二人は目の前を塞ぐダーカーやD型生命体をなぎ倒し、大いなる陰の方まで真っ直ぐ進む。
近付くほど大いなる陰の強大なオーラと取り込まれたエネミー達の怨嗟の声が響き渡り、ついにその根元まで到着するとレヴィは一歩前へ踏み出した。
「このまま突っ込んじゃうからね!」
「破壊が目的ならこのまま焼くところだが、生憎説得の必要があるからな……大いなる陰の内部にある、中心核まで行く必要があるだろう」
レヴィは今すぐにでも肉を割いてやろうと意気揚々に振る舞うが、【敗者】は先端も見えないほど大きなアンプラム・アンブラの姿を凝視し見上げる。
「中心核?中に入っても話自体は出来ると思うけど?」
レヴィは首を傾げ【敗者】の方に体を向けるが、彼が常時表示させているモニター……大いなる陰の解析データとユニゾン波とグラン類似エネルギーの活性数値及び推移のグラフを見る限りだと、ユニゾン波の強さの割に大いなる陰には一切の影響を与えていない。
グラン類似エネルギーも非常に活性化しており、惑星ほどと言ったそのエネルギー総量も当然のように余裕を残したままユニゾン波を伝播させている。
となれば、この至近距離で大いなる陰に影響が齎されないのは大いなる陰における脳であり魂、コアの部分に問題があると【敗者】は考えたのだ。
「ユニゾン波の適用範囲を覚えているか?」
「10メートル……あっ!もし高い位置に核が移動してたらユニゾン波が届かないってこと?」
大いなる陰の地表部分の直径は10mもない。
隠すならやはり前後ではなく上下になるだろう。
大いなる陰の内部などという精神世界でどのような構造をしているのか【敗者】には予測が付かないが、大いなる陰がレヴィの意思によって造られた物である以上、ユニゾン波の影響を受けないとは考えにくい。
「あぁ。だから一番届く場所、アンプラム・アンブラの中心核で直にユニゾン波を押し付けてやれ」
「分かった……やってみる!」
数値の変化によって中心核の位置予測は出来る。
であれば、これ以上は行動した方が早い。
そう考え、【敗者】はレヴィと共に大いなる陰の体表面に体を押し付けた。
瞬間彼らの体を肉が覆い、二人は取り込まれていく。
大いなる陰の内部――其れが彼らに見せていた幻覚のない本来の空間は床に肉のようなものが映り、アークスシップのような金属の壁が蔦を纏わせながら障害物のように地面から飛び出している。まさに地獄のような様相だ。
「……」
レヴィは視界に色付き、明るくなったのを感じ横に立つ【敗者】を見た。
ダークファルス戦闘衣の、出会ったばかりと同じ姿の【敗者】。
「……レヴィ?」
【敗者】はレヴィと目が合うと互いに硬直し、まじまじと見つめたあとくすりと笑った。
「精神世界だから見えるのか」
「うん、ふふ、そうみたい」
レヴィはあの時の夢ぶりに見た【敗者】の、それも本当の【敗者】の姿に歓喜を覚えつつ、それがあくまで精神世界だという状況を思い出すとどうにか意識を取り戻し、今度は大いなる陰の見せる景色へ目を向けた。
それに合わせて【敗者】もその世界の分析を始める。
「ラグオルにおける船か……?」
【敗者】は一言呟いた。確かにレヴィが僅かに垣間見た景色にここは少し似ている気がする。
だが、ラグオルに居た時大いなる陰が佇んでいたあの空間……そこの平坦な道のりと比べるとここはあまりにも高低差が多く、目の前に見える階段が上の方にまで伸びているのを見るとレヴィは別のものを感じていた。
「なんか、城みたいじゃない?」
「城、か。待ち構えるのにはピッタリな場所だな」
【敗者】はそう言うとさらに周りを見渡す。
外からの状態とは違い世界に壁のようなものはなく、景色はただひたすら奥へと続いている。
間違いなく精神世界だ。
「エネミーは居ない、か……」
レヴィは試しに一歩踏み出してみるが、外とは違いエネミーは出てこなかった。
だが、【敗者】は彼女が城のようだと言った目の前の景色を凝視し、そのモチーフをよく分析している。
一見ただの肉と金属の塊のようだが、そこには内外を分ける塀のようなものが見えていた。
そして正面にはその塀が途切れ、入口に何かを模した像のようなものが建っていた。
「あの装飾は門のように見える……あれをくぐった後が本番ということだろう」
レヴィはそれを聞くと門らしき場所まで近付き、それをぼんやりと見上げてからため息をついた。
「はぁ……」
レヴィは役者として、アンプラム・アンブラが主催する盛大な自慰劇場に思う所があった。
特に演じるつもりもないのに演じさせられている所、とか。
「【敗者】、これ馬鹿らしくない?」
「馬鹿らしい、とは?」
「こっちがせっかく上手く共存してやっていきましょうよーって話しようとしてんのに、こっちの体を乗っ取ろうとしてきたかと思えば今度は逃げ回ってさ。話す気もなくボンボン敵出して追い払おうとして、変な領域作って遅延行為してるの馬鹿じゃない?」
「全く、馬鹿かと問われれば馬鹿かもしれないが……正論が通じる相手だと思うか?」
「わたし自分より知能指数が低い相手は嫌いだから」
この劇で其れが何をしたいのか分からない。クライマックスにはいいタイミングだというのにまだ逃げ回る。そもそもやりたいのは戦争ではなく交渉だというのに、向こうは完全に場と役者を用意して遊んでいる。
その状況にレヴィは遂に苛立ちを見せるようになった。
レヴィが苛立つということは、そこから怒りに達するまでのラインが人よりずっと短く早く、あっという間に残虐な手段に走ると言うこと。
傘一本盗まれただけで街を焼き払ってしまう彼女の怒りっぽさはどんな化け物だろうが当然向く。
「アンプラム・アンブラ。
まーだわたしに歩かせる気?
暇ならさっさと白黒つけにきたら?」
レヴィは顎を持ち上げ尊大に振る舞いながら一歩ずつさらに進んでいった。
「このわたしの思考を学習した癖に、キモイ遅延行為することが有効的な行為だと本気で思ってるワケ?」
腰に手を置き気怠そうに門の前に立ち、嫌々そうに顔を歪め指を差す。
【敗者】はその様子を怪訝な目で眺めつつ、一歩も足を動かさない。なんだか微妙に嫌な予感がして。
「お前がその気ならこっちもここでテント建てて映画でも見てやるけど?
……このクソ不法滞在違法学習野郎」
それでも向こうからレスポンスはない。
それにレヴィはさらに苛立ち、肉とハードサーフェスの物体を容赦なく蹴り上げると思い切り叫び声を上げた。
「アバズレんのも大概にしろやこのカスが!!さっさと出てこいって言ってんだよ!!ケツの穴で瓶割るぞコラァ!!テメェ!!」
「なんだコイツ……」
【敗者】は突然反社のような暴言を浴びせ始めたレヴィにドン引きし、一歩後ろに下がるがレヴィは逆に容赦なく門の中に入っていきさらに怒鳴りつける。
「タマのちっせェクソマザーファッカーが!!テメェのような猿真似エセ芸者の漫才なんてクソつまんねぇんだよ!!やめろや粗チン!!ボケカス低身長!!」
【敗者】がスイッチだと予測した場所にレヴィが入っても何も起きることはなく、辺りには静寂が続いていく。
だが彼から見るに、大いなる陰も流石に驚いているのだろうと予測した。
いくら記憶を見た存在であれど、レヴィの度の過ぎた暴言を意図しないタイミングで浴びせられれば流石に奇妙に感じるだろう……と。
だがレヴィは言うだけ言うと直ぐにからっと表情を直し、首を傾げる。
「……んー、アンプラム・アンブラって怒りの感情とかないのか」
「あぁ……確かめていたのか。随分過激な挑発だな」
「あ、いやさっきは普通にキレてただけ」
「……」
普通にキレてただけ……?この状況で後先考えずそんな事をするバカがいるか……?
【敗者】は呆れつつ門を続けて通り抜けると、レヴィはさらに奥へ進もうとする。
「はぁ……めんどくさいって言ってんのわかんないかなぁ……」
レヴィはもうひと吠えしてやろうか、なんて睨むような挙動をしながら歩を進めていると、突然【敗者】が画面を見て顔を歪めた。
「……止まれ!」
その叫びにレヴィも足を止める。
画面に表示された文字はアンプラム・アンブラの接近を示していた。
「ん……?」
その証拠に、階段をぺたぺたと下るような生の足音が聞こえ、【敗者】とレヴィの視線はそこに集中する。
「アイツは……」
「は……?」
そこに立っていたのは……レヴィと瓜二つの女。
だがその女の髪は乱雑に切られて先端は赤黒く染まり、裸体の胸元と足首にはドクドクと疼くコアのようなものが寄生するように埋め込まれていた。
「悪趣味なやつ……」
その女、反応から見てアンプラム・アンブラであることは間違いなし。だがレヴィ本人とは違い其れは常に僅かな微笑みを浮かべており、其れはレヴィに視線を移すとしなやかな指の動きでそっと彼女の形をなぞる。
レヴィは【敗者】にチラリと視線を向けると、彼は首を横に振った。
あれが中心核ではないようだ。
その挙動にレヴィは頬を膨らませる。
「アレでどうやって中心核まで行けっていうの?」
「いや、奴はまだ殻に隠れている……
あの器を破壊して、本体を引きずり出せば中心核をさらけ出せるかもしれない」
「なるほどね……」
レヴィはその返事を聞くとブラックローズを取り出し、サッと構える。30分のクールタイムは終わった。
合わせて【敗者】も指輪の位置を直し、アンプラム・アンブラを見据える。
それに対しアンプラム・アンブラは手を差し出すとサッと前髪を拭い、腕を天に掲げた。
すると裸体だった其れの体は蔦と肉に覆われていき、禍々しくも美しい天女のような服を纏っていった。
レヴィの選ばないロング丈のスカートに手の隠れる丈の袖だ。そして同じ顔のパーツをしておきながら悟りと慈愛に満ちたようなその顔つきはレヴィとは程遠い。
「弱点部位は胸元と足首だ。服に隠れてもそれは変わらないだろう」
「キモ……」
「素直だなお前は本当に」
レヴィは散々性行為をしてきたアンプラム・アンブラが自分の、それも女の姿を象って来たところに本気で不快感を覚えていた。
いや、そうだと分かっていたから其れは今まで【敗者】の姿を似せてきたのだろう。そうすればレヴィが嫌がらないとわかっているから。
だが今の其れは本当になりたい姿……レヴィの容姿を選んだ。それはつまりアンプラム・アンブラなりの宣戦布告。必ずレヴィという素体を取り込み、ダークファルスとして復活するという強い欲望の現れだ。
「もう好かれる必要はないって言いたいわけね……まあ、【敗者】じゃないならボコしやすくて助かるんですけど!」
「僕だと躊躇うんじゃなくて性欲が混じるからだろう?」
「よく分かってんじゃん!」
レヴィは声を張り上げると一気に足を踏み込み、アンプラム・アンブラの方へ接近した。
其れはレヴィのブラックローズを見ても一歩も動くことはなく、代わりにそっと手を動かすと指を鳴らす。
カランカラン、と硬いものが跳ねる音が響き渡り……レヴィは急いで足を止めた。
ダイスの音だ。
「……!C.A.R.D.!ダイスを使ってくる!とりあえず解析して!」
「勿論だ!」
その言葉に応じてアンプラム・アンブラはC.A.R.D.を取り出し、エネミーを次々と召喚する。
アンプラム・アンブラ本人も剣を握るとゆったりと構え、レヴィを待った。
「全く、クソほど煽ってくれるじゃん!」
レヴィは一歩踏み出すとすぐに杖を振るうが、アンプラム・アンブラはC.A.R.D.を翳すとレヴィの攻撃がすぐに受け止められる。
「ッ!」
僅かな時間、レヴィの視界に映ったのはガードの文字。
「防御カードもあるみたい!」
「エネミー、武器、防御ときたら攻撃か。それと、最初のダイスは……」
レヴィは視界に空間の切れ目を捉えると、そこに映った形を叫んだ。
「《ダイス+1》!」
その言葉に【敗者】は画面を横目に見る。
レヴィのグラン類似エネルギーが活性化されており、彼女は何も無いどこかの空を見上げ、その場所に弾を撃ち込んだ。
するとアンプラム・アンブラの後頭部に弾が瞬間移動し、彼女に被弾する。
致命傷になるはずの部位だがアンプラム・アンブラは微動だにせず、頭を上げるとあっという間に再生していく。
「再生能力……面倒だな」
【敗者】は画面に表示された【半再生】の情報を見て目を細めた。
分体なことから、生命力はかなり少ない。半再生の条件から考えると、出現時の最大HPは数値からして20。先程レヴィに3まで削られたあと、あの再生で15に回復した。
「HP自体は多くないようだ。コアを狙えば一撃で破壊出来るだろう」
「へぇ……じゃあ頭じゃなくて胸を狙ってやろうって話ね!」
レヴィの言葉の後に【敗者】は解析の結果を確認する。
【状態異常防御】【半再生】【乱撃】【コスト無制限召喚】
レヴィは襲い掛かるエネミーをアイゼンハートの半球型フィールドを展開しながら牽制し、アンプラム・アンブラに向けて攻撃を繰り返すが防御カードによって阻まれ防がれ、当たった攻撃も特性によって再生されていく。
そしてアンプラム・アンブラが一振り剣を振りかざせばレヴィの武器は弾き飛ばされ、ブラックローズのエネルギーが無理やり消し飛ばされた。
「傘骨が一回の損傷で使用不可に……?!」
その上レヴィの左腕には痺れるような痛みが走り、彼女は取り出したイノセントローズを準利き手である右手で握り締めるとアンプラム・アンブラから距離を置いた。
彼女と入れ替わるようにリソースの回復した【敗者】が眷属を召喚し、アンプラム・アンブラが用意したエネミー達を倒しながら本体へと接近する。
相手は殺リク不孝より面倒な乱撃持ちだ。
【敗者】は被弾しないよう細心の注意を払いながらアンプラム・アンブラに攻撃を仕掛けるが、やはり半再生によりあっという間に回復してしまう。
「遅延行為大好きな性分が特性にまで影響してるってワケね……」
レヴィはそう言いながら再び攻撃を仕掛けようとする。
しかしアンプラム・アンブラが一枚のC.A.R.D.を取り出すと【敗者】は目を見開きレヴィに叫んだ。
「武器を仕舞え!」
「ッ!」
【敗者】の言葉の直後地面がぐらぐらと揺れ始め、上空から隕石が降り注ぐ。
【敗者】は時間操作でほとんどの眷属を霧散させ、落ち着いて見守った。
レヴィは状況も分からずメテオの範囲外まで避けると【敗者】を見上げる。
「メテオ?」
「こちらにダメージは与えず、付属品……召喚物や武器にのみ大きな損傷を与えるものらしい。だがその対象は敵味方を問わない。今なら奴の武器もエネミーもすぐに壊せるだろう」
「そういうことね……!」
レヴィはそう言われ再びイノセントローズを取り出すと、アンプラム・アンブラの方に接近する。
【敗者】もそれに合わせアンプラム・アンブラの持つ武器をテクニックで狙撃すると、すぐに他のエネミーにも法撃技を一気に放った。
アンプラム・アンブラは武器を破壊されても笑みを崩さず、レヴィが背後から斬りかかってきても一切怯えることは無い。
代わりに其れは懐から拳銃を取り出し、レヴィの心臓に向けて引き金を引いた。
「ッーー!!」
(C.A.R.D.は囮ということか?!)
照準は心臓一直線。【敗者】は目を見開き、時間を停止させようとするがこの一瞬では間に合わない。
バン、と荒い音を立てて放たれた弾はレヴィの胸元まで寄っていき、そして……
どうやら近くに放たれたアイゼンハートの攻撃弾が隕石を破壊して残骸を撒き散らし、そのうちの一つがレヴィの元へ飛び込んできたようだ。
――"運命改変"。レヴィの本能的に出る得意技である。
「……?!!」
その異様な光景にアルカイックスマイルを崩さなかったアンプラム・アンブラが初めて表情を崩し、驚いた顔を浮かべた。
だがレヴィがその隙を見逃すことはなく、力を入れるとアンプラム・アンブラを縦に一刀両断に引き裂く。
その中に臓器や骨などはなく、血のような赤いエネルギーが噴き出すと其れの体は黒い靄が埋めつくしていった。
「なに……きゃっ!!」
レヴィは立ち尽くしていると黒い煙の中から飛び出した何かに弾き飛ばされ、吹き飛んだ所を【敗者】に支えられる。
「よくやった。……これからが本番だ」
【敗者】の解析データにはついに座標位置が表示されていた。それは目の前にあり、その黒い靄が辺りを覆い尽くすと、ついにこの空間を支配する主が姿を表す。
『邪魔……しないで……』
人型の巨大な肉の塊。しかしそこに顔は無く、大きく開かれた口のようなものに牙が突き立てられる、おどろおどろしいモンスターの上半身が二人の元に見える。下半身は床の下……この空間と融合していた。
ラグオルに現れたダークファルスの姿を象っているが、ラグオルと一番大きく違う点はまさに、封印の陣が存在していないこと……つまり、アンプラム・アンブラはダークファルスの繭でありながら、同時に封印から解き放たれた存在でもあるのだ。
「くっ……」
【敗者】はすぐに眷属を使い攻撃を仕掛けようとするが、アンプラム・アンブラは上空にレーザーを放ち自ら形成された精神世界の空間の壁を破る。
「盾、いや……ブラックローズでいい!」
ガラスの破片のように舞い散る空間の壁は二人の元に収束すると一気に降り注ぎ、レヴィはブラックローズの傘を開いてどうにか耐え凌ぐが傘骨を全て消耗した状態のブラックローズに耐久力はなく、次の攻撃を受ければ破損するのは目に見えている。
「ブラックローズが使い物にならないなんて……!」
「まだだ……超高エネルギー反応、上空から来るぞ!」
【敗者】はレヴィの身体をブラックローズごと掴みすぐに回避し、物陰に避けながらバリアを展開する。
抜けた空間の壁から見える巣窟の天井……アークスシップの市街地だったものに容赦なく光の弾が注がれていき、ビルがへし折られると空間の中に降り注がれていった。
「全く、やることなすことデカイんだから……これでどうやって隙を見つけろっていうワケ?」
その上、アンプラム・アンブラはビルの隙間から光を貫き、宇宙空間を露出させるとそこから緑色に発光する隕石を降り注がせる。
「これはたかが繭と侮らない方がいいようだ……」
【敗者】はそう言いながらバリアを使い何とか隕石から身を守るが、地面に響く衝撃も凄まじく隕石の雨が止んだあと立ち上がろうとしたレヴィはよろけ、【敗者】に支えられた。
突破口はどこにあるか。
レヴィの頭には継戦訓練で山を削ったあの攻撃を思い出すが、グラン類似エネルギーによる強い意志は今の彼女に感じられない。
となれば、彼女が出せる択はもう一つ。
「アイゼンハートの全転換攻撃をすれば吹き飛ばせるはず……」
だが全転換はレヴィの肉体に直接的な損傷をもたらす。今の彼女なら真っ先に眼球や視神経から転換するところだが、そこから内臓にまで優先度が下がっていくのは誰の目に見ても明らかだ。
そうなれば、制御もつかない全転換を止めるためにまたアイゼンハートを壊す事に……
「やめろ。……僕が本気を出す」
【敗者】は冗談じゃないと言わんばかりに声を低くし、レヴィを遮り立ち上がる。
レヴィはその言葉に従い身を潜める中、【敗者】は堂々と一歩を踏み出した。
その瞬間彼の背後に幾十もの剣が召喚されると円を描くように幾つも重なり、全てアンプラム・アンブラに注がれていく。
『……』
アンプラム・アンブラは悲鳴を上げることはないが損傷自体はしているらしく、【敗者】はこのまま中心核以外の全てを消し去ってやろうとさらに魔法陣を出しテクニックを紡ごうとした。
だが、アンプラム・アンブラの腕のような肉が空間の壁を突き破り、割れた空に伸びると"何か"を掴んで引き寄せる。
「うわぁぁぁああアアアアアッ?!」
その肉に囚われていたのは見知らぬアークスの複数人。
……どうやら【敗者】が養分で用意していたアークスのようで、彼らは欠けた武器とボロボロの格好で拘束されていた。
閉じ込めた腕の中から金切り声のような悲鳴が響く中、アンプラム・アンブラは開いた口のような部分にアークス達を入れ、そしてガブリと咀嚼する。
グチャッ、バキッ、バキッ。
アーモンドか何かのように容易く放り込まれたアークス達の、おぞましい悲鳴と骨が砕け臓物が破裂する音が辺り一帯に響いていた。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる