ファルス・ヒューナルは意気揚々と一歩ずつ足を踏みしめレヴィの方へ接近してくるが、その時にはレヴィの準備も終えていて。
アイゼンハートを己の内側に戻し、武器を変化させ、そしてヴァリアントローズのユニオンを解除して回収し……
「どいつもこいつもベラベラ喋ってる暇があるなら……」
ファルス・ヒューナルがもう一歩踏み出した瞬間、地雷が発動しけたたましい轟音が立つとレヴィはその衝撃に任せて後方に下がり、拳を握り締めた。
辺りに埋め尽くされた全ての爆弾が爆発し衝撃波を起こすとレヴィの拳には細い剣となったアイゼンハートが収まり、そしてもう片手には別の武器が握られる。
「さっさと攻撃しろって言ってんでしょーが!」
黒煙が晴れる前にレヴィはそこへ飛び込むと、アイゼンハートとブラックローズの二本の武器でファルス・ヒューナルへ刃を振るった。
『!』
ファルス・ヒューナルは拳で受け止めるとすぐに打ち返し、岩の固まったような大剣を握り締めレヴィを思い切り切り裂く。
腹に刃がめり込み、跳ね飛ばされた瞬間すぐさま再生し、アイゼンハートを切り込ませると一気に離れブラックローズを抜刀し斜め上に凪ぎ。
「イレギュラーにはイレギュラー!イレギュラーさらにイレギュラー!さらに重ねて……イレギュラーッ!!」
右に斬れば左に斬り、刃が過ぎればすかさずアイゼンハートを取って対角に切り裂く。
『脆弱!無駄!それに足して無意味の極み!我を倒すに足りえん力よ!』
それに対してファルス・ヒューナルも応戦し、レヴィの拳を握り折り砕くと腹を膝蹴り宙に浮かせ、拳を開いて思い切り吹き飛ばした。
しかしアイゼンハートの糸が空中で賽の目を描くように埋めつくし、レヴィの体がネットのように受け止められると彼女はアルケミストドールの力で一気に治癒され、ブラックローズを握り締めてネットに足を思い切り力を入れてファルス・ヒューナルへ刃を向ける。
「誰が倒すって言ったワケ?!大人しくネンネしろって言ってんの!この聞き分けのないクソガキがぁあああッ!!」
ブラックローズが刺さった瞬間刃が伸び、そのまま力任せに持ち上げると僅かに切れ目が入るが、あっという間にヒューナルは転移しアイゼンハートの刃を大剣で受け止めた。
『糞餓鬼か……我は貴様のような若造と比べたら幾分も年上よ!!』
交わる刃に火花が散り、ヒューナルの纏う大剣をダーカー因子が包み込むとレヴィは気圧されそうになる。
「聞き分けのないバカはどんだけ図体デカかろうが関係なくガキだっての!!」
だがしかし、レヴィは諦めず。
肩を張り腕に力を入れ拳をぎゅっと握り締めると、体を韓紅色のオーラが包み込み、グラン類似エネルギーが噴き出すように包み込む。
その輝きをブラックローズに纏わせ、レヴィは無理やり押し込むようにぶつけ抵抗した。
『先程から大人子供と……我が闘争に年齢など不要の概念!』
「だったら反応するんじゃねぇーーってのぉおおおおーー!!」
それでもヒューナルの力量はレヴィを大きく超える。
彼女はヒューナルとの押し合いに負けると確信した瞬間すぐ体を滑らせて受け流し、拳を握り締めて力を込め、思い切りヒューナルの腹を殴り上げた。
【敗者】には効かなかったそれだがグラン類似エネルギーを纏えば話は違う。
拳に込めた大量のエネルギーが感情に合わせて噴き上がり、ヒューナルの腹にめり込むと体が揺れる。
「もらったぁぁああーー!!!」
その隙にアイゼンハートを剣に変え思い切り振りかざすが、ファルス・ヒューナルはわざわざ己の持っていた剣を宙に放り投げ……
「うぐっ?!」
レヴィの剣がヒューナルを貫くより先に、彼女の体を拘束する楔のように大剣が突き刺さり彼女の腹側部を貫く。
『弁えよ……アークス!!』
そしてヒューナルがフォトンをかき集め始めると、レヴィの顔に汗が滴った。
(【巨躯】の中央に力が集まってる……
不味い……!このままだと攻撃が全部直撃する!!)
『応えよ深遠……』
レヴィはなんとか身を捩らせ、刃を無理やり引き抜くと血を噴き出しながらも何とか飛び上がり。
『我が力に!!』
無理やりながらも攻撃を避けるとドールの効果で再び体が再生されるが、その背後をレーザーのビームが迫る。
「〜〜〜ッ!!」
いくつものアルケミストドールを消費しながらレヴィは何とか抜け出し、アイゼンハートをブーツに変えるとブラックローズを優雅に構える。
『フハハハハッ……、まだ動くか……』
「まだも何も始まってすらいないんだから……!」
甲板は赤く光り出し、炎が噴き出すとレヴィはその上を滑り足を一歩踏み出して刃を突き出し、頭上をヒューナルの剣が掠めると腰を縮めてグッと下がり、その場で何回か回転しアイゼンハートの力で光の針をぶつける。
先程までの荒々しい動きとは一変優雅で踊るような動きにヒューナルは少し迷いながらもすぐ対応し、レヴィの体がしなり引くタイミングで足を出すとレヴィの腹にしっかりとめり込み、彼女は吹き飛ばされた。
「うぐっ……、ぅ……」
体は再生されるが計算能力が途切れ地面に広がったフィールドは収縮し消えていく。
身体中にとめどなく走る痛みを抑えながら、レヴィは恐る恐る立ち上がると、ファルス・ヒューナルは彼女に攻撃する前に声を掛けてきた。
『貴様は何のために戦う?』
「はぁッはぁッ……」
其れは分かっていた。今まで幾度となくアークスと競ってきたことを。40年前、六芒均衡や三英雄と後に言われるアークス達と熾烈な争いを繰り広げた事を。
しかしこのような無謀な事をするやつはいなかった。
たった一人で、戦力を削ぐこともなく、それでも死臭を感じさせない……間違いなく勝って帰ると確信を持って戦うやつなど有り得なかった。
『何のために、我にこのような無謀な勝負を仕掛ける?』
だが、その疑問はレヴィを苛立たせた。
【敗者】ならまだいい。彼とは契約をしたから。ビジネスの関係だから、意味や理屈を求めるのは仕方の無いことだ。
アークスだって、【敗者】に与する自分に目的を求めるのは仕方の無いことだろう。
だが【巨躯】までそんなことを言うか。
元々"仕方の無いこと"だと思っているだけで、聞かれて嬉しいような話題じゃない。
聞かれる度にいちいち相手の納得するような論理をわざわざ立てて、それっぽいことを言って、相手を納得させるのは不愉快だ。
そんなものは不本意だ。
本当は、理由も何も考えたくなどない。
「チッ……どいつもこいつも使命だ理由だ求めやがって……」
レヴィはグラりと揺れた体に芯を通すと再び両手に剣を持ち、ファルス・ヒューナルへ斬りかかった。
「自分が気持ちいいから戦うじゃダメなワケ?!お前たちはそんなに大義名分を求めないと戦えないの?!
【巨躯】!お前こそわたしと同じ快楽の為に戦うやつでしょ!!
あんたまでわたしに理由を求めないでよ!!」
ヒューナルは避ける。当然避ける。レヴィの攻撃などダークファルスの致死に値しない。
だがレヴィは諦めない。
「わたしはアークス以前に!戦いの中でしか生きていけない人間……自分の生き死にを秤に掛けることでしか満足出来ない人間なの!!」
――速く、さらに速く、さらにさらに速く。
剣撃のスピードは上がっていき、思考のボルテージも上がり、そして言葉端も強くなる。しかしヒューナルはその全てを受け止め、流し、対応しきる。
「わたしは死ぬ為に生きてる……!さっさと満足して!さっさと死にたいの!!わたしは死に場所を探すために生きてるの!だから、あんたみたいな中途半端な相手で死んでなんか居られない……
わたしはあんたじゃ死ねない!!」
ヒューナルは両刃を拳で受け止め、握り潰すように力を入れると弾き返す。
『それが貴様の想いか……』
これでもまだ効かないのか、なんてレヴィの焦燥は他所に、ヒューナルは顎を引きレヴィの姿を静かに見つめる。
焦点の合わない瞳に反した力強い表情、疲労しきっているというのに尽きぬ闘志。
ファルス・ヒューナルがどれほど圧を掛け、どれほど傷を付け、どれほど敗北を与えてもレヴィから意思の力を削ぐことは出来ない。
ファルス・ヒューナルはレヴィと戦うほど己の力がより高まっていくのを感じていた。
他のアークスと戦えば消耗し生きるか死ぬかしかないというのに、レヴィと戦うとダークファルス【巨躯】として益々力が沸き立ってきた。
だからレヴィは全く力を削ぎ落とすことが出来ないのだ。
【巨躯】はレヴィの力を己の中に取り込み、さらに強化を続けているのだから。
『我は感じるぞ……
我の奥底にある古き意志を……
【
しかしレヴィが退く選択肢など最初から存在しない。
ファルス・ヒューナルをより強いオーラが纏い、身の毛のよだつような恐ろしい恐怖が彼女を取り囲んでも、レヴィはキョトンと目を丸くしていた。
(何?コイツ……キレた?)
レヴィからしたら……慣れていた。
彼女が幼い頃に感じた死への強い恐怖を【巨躯】の力が呼び起こしてもレヴィはそれを打ち消せる強い死への欲求があり、価値がなくなり【敗者】に見捨てられるという恐怖を植え付けても尚、この戦いの勝利でそれを全て返済出来るという強い自信があった。
『なんと猛々しいアークスよ……』
ファルス・ヒューナルはさらに強い恐怖を纏い、レヴィに思い切り斬りかかる。
「ッ!」
彼女は咄嗟に両剣で受け止めるが、その勢いは止まらない。
『貴様にいくら恐怖を与えても止まることはない。其れもその筈……
貴様は我から与えられる恐怖に興味は無いようだからな』
「……何が言いたいの?」
力の押し合いをする前にヒューナルは剣を引き、レヴィが斬りかかるとそれを受け止め、其れは段々と甲板の後方へ後ろ足に進んでいく。
其れの後ろには、抜け殻となったダークファルス・エルダーがファルス・アームを生み出しながらレヴィの方へ近付いていた。
『貴様は我を利用するつもりか。我を通過点にするつもりか』
「そうだと言ったら?」
真っ暗な視界。しかし迫り来るファルス・アームの音は聞こえる。
レヴィは気丈に振る舞いつつもアイゼンハートを握る手に力を入れ、いつでも対応出来るように静かに息を止めた。
『ハッ。我も見くびられたもの……そこまで我に関心が無いというのなら、此処を貴様の終点としてみせよう!!』
ファルス・ヒューナルが甲板の端まで追い込まれた瞬間、其れは勢いよく飛び上がり……
頭部のコアまで吸い込まれると、とてつもない振動が甲板を揺らす。
「こらっ!……逃げるな!」
ダークファルス・エルダーは破壊された腕を再生し、10本の手を大きく広げ……甲板にはファルス・アームが勢いよく飛び付いた。
『逃げてなどいない……これからが本番だ!アークスよ!』
レヴィは我を潰さんと襲いかかるファルス・アームを避け、アイゼンハートを大砲に変えて下方に思い切り砲弾を放つと、その勢いに任せて飛び上がり腕のコアに向けて攻撃する。
「せっかくキメ顔で話すなら名前くらい呼んだらどう?!」
『我に言う事聞かせたくば……力尽くで聞かせてみせよ!』
彼女が腕に乗り上げるとエルダーはすぐに腕を回し、彼女を甲板に叩きつけるとそこへ天罰の隕石を投げ込んだ。
レヴィの体が凍りつき、そこにファルス・アームが襲いかかると、彼女は体を動かして無理やりその氷を破壊し、アイゼンハートで転換するとファルス・アーム達を逆に凍らせる。
体力はそこまで削れていないというのに、ダークファルス・エルダーは自らの意思で第二形態へ移行した。つまるところ、レヴィにとっては最悪の展開である。
「チッ……何強化されちゃってんの!?あと【残影】って誰?!」
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる