「ルビィ……お主が知っているかどうかは分からないが、アークスはあの日以来市民層からの不信感が高まっている。それを解消するために日夜パレードを行い、意見を募り、改善すると謳っているのじゃ。そしてその不信感をもっとも今集めているのは、研究者層にある」
ルビィはジグをじっと眺めた。"それくらい"は知っているのか。それとも、"全て"を知った上で、そう言っているのか……彼女は慎重にジグの言葉に耳を傾ける。
「虚空機関の悪事や凄惨な行いがオラクルに晒された。それを知って腐敗しきったアークスはより良い形に変わろうとしている。しかし、変わろうとしているのはアークスだけだと思うか?」
「……オラクル全体が変わろうとしている」
「何も普遍的な善だけが変わろうとしている訳じゃあない。変化は誰しもに与えられる機会であり、悪と言われる虚空機関の研究員だって……変わろうとしておる」
「しかし、変わったからといって行いが全て無かったことになる訳じゃない。今でも傷付いて、苦しんでいる人はいる。多くの人を傷付けて罪を抱えた人間が、心を入れ替えたからと言ってすみませんの一言もなしに許されるとでも思っているのか?自分の罪を自覚しているというのなら、償いが必要だ」
「それはそうじゃが……お主もレヴィも、止めなければ殺し合いそうな様子じゃった。話も聞かずに殺す事は、その償いとやらに値するのか?」
「……だからこそ、私は自分の目で確かめに来た」
ルビィには分かっている。いくらシオンの仇といえど、クーナやサラ、三代目クラリスクレイス、レギアスにカスラなど多くの人を苦しめた諸悪の根源といえど、相手は人と同等かそれ以上の知能を持つ意思疎通が可能な存在であることを。
相手がそうであるのなら、理性を持って会話をして、相手の意図を探らなければいけない。
「でも、……私には彼奴が人のようには思えない」
「人……」
ジグはそれを聞いて見たのは【敗者】ではなくレヴィだった。
【敗者】もクールぶっておきながらかなり感情的でレヴィに対しては特にそう見えるが、レヴィはそんなレベルではない。桁違いに人らしい。
それなのに彼女は人として扱われない、当然の権利も得られない、生きていることを許されもしない。
冷血なサディストでも感情がない訳でもないのに、何故フォトンがないというだけで人ではないと決めつけるのか。
「人であることを決めるのは、誰なんじゃ?」
「……?」
「あの子はあんなにも感情的で、たくさんのことを考えて、知って、努力して、夢を叶えようと頑張っておる。幸せになろうとしておる。そんな子を人ではないと言うのなら、一体その相手にとって人とは何なのじゃ?」
「……」
「フォトンのありかが人である証でいうのなら、あの子はダーカーと同じとでも言いたいのか」
彼らにとっての祝福とは、アークスにとっての"呪い"だ。
しかし、それが迫害に繋がるというのなら、一体誰が彼らを守って、彼らの命を保証して、ただ幸せに生きていたいという気持ちを守ろうとしているあの二人を生かすのだろう。
ジグは、そう考えてしまった。
二人は醜悪な本性を隠し、善良な人間を装っている。
その本性の外側に見える迫害や差別のヴェールで、ジグは彼らがそう見えてしまった。
「……」
「もしレヴィが呪われていてアークスに害をなす存在であり、ルオンが大罪人であったとしよう」
ジグは二人の姿を見てゆっくりと深呼吸した。
「お主は、きっと討ち取る方を選ぶじゃろう。それがアークスの為であり、皆のためである……きっと、レギアスやマリアも同じ選択をするはずじゃ」
「……あぁ」
「生憎じゃがわしは……それ程眩しくて、綺麗で、大きな正義は持てないんじゃ。
わしはただ武器を作るのが好きで、沢山の設計図や素材、あの鉄臭い空気の中でひたすら己と向き合うのが好きな……ただの武器職人じゃ」
三英雄、六芒均衡、アークス新生の要……ジグの周りに居るのは偉大な人間ばかりだが、ジグ本人は自分のことを"ただ武器が好きなだけの職人"でしかないと考えていた。
創世器の修繕やそのレベルの武器を作る事が出来るというのはオラクル唯一にも近いほどの大きな才能だが、それでもジグだけでこの世を変えられるとは到底思っていない。
武器は扱う人がいてこそのものであり、扱う物がどれほど高潔な考えを持っていようが、その武器を作る職人も同じ思想を持っているとは限らないのである。
そうでもなければスランプなど起こしていない。その間に沢山の人を守れるような力を持つ武器を作る時間も金もあったのに作らなかったし、意欲が無いと沢山の人を無碍にした。
だからジグはあれほどまでにアークスのためを思って全てを賭けられるレギアスを羨ましくも思っていたのだ。
「だからわしは……友人の方を、選んでしまうのかもしれないのう」
ジグの心はアークスではなく武器にある。
それが綺麗で気高いことに使われればいいと思うのは当然だが、だからといってアークスの為に自分の無気力を無理やり押さえ込んでまで武器を打てるほど自己犠牲精神が高い訳でもない。
ルビィはその精神を悪いとは思わなかったが、しかし【敗者】の顔を見るとどうしても顔を顰めるだけだった。
「もし相手がダーカーだったら、どうする?」
「あんなに話が通じて人を溺愛するダーカーが居るのか?」
「……だったら、仮に、仮にだが……」
ルビィからしてもそうは思わない。
しかし、ルビィは今まで他のダークファルスにも出会った事があり、彼らはそれぞれ別の考えを持って、そして同様に歪んでいた。
今までの【敗者】の様子から考えると今の【敗者】が嘘をついていると推測する方がずっと自然な事だが、嘘をついているにしてはあまりにも下手で、レヴィはあんなにも幸せそうで、彼女が【敗者】を微塵も疑わず嘘も誠もまとめて受け入れると言わんばかりの様子なのがルビィから見て異様なのだ。
「奴が、虚空機関の……今までの腐敗したアークスを作り出した根源だったらどうするんだ」
「……」
それは嫌に具体的で、ルビィからすれば答えそのものであり、ジグから見ても彼女は核心に近いかそれそのものを指していると考えた。
ジグはそれをそのまま受け取って、虚空機関に関する色々な記憶思い返してみる。
暴露された人体実験の記録。あれは凄惨な物だった。間違いなく人の行いにしては残酷すぎる物だった。
そして創世器を持つ六芒均衡達が虚空機関によって苦しみ悩む様子も見てきた。
彼らもあの日を境にその苦しみから解放されて楽になったり、逆に討ち損ねたことによって今も抱え込んだりしている。
じゃあ、それを作り出した諸悪の根源が悪いのか良いのかという判断は、もちろんジグにだってすぐわかる事だ。レヴィと違ってジグはそれを見誤るほど馬鹿じゃない。
「そうじゃなあ。わしは……悪くないとは言えないな。ダーカーであろうが、諸悪の根源であろうが、悪いものは悪い。駄目なものは駄目。罪は罪じゃ。苦しんだ人も、一日も早く安らかな日々を得て、幸せに暮らして欲しいのう」
悪いものは悪い。その言葉は当然の事である。
しかし、ジグはレヴィと【敗者】に目を向けると何だか胸が痛くなった。
二人を見つめる度に、頭の中にずっと声に近い何かの波を感じる。
正しく声として紡がれてはいない。音というにも相応しくない。ただ、何であるかは分かる波が、ずっとずっとジグの方に絶えず流れ込んでくる。
愛おしい、楽しい、幸せ、大好きだ……なんてそんな幸福に満ちたような感情が、レヴィからジグに伝えられている。
言葉を聞かずとも、顔を見ずとも、彼女の気持ちが分かる。そして彼女の気持ちがわかると何故か、【敗者】がどれほど彼女を大切に思っていて、彼女に優しく接しているのか、どれほど魅力的でいい人で、同じくらい可哀想で悲しい人なのか、レヴィが思っているような事がそのままジグにも流れ込むような気がしていた。
「じゃが、……ううむ。何故か分からないんじゃが、わしはこうも考える。社会が悪いと言ったら、全ての人間がその相手を悪だとして断罪しなければならないのか、と」
「ジグ、お前何を考えて……」
その思考は正しく【敗者】が悩んでいる"レヴィにそう思わされている"という現象と同じようなものだった。いつの間にかどんどん釣られていって、何かで自分を引き戻さないとそれが間違いだと気付けないのだ。
間違いだと気付いても、なぜか許していいと思ってしまうし、許すとさらにエスカレートしていく。
根源的な欲望や赦しを揺さぶるような超常現象にも近い洗脳にジグは揺さぶられていた。
そして、ルビィはそれに違和感を感じつつもレヴィの方を見ると何故かそれが同じく正しいような気がしてきた。
「ルビィは何故この世に刑務所があって、決まった罰が存在すると思う?」
ルビィはジグの言葉に目を閉じて、ゆっくりと自分の内側に意識を集中させる。
フォトンの気をなぞると不思議と揺らいだ思考が引き戻され、ルビィは正しいことを淡々と呟けるようになった。
「それは、罪あるものを裁くためだ。罪の量を測り、それに見合った罰を受けないといけない」
「じゃあ、見合ってない罰とはなんじゃ?軽すぎるものか?それとも、重すぎるものか?この世にそういうものがあるのは、"正しく"罰を与えるためであり、その相手が罰を受けているというのなら、誰もその代わりをする必要は無いと思うんじゃ」
ジグはレヴィをじっと見つめながら、ルビィに問いかけるように優しくゆっくりと言葉を紡いだ。
「過去は消えないというが……じゃあ、過去が消えないからと言って、罪を犯したら幸せになる権利は恒久的に奪われるものなのか?
ルビィ。仮にこの政策が後から見て失敗に終わったとしたら、お主は英雄ではなく大罪人として裁かれるかもしれない。そうしたらお主は、アークスの為に戦ったその高潔な意思も優しさも、全ての人の前で罪になって、二度と幸せを得られなくなるのか?」
ジグの優しげな言葉にルビィは胸が一瞬苦しくなるが、直ぐにそれを払って声を出した。
「私はそうなったっていい!それで私の大切な人達が守れるのなら……」
ルビィは自分がなんと言われようが皆がこれ以上苦しむ様子は見たくなかったし、いま皆が自分で考えて真っ直ぐ新しい道に進もうとしているのならその失敗の責任を全て自分が負っても構わなかった。
ルビィはその覚悟があったからシオンの言葉を聞いて、シャオの元に付いて、あの時の時間遡行を選択して、ルーサーに刃向かって、彼を倒したのだ。
ルビィにとって自分が大罪人として裁かれる位の覚悟はとうに出来ていた。
しかし、ジグは首を横に振った。
「お主が守りたい人達はそう思わないじゃろうな。
お主がどれだけ大罪人と言われて、その時の法律で"正しい"とされる罰を受けたとしても、わしも六芒均衡もマトイも……皆、ルビィに救われた。
お主が罰を受けたとしても、受けた恩は忘れないし、縁を切りたいとは思わない。わしらは他の民衆と同じように、お主に石を投げたいとは思わないじゃろう」
「私は……」
「だから、償うべきであるというのなら否定はしないが、少なくともわしは彼らに罰を与えんよ。それは法がする事であり、わしがすることではない。わしにとって彼らは、いつだって友人じゃ。こうやってパーティに招いてくれる程よく扱ってくれているのだから……わしは自分で彼らを見放す決断をしない限りは、彼らを無理に罰する事は無い」
「……」
「自分で考えて、自分で動く。それが新しいアークス、なんじゃろう?ルビィ」
「……思想の強要、だったか。すまないな。しかし、友人だからと言って全てを甘んじて受け入れずに、よく考えてほしい。私の知る彼奴はまともな奴じゃない。どうしようもないくらいに狂った悪人だ」
ジグはそう言われて、【敗者】の方をチラリと見た。
確かに、【敗者】はいつも怪しいし、彼がまともな人間じゃないと言われても違和感はない。怪しいと思っていたことに対しての答えが来ただけだ。
しかし、隣にいる彼女を見るとどうもその考えが揺らいでいく。
ジグが見てきただけでも彼女は相当不当な目に遭っている。【敗者】はきっと、それ以上に沢山レヴィが受ける苦難を見てきたのだろう。
だから二人はアークスに敵対的であり、互いを唯一の存在とし、誰にも頼ることが出来ず、ジグにも全てを話せていない。
ジグからすれば、それを支える覚悟だけは出来ているというのに。
「わしは……わしはアークスを信じておる」
ジグから漏れた声は酷く苦しそうで、ルビィは不安げに彼を見上げていた。
「フォトンがないことが死刑と同等なんてわしは信じない……そんな法律は、作られもしないし適用されない……わしはそう思いたい。この気持ちが皆の中にあって欲しい……だがしかし……アークスは……わしの見た限りだと……アークスはレヴィを……!」
ルビィは不思議になった。これほど【敗者】に対してひたすら話題を振っているのに、ジグは何故か全てレヴィの方に話をずらして返してくるのだ。しかも、それはレヴィや【敗者】から命令されたとは思えないような様子だった。
彼は何故か自分からレヴィの苦しみやレヴィの嘆きを話すように選択して、【敗者】の悪事から離れようとしている。
ルビィからするとジグのその様子は異様なようにも思えた。
「レヴィは一体……どんな目に遭っているんだ?」
だからルビィはなぜジグが話題を逸らしてレヴィの話ばかりするのか気になり、思わず声を上げた。
そんなルビィのキョトンとした様子にジグは驚き、恐る恐る問いかける。
「……家族かもしれないって……"妹"って言うことじゃろう?」
「あぁ、……そうらしい、な」
「レヴィの事はどれくらい知っておる?」
「ええと、……フォトンアレルギーで、ノーマルしか立ち入りが出来なくて、……それから、アークスに対して敵対的で、侮辱的で、……周りは私の妹だと言っている」
「それ以外には?会って会話をしたり、どこか一緒に出掛けたりとかは……」
「会ったことは……ある。会話も、あるが……あるが、……私は今日、謝りに来た……」
ジグはルビィが思ったよりレヴィのことを全然知らないことを察し、互いに情報を軽く交換した。と言っても、レヴィがブラックローズやライデンシャフトのような創世器に値する武器を作っているということは伏せたが。
ルビィの方もレヴィと会って会話した事は一度しかないため、話せることは多くなかった。
ムルヒャと共に出撃した中で彼女と口論になり、アークスを見下すような事や同行者を嘲笑うような言葉を吐いたレヴィに対して努力を否定し無力であると言って非常に強い言葉で咎めたこと。そしてレヴィが自分をお姉ちゃんと呼んで泣いて縋ってきたのを相手にもせずそのまま見捨てたということ……。
ジグもそれを聞きながら話をした。
レヴィは最初自分の身分を偽って創世器を持ち込み、修繕ついでに武器制作に興味があった事でジグの弟子になったのだという経緯と、その過程でジグはルオンと出会い、ルオンとレヴィは最初から今まで絶えずずっと仲が良さそうなこと。
レヴィは気まぐれで癖のある性格だが、武器や戦闘に対してはとても真剣な努力家であること。
しかしレヴィは自分の正体が知られると殴られるかもしれないと言わんばかりの酷く恐怖した様子を見せており、実際アークスやオペレーターから理不尽にも思える対応をされていたことを話した。
ルビィもジグも、互いの話を聞いている間に胸には嫌なモヤが募っていった。
完全に認識がズレている。
ルビィは一般的なアークスの視点からであり、ジグはレヴィからの視点である。
レヴィ本人が話す時とは違い互いの言葉は侮辱も怒りもなく、ただ淡々と事実を確認を確認して飲み込むだけの行動だった。
だからこそ、ニュートラルに、グロテスクに、互いの言葉が耳に入ってくる。
「……は?」
「わしは自分の目で見たんじゃ。名前も知らないアークスが……彼女に石を投げているところも、クエストカウンターの係員が彼女を侮辱して、クエストを受けさせなかった所も、……戦略OSもマグも持たずに戦闘をしていた所も……」
「いや、……その……難易度制限解除訓練を受けても昇格されないっていうのは本当なのか?え?」
「戦闘の実力は見たが……スーパーハード帯のレベルのエネミーも普通に倒しておった。少なくとも絶対にレベル1でもノーマルでもないじゃろうな」
レヴィがノーマルの実力でないことはレギアスの目から見ても明らかだった。だからこそレギアスはレヴィに特例での制限解除を約束したし、ジグもまさにアイゼンハートを扱うに値する人物だと考えた。
ルビィの目から見るとそうでは無いのである。
アークスにデビューしてから時間が経ってもレベルの上がらないノーマルで、簡単なクエストにしか参加出来ず、フォトンが使えないならば当然であると考えられてしまうような肩書き。
最弱のアークスと言われても仕方の無い経歴である。
がしかし、それが決められた欺瞞のような物なのだとしたら……
「そうか……ジグが庇う理由もよく分かったよ。もしあの男が死んだらレヴィは居場所が無くなると考えているのか……」
「残念ながらわしではルオンの代わりにはなれないし、……家族であったとしても、お主がルオンの代わりになれるとは思っておらんな」
ジグはルビィがレヴィに何を言ったのかを思い返し、ううむ、と唸り声を上げた。
「無知は罪じゃないと思っておるが、お主が言ったことが本当なのだとしたら……レヴィがお主を許すとは、思えんのう。何せ元々繊細で気難しい性格の子じゃ。どんな侮辱を受けても立ち向かっていたレヴィが目の前で泣き出すほどと言うのはその……余程……」
家族の問題は難しい物だしジグからしても仲直りして欲しいに決まっている。何せルビィも大切な友人のひとりだからだ。
だがそれにしては心の溝が深すぎる。
レヴィもルビィを侮辱し、ルビィもレヴィを侮辱した。そしてレヴィがルビィをよく知っているような素振りをしたのに対し、ルビィは本当にレヴィの事を何も知らなさそうだ。
この前提のズレは確実に埋まらない溝を作り出す……
何より厄介なのが、レヴィの精神安定剤であるルオンがルビィ曰く余程の大事を犯した大悪人らしいということだ。
これはジグが首を突っ込んでいい範疇を大きく超えている。当人同士で解決出来る問題とも思えないが、ジグが介入した所でむしろ拗らせるだけかもしれない。
「ルビィもわしにとっては大切な恩人であり、友人じゃ。それだけは覚えておいて欲しい」
「ジグ……」
「お主はお人好しじゃから、色々な人に好かれる事じゃろう。友達だって多いだろうし、その中には友人同士で仲が悪かったり蟠りを抱えているかもしれない。しかし、それでも、皆ルビィの事が大好きなんじゃ。もし苦しくなったらそれを思い出して欲しい。嫌う相手と無理に仲良くする必要は無い。自分にとって居心地のいい場所で、自分を大切にしてくれる相手を守る。それだけでわしはいいと思うぞ」
「うん……ありがとう、ジグ。許しとケジメは別だよな。それを忘れていたよ」
ジグに出来ることはこれくらいだったが、ルビィはそれに助けられた。
ルビィは自分がどうにか許されようと考えている事に気づいたし、【敗者】も彼がアークスに許しを求めているように感じて、許されるわけが無いとひたすら拒絶していたのだ。
しかし許しは相手の寛容を強要する行為である。
だからルビィは今の変化して反省した気になっている【敗者】に対して怒っていたのだが、それと同じことを自分もしていることに気づいたのだ。
レヴィからすればルビィだって変化して反省した気になっているだけに過ぎないだろう。
自分がレヴィにどこまでのことをしたのか、少なくともあの日の言葉以外に今ルビィが自覚できることは一切ないが、そうであっても泣いてすがるほど傷付いているというのなら許されようと考える方が甘い話だ。
ルビィも【敗者】もそうであるように、ケジメには許しが付き物なんてことはありえない。
それぞれ絶対どれだけ謝ろうが許してくれない相手はいる。だからこそ、そんな者たちに出来ることは許しを乞う行為ではなく、自らの行いにケジメをつけることだけなのだ。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる