※この作品はR-18です。

MIDNIGHT   作:Libby博士

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番外編:○○とシャーロット(3)

 

 ――数日後。

 

 シャーロットはショップエリアを歩いていると、背後から聞き覚えのあるキャストの足音がした。

 

「あらあらあら?偶然ですねえ」

 

 彼女がそれに気付いた瞬間リサはすぐに横まで歩を進め、顔を覗き込んで声を掛ける。

 

 シャーロットは冷ややかな目でリサを見ながら腕を組んだ。

 リサはショップエリアだというのに傍らにアサルトライフルを持ち、引き金を指で柔らかく擦っている。

 

「ストーカーしてたのでは?」

 

「いえ全く。本当に偶然ですよお、お久しぶりですシャーロットさん」

 

「はぁ……ロビーエリアで引き金に指を掛けないでください。リミッターかかってますよ」

 

「リサにリミッターなんて意味を成さない……なんて言ったらどうします?」

 

 シャーロットの言葉はどう考えても常識であり正論だがリサの声色はどうも脅しとは思えない真実味を帯びていた。

 が、彼女の身内はどちらもアークスシップのフォトン使用リミッターによる弊害を受けない者だ。脅しの真偽で怯えるようなことはない。

 

「別に、避けて通報するだけですから」

 

 そう言うとリサは武器を下ろしキョトンと目を丸くしてシャーロットを眺めたが、すぐに表情を戻し笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、良ければ付き合ってくれませんかあ?」

 

「はあ?」

 

 シャーロットの中に何で?何処に?何を?なんて疑問が浮かび上がって行くと、リサはそれを全て答えるように彼女の腕を掴んで歩き出した。

 

「武器をですねえ、ちょっと強化しようかと思いまして……シャーロットさんもダーカーを一杯殺せるように、武器はちゃんと強化しておいた方がいいと思いますよお〜」

 

「ちょっ、痛、力強……!!」

 

 シャーロットは振り切ろうとしたがリサは全力で彼女の腕を握り締めており、引きずられるがままにアイテムラボへ連れて行かれる。

 アークスから数多の憎悪を向けられているドゥドゥなどという男店員に声を掛け、ショップ端末を起動してもらうとそこには見覚えのある武器の強化画面が広がっていた。

 

「ほらシャーロットさん、どう思いますかあ?エネミーが新たに増えたので、武器に付与する特殊能力も切り替えたんですよお。このソールは射撃武器向けでいいですねえ……」

 

「帰っていいですか?」

 

「いえダメです」

 

 リサの恍惚とした様子で武器を撫で回す様にシャーロットは呆れため息をつき、ついにチッ、と不機嫌丸出しの舌打ちを放った。

 

「あの、なんでワタシにしつこくするんですか?だる絡みする人は嫌いです」

 

「そうしないとあなたって何もしないじゃないですかあ」

 

「何もする気ないですから」

 

 シャーロットはとにかく一刻も早くこの場から去りたいだけだったのだが、リサは他人に連絡を取るような素振りもしない彼女の姿を見て揶揄うように悪戯めいた笑みを浮かべる。

 

「いけませんねえ。アークスたるものパーティを組む友人のひとりやふたり作っておかないと苦労しますよお?」

 

「アナタは友達いるんですか?」

 

 リサは自分からふっかけておきながらシャーロットの言葉を聞くと目を逸らしあらぬ方を眺めた。

 

「ふーむ、まずルビィさんを友達ってことにしましょうかねえ」

 

「全然人のこと言えないじゃないですか……」

 

「だからこそですよお。リサがビビッと来たなら仲良くなっておくのは損しない訳です。リサは普段友人とかそういうのはどーーだってよくて、撃って撃って撃って撃ちまくれればそれでいいだけなんです。なので気兼ねなく後ろから撃てる相手が欲しいんですよお」

 

 なら結局、欲しいのは友人ではなく肉のある的ではないか。

 シャーロットは喉元までそんな言葉がでかかるが、この相手にそんなことを言っても意味は無いと察しため息をつく。

 

「あの。もうひとりの方と変わってくださいます?アナタちょっと頭の方がおかしいですよ」

 

「可笑しいとは?正しいなんて誰が決めるんですかねえ?」

 

「一般的な社会倫理に反していればおかしいと言っていいでしょう。ワタシはアナタに後ろから撃つ許可なんて出すつもりありませんから」

 

「でも受け止めましたよねえ?」

 

「避けるより斬る方が早かっただけです」

 

「あれだけ至近距離なのに斬る腕前は相当な物でしたよお?」

 

「別にワタシの腕前とアナタのその歪んだ友人願望に関係はありませんよね」

 

「いえいえ関係大アリです。弱い人とパーティを組むのはリサ嫌なので。自分の身も自分で守れないような人のお守りをしても楽しくありませんから」

 

「アナタとワタシがパーティを組む前提で話をするのをまずやめてください」

 

 シャーロットは否定に否定を重ねているのに何故か流れはどんどんリサの方へと傾いていき、彼女は焦燥感を覚えていた。

 このまま否定を続けていれば、より大きな何かを要求され、それを飲み込む必要が出てくるのではないか、と。

 

「仕方ないですねえ。じゃあ一回試してダメだったらそこで終わりということにしませんかあ?」

 

「試す、とは」

 

「一緒に戦ってみればいいんですよお。もちろんリサはダーカーだけではなく?あなたも狙いますけど、三回までなら誤射ですから大丈夫ですよねえ?ねえ?」

 

 シャーロットは完全に否定したくてたまらなかったが、これ以上の否定という行いに恐怖を感じた彼女は渋々でも頷かざるを得ない。

 無論顔には出ないようにしながら、ではある。

 

「はぁ……じゃあ一回行くのでそれで諦めてください」

 

「はい言質は取りましたからねえ。逃げても無駄ですからねえ〜」

 

リサはその言葉にようやくアイテムラボから離れる気になったものの、代わりにシャーロットを引っ張ってロビーエリアの方に進んでいった。

◇◇◇

 

 惑星ナベリウス、遺跡。

 今度の二人は向かい合う事はなく、共に同じ方向を向き同じ敵に対して武器を向けていた。

シャーロットがカタナを振るうと彼女の周囲から飛び出たエネミーを銃弾が貫き、飛び上がり背へ突き抜けるとランチャーの弾が爆発しエネミーは倒れていく。

 振り返り、リサの後方に現れたエネミーをバレットボウで撃ち抜くと再び立ち位置を戻し、リサに背を向けカタナを構えた。

 信頼の成せる完璧な連携攻撃かと思えるが、後方に立つリサは時々素知らぬふりをしながらシャーロットへ銃弾を打ち込んでいったりもする。

 

(悔しい……意外と相性がいい。後ろから撃ってこなきゃだけど……)

 

 シャーロットはカタナに付いた血を払うと、横目でリサを行事する。

 リサは楽しそうに銃を両手に持ち、引き金に指を掛けながらニコニコと辺りを見渡してエネミーの気配を探していた。

 バレットボウを握り遠隔同士になっていながらですら噛み合いを感じるのは、リサが精鋭ではなく無名の無称号であることが信じられない程高い実力を持ち射撃精度から回避行動まで完璧に行動して、尚且つシャーロット側に合わせる余裕すら見せているからである。

 

「やっぱりあなたと一緒だといつもより気持ちいいですねえ。そんな気がしてたんですよお」

 

「別に、アナタと共闘したことなんてないですよね?」

 

「リサは相性いい相手なら撃ち合いしているだけで分かりますから」

 

 そう言いながらもエネミーが居ないからかアサルトライフルの照準はシャーロットの頭に向き、流れるように引き金が引かれた。

 シャーロットは反射的にカタナを抜いて銃弾を切り裂くが、鋭い刃に光る火花は葉を一枚燃やしシャーロットの髪を焼きかける。

 が、彼女はそれすら避けると髪を払って納刀し、リサをじっとりと半目で睨んだ。

 

「それ、逆の方がまだ健全だと思います……あの、どさくさに紛れて撃つのやめてください」

 

「あら、避けたからいいじゃないですかあ。あとあなた、なんだかんだ他のアークスに撃っても無視してますしねえ」

 

「アナタのそのよく分からない好感が別のアークスに向いてくれるなら喜んで撃たれるのを見守りますよ」

 

 遺跡であれど二人で探索している訳もなく、この道程の中でいくつもすれ違うアークスたちにもリサは容赦なく発砲しており、ぎゃあぎゃあ叫びながら逃げていく様を見てシャーロットはほくそ笑んでいたのである。

 

「でもそんなに面白くなかったのでやっぱりあなたを撃ちますねえー」

 

 しかしシャーロットの意思に反してリサはまだ彼女に執着しており、そんなことを言いながら彼女へ照準を合わせた。

 これでは"一回一緒に行けば終われる"なんていう甘い考えを執着で上塗りされるだけだ。

 

「はぁ……仕方ない。ご主人様に一回怒られますか」

 

 シャーロットは意を決しそう呟くと、端末を操作した。

 その瞬間身に付けていた武器や防具が一気に外れ、代わりに法撃力を上昇させるユニットを装着し、ロッドを手に持った状態で彼女はリサに向かって武器を構える。

 

「あらあらあら?フィールドでクラスチェンジですかあ。それはご主人様よりアークスにたんまり怒られますよお?」

 

「別にアークスにはバレないからいいんです。兎にも角にもアナタの相手をしているほどワタシは暇じゃありません」

 

 シャーロットは即座にテクニックをチャージし、リサへフォイエを放った。

 リサは驚く様子もなくすぐに避けるが、シャーロットも恐れることはなくリサへ向け再びテクニックを準備する。

 

「撃つならテクニックでも撃てます。今日はアナタを倒して金輪際会わないということにしましょう」

 

 リサはシャーロットの鋭い発言に傷付く素振りを見せるかと思えばそんなことはなく、むしろ嬉しそうに微笑みアサルトライフルを向けた。

 

「そうそう!こういうことがしたかったんですよお!じゃあリサが勝ったら今後も会いますからねえ、よろしくお願いしますねえ!」

 

「……加減はしません。どうせキャストは頑丈ですから」

 

「加減なんてされたら瞬殺しちゃいますよお。だから全力で来てくださいねえ?」

 

 武器を構える様は互いに自信に満ち溢れており、どちらも自分が勝つと確信している。

 だからこそ、二人は容赦なく本気で向かい合って、戦い合えると確信した。

 




◇◇◇

 遺跡の中でも開けた場所。数多のアークスの墓標代わりに武器が刺さり保存されている中、シャーロットとリサはフォトンを纏わせ激しい戦闘を繰り広げている。
 シャーロットのフォトン感応力は高く微細な濃度や空気の変化を感じ取ってフォトンを慎重にコントロールし、武器の補助に頼らず高精度なテクニックを発動させていた。
 それに対してリサもフォトンを収束させ生み出される弾の威力は見た目よりもずっと大きく、一発の銃弾は大砲の一発のようにけたたましい轟音を纏って爆発を起こし、シャーロットから打たれる壁のように厚い法撃も照準を合わせた状態のまま全て見切って回避しきっていた。

「お強いですねえ。あれから鍛え直しましたあ?」

「研鑽を積むのは当然です。お嬢様程ではありませんが、ワタシも即戦力として訓練プログラムをきちんと受けていますから」

 お嬢様、と言われてリサが想起するのは自らの内に潜むもう一人の人格を目覚めさせた異端ではなく、ダークファルス【敗者】の護衛という概念である。
 そんな彼女"程"とシャーロットが言うのであれば、レヴィに求められている要求値は相当な物であり、シャーロットも己を過小評価をしているだけで通常のアークスよりもレベルの高い訓練プログラムを受けているはずだ。

「そうなんですねえ。どんな訓練をしているかは知りませんが、対人戦想定の訓練もきちんと行っているということは、アークスと敵対する想定もしているんですねえ」

「仕事ですから。どんなプログラムが与えられようと給料が出るならやります」

「人を殺すという仕事でも?」

「ご主人様たちの命を狙う相手なら、討つのは当然です」

「罪のない相手でも、言われれば殺しちゃったりするんですかあ?」

「誤解のないように言っておきますが、ご主人様がそのような正当性のない任務をワタシに与えることはしません。仮にそんな汚れ仕事があるとしたら、それはワタシの役割ではありません。ワタシはあくまでクリーンな存在であるよう徹底されていますから」

 それは【敗者】からシャーロットに言われたことであり、シャーロットも今まで与えられた仕事内容から迷いなく断言出来ること。
 レヴィが自分より余程厳しく過酷な課題を与えられていることも、自分には振られないようなアンタッチャブルな任務を受けていることも分かっており、だからこそシャーロットに置かれた立場を明確な真実として正しく説明出来た。

「……」

 リサはその言葉を聞いた上で、シャーロットの急所に照準を合わせた。
 だがリサはロッドを構えるとそのまま一歩足を踏み出し、テクニックをチャージさせる。

「リサさん。ワタシはなるべく普通のアークスとして活動できるように訓練を受けていますが、一般的なアークスの戦い方をしないような人達の技術も見てきました。
お嬢様曰く、フォトンアーツやテクニックなどの一般技術は普遍的で最適化されていますが制限がかかることで戦いにくさを感じるようです。ワタシとしてはどちらの意見も理解できますが、強いていえば……」

 だが、チャージは囮であり。

「どちらも使えるようになっておくべきだと思いました」

 溜め込んでいた光の流動が一気に滞ると、溜め込まれたフォトンがロッドの先に充填されフォトンとして纏われる。
 シャーロットはそのままロッドをパルチザンのように構え、鋭い先端を一直線に突き出してアサルトライフルを宙に放った。
 リサの手から銃が滑り落ちると共にシャーロットのロッドはリサの眼前までたどり着き、今すぐにも放てると言わんばかりに雷のテクニックをチャージし首元に突きつける。

「あらあらあら。ロッドですがパルチザンに類似したフォトンアーツですかあ。面白いこと考えますねえ」

 シャーロットはリサが別の武器……二本目のアサルトライフルやランチャーなどを取り出して抵抗する可能性を考慮していたが、予想に反してリサは両手を上げぱっと引いた。

「残念ですねえ、降参です。武器が無くなったらリサはどうすることもできませんからねえ」

「……」

 シャーロットはテクニックを何時でも打ち放てる状態のまま恐る恐るロッドを下げていくが、リサは応戦するような挙動はおろか殺意すら皆無で残念そうにシャーロットの顔を見つめていた。

「では不承不承ですが約束は守りましょうかあ。
さようなら、シャーロットさん」

 満足したのだろうか、とシャーロットの心の中で小さく声が呟かれる。
 それに返事するようにリサは背を向けてライフルを手に取り、それをアイテムパックにしまうと彼女から離れるように一歩足を踏み出した。
 そこで、シャーロットは初めてリサに対して好奇心が沸いた。

「いえ、その必要はありませんよ」

「おや?」

 シャーロットの言葉にリサは振り向く。
 相変わらずの赤いつり目で目付きは悪いが、シャーロットの表情は今までで一番柔和に微笑んでいた。
 リサは確かに頭の可笑しい人間だが、人を撃つことに躊躇いのない彼女がどうしてそこまでシャーロットに友好的な態度で執着するのか、彼女がどうしてあれほど多くの情報を独自に得られているのか、気になったのである。

「しつこく追いかけたり絡んだりすることはもうしないでください。私は独りの時間を奪われるのは大嫌いなので。私はあくまで私のペースで動きたいんです」

 悪質なストーカーとして切り捨てるだけならこんなことは言わない。
 シャーロットも彼女なりにリサと上手く関わろうとしたからこその言葉だ。

「ですがプライベートにどのような関係を築いても構わないとはご主人様から言われております。アナタの言う友人の必要性は理解していましたから、そこまで私に拘るのであれば一定の距離を保った上で交流するくらいならいいと思います」

 その言葉にリサは目を見開いてニコニコと微笑み、シャーロットの顔を覗き込んだ。

「ふふ、ふふふ。いいですよお?リサもちょっと攻めすぎたと思ってましたからねえ。友人になってくれるなら控えますよお」

「……そうですか。なら構いません」

 本当に控えるのか?と一瞬シャーロットの中に走った危惧はリサの表情を見て振り払われ、彼女が柔和に手を振り背を向ける姿にシャーロットは声を掛けた。

「気が向いたらまた会いましょう、リサさん」

「はいそれではまた」

 かくして、シャーロットに初めての友人が出来たのである。

二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。

  • 続編として作品を分ける
  • 分けないで一つの作品でまとめる
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