」
ディナンはあからさまに顔を歪め、舌打ちをすると近くにあった酒瓶をレヴィの顔に向かって投げつける。深い茶色の瓶が割れ、中に残っていた酒がぶちまけられると共に割れた瓶の破片がレヴィの頭にぶつかり、額から血が垂れた。
「この出来損ないが……っ! この一日で総長と大きく差がつくんだよ! 今頃総長は既に端末を破棄して……ックソ! ふざけるな忌み子が! お前のせいで研究内容が……ッ!!」
「……虚空機関の極秘データベースは?」
「抜けたんだよ俺は! 虚空機関をっ!!」
「……は?」
レヴィはディナンの言葉に目を見開き、肌に刺さった瓶の破片を抜くとぐっと握りしめた。
手の中で粉微塵になった破片があちこちに手のひらに突き刺さり、離すと出血と共に落ちていく。
「研究員じゃないお前は知らないだろうがなァ! 虚空機関に所属してる奴は全員総長からの監視が入ってんだよ! 俺がクローンの人格制作を進めるためにはッ!! 端末も何もかも監視のない所でやらなきゃいけない……だから虚空機関から抜けたんだ! それは最初から決まってた事なんだよ!」
「ま、待って……だったら、わたしとの、契約は……」
「はぁああッ?! 誰が恒久的に権利を与えるなんて言ったんだ!! お前のような愚図が少しでも虚空機関のデータを見られただけ土下座して感謝する所だろうが!! ……オイッ!!」
レヴィが困惑しながらディナンをよく見る。ディナンのテーブルの上にはファンシーな形の錠剤が転がっており、プルタブが空いたビールの缶が乗せてあった。
いや、ディナンだけではない……
他のチームメンバーの席にも、同じ錠剤が入ったシートが……
レヴィはあれを知っている。あれのことを裏任務で散々見ている。あれは……
「ッ……」
「土下座しろよこのクソ豚……早くッ!!」
レヴィはディナンに肩を掴まれ、押し倒される。ナイフを構え、すぐにでもディナンの首に押し付けようとしたが、ナイフに反射した人形の姿を見てレヴィが一瞬躊躇った瞬間ナイフを奪われた。
(ふざけんなっ、……わたしが、あんな人形のせいで、こんな……っ!)
「テメェみたいなゴミを雇ってやってるだけ感謝しろよッ……俺らが! 俺らしかいないって分かるだろ?! 周りはテメェのこと誰も研究員として認めない……だから土下座して感謝すべきだろう!! ほら、……早く謝れッ……このクズ奴隷が!!」
「ゔッ!!」
レヴィは髪を引っ張られ、無理やり地面に押し付けられる。
ディナンはそれだけで満足したのか、ケラケラと笑ってレヴィから離れるとレヴィの端末を投げ飛ばし彼女の頭にぶつけた。
「次失敗したら分かってんだろうなッ?!」
「誰がッ、……メリットもないのに、こんな場所……!」
「あぁそうかァ、……なら、アレは二度と見られなくなるな?」
ディナンは人形の方に視線を向ける。
レヴィも釣られてあの人形を見つめた。
(あれのせいだ、あれのせいでわたしはこんなクソみたいなチームなんかに居座らされて、こんな目にあって、ふざけんな、人形なんかどうでもいい、抜けてやる、こんなクソみたいなチーム抜けて、ディナンを滅多刺しにして……!!)
「――」
「わたしは、〜〜わたしはッ!!」
その瞬間、レヴィの頭の中に巡ったビジョンに彼女は口が止まった。
あの人形と話が出来たら、目が開いたら、そんな風に考えて、甘く話しかけていた時のことを思い出した。
「わたしは〜〜ッ……!!」
レヴィは起き上がるとディナンを思い切りぶん殴る。
ディナンの体は壁に吹き飛び、クレーターを作るが、直ぐに自己修復システムによって壊れた壁は直されていく。
「はぁっ……はぁっ……」
その一撃でディナンは気絶したらしく、茶髪の癖毛が壁に垂れながら項垂れると、レヴィは人形の方に向けてよたよたと歩き出した。
「っ、わたしは、……わたし、は……うぅぅぅ……」
レヴィは人形の入った実験ポッドにしがみつき、彼を見上げた瞬間目が緩む。
「うぅぅッ、………うぅぅゔっ……なんで、なんでわたしばっかり、……わたしばっかり……!」
こんなことを言ってもなんの意味もない。
そのために人を殺して、オラクルを弄んでいるというのに、レヴィは弱いまま命もない偶像に縋り付くだけだ。
「うゔぅっ、ふッ、ゔぅ゛、ゔぅ゛……ひぐっ、……ゔぅ……たすけて……」
レヴィは声を押し殺し、ただ泣き喚いていた……
そんな時、一瞬視線を感じレヴィは顔を上げる。
ディナンじゃない。明らかに前方から、……ポッドの中の人形からの視線だったはず。
しかし、レヴィがどれだけ声をかけて、どれほど叩いてもうんともすんとも言わず、目を開けることもなかった。
(気の所為……?)
「っ、ひぐっ、ゔっ、……、はぁ、はぁっ、……、はぁ、……っ」
都合のいい幻覚か、単なるデジャブだろう。
レヴィはそう処理して、人形の横に寄り添い目を閉じる。
今の心の拠り所は、この人形だけだ……
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる