カスラはレヴィの足首を掴んだまま、武器にフォトンを流すのと同じように彼女にフォトンを流した。
「ッぅあ?!」
その瞬間、レヴィの体がビクビクと痙攣して崩れ落ち、カスラが手を離すとレヴィはあっという間にへたり込む。
「全く……あまりのことに忘れておりました。貴方がフォトンアレルギーだということに……」
落ち着いてレヴィを退かし、カスラはゆっくりと姿勢を正し立ち上がる。
レヴィの股ぐらを見ると、先程まで唾液でしか濡れていなかったというのに、今は粘っこい愛液がぷしゃりと飛び出していた。
(この女……麻痺の痛みで濡らしたと?どちらの方がマゾなんだか……)
しかしレヴィは簡単に負ける訳にも行かず、動かない体を無理やり動かしてガクガクと足を震わせながら立とうとする。
「はぁあ……っ、チッ、ほんと、……この体質が邪魔なんだから……ひゃんっ!」
しかし、カスラの足が降ってきたかと思うとレヴィを抑え込むように彼女の頭に置かれ、そうしてレヴィはあっという間に踏みつけられた。
「貴方は私の想定を大きく超えている。それは理解出来ました。貴方を取り巻く状況も、貴方自身も、そして、疑わしい貴方の人間関係も、今の状態ではあまりに情報が不足しており、貴方はあまりにも危険すぎる」
「ちょっと!このレヴィ様に足を乗せるなんて何様のつもり?!いい?あんたみたいな雑魚にこのレヴィ様が……ひぃいんっ?!」
その足は頭から離れるとレヴィの下品でだらしない乳の上に落ち、踵で乳首を踏みつけるとレヴィは甘ったるい声を上げビクビクと痙攣する。
「あぁあん♡やめっ、ちくびよわいからぁ……ぐりぐりふまないでぇ……まっ、まぞのくせにぃい……」
馬鹿か、何を誘っているんだ、と思うほどレヴィの抵抗の言葉は男にとってはただいやらしいだけだった。
「いいようにしてやられてあげた、という考えには至りませんか?貴方の性感の高さはメディカルセンターでのデータ程度でも簡単にわかる事です。これは一種の調査ですよ」
そしてカスラはあっという間にレヴィを押し倒し、形勢逆転すると、彼女の上に跨り股間に手を伸ばす。
「〜〜ッ!」
カスラのブツは反応している。
ズボンの上から肉棒を擦りながら、カスラはレヴィという淫猥の塊を見下ろした。
はあはあと荒い息を吐き、カスラを睨みつけるが、瞳には快楽を求めようとする雌の色が滲み出ている。
「このまま犯してやった方が、……あの男を引きずり出すことが出来るだろうか……いや、あの男が駒の一人を少々汚された程度で動揺する訳もない。しかし……」
カスラの指がレヴィの股ぐらに伸びると、ガチガチに勃起したクリトリスを指でつまむ。
「ちょっ?!あんっ♡クリ、……だめぇ……」
「その媚びも教育の成果ですか?」
カスラは【敗者】と違い、快楽を完全に与えることはせず皮の上からクリトリスをすりすりと擦り、愛液を使ってまるで皮で扱くように動かす。
「は?教育?わたしは常にありとあらゆることを勉強して……っちょっと!その、皮の上から虐めるの、……ウザイ……!」
「で、処女では無いようですが……誰とされているのでしょうか?まさか、……皆がよく知る人物、とか」
「うっさい!そんなものパーソナルデータ見ればわかるでしょうが!婚約者に決まってんでしょ?!このわたしに限って姦通なんて……」
「男の股間を踏み漁っていたものが何を?」
「んぁあっ!」
そして、そこまで触れておきながらようやくと直接クリトリスに触れると、それだけでレヴィは軽く絶頂しもう敏感で少し空気が触れるだけでもクリトリスが気持ちよくなる状態だった。
「っひぃん!あっ!っくぅう……!!」
そして、カスラはレヴィのひくひくと疼く蜜壷に指を入れ込んだ。
処女でもないレヴィの穴にすんなりと指が二本入り込み、奥まで入り込むと指を曲げてグイグイと動かす。
「アークスのことは嫌いでしょうか。なら、ダーカーとはどうですか?そのような特殊性癖を持っているアークスも、稀にですがおりますよ」
「だっ、だぁー、かー、と、……なんて、……異種の、ちんぽなんて、ヤッたことな、……ッ……Gすぽっとばっかやだぁ……よわいってゆってるのにぃ……!」
「なら、"人型のダーカー"となら?」
「っく、……」
「ダークファルスには女型も男型も居る。【巨躯】は男ですし……あぁ、そういえば。今、全オラクルに向け指名手配されているダークファルス……【敗者】も、男の形をしているでしょう?」
ぎゅうう。
カスラの指が、突然窮屈さを訴える。
ある一つの単語を放った瞬間、レヴィの膣は喜びでまるで処女のようにぎゅうと締め付けた。
「っあぁあっ♡」
「【敗者】……」
「っやぁあんっ♡♡」
やはり、その単語に反応している。
その単語に合わせてぎゅうと膣が窮屈し、いぼひだは指に絡みつき、体はビクンと震え目が蕩ける。
わかりやすく、調教されたメスのスイッチが入っていた。
「……突然そんなに膣を締めて、どうされました?」
「黙れ!このわたしがサービスしてやってるってのが分からないの?!」
「その割には、見え見えですがね。そうだ、私は三英雄ですが、虚空機関で研究もしていたんですよ。あの暴走龍にも関わっていて、かつては虚空機関の総長、ルーサーの支配下にあった……」
そうしてカスラは試すように、あの男について話しながら、にちゅにちゅと指を出し入れし時々Gスポットを突き上げていた。
「っるぅ、ルーサーは……ッ、んんっ……」
「その正体はダークファルスの一人、【敗者】でしたがね」
「ひんっ♡あっ、ぁああああっ♡るぅ、……るぅさー♡っ……【敗者】はぁ♡、あっ、アークスの敵だからぁんっ……♡」
やはりカスラがその名前を呼ぶとレヴィの膣が締まる。その上、レヴィは彼の名前を呼んだ。
甘ったるく、媚びを売るように、猫撫で声で、蕩けた瞳と、むわりと沸き立つメスの匂いを漂わせながら。
「その割に、【敗者】の名前を呼んだ時だけそんな猫なで声で、ここをよく締めるんですね。そうでしょう?」
そう、虚空機関でもルーサーでも反応しなかった。明確に、【敗者】の一言のみでレヴィは反応している。
カスラの調べでは、レヴィは虚空機関に所属していた事もなければ、それ以外であったとしても、今までルーサーと会ったことなど一度たりともなかった。
だからこそ、レヴィは【敗者】にしか反応しない。
それこそ、カスラが考える仮説の全てを裏付ける証拠だった。
――この女は、自分と関わっている相手がダークファルスであると分かっておきながらそれを受け入れている。
アークスでありながらダークファルスの肩を持ち、それもオラクル全域に向け指名手配されているダークファルスであると分かっていながらそれを無視して匿っているのだ。
「貴方は唯一、【敗者】の居場所を知っている……」
【敗者】の名前を呼ばれながらGスポットを刺激されると、レヴィはビクビクと体を痙攣させ、絶頂に至る。
ぎゅうぎゅうと膣内が締まり、二本の指に襞が絡みつき、搾り取ろうとする。
「あぁあああっ!!あぅ、……あぁっ……」
指でも分かる名器だ。並の男なら五秒も耐えられないだろう。しかし、カスラはそれを"武器"として捉えるのみで、直ぐにレヴィを睨みつけ淡々と声を放った。
「私は独自の調査で、既にそれに辿り着きました。言いなさい。あの男は、今どこにいるのか。何を企んで、何を利用しているのか」
「知らない!わたしはただ研究者の男と婚約してるだけ!ダークファルスも、るーさーなんてヤツの行方も、なにも知らないもん!るーさなんて、旧マザーシップに顕現したってくらいしかわかんない!顔も何も知らない!だってわたし出撃してないし!」
相変わらずまだ【敗者】のことを話す時だけ明らかに目がとろんとしていて、声が甘ったるい。
バレバレだ、とカスラはため息をついた。
「あくまでしらを切ると?証拠もあると言うのに?」
「どこに証拠があるっていうの!」
「最近、アークスから検出されるダーカー因子にどのダーカー種からの影響を受けているのか調査することができるようになったんですよ。……その結果、貴方の体内からは【敗者】の因子しか検出されなかった。それがどういうことか、分かりますか?」
「そんな精度もわからないような証拠ごときでわたしがスパイだって糾弾するわけ?!わたしはアークスだって……ひんっ!」
カスラの手は突然レヴィの首を掴む。
細い首。カスラの手でも容易に絞め殺すことの出来る、小さな少女のような首……
「私は今から貴方を強姦します。この胸に噛みつき、指を入れていたそこに生殖器を挿入し、性行為を行った後避妊パッチを解除します。貴方の婚約者という方は、見て見ぬふりが出来るのでしょうか?」
「来なくていい!じゃなくて、……来れるわけが無いでしょ?!アークスの戦闘員じゃなくて研究者なんだから!」
レヴィは慌てて【敗者】を止めるために声を上げ、そしてその言葉を声掛けではないようにするために言い換えた。
カスラが何を目的としているのかは見て取れる。
決してレヴィが好きなのではなく、ここに【敗者】を誘き出したいだけだ。
「しかし、貴方の婚約者にはアークスカードが存在しますよね?」
「不味っ……」
レヴィはパーソナルデータだけではなく彼のアークスカードを偽造していた事を完全に忘れていた。
「通信してもよろしいですよ?助けて、と一言言えばいい。それだけで構わないのです」
「……はぁ……」
レヴィはゆっくり深呼吸した。
震える体を直し、太ももを抓りながら堂々と見上げる。
「やれば?犯したいならやりなよ。ここにはあんたとわたし以外、誰も来ないから」
レヴィの言葉にカスラは驚いた。
明らかに彼女が怯えているのは分かっている。
足は動揺していて、手には力が入っており、抓る太ももは赤く腫れるほどだった。
それでも、彼女は真っ直ぐカスラを見上げていた。
「……本当に、……自分の身を疎かにするつもりですか?!その男のために!」
「勘違いしないでよ。粗チンなら股間蹴ってるに決まってんでしょ?」
レヴィは震えた声でそう呟くと、もう一度自分の足を抓り、脱力する。
「コッチでも尻でも、ヤリたいなら相手してあげる。……それは命令とか、自分を疎かにしてるんじゃない。わたしが、そうしたいと思ったからそうする。これがわたしにできることなら、わたしは躊躇わない」
先程の話からして、脅されているとは思えない。あるとすれば、騙しているだけ。
レヴィの頑なで一途な態度にカスラは諭すようにゆっくりと言葉を紡いだ。
「……貴方は分からないのでしょう。あの男は、貴方の誉などなんとも思わない。ただ、見捨てているだけだと」
「嫉妬して怒ってくれたもん。それで十分」
「言葉ならいくらでも言えるでしょう?」
レヴィは【敗者】の事をバディとして本気で信頼した。
だから、恐ろしいことでも耐えなければいけない。
そうしないと【敗者】には認められない、と考えた。
自分は才能がない。いくら努力しても【敗者】の求めるものには今じゃ全然届かない。だから、せめてその信頼だけは伝わっていないといけない。
「わたし、あんたの挑発に乗るような馬鹿に心を許した覚えはないの。見捨てたんじゃなくて、信じたの。互いに信頼して、共にあると。そのために、体のひとつ汚れても、この心は汚れないと」
カスラは、彼女の意思が完全に硬く、どう足掻いても話すつもりは無いと理解した。
グラスを整えようと自然に眉間に指が伸びるが、彼女にグラスが外されていたことを今更思い出して、ため息を着く。
最終手段を使うしかない。そう決断するまでに、時間はかからなかった。
「……貴方は洗脳されている。それは勘違いだ。言いなさい。どれほどの事をされたのか」
カスラは、冷静に言葉を放った。
しかしその言葉には比喩でもなんでもなく意味があった。
「あ……」
「これは六芒均衡の命令です。貴方が、婚約者などと嘘をつく相手に何をされたのか、全て言いなさい。さあ、……【敗者】に何をされて、そのような洗脳を施されたのですか?」
「わ、っ……わ、……わたしは……」
レヴィの瞳がぼんやりと赤く光る。
体がビクンと動き、レヴィは口が震え、勝手に言いたくも無い言葉が漏れ出していく。
「わたしは、出来損ないの嫌われ者だった……
フォトンがないことは、わたしがヒトでも無ければ価値もないと言う事と同じで、わたしは両親からも、ルビィからも見捨てられて、……ただヒトとして生きて、ヒトとして幸せになってもいいって許しが欲しいだけだったのに、誰も許してくれなかった。
他の全ての人から見捨てられて、わたしはアークスを、オラクルの全てを恨んでいた……」
「……」
「でも、彼だけは違った……何も食べられなかったわたしをヒトとして生きられるようにご飯を食べさせてくれて、シャワーの使い方も知らなかったわたしと、一緒にお風呂に入ってくれて、アークスなのに基礎もろくに出来てなかった馬鹿なわたしに、毎日ずぅっと付き添って、ずっとずっと、……わたしに沢山の当たり前なことを教えてくれて。
そう、わたしは他のアークスと同じように愚かで……でも、他のアークスと同じだから、わたしだってヒトとして生きていいって……教えてくれた……」
「……その男とは、誰ですか?一般的に、アークスではなんと呼ばれている存在ですか?」
レヴィの目は虚ろで、ぼんやりとした赤い瞳はどこか遠く、オーロラを見つめていた。
「るっ、……るぅ、……」
(ダメ、言っちゃダメ……言うくらいなら脳が焼き切れた方がまだマシ……!!)
絶体絶命かという状況で、レヴィは自分の拳を握りしめ、唇を思い切り噛んだ。
口端からは血が零れ、手のひらには爪が食い込む。
「ッ!言いなさい。言えば私が、……貴方を人として、保護しましょう。その男よりもずっと正しく、本当の意味での、自由な人として!」
「〜〜っ!!っぎ、ぅ゛う゛……、う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛〜〜っ!!」
レヴィは歯を食いしばり、呻き声を上げると……拳に光が宿り、そのまま思い切り自分の顔をぶん殴った。
レヴィの頬は真っ赤になり、レヴィは涙を目に浮べるが……その瞳はもう赤くない。いつもの韓紅色だ。
「〜ッ!はぁ、……はぁ……」
「
何とか抑え込んだ。抑えられた。
レヴィはそう察した。
そしてレヴィはカスラを睨みつけ、得意げに見上げる。
「馬鹿ね。わたしは信頼するものがあるんだもん。あんたに盲目的に従う理由なんてない。わたしを人として扱って、たくさんの当たり前のことを教えてくれて、幸せを与えてくれる人を裏切る理由なんてない」
「貴方は、実験動物と同等なのです」
「実験動物でいいよ。わたしは自分のこともっと知りたいもん。
でも、わたしって頭がそんなに良くないし、研究しても上手くいかないから、それを解き明かしてくれるならうれしい。その過程で痛いこととか、辛いこととか、いっぱいあっても、それでもみんなわたしのためだから。
あんた達みたいに、何となく気持ち悪いから、皆が言うように嫌いだと何となく思ったから、よく分からないけど無価値だからって……関わったこともないような相手に石を投げるようなアークスと違って、そうするだけの"理由がある"から」
「……必要無くなれば、処分されるだけです」
「処分されるってことは、わたしを必要としてくれてたってこと。最初から呪いだの不出来だのなんだのいって、ただ意味もなく虐げて殺すことにしか興味が無いやつらとは根本的に違う。
最後に捨てられても、自分が自分じゃなくなったとしても、彼以外の全てがわたしの前から無くなったとしても……わたしはそれくらいじゃないと、満足出来ないの。
それくらい、わたしの事が必要で、わたしに価値があって、その全てが枯れるまで、わたしのことを"一番に"求めてくれてるんだってそんな情熱を見せて欲しい」
カスラとレヴィは、完全に価値観が違う。
性格も、考え方も、環境も、そして【敗者】への感情もほとんど逆だ。
だからカスラは彼女がなぜ「実験生物」だと言われてもなお好意を持つのか全く分からなかった。
「ま、相手はただの研究者であって、ダークファルスでも、るーさーでもないけど……」
レヴィはそうやって呟いて目を逸らした。
カスラは、彼女の手首を掴んで持ち上げ、床に押し付けた。
そして、レヴィの胸を鷲掴む。
「ッ、……やっぱりアークスは、わたしの事を人として扱わないんだね」
「ダーカーに与するものは、アークスでは無い。化け物と同じです」
そして、ゆっくりと体をなぞった。
必要なら犯せない訳では無い。淫猥な肉体だ。入れれば極上の快楽どころか搾り取られるということは分かる。
しかし、カスラはそんな快楽を目的にしているわけではない。
もし【敗者】が挑発に乗れば、この場に引きずり出すことが出来る。
それが出来なくとも、本当に見捨てられたということを実感してレヴィが自ら裏切るかもしれないし、自分の身を多少犠牲にして、レヴィが強姦されても助けに来なかったという事が、レヴィの背後にいるのが【敗者】だという事の根拠になり得るかもしれない。
カスラから性欲ではなく覚悟を感じるような目線を浴びて、レヴィは諦めて目を逸らし、呟いた。
「昔から、生まれた時から、わたしは人未満の化け物だったよ……」
レヴィはそう言って脱力するが、そこに聞き慣れた声が掛かる。
「違う」
影に混じる黒い長身。特徴的な長い耳と正体を隠す真っ黒な服。
「……!?」
「ッ、【敗者】!!掛かった……!!」
カスラはあっという間にレヴィから手を離した。
レヴィは驚いて完全に静止する。
彼は黒髪でいつもより優しげな瞳。
変装状態である。
「お前は人だ」
「ちょっ!あんた……、……何で!」
レヴィが慌てている中、【敗者】は酷く冷静で、そしてカスラは端末を起動させ管制のコンピュータを遠隔操作する。
「今です!解析し、その正体がダークファルスであると分かればアークスに出撃命令を……。……?!」
しかし、カスラは解析結果を見て目を見開いた。
【敗者】は一歩前に踏み出すと、レヴィに向けて手を差し伸べた。
「もう大丈夫だ、レヴィ。怖かっただろう?おいで」
「ちっちが、……るっ、るぅ……」
ルオン、と【敗者】の言葉が脳に響いてきた。
レヴィはそれを聞いて唇を噛み、なんとか立ち上がる。
「唇を噛むんじゃない、レヴィ」
「でも、……ッ、……ルオン!あっ、あんた、……アークスの命令違反をして……」
レヴィが歩き出したかと思えば【敗者】は直ぐに彼女を引き寄せ、露出した肌を隠すように抱きしめた。
「大切な女を助けるために、アークスの規則を守る必要はあるのか?誰かに従う必要はあるのか?そうじゃない。本当に大切なら、大事に思うなら、……男なら、女を救う。それを迷う事はしない」
「っ、……ルオン、……でもぉ……」
「安心するといい。なにも無策で来た訳じゃない。お前の強さを僕は知っている。だから、僕の強さだって、お前に示さなくてはいけないな」
【敗者】はレヴィに向け、柔らかく微笑んだ。
その微笑みは、自分だけにしか向けられないような気がする。なんとなく、そんな気がする。
そんななんとなくで、レヴィは心が暖かくなった。
そして、カスラの方は……焦りに焦っていた。
「有り得ない……何故だ……目の前の男から全くダーカー因子が検知されない、……ルーサーとの繋がりも、何もかも、……この男は、唯のアークスだとでも言うのですか……?!」
「何だ、俗物が。僕の女に手を出して、タダで済むと思っているのか」
【敗者】が彼を見つめる視線はとても冷たく、彼が総長であった頃の、「器として必要としていた、実験生物としての目線」とは違う、明確に不必要で、邪魔者を見る目でカスラを見ていた。
「……ダークファルス【敗者】……!!」
「何を言っている……?僕はルオン。虚空機関を辞めた、唯の研究者だ」
「貴方が【敗者】だという証拠は、もう揃っている!今更何を言っても無駄です!」
「は?貴様の見る観測データのどこに僕がダークファルスだという証拠がある?何の障害もないアークスにレッテルを貼って、アークスを押し掛けようとする行為は……いくら六芒均衡であれど、職権濫用じゃないのかい?」
「〜〜ッ!何の目的で……!」
「言っただろう。僕は、貴様が辱めようとしたこの子を助けに来たんだ。昔は虚空機関に居たが、今は権限も、権利も何も無い。ただ、……この子が人として生きられるように、アークスに、フォトンアレルギーは身体障害では無いという証明をするために研究しているだけだ。それの何が不都合になるんだ?」
「くっ……」
レヴィが不安げに【敗者】を見上げ、ブラックローズを取り出そうとするが、【敗者】はすぐそれを止めて彼女の手をその大きな手で包み込んだ。
「る、……ルオン……」
「一人で置いてすまなかった。僕も、装備もなしに来る訳にはいかなかったんだ。武器を持ってきたから、守るために戦える状態だ」
そんなことを言いつつ、【敗者】はタリスのカードを取り出す。
コモン武器。フォトナーでありダークファルスでもある【敗者】が一撃でもテクニックを放てば、耐えられずに壊れてしまうだろう。
だから単なるはったりだ。
「あっ、タリス……そりゃそっか、ふふ」
「レヴィはもう船に戻るんだ。後始末くらい、僕が一人で済ませる。これは僕の責任だ。咎人は、僕だけだ」
しかし、【敗者】はそんなはったりの武器でも戦うには十分だと考え、レヴィの肩を掴むと言い聞かせるように彼女に声をかけた。
「ちっ、違う!わたしが、あんたの言うこと聞かなかったから……」
「それはそれ、これはこれだ」
「ご、ごめんなさい、……わたし、あなたのこと守りたかったのに……」
「自分に出来ることをやったんだ。よく頑張った、レヴィ。しかし、同族殺しは重罪だ。その罪をレヴィが背負う必要は無い」
これは無意味な言葉だ。だって、レヴィは法律としてその罪の重さを分かっていながら、数え切れないほどの市民やアークスを殺している。彼女に罪の意識などあるわけも無いし、【敗者】が殺したところで"同族殺しの罪"という部分に関しては一切何も悪くないと考える。
レヴィが止めようとしているのは、相手がアークスだからではなく、六芒均衡だからだ。
「待っ、……だからってなんであんたがそれをしなきゃいけないの!人ひとり殺すくらいなら!わたしがやる!その罪ならわたしが背負う!……いや、わたしにも背負わせて!わたし達バディでしょ?!」
バディ、という言葉に【敗者】は胸を締め付けられた。
その関係性は、どんな友人よりも、どんな恋人よりも、どんな夫婦も深く感じる。
自分達が掲げる偽りの婚約者という関係よりずっと重く、不可逆的なものだと感じる。
そう、甘く溶けるような、毒のような……
「惚れた女に罪を背負わせる程、情けない男では無い」
「あ……」
ちゅ、とレヴィの唇に【敗者】の唇が触れる。
【敗者】の甘ったるい、恋焦がれるような瞳がレヴィを照らした。甘い匂い、柔らかなオーラ、そして切なげな表情。
――レヴィは、察した。
この目の前の男は、……正気じゃない。
あの時の、大喧嘩した時の【敗者】と同じ……。まるで酒に酔ったように、レヴィに甘く絡んできた時の【敗者】と同じだ。
こんな状態でもなければ、絶対に来るわけはなかっただろう。
なんとかして一人で乗り切るだけの算段を考えて、何かしらの手段で命令していたのだろう。
レヴィはそう確信する。
そう、【敗者】が来てくれたのは嬉しいが……彼はレヴィが心配だという感情に振り回されてわざわざリスクの大きな手段を選んだ。
だから、今もしここで彼を一人にすれば、もっと愚かなことをしてしまうかもしれない。
「……そう。でも、それには従えない。ごめんね。あんたにも背負わせられないし、わたし、……正直、その罪を背負いたいとも思わない」
「レヴィ……」
レヴィは【敗者】から離れ、目を閉じると決意を固め、カスラに向けて武器を持たず、【敗者】を庇うように立ちはだかった。
「警告する。今すぐ消えて。あんたに証拠はない。何一つ、この人の攻撃をする理由はない。だから消えて。そうしなければ、わたしはあんたが罪のないアークスにレッテルを貼り、殺そうとしたという事実を、アークスに公表する。殺しなんてしない。わたし達が罪を背負うことなんてしない。わたしは、あんたの罪を白日の元に晒す。それがどれほど不都合なことか、あんたには分かるはずでしょ。
信頼が崩れるということなんだから」
「……ッ」
分かっている。今はアークスの体制が変更したばかりのとても不安定な時期。
そんな時期にそんなスキャンダルが報道されたら、アークスの立場や、ウルクの立場は怪しいものになる。絶対に不義理を起こしてはいけないのだ。
「これは、レギアスから許可が降りたことなの?そうなら、あんた達の作る新しいアークスは、魔女狩りをしてアークスを殺す、最悪の組織になったっていう事でしょ?とんだスキャンダルなんだけど。今からこの様を記者に連絡して……」
「私一人の判断です」
カスラは、嘘偽りなく話した。
そう。誰一人として連れてきていないし、誰にも相談せず、独断でここに来た。
恨みの感情が昂ったというのもあるが、それ以上に、事を大きくするにはまだ証拠が揃っていなかったからだ。
「ふぅん?」
「誰一人、私が得た情報を話していません。元総督にも、マリアさんにも、……ルビィさんにも」
「……独断専行。なら、バレる前にやめたら?あんたが殺した相手が、憎む相手と無関係のアークスだったと後悔する前にね」
「……」
カスラは、この場の優位を完全に失ったと察した。
このままたとえ戦闘になったとしても、ダークファルスであろうものと、ナベリウスの山を半分ほど抉れるような
何より、女性に辱められるというのは、カスラにとっても初めての事で……とても動揺していた。
そして、カスラはテレパイプでその場から居なくなった。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる