※この作品はR-18です。

MIDNIGHT   作:Libby博士

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34話(3)

レヴィは【敗者】に連れられて、船を出る。

既に座標は送付しており、レヴィが作ったものではあるが【敗者】が先導するように歩いていた。

ロビーエリアを抜け、ゴーストタウンほどでは無いがかなり人の少ない閑静な市街地を歩く。

 

「ここは仕事場が海洋地区とかで、寮住まいの市民が多いらしくて、家を所有してはいるけど帰ってくることはほとんどないんだって。だから新しく人が入ってくる心配もないかなって」

 

「後ろめたい事が露呈しないためなら本気を出せるようだな」

 

「へへ、もっと褒めていいよ?」

 

「全く褒めていないが」

 

「はぁ?」

 

道のりは案外短く、あっという間に球体の付いた大きな建物が目の前に現れ二人は足を止めた。

 

「さて、見せてもらおうか」

 

「ふっふん、結構頑張ったんだから、褒めてないとか言わないでちゃんと評価してね」

 

「ちゃんと評価したからこそ褒めてないんだが……」

 

【敗者】は建物の扉を開いた。

 

各市街地に設置されている、競技大会や市民向けのライブなどで使われるドーム。

場合によっては臨時の避難所や市民の集合場所に指定されることもある。

特殊なステージギミックに防音対策、天候調整もあり、広い空間は全てVR投影装置を設置するにはうってつけだ。

 

【敗者】は廊下を見渡しながら球体の内部が特徴のメインホールに入った。

一見すると、廊下もこのホールも他の市街地にあるドームと何ら変わりない。

いや、変わりないからこそいいのだ。ここが違法改造された場所だという事が簡単に分からないようになっているから。

 

「投影装置用でバトンを吊り変えてて、こっちで操作した時だけ投影装置が降りるようになってるの。仮に他のアークスが入ってきて操作しても分からないようになってるよ」

 

「バトンから……、吊り下げ式か。端末の方は理解した。内部プログラムの方はどうなっているんだ?」

 

「内部プログラムは自作。一般的なデータベース参照と、フォトンを利用した宇宙単位で客観的なデータを参照する物の二種類ある。と言っても、後者はエネルギー消費が激しいんだけどね。観測数値の都合上使うエネルギーは人工臓器の供給エネルギーを引っ張ってくるから、使いすぎは危険だよ」

 

「なら、器を変えた後はこの装置でエネルギーを利用出来ると言う事か」

 

「ふーん……」

 

自分の身だというのに他人事のような返事をして、レヴィは端末を操作した。

天井のレールに沿って棒に繋がれた幾つかの小さな映写機が表れ、空間を真っ白に染めていく。

 

「何呼び出そうかな……二種類テストしようと思うんだけど、データベースの方は適当にラッピーとかでいい?」

 

「あぁ」

 

レヴィは空中に現れたメニューを軽く操作すると、【敗者】の横にラッピーが現れた。

レヴィはそれに近付き、手を伸ばすとラッピーのもふりとした感触が手に広がる。

 

「触感や匂いもあるし、こちらの事を一般的なアークスとして認識してる。でも、データベース上のデータしかないから未知の行動をするとエラーを吐くかもね。とくに、人なんかは会話が一切出来ないし」

 

【敗者】は試しにラッピーに向けてテクニックで攻撃した。

普通のラッピーと同じように被弾して、立ち上がって虚空へ逃げていく。

エクストリームクエストで使われるVR投影装置と何ら変わりない出来栄えだ。

 

「バグ取りも済ませてるから、あんたが嫌がらせみたいなことしない限りは多分動作に支障ないよ。至って普通の投影装置で、部屋の予約とかもないし不特定多数の記録をする予定は無いから5スロットあるデータに各々セーブして管理する感じ」

 

「二つのモードで共通のセーブデータになるのか?」

 

「ううん、それぞれ別だから合計10だよ。二人で使うもんだからこれでもちょっと多いくらいでしょ」

 

レヴィは端末を操作して一度機能を停止させると、端末を操作してまた別のモードで開き直した。

 

「フィールド生成はどうなっている?」

 

「さっきのやつのフィールド生成は軽いオブジェクトくらいしか再現してないよ。といっても、これからもアップデートする予定があるから時間が出来たら更新すると思うけど」

 

