カストル:【状態異常防御】【殺リク不孝】【迅速】【毎ダメージ改】【凍結即死】【マヒ即死】【殺リク加速】【使用不可:悪魔の気まぐれ】【使用不可:ランダムアタック2】【調整:デビルウィムCによる凍結と麻痺の確定付与】
ポルックス:【状態異常防御】【AP究極成長】【弱攻撃無効】【時限貫通】【影縫い】【使用不可:悪魔の気まぐれ】【調整:デビルウィムPによる移動不可・行動不可の確定付与】
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【敗者】はその説明を見て納得した。
使用不可、と書かれているのは気になる所だが、使用不可であるなら考慮事項として優先順位は下げていい。
「演算が完了した。どうやら、カストルとポルックスとやらの攻撃には特定のパターンがあるらしい。
カストルは状態異常を加えたあとその状態異常が付与された相手を即死させる弾を撃つが、代わりに消耗が激しい。
また、こちら側が出した眷属を倒す度に、その主である僕にもダメージを与える事が出来るみたいだ」
どうやらカストルは双子でありながら片方とは種類が別で、キャストやマシナリーに分類されるタイプのようだ。
【敗者】が感じていた過剰なリソース消費は"殺リク不孝"によるもので、カストルの俊敏さも"迅速"の特性によるものだ。
だがレヴィはそれを聞いて訝しむ。
当然の疑問だ。
「それってあんたがカストルを相手するのは不味くない……?」
だが【敗者】にとって殺リク不孝は懸念事項ではあっても致命的な天敵にはなり得ない。
どちらかといえば、カストルの"即死"に値するスキルの範囲内にレヴィがいる方が余程致命的だと考えた。
「それに関しては小型の眷属を出さず、大型で仕留めろというだけの話になるだけだ。
特に、カストルが与える氷属性と雷属性の状態異常は貴様には効くが僕には効かない。僕が相手することで即死のリスクを回避することが出来る、という訳だ」
リソースは余分に削られるかもしれないがそもそも【敗者】はダークファルス。レヴィとは根本的に生命力に差があり、この地では【敗者】のリソース回復も行いやすい環境だ。だからこそ最終的に倒せれば、後は多少の痛みを我慢するだけ。
それに対し凍結即死と麻痺即死から身を守れないレヴィがカストルのデビルウィムCとデス・レイの餌食にされれば【敗者】でも対処不可能になる。
「なるほど……」
レヴィが納得すると【敗者】はポルックスの方に目を向ける。
ステータスを見る限り現時点での脅威は彼女の方だ。
彼女相手ではこの僅かな作戦会議の時間すら煩わしく感じる程急ぐ必要がある。
「ポルックスの方だが、どうやら軽度な攻撃は全て無効化し、相手の動きを妨害する非属性状態異常を掛けるらしい。
それと、時間が経つほどより強化されていき、武器にダメージを与えるとそのエネルギーを通してその装者にも傷を与えることが出来るようだ」
ポルックスの方だけD型生命体の為フォトン攻撃が更に有効になるようだが、レヴィにそれを言っても仕方がない。
それに、二人が話している間にもポルックスは段々と強化されていっている。
攻撃の回数は増え、火力は上がっていき、弱攻撃から強攻撃の連撃までポルックスのギアは上がり続け、時限貫通まで有効になれば実質カストルの殺リク不孝と変わらない仕様で、【敗者】は過剰にリソースを消費することになりレヴィはガード攻撃が取れなくなる。
移動不可・行動不可を掛けられた上で時限貫通の攻撃を直接受ければ命に関わる事態になるだろう。
「つまり、ポルックスはなるべく早く致命傷を与えて倒さないとめんどいってことね……」
(二人はC.A.R.D.を使ってないけど見えないだけ?ダイスが使われないって前提で動いてるけどそれが嘘だったら?ダイスが使われるタイミングはどこ?使われたらどうする?どうやって対処する?わたし達がダイスを使う方法は何?)
レヴィはグルグルと思考の渦に呑み込まれていき、急いでポルックスを倒そうと焦った様子でブラックローズを強く握り意識を集中させるが、【敗者】は分析の中で薄々勘付いていた。
この戦いは二対二ではなく、一対一対二で戦うべきだということに。
「試算完了だ。レヴィ、作戦を変えよう」
【敗者】はレヴィに声を掛け、彼女の方に振り向こうとするが、そこでカストルが大砲を構え体を大きく反らしエネルギーを溜めた。
レヴィにとってその音は聞き覚えのあるものだった。空気の震えや金属が擦れ合い、エネルギーが収束され電気が唸るように反応する。
一瞬の鼓膜のオーケストラにレヴィは衝動的に手を伸ばし、【敗者】の方へ指を向けた。
「ッ……トルパス!」
レヴィがそう詠唱した瞬間、【敗者】の座標は一瞬でカストルの後ろへ遠のき、彼女の放った砲弾は空を貫き岩を削る。
「ッレヴィ?」
「あ、いや……この音、聞いたことがあって……」
【敗者】の驚いたような声にレヴィはハッと意識を取り戻し頭を振った。
その音は現実世界ではなく、夢のような場所……大いなる陰の精神世界の中で聞いたもの。
「そう、ウェイブモーション。ウェイブモーションって、大いなる陰が言ってた……」
「大いなる陰がカストルの技を使っていたということか?」
レヴィはその言葉に頷く。
大いなる陰がカストルを学習したのか、大いなる陰の学習データからカストルが生まれたのかは彼女には分からない。
だがレヴィは確信した。あの時と違いダイスの音が聞こえない。だというのなら、あの時とは違い勝てる可能性があるということだ。
(落ち着け……大丈夫、行動パターンは見えてきた、向こうはC.A.R.D.もダイスも使わない。なら不確定要素は極限まで削られるはず。普通の対人戦闘で大丈夫……)
レヴィは自らの焦燥を抑え込みゆっくりと深呼吸をすると、ブラックローズをそっと握り直した。
「……あんたの言い分から考えるに、カストルは手早く戦闘を終わらせようとする筈だし、逆にポルックスは戦闘を遅延させようとする筈。
そうなると、相反する有利条件で互いに協力意識みたいなものが生まれるとは思えないから……」
「大型の眷属を使ってカストルを牽制しつつもレヴィと協力し、ポルックスから順番に倒すのが良さそうだな」
二人はこくりと深く頷くと【敗者】は端末を仕舞い、レヴィは逆にブラックローズを片手に持って懐を探る。
「でも、眷属の消耗があんたにどれだけのダメージを与えるかは未知数だから気を付けてね。あんたにフリーズとショックはかからないけど、眷属にはかかるんだからさ」
「当然だ。だがこれは前座に過ぎない。あまり全力を出して、倒れたりするんじゃないぞ?」
「そんなこと分かってるっての!」
レヴィは高らかにそう叫ぶと端末を取り出し、画面に表示されたボタンを操作した。
やることは決まった。ならあとは完璧にこなすだけ。
早いリズムのデジタルな音が流れ出す。
端末を閉じてしまうと代わりにアイゼンハートを掴み、宙に大きく投げ込んだ。
「さっきまでとは違って、こっちはアイゼンハートの領域を使える……!」
辺りに半球型のフィールドが形成されると内部の岩や土が一気に舞い上がり、次々に転換されポルックスに飛びかかっていく。
足取りの早いポルックスも矢継ぎ早に襲い掛かるエネルギー弾に損傷は受けないものの完全に足止めされており、レヴィはその隙を見てブラックローズを抜刀し一気に接近した。
「……!」
しかしその中でもポルックスは動きだし、遠く離れたレヴィに当てようと剣を大きく振り上げて力を溜め込む。
その腕に込められたエネルギーは膨大で、振り下ろせばレヴィが逃げられる余地はない。
「くっ……」
しかしそこでカチリと跳ねるような音が鳴り、ポルックスの動きが完全に静止する。
【敗者】の時間停止の力で止まったその一瞬の時間にレヴィは大きく踏み込んで前進し、ポルックスの後方へ回ると時間停止が解除され剣が振り下ろされる。
レヴィはそのまま腕を目掛け剣を振るうがポルックスは直ぐに振り返り、刃が交わる。
火花を激しく撒き散らしながら直刀の細い刃と寄生された大柄の大剣が右往左往に絡みついていく。
その交わりの中でレヴィの体はポルックスの上腹部から集中する高エネルギーに気付き、力を入れる。
(腹にあるエネルギーコアを破壊すれば……!!)
レヴィはブラックローズをぐんと伸ばし、勢いよく思い切り斬り上げポルックスの刃を天に払うと今度は最大限まで短く縮め、柄の根元を支えながら一気にポルックスの鳩尾まで刃を捩じ込む。
ドクドクと脈動するそこへブラックローズを勢いよく穿ち、全体重を掛け吹き飛ばす勢いで押し込むが刃が入っていかない。
「なッ……?!」
そこでレヴィは【敗者】の言葉を思い出す。
("軽度な攻撃"は無効化される……ブラックローズの刃じゃ火力が足りないってコト?!)
狼狽えるレヴィの元へポルックスが剣を振り下ろすが、寸前で眷属がポルックスへ飛びかかりレヴィはギリギリで抜け出す。
「チッ……【敗者】!ブラックローズ・インフィニティ使っていい?」
「……いいだろう」
「了解!」
ブラックローズ・インフィニティは傘骨を八本消費して発動する技……使えば傘鞘か刃のどちらかが完全に使用不可能になる。インフィニティの場合使用不可能になるのは刃であり、傘骨による必殺技も失うため実質的にブラックローズは機能を失うのだ。
傘骨のカートリッジは戦闘状態で行うには時間がかかるし、刃の再使用可能時間は30分。
そうなれば大いなる陰の相手はともかくカストルはアイゼンハートを使って倒すしかないだろう。
「次にポルックスが腕を上げて攻撃する時……その時に、確実に倒す。
その間、わたしはどうしても無防備になるから……その時は守ってほしい」
「当然だ。その代わりに、確実に一発で仕留めろ」
「よし……やりますか!」
ポルックスは容赦なくレヴィへ切り込んでいく中、レヴィはなるべくブラックローズを損傷させないように防御する。
「ッぐ……!!」
アポス・ドリオスが討伐されると【敗者】は胸を抑え足元が崩れる。
殺リク不孝の力でアポス・ドリオス程の大型ダーカーを狩られると、いくらその数十万体以上のリソースを持つ【敗者】と言えど走る痛みは相当な物であり、【敗者】の元にカストルは容赦なくデス・レイを放つ。
「【敗者】!」
レヴィは床に落としたブラックローズの傘鞘を拾うとカストルの頭に一発弾を放ち、それは直ぐに跳ねられるもアイゼンハートの攻撃は全てカストルへ向く。
しかし、それを見て【敗者】は痛んだ胸を抑えて叫んだ。
「構うな!僕は大丈夫だ」
「でも……」
レヴィの不安な表情を遮るようにアポス・ドリオスの咆哮が鳴り響き、大地が揺れる。
【敗者】はその衝動の中で姿勢を正し、高らかに声を張り上げた。
「言っただろう!ポルックスを倒す為に、貴様を守ると!
貴様は貴様の役目を果たせ!」
(痛みに耐えろ、毅然に振る舞え……【敗者】たるもの、不安を他人に悟られるな!!)
【敗者】は拳を握り締め、再びカストルが彼女に向かわないようテクニックを放ち攻撃を仕掛ける。
「ーーッ……!!分かった!!」
レヴィは【敗者】が心配でならなかったが、どうにかポルックスへ向き直った。
自分の心の迷いはただ状況を悪くするだけで、【敗者】をより危険に晒すだけだ。
「落ち着け、冷静に考える……ポルックスが次に技を放つ時を、……クラックを打つ時を!」
弾が回復するとすぐポルックスへ放ち、剣の軌道が逸れるとすぐに刃を差し込み彼女を追い込んでいく。
パターン化された動きにレヴィはどんどん洗練されていき、防御ばかりだったレヴィは次第にポルックスの先を読む一手を取り、アイゼンハートの攻撃リソースをカストルと半分ずつに分け、ポルックスの堪えが効かなくなる一瞬が来るまで待ち続ける。
「一刀を穿ち……斬りあげる!」
レヴィの鋭い刃がポルックスの顔のスレスレを過ぎると、彼女は遂に大きく後退し剣を振り上げた。
――今だ。
「
レヴィは真っ直ぐに声を放ち、刃を天に突く。
瞬間、抜刀していたブラックローズの周りを傘鞘が畝りながら被っていき、風船のように膨らむと石突きの銃口は大きく広がった。
「ブラックローズ・インフィニティ!!」
八本の傘骨が地面に刺さり内部の刃から力が失われていく中、無防備な状態のレヴィに飛んでくる砲弾を【敗者】は跳ね返しながら、更にポルックスが溜めた刃が振り下ろされそうになった瞬間に低速化を掛け動きを鈍重に変化させる。
レヴィはその隙を見逃さず、コアに銃口を押し付けるとそのまま傘のボタンを押し込んだ。
「ッ!」
その瞬間、辺りにはけたたましいほどの爆発音が鳴り響き、ポルックスの腹部のコアに過剰とも思われるほど多くの爆発的な砲弾が次々に撃ち込まれていく。
「うおりゃぁぁぁあああああああ!!!」
レヴィは砲撃の衝撃で吹き飛ばされながらも照準だけは外さずひたすらポルックスに向き合っており、爆風で緑色の光と悲鳴のような声が掻き消されていった。
「はぁ……はぁ……」
レヴィはポルックスの生体反応が消滅したことを察すると、すぐにブラックローズを確認する。
柄から先の消滅したそれを傘鞘にしまい込むとカストルの方に向き直り、一発放ってからアイゼンハートの転換を辞め片手剣へ変え切り込んだ。
「ッ!」
カストルは接近してくるレヴィに大きくカーブを描いて投下される弾や直線にまっすぐと進んでいく弾をいくつも放ち、彼女の行く手を阻もうとするがレヴィはそれらの全てを回避し、真っ直ぐに刃を突き込む。
カストルの俊敏な動きはレヴィの刃もあっという間に回避するが、その背後から幾つもの眷属が現れ攻撃を仕掛けるとそれには回避しきれず被弾し、カストルは報復と言わんばかりに弾を放とうとするが眷属たちはあっという間に消える。
「くっ……無駄にすばしっこいんだから……」
レヴィは一言愚痴を零すと再びカストルへ攻撃を仕掛けようとするが、カストルは大きく体を反らしエネルギーを貯め込む。
【攻撃予兆】【デビルウィムC】
【敗者】はモニターを確認するとそのように書かれており、演算の結果レヴィに直撃し凍結と麻痺を与えることが予測された。
(即死狙いか……させる訳にはいかない!)
灰色の世界。【敗者】はすぐに時を止めるとレヴィの体を掴んで転移し、デビルウィムCの軌道から彼女を離す。
時間停止が解除されると何もない場所へ砲弾が放たれるが、カストルはすぐに二人へ照準を合わせデス・レイが発動した。
【敗者】はそれも時間操作で避けるとレヴィの武器をちらりと見る。
ブラックローズは使い物にならない。
だがC.A.R.D.や製作途中のライデンシャフトは使用不可能であり、他ローズウェポンではカストルを倒すのに時間がかかる。
「レヴィ。アイゼンハートをスナイパーライフルに変えろ」
「ライフル?わたしが後衛ってこと?」
レヴィは困惑した。【敗者】は彼女が盲目だと分かっているはずだ。だというのに、一番目を使う武器を指定してくるとは一体どういうことなのかと。
「あぁ。貴様が
それを眷属で補えばカストルの殺リク不孝で式の構築に支障をきたす。
だから貴様が奴を殺せ。絶対に誰にも邪魔されない状況で、相手を殺せる一瞬を見極めるんだ」
「じゃあ、任せるから」
「今回ばかりは技術を問いはしない。当たることを祈れ」
「……!」
レヴィはそれを聞くとゆっくりと頷き、アイゼンハートを変化させる。
【敗者】は分かっている。レヴィが盲目なことも、レヴィがスコープも無しに運だけで相手を狙撃していることも。
だから、彼は彼女に基礎として教えた目で見て技術で当てるという領域から逸脱した、彼女なりのやり方を指定した。
それは【敗者】なりのレヴィへの信頼。
単に彼女の運任せにするのではなく、その基礎を学んだからこそ出来る応用のやり方を彼女に求めている。
「では、始めよう」
【敗者】はそれだけ言うとレヴィに背を向けた。
彼の背後に二つの魔法陣が現れると時間停止が解除され、空間から二本の剣が飛び出す。
それを両手に掴むとすぐに足を踏み込み、カストルの方へ飛び出した。
彼は足を軽く踏み舞うように二本の剣を振り上げ、まとめて払う。
(人型の【敗者】が剣使ってる所なんて初めて見たかも……)
レヴィは感嘆しつつも弾が当たらないよう物陰に移動すると匍匐しそっと銃口を構える。
【敗者】は時間操作で高速移動し、後方に回ると片方の剣は納刀された状態で横に凪いだ。
(なるほど、ダークファルス・ルーサーの挙動と似た感じの動きか……
なるべく相手を正面に捉えながら上半身の力と剣に込められたエネルギーだけで攻撃を仕掛ける感じで、前面を狙う都合で範囲に制限がかかるから時間操作の高速移動と足のステップで照準を合わせる感じ……これは剣術ってより照準を合わせてそこに刃をねじ込む、ダーツみたい)
【敗者】の動きはレヴィと大きく違う。
レヴィは戦士であると同時に暗殺者でもあり、彼女の動きは軌道や攻撃位置を予測させないために一定の範囲や場所を攻撃する事を避けている。
それに対して【敗者】の動きはあまりにも"わかりやすい"。だがその分かりやすさをカバーするために、彼はありとあらゆる手段を講じていた。
それゆえかレヴィは【敗者】のダーツのような剣の動きに非常に興味があり、彼が剣を当てるのではなく剣を動かす事で独自のテクニックを発動しているのも興味深いものだった。
(【敗者】は剣士ではない、でも時間操作によるフェイントやテクニックによる援護ができる……これによってダークファルスの力押しだけじゃないテクニカルな戦闘を確立してるってワケね……)
そう思いつつも、レヴィは【敗者】のやり方を見てトリックスター特有の物足りなさを感じていた。
彼女は自分が作る最後のローズウェポン……レッドローズのことを思い出していたが、【敗者】の方はそんな事を気にする余裕もなくカストルに休む間もなく猛攻を仕掛けていった。
カストルの照準がレヴィを定めた瞬間【敗者】は妨害するように正面に立ち、辺りを眷属が覆うと殺リク不孝の影響を受けないようカストルが攻撃を行った瞬間一斉に転移し、再び現れて攻撃の雨を浴びせる。
「……」
レヴィはスナイパーライフルを構えカストルの頭に銃口を向ける。
カストルの攻撃が眷属に当たると【敗者】の動きが一瞬鈍るが、その瞬間にレヴィは反射的に叫んだ。
「
カストルの動きが完全に静止すると【敗者】の体は一瞬強ばり、その後にすぐ体勢を立て直す。
「マジック、……か……」
「そういや言ってなかったっけ。時間停止の再現で思いついたんだけど……」
レヴィはてへぺろ、と言わんばかりに茶目っ気のある様子で【敗者】にウインクするが、それを見て彼は呆れた表情を浮かべた。
「……次からは発動次第報告するように」
「うん。次からはそうする」
レヴィはそう返事するとマジックが解除され、再びカストルに狙いを定めた。
【敗者】の動きとカストルの動き、両方を見ながらエネルギーを貯めていく。
アイゼンハートの転換により周囲のオブジェクトを消しながらもレヴィは力を貯め、最大出力がチャージされると武器の紅い模様が宇宙色に染まっていく。
「焦るんじゃない。あと10秒待て。そうすればカストルの生命力が一発の銃弾で尽き果てるようになる」
「あと10秒……」
【敗者】はそう呟くと、剣を横に凪ぎカストルの照準をずらす。
彼はカストルの毎ダメージがどれくらいの頻度でどれ程の生命力を奪うか試算しており、レヴィが撃ち込む一発で確実に倒せるよう時間稼ぎをしていたのだ。
「必ず当たるように僕が隙を作る。チャンスは一回だ。出来るか?」
「もちろん……!」
そう言ってレヴィはそっと深呼吸する。
――大丈夫。自分はスナイパーで弾を外したことなんてない。落ち着いて十秒数えて、確実にタイミングを見定める。
レヴィは完全に集中した。
【敗者】の眷属が撃たれてもレヴィは微動だにせず、【敗者】が言う十秒の先、カストルを一発で倒せる隙が来るまでただひたすらに照準を追いかけ合わせ続ける。
三、二、一。
カウントが終わったあと、レヴィの頭にピリっとした電撃のような直感が走る。
今だ。今撃てば、見えなくとも必ず当たる。
レヴィはカストルのいる方向に照準を合わせたまま溜め込んだ一撃を放った。
その弾は【敗者】の横を通り抜け、カストルの頭に完全に命中し彼女の体を内側から引き裂いていく。
「よし……!」
【敗者】はカストルの足元が緑色に発光するとすぐに剣を仕舞い、レヴィの元へ歩み寄った。
カストルは光に包まれ完全に消えていくと、レヴィも安堵して姿勢を崩す。
「よくやった」
その言葉にレヴィはアイゼンハートを仕舞い、ブラックローズの傘骨を取り出した。
刃の回復はしていないがカートリッジの交換はしておかなくては。
レヴィは傘を開き傘骨を抜いていると、【敗者】が隣に立ってエネルギーの使い切った傘骨を受け取り倉庫に仕舞う。
彼は見てくれ傷一つ付いていないが内部は大分傷付いているように感じられた。
「大丈夫?カストルに大分眷属をやられてたけど……」
そんなことを言いながらカートリッジの交換が終わると、レヴィはブラックローズを腰に差し立ち上がる。
「なら、貴様の力を僕に寄越せ」
「え?どうやって……ひゃっ!」
【敗者】はレヴィの腕を掴むと引き寄せ、彼女をギュッと抱きしめた。
レヴィはカストルやポルックスのような実力者相手では一発当たると即アウトの体である。
そんな非常に危うい、言わばHP1の体でありながら二人の両方を相手して被弾することなく倒しきった。
レヴィの生新しい傷すらない体に触れて【敗者】は安堵を覚えてから、そっと体を緩めて彼女にキスをする。
「な、なにして……」
レヴィは顔を赤くして体を強ばらせるだけだったが、その間に【敗者】はレヴィからエネルギーを取り込み損傷した穴を埋めるようにダーカー因子と融合させながら広げていった。
力を取り込むと彼の体も非常に軽く感じる。
特に、レヴィの顔を見ていると己の力の高まりを感じられた。
「こんな所でちゅーなんて……むむむ……」
【敗者】は体を離すとそっと肩に手を置く。
「寄越せと言っただろう。グラン類似エネルギーで少し融合しただけだ」
それを聞くとレヴィは目を輝かせ、ぱぁっと顔を明るくした。
「じゃあ、わたしがあんたの充電器になれるってこと?!」
「自分のリソースも分かっていないのに充電器か……?」
「でも、リソースはあんたの予想以上にあるんでしょ?」
レヴィの言葉に【敗者】はからかうようにため息をついたあと、前を見て意地悪く笑みを浮かべた。
「だったら、枯れるまで搾り取ってやろうか?」
「レヴィ様のバッテリーは、そんな簡単にバクハツしないんだから!」
「瞬間湯沸かし器のようなメンタリティで言えることじゃないな」
と言い合いつつも二人の空気は和やかなものであり、彼らは緊張した体と心を解しきると顔を合わせ笑いあい、それから姿勢を正す。
「……行こう、大いなる陰はすぐ傍だ」
彼のゆったりとした歩行にレヴィは導かれつつもその体温と繋がりを感じていた。
互いの目標の為全力を尽くし、共に戦うバディとして、この壁は必ず超えなくてはならない。
二人は早足でダーカーの巣窟を進んでいくと、崖や木に阻まれて行先の見えない景色に段々蔦が張り菌の胞子が飛び交うようになっていた。
そして遂に、彼らは大いなる陰を目に収める。
それも、数百メートル先で、だ。
「全く……なんだこの大きさは?」
「ナベリウスの大樹くらい大きくなってるみたいだし……」
彼らの視界に映ったのは大いなる陰のほんの少し。
だがレヴィにもエネルギーの輪郭が分かるほど巨大化しており、サイズは天井にあるアークスの市街地だったものの高層ビルにめり込むほどだった。
「しかも、体表面にダーカーが取り込まれている……
これはこれは。上部にはファルス・アームまで居るぞ。大型のダーカーも躊躇いなく飲み込む事が出来るとは、とんでもない学習能力じゃないか。実に面白い……」
「面白いとか感動してる暇ないから……」
【敗者】の言う通り、大いなる陰は赤紫色のグロテスクな肉の中に数多のダーカーが取り込まれており、大型ダーカーの姿を見て彼は楽しそうに微笑んでいると、体表面に囚われているエネミーと全く同じものが緑色のエフェクトと共に地面から現れる。
「ほら!呑気なこと言ってるからエネミーが出てきたし!」
「これはトラップだ……どちらにせよ出てくるだろう」
【敗者】はゆっくりと呼吸すると指輪の位置を調整し、己の内側に意識を寄せた。
グラン類似エネルギーとの融合によってか、いつもよりどうも感覚が機敏になっている。
彼は「これなら
「レヴィ、休憩は必要か?」
【敗者】の言葉にレヴィも答え、イノセントローズを取り出しぐっと握り締める。
「全く!わたしを誰だと思ってるワケ?」
「なら大丈夫だな。行くぞ」
ここまで来たら大いなる陰もそうそう逃げられないだろう。レヴィはそう確信し、目の前を塞ぐダーカーに向かい走り出した。
「あんま同じこと繰り返してると冷めるだけなんだからね、アンプラム・アンブラ!」
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる