※この作品はR-18です。

MIDNIGHT   作:Libby博士

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39話+お知らせ

 

1月の10。

アークス全員に向けて公開される惑星ハルコタンの情報には目もくれず、レヴィは【敗者】と共にゲートエリアの前に立っていた。

 

「あんたの体……治さなきゃね」

 

「あぁ」

 

レヴィは遠征に備えて胸の小さいボディに切り替えており、珍しく鞄に荷物を入れて近くのベンチに座っていた。

隣に座る【敗者】はレヴィをぼんやりと見つめながら彼女との軽い会話を交わし、休憩を取っていた。

44番艦の屋敷はシャーロットが管理してくれる。だから二人はこれからのダーカーの巣窟や惑星マキアへの遠征も気兼ねなく行える訳だが、同時に暫くアークスシップとはお別れになる。

 

「出会ってから……6ヶ月だっけ?こんな短い期間で、まさかオラクル船団から離れるとは思わなかった」

 

「これからはきっと当たり前になるんじゃないか?何せ、僕達は今いるここを敵に回す事になる。それがいつかは分からないが、その時が来れば……」

 

レヴィの頭の中によぎったのは、レギアスやルビィ達のようなレヴィが恨む相手ではなく、レヴィと友好的に接してくれた者たちだった。

 

「……見つけた」

 

「あんたは……」

 

例えば一人目、と現れたのはシルンだ。

彼は士官服ではなく完全に私服で、大富豪とは思えないよれたシャツとスーツに身を包み、レヴィ達を見下ろしていた。

 

「何、そのカッコ」

 

「いや、まあ……寝起きなんだよ」

 

「寝起きなのに飛び出してくるほどの用事でもあったワケ?」

 

ぴょん、と飛び出たシルンの元々の癖毛なのか寝癖なのか分からない髪を彼はぽんぽんと押さえ付けると、レヴィの方に目を向けた。

 

「お前たちに会いに来るためだ。それ以外に用事なんかねぇ」

 

「へ……?」

 

「ルオン様も、お前も、暫く会えないからな。あと、お前。外にいてもちゃんと口止め……じゃなかった、お友達料寄越せよ」

 

シルンは指を丸めてお金のポーズを作り、レヴィに向けてゆらゆらと揺らす。

相も変わらず守銭奴。謝罪と言う名の金銭を一番笑顔で受け取るやつと言えばこいつ。

信頼も金、愛情も金、当然友情も金だ。

 

「はっ、はぁ?!あんたここまできて金せびりに来たわけ?!ちょっと前にも渡したでしょ!!」

 

「忘れんなって言ってんの。どこ行くかは知らねえが、そこで二人仲良く逝かれちゃ困るんでね」

 

「……あ、……そういうこと……?」

 

シルンなりの心配の仕方らしい。

何をするにも金がないと感情表現出来ないのはシルンの悪い所だろう。

だがその言葉にレヴィもクスリと笑い、シルンの頭をくしゃくしゃと撫でた。

 

「人に金せびるならもうちょっと身なり整えてきてよね!」

 

「お前はその程度の奴ってわけだ」

 

「コイツにもその程度なの?」

 

レヴィはわざとらしく【敗者】を指差すと、シルンは「ぐっ」と呻き声を漏らしたあと【敗者】の方へ体を向けた。

 

「いやいや、ルオン様は特別だよ。でもほら、目立っても困るだろ?何せ俺はフェオの元艦長なんだから。注目集めちゃお前らの身にもリスクが及ぶんだぜ?」

 

「今の僕には権力も名誉もない。持て囃す相手を間違えているだろう」

 

「まあ、レヴィのハッキング能力の高さは分かってますけども……でもその……ちょーっと、お性格の方が?おクソでございまして……」

 

「クソって何クソって!」

 

レヴィは立ち上がると迷いなくシルンの胸ぐらを掴み、ひっくり返して壁に叩きつける。

 

「これだよこれ!まさにこれ!この野蛮な女のどこを特別扱いしろと……」

 

レヴィの膝がシルンの股間に向けて打たれようとしたまさにその時、【敗者】はレヴィをチラリと見た。

 

「騒ぎを起こすな」

 

「ちぇっ」

 

【敗者】の一言でレヴィはシルンから手を離し、彼の隣に再び腰を下ろす。

 

「……危なかった……俺の大事な部分が……」

 

「風俗狂いなんだし去勢したら?」

 

「お前もちょっとは自制しろよ!この色ボケ女!」

 

そんな事を言いながらシルンはレヴィに向けて物を投げ、早足で去っていった。

 

「これって……」

 

レヴィの手に握られていたのは秘匿回線の端末だ。オラクル船団の管制を利用しない外部惑星を経由した回線らしく、シルンはこれで連絡を取ろうとしているらしい。

 

「……見た目は普通の端末と変わりない。メールも写真に映像も送れて、ビデオ通話もできるみたい」

 

「とりあえず前撮った映像でも送るか?」

 

【敗者】は端末を見ながらねっとりと微笑み、からかうように声を掛けた。

 

「前撮ったって……何撮ったっけ?」

 

「それはもちろん……」

 

【敗者】の体がすっと近付くと、レヴィの耳元に息が吹き掛けられる。

 

「こういう物、とか……」

 

【敗者】が見せてきた端末の映像。サムネイルはガッツリ性行為中の、しかも結合部分がドアップで映されており……

 

「〜〜ッ!!ちょっとやめてよ!」

 

「冗談だ」

 

【敗者】は騙される方が悪いと言わんばかりにくすくすと笑いつつも、レヴィの太ももを撫で回しそっとスカートの中に指を滑らせた。

 

「おっと、やりすぎてしまったか?」

 

【敗者】がつう、と下着を一直線になぞり、離すと、下着からねっとりと液が糸を引く。

 

「ちっ、ちが……〜〜っうるさい!!」

 

レヴィは慌てて【敗者】に体を向けると、彼の唇を無理やり奪った。

 

「んっ!んぅう……ちゅっ……んぅぅ……!」

 

レヴィは【敗者】と唇が離れてもすぐにくっ付け、しつこく唇を重ね続ける。

 

「っぷは!はぁはぁ……これで満足したでしょ?!」

 

レヴィのあざとく怒る表情と【敗者】を見つめる熱い瞳に当てられて、【敗者】はカラカラと軽く笑った。

 

「まあ、満足したということにしてやろうか」

 

「体調万全って言ったのはあんたなんだから!」

 

レヴィは自分の中の熱を誤魔化すようにパッと立ち上がると、早足でゲートエリアの方に歩いていく。

 

「あんたみたいなどすけべ変態えっちどえっちすけべどえっちに付き合ってたら一生目的地につかないもん!自重して!」

 

「勝手に濡らしたのはそっちの方なんだが?」

 

「あんたが変なこと言うからでしょ?!」

 

レヴィと【敗者】はワーワーと言い合いをしながら船の前に立つと、設置された情報端末に目を向ける。

 

「んー、宙域がちょっと混んでるって。航路を外れて転移するなら、発進はもうちょっと待った方が良さそう」

 

「そうか」

 

「とりあえず、中に乗り込んで考える?」

 

なんてレヴィの言葉と共に搭乗口が開けられるまさにその瞬間、バタバタと足音が響いてきた。

 

「まっ、……待つのですわー!」

 

「あんたらは……」

 

ホバーで走ってきたジグと全力疾走してきたマグノリアだ。

二人は息を切らしその場でゼェゼェと呼吸を整えると、レヴィに顔を向けた。

 

「その、おじさまからまた遠出なさると聞きまして……」

 

「しばらく帰ってこなくなるんじゃろう?」

 

「あぁ、まあね」

 

レヴィの軽い返事の後に、マグノリアはぐっと口を噤んだ。

ジグがマグノリアに視線を向け、ぽんと肩を叩く。

 

「話があるんじゃろう?」

 

「まあ、ええと、そうなのですが……」

 

マグノリアのおろおろと迷った様子にレヴィはため息をついた。

 

「職人に躊躇は要らない、じゃなかったっけ?」

 

レヴィの声にマグノリアはパッと顔を上げると、意を決したように眉を上げ、頭を下げた。

 

「レヴィ様、わたくしの武器を作ってください!」

 

「へ?」

 

レヴィはマグノリアの発言に思わず硬直し、唖然とした様子でマグノリアを見つめていた。

レヴィが驚くのは当然のことで、マグノリアはすぐにレヴィへ説明を始めた。

 

「アークスシップに展開されたリミッターの影響を受けない、対人戦に特化した武器……それをあなたに作って欲しいのです」

 

「ノーチェの社長が、わたしに?え?」

 

「わたくしはあくまで汎用的な武器を作ることを専門としていますわ。それに対してわたくしが求める武器を最も上手に作れるのはレヴィ様、あなただけですから」

 

「……」

 

ジグにも言っていないが、レヴィは12本の武器を同時並行で制作している。

そこにマグノリアのオーダー……つまり13本目を請け負ったら、完全にキャパオーバーだ。

だからレヴィは断ろうとしたのだが、彼女が声を上げる前にマグノリアが更に言葉を付け足してきた。

 

「その、いつまでに作って欲しいとかはありませんわ。レヴィ様の持てるお力を全て使って、わたくしに武器を作って欲しいんですの」

 

「何のために?」

 

「あなたになら、分かりますでしょう?」

 

マグノリアの言葉で、レヴィの頭には彼女と関わった短い期間での記憶がわっと蘇る。

非アークスかつシップ内にいる状況だと言うのに銃弾を跳ね返すバリアと、防弾服を常日頃着込む様子。ジグと共に居た時出会った暗殺者達は、確実にマグノリアを狙っていた。

 

「……なるほどね」

 

レヴィは少し俯くと色々と考え込み、ゆっくりと思考する。

 

そしてしばらくすると顔を上げ、マグノリアと目を合わせた。

 

「あのね、わたし忙しいの。

だから気が向いたら。それが条件」

 

レヴィのぶっきらぼうな言葉にもマグノリアは目を輝かせ、わっと体が舞い上がる。

 

「それでいいですわっ!ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

マグノリアはレヴィに向けて何度もお辞儀をし、顔を上げると微笑み、楽しそうに体を揺らしていた。

 

「あんま期待しないでよ、ほんとに気が向いた時なんだから」

 

「それでも構いませんわ。だから、絶対絶対帰ってきてくださいね、レヴィ様」

 

「あぁ、うん」

 

レヴィはマグノリアに返事をすると、ジグに顔を向けた。

 

「ジグさんも、またスランプ入っちゃダメだからね」

 

「いやっ、おお、もう大丈夫じゃ。今のわしは創造力がフォトンを超えておる!今ならなんでも作れそうな感じじゃぞ!」

 

「そう……」

 

ジグはレヴィに向けて胸を張り、どんな依頼でもどんと来いと言わんばかりの自信満々なポーズを取った後、ルオンと目を合わせた。

 

「レヴィ、ルオン」

 

「……」

 

【敗者】の切れ長の赤い瞳は黒い布によってほとんど阻まれていたが、かすかに漏れる光が間違いなく彼を睨むように見つめていた。

 

「どこに行くのかは分からないが……二人とも、気を付けるんじゃぞ」

 

「レヴィの面倒は僕が見る」

 

「ルオン、お主も無敵ではないんじゃ。あまり無理をせんようにな」

 

ジグの声色は優しく、時間を掛けて彼は二人を受け入れたようで、その硬い手でレヴィの頭をポンポンと撫でたあと【敗者】に向けても微笑んだ。

 

「気をつけて、行ってらっしゃいませ」

 

「ジグ、マグノリア……またねー!」

 

「ほら、行くぞ」

 

「うん!」

 

二人に見送られながら、【敗者】とレヴィは船に乗り込んだ。

全知のため、アークスへの復讐のため、最強になるため……そんな長い旅路はまだまだ始まったばかりだが、これからも二人は良いバディで居られると、そう信じられた。




第一章を終えたのでしばらく休載します。その間も不定期に挿絵や短編の更新をしようとは思いますが、本編の更新と致しましては第二章の連載開始までしばらくお待ちください。

二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。

  • 続編として作品を分ける
  • 分けないで一つの作品でまとめる
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