「今から起動するフォトン参照の方でならフィールド生成は出来る、と言っているんだろうな?」

 

「うん。これはちょっと特別製だからね。代わりに全然作りが違うから慣れてもらわないといけないけど」

 

そう言った後、キュルキュルと地下から音が聞こえたかと思えば空間の色がみるみるうちに明るく無機質な空色になる。

 

「超新星爆発や惑星の核にあるエネルギーを抽出し分解、宇宙ゴミに扮して中継器をばら撒きエネルギー拠点まで繋ぐ……という形だっただろうか」

 

「うん、厳密に言うと宇宙ゴミというよりかは棺桶に仕込んで宙葬経由でばら撒くんだけどね。棺桶の外部に仕込んでドローン操作で目標の惑星までフォトンワープとかも出来るし」

 

そのままレヴィは自分のエネルギー技術に関する語りを始めようとしたが、【敗者】はそこを押し退けてメニューを見つめた。

 

「まあ、どちらでも構わない。シミュレーションの相手は僕に選択させてくれないか?」

 

「えー……まあ、いいよ」

 

メニューには、通常の投影装置の制御システムには存在しない文字列が多数並んでいた。

 

「これは、時間を入力する物か?」

 

「うん。それは記録装置から時間と座標に応じてその場面で発生していたことを再現する機能。あと、遺伝子情報を使って呼び出す奴とかもある。普通の方だとオブジェクトを選択して呼び出す感じだけど、こっちは具体的に数字で座標を設定して呼び出したり、あとは写真から指定するみたいな機能もある。

それと、強さレベルの設定もアークス基準じゃなくて時間になってるからその辺指定して」

 

「フォトンを通じて全知存在から呼び出すという仕組みだな。非常に一般的なフォトンの活用法だが、システムの構築部で新技術を利用しているのか」

 

【敗者】はプログラムのソースコードを見ながらブツブツとつぶやく。この投影装置にはレヴィにしてはひとつ珍しい点があった。

 

「オラクルのプログラム言語を使って書いたのは何故だ?いつもなら秘匿性とハッキング耐性からmanaを選んでいるだろう。サーバーまで新設して……」

 

「あー……manaだと情報の引き出しが上手くいかなくてさ」

 

【敗者】は何も、無意味にこの場でプログラムの解析をしてレヴィにあれこれ問いかけている訳ではなかった。

なるべく戦闘から意識を遠ざけて、【敗者】が試用で何を召喚するのかということを考えさせないようにしたかったのだ。

案の定レヴィは深く考え込み、プログラム制作にあたってどのような障壁があったか、そのためにどのようなアプローチで乗り越えたか、そのプログラムで開発した新技術に関する話を延々と語っている。

【敗者】はそれを全て聞いた上で、自身の所持している遺伝子情報をスキャンして時間をポチポチと指定していた。

7人分だから面倒だが、端末を見ながらその時の状態や武器の出力も考えてなるべく最高潮の状態で設定する。

その上で、相槌をうんうんと打ちながらゆっくりと遠ざかっていく。

 

「観測装置はハッキング済みか?」

 

「あー、ちょっと待って。確認する。プロテクトちょっと弱いかもしれないし、建物内のトランスジャマーが変に干渉するかもしれないから」

 

「あぁ」

 

【敗者】は簡単な返事の後離れて観客席に座り、端末で自宅の様子を見た。

シャーロットはマニュアル通り食品の期限管理や清掃システムの制御を出来ているようだが、明日は火事などを想定した通常の避難訓練を行うため緊急事での対応力はまだ分からない。

何より、シャーロットはロボットではなく人だ。そこに意思がある。

遺伝子分析や数々のテストから責任感が高く、与えた仕事は全うするタイプであり、生真面目な性格……奇しくもまた似たようなタイプになってしまったが、物静かでポーカーフェイスが上手なところは違うだろう。

【敗者】としては彼女の休憩時間の振る舞いも気になるところだ。

 

そんな事を考えている中、レヴィは観測装置の調整が終わったのか【敗者】に合図を出していた。

【敗者】はそれに気付くと直ぐに笑みを浮かべ、設定したエネミーをすぐにでも出せる準備を行った。

 

「レヴィ、武器を構えろ」

 

「うん!分かった!あんたも早くこっち来なよ?」

 

レヴィが武器を取り出し構えたのを確認した瞬間、【敗者】は問答無用で開始ボタンを押した。

 

「断る」

 

「え?」

 

じわじわと構成されていくオブジェクトの音を聞いてレヴィは振り向くと、七人のアークスの精鋭達がゆっくりと召喚されていた。

 

「ちょっ……ちょっと!投影装置のテストなんだよ?!わたしがあんたのために作った!!」

 

「何故僕が戦わなければならない?正常に起動しているか、バグはないか、構造上の欠陥が存在しないか……それは貴様の戦闘データだけで十分確認出来ることだ。貴様がやれ」

 

「はぁああー?!有り得ないんだけど!!」

 

「死にたいのなら好きなだけ喚くといい」

 

レヴィは直ぐに観客席から【敗者】を引きずり下ろして戦闘に参加させようと考えたが、それよりも早くエネミーの召喚が終わってしまった。

 

『アークスか……』

 

六芒均衡の一、レギアスの声が聞こえレヴィは【敗者】から目を逸らし武器を構える他なかった。

何せここに召喚されたのはアークスのトップに等しい存在。

レギアス、マリア、二代目カスラ、ゼノ、ヒューイ、三代目クラリスクレイス、そしてクーナ。

六芒均衡が零含め勢揃いだ。

 

「ありえないでしょフツー!なんで最初から七人なわけ?!最終目標じゃなかった?!」

 

「最終目標はそこにルビィとマトイも付け足しての九人だ。僕の機嫌次第ではヴォルフ、アトッサ、アルマがいた事を考えると……怒るより先に感謝した方がいいんじゃないか?」

 

「御託ばっかで飽きないワケ?全く……」

 

「その言葉、そっくりそのままお返ししよう」

 

レヴィと【敗者】の喧嘩に無理やり終わりが告げられるように、硬い武器の抜刀音が聞こえる。

 

レヴィはその言葉で盛大なため息をついてから、アイゼンハートを片手剣に変えクルクルと回しギュッと握った。

レヴィのプログラム上では相手が自分を何なのか明確に把握している。

種族、性別、年齢と言った個人情報を読み取ってデータとして反映するのではなく、高度な演算能力によっての擬似的な意思としてだ。しかし戦闘を想定した場合ではクリアもしくはリタイアになるまで戦闘を放棄することはなく、戦闘状態であるという思想の操作はされている。

 

だから、今の六芒均衡はアークスとの模擬戦という想定でレヴィを見ていることだろう。

 

「難易度は優しくした方がいいだろうか、それとも、難しくした方がいいだろうか……」

 

設定次第でいくらでも難易度は調整出来る。

【敗者】はブツブツと呟きながら、レヴィの様子を見守った。

 

「ふん、薄汚れたアークス共が……仕方なーく相手してあげるんだから」

 

そう言うとレヴィは攻撃しようとするが、それよりも早く目の前をフォトンが埋め尽くす方が先だった。

 

「……?!」

 

当たり前だ。7対1でレヴィから攻撃が成立するわけが無い。

ゼノとマリアが上から下から斬りかかり、奥からは二代目カスラと三代目クラリスクレイスからテクニックが吹き飛んできて、一拍置いてから入れ替わるようにヒューイとレギアスの攻撃が飛び込んでくる。

 

「っくそ……」

 

後ろに避けたかと思えばクーナの見えざる刃が背後から降りかかり、レヴィは慌てて避けた。

 

攻撃の余地が一切ないと察したレヴィは直ぐにアイゼンハートを剣から糸に変え、糸に捕まって滑るように一気に距離を取ると銃に切り替えて何発か撃つ。

しかし当たることはなく、六芒均衡からの猛攻撃は一切止まらない。

 

「レヴィ、アークスの基本は集団戦だ。互いが互いのクラスの弱点を補うように行動していることを忘れるな。

ハンターは近接攻撃と防御性能に優れるが、回復には限りがある。

フォースはテクニックの発動までに時間がかかり、それまで無防備な姿を晒すことになる。

レンジャーは遠距離からの強攻撃を得意とするが、膨大な敵を相手に一人で距離を取り続けることは難しい。強い生存能力と殲滅能力を発揮することが出来るのは、背を守れる者が居てこそだ」

 

「そんくらい分かってるってば!!」

 

訓練学校の座学で習うような基本的すぎるアドバイスにレヴィは煽られているように感じ、強く苛立った。

六芒均衡のシステムから見れば、レヴィが外部と連絡を取りながら戦闘をしている、という認識が出来ており、彼女が誰かに向けて喋った隙に一気に距離を詰め攻撃を仕掛ける。

 

「っくそ……!」

 

「一人での戦闘に関しては貴様もよく分かっているだろうが、攻撃も回復も防御も全て一人で行わなければならない。重要なのは戦術だ。いかにして、自分の持つハンデを少なくするかが重要になる」

 

「だったらそれを教えろって言ってんの!七人……いや、一人で九人倒せって言ってるんでしょ?!」

 

レヴィはツインマシンガンに切り替えるとなるべく避ける距離を変えながらフィールドの端を回るように避け、攻撃出来る瞬間にどこでもいいので発砲する。

一切隙が見つからない相手達ではこうするしかなかった。

銃を撃ってるだけ偉い方だが、この八方塞がりの状況でレヴィは頭の中に浮かんだ思考が正解か間違いかどうかの判断すらできない。

 

「……」

 

【敗者】はその答えを言わず、レヴィに委ねた。そうしたら彼女にできることは間違いかもしれない行動をすることしか出来ない。

 

「〜〜あぁ……っ!!もう!めんどくさい!うざいうるさい!うるさいうるさい!」

 

理路整然とした思考もなくレヴィは突然癇癪を起こしたかのように叫ぶと、銃を剣に変え逆に人の海の中に飛び込んでいった。

攻撃を全ていなして隙を突くなんてめんどくさい、となったのだ。

そんな手段が使えるのはもっと人数が少ない時だけ。

ここまで多対一で戦わされるのなら、寧ろ一人分に割けるリソースをいかに少なくできるか……どれだけ味方同士で無駄な消耗をさせられるかどうかの方が大事だ。

 

「アイツのいう事大人しく聞いてお利口さんに戦うと思ったら大間違いなんだから……!!」

 

レヴィは近接攻撃を薙ぎ払うとクラリスクレイスの持つクラリッサを狙って一気に滑り込み、彼女の手首をギュッと強く掴むと手から無理やり剥がして武器を投げ飛ばした。

そして彼女の首を掴み一気に締め上げると肉盾のように抱えたまま剣を構える。

 

(一つ目の隙。創世器頼りな奴が紛れ込んでる事)

 

まるで鈍器のように掴んだ少女をグンと振り回すと、背後に迫っていた隠密のフォトンの気配を人で薙ぎ払う。

 

(次に、アークスとしての練度に差があること。明らかに対人戦に向かない奴がいること)

 

レヴィはクラリスクレイスを盾のように抱えたままゼノの方へ向かうと彼がガンスラッシュを銃に切り替える前に先にレヴィが撃ち抜いた。

 

(最後に、この場でアイツの言ってたアークス基本の戦術とやらが成り立ってないこと。

何せ、この場には射撃を担うやつがまともに居ない。銃剣は所詮打撃のカテゴリなんだから)

 

レヴィがそれをやり遂げられるかどうかは別として、やるべき事は固まった。

射撃を担う存在が居ないということは、遠距離におけるフォースには近距離かつ打撃武器を持つ者の認識範囲外からの攻撃には対処が出来ないということ、また人のような小さな的に対して、フォースが近接攻撃を行う仲間に攻撃を当てないように的確に命中させるのは困難だ。ダーカーに向けて行う攻撃と違って、アークスに向けた攻撃は味方のアークスも被弾するのだから。

 

「問題はわたしの火力と体力と機動力が足りないことだけ。あとは何とかできる!」

 

レヴィはそう叫ぶと、クラリスクレイスを抱えたまま思い切り飛び上がる。

システムが放つリアルな声はレヴィにとっては全てノイズであり、聞く価値も無ければ返事をする価値もない。

 

分かることは、このシステムにおいてクラリスクレイスから武器を奪えば一人分は確実に倒せるということである。

倒したという判定になれば向こうに出来る隙が無くなってしまうため、ギリギリ戦闘不能にならないが反抗もできない程度の瀕死で抑えないといけない。

レヴィは空中でアイゼンハートを箱に変えその中に入ると、ブラックローズを取り出して体力ゲージを見ながらギリギリまで削り、ついでに四肢を中心に骨を折った上で防具を無理やり外す。

こうすれば万が一復活しても体力不足ですぐ倒せる。

次は背後を取ってきて煩わしいクーナか、と思ったところに、熱い気配がやって来てレヴィはアイゼンハートの変化を解除してクラリスクレイスごと急降下した。

 

「そういえば、ヒューイはクラリスクレイスに特別好感があったか。……練度が高いやつから先に相手とか、ホントめんどくさいな」

 

どの状態の時の思考パターンを反映させたのかはレヴィには分からないが、一人沈めたことで六芒均衡達は酷く怒り沸き立っている。

 

このプログラムには思考や行動の誘導があるとはいえ、おおまかな感情は本物に等しいものだろう。

システム内部ではレギアスがアイゼンハートを知る前だからこそ、意表を突くように一人倒すことが出来たのだ。これが本番ならアイゼンハートの能力は六芒均衡全員に見透かされており、敵の討伐よりもクラリスクレイスの救出を優先し、模擬戦ではなく【敗者】の駒を抹殺するという本気の殺意があり、一時撤退という概念があり、なによりこの場には忌々しいあのルビィがいるはず。

 

憤慨する声は本物であっても行動は本物には到底追いつかない。

相応の実力はあるかもしれないが、想定はあくまで演習。格下のアークス相手に本気を出すことは出来ない。

なにより、倒したとは言っても殺してはいない。擬似的な意志を持つ彼らにとって、そこには大きな差があるはずだ。

 

これは何とか出来るかもしれない、とレヴィが考えながら攻撃を行っていた時、観客席から楽しげな笑い声が聞こえてきた。

【敗者】の声だ。

システムには範囲外の声は聞こえないようになっているため、彼らはこの場に【敗者】がいることを認識できないし、レヴィが誰と話しているのかも分からない。

 

「なんだ。……それだけ出来るなら、もう少しギアを上げてもいいな」

 

「は?」

 

【敗者】からすれば、レヴィがこの場で勝利できる可能性は0%だった。今のレヴィがレギアスやマリアに勝てるわけが無い。一対一でも無理なのに多対一だったら尚更だろう。

 

しかし、勝率0%の癖にレヴィは今調子に乗っている。これならいける、と狭い視界で根拠もなく自信だけは持っている。

油断する相手が訓練の六芒均衡ならともかく、本番でやったら瞬間に敗北だ。

だったら完膚なきまでにレヴィを叩きのめし、油断するということがどれほど罪な事か、己の力を見誤る奢りが誰を殺すことになるのか、分からせるべきだと考えたのだ。

 

「あぁ、気にする事はない。これは実戦に近づける為の処置だ」

 

そう言うと、【敗者】は観客席から消えてレヴィの真後ろに立った。

その位置は、投影装置の範囲内に入る。

それ即ち、六芒均衡は本気で殺すべき敵を見定めたという事だ。

 

『ルーサー、……いや、ダークファルス……』

 

「そうだ、アークス共。アークスの使命は、ダーカーの抹殺にある。システムであっても、アークスは同じアークスより、ダーカーを優先して攻撃する。……で、レヴィ。貴様がすることは、分かっただろう?」

 

【敗者】はレヴィの肩を叩いた。

レヴィは【敗者】の手を払い、アイゼンハートを床に置いてから、ブラックローズを握り締める。

 

「このクソ野郎……」

 

「褒め言葉だ。今の僕にとってはね」

 

目の前から感じるおどろおどろしい殺意。一人欠けた恨みを更に増長させるような強い恨みが【敗者】とレヴィを突き刺す。

 

「やるべきことは、勝利への確率を0%を1%にする事。僕はそれを、少し支えてあげるだけだ」

 

「支える?冗談じゃない……!!ピーピーうるさい小鳥の子守り任されてクソめんどくさくなっただけでしょーが!!」

 

二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。

  • 続編として作品を分ける
  • 分けないで一つの作品でまとめる
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