――44番艦、ゴーストタウンの奥にそびえ立つ屋敷。
「ふぁあ……」
レヴィは身体を大きく超えた広いベッドから重い体を起こすと【敗者】が顔を覗き込んでいた。
「おはよう、レヴィ」
「んー……はよ……」
【敗者】は視線を移すと、シャーロットが姿勢を正し顔を上げる。
「シャーロット」
「はい。ただいま着替えと朝食をお持ちします」
一つ礼をしたあと彼女はすぐに踵を返し、部屋を出ていった。
「ん……」
レヴィはシャーロットの後ろ姿を半目で見つつ、眠い目を擦りながらぐらぐらと頭を揺らしている。
「レヴィ……」
「んぅー……?」
いつの間にかレヴィの視界のいっぱいを【敗者】の顔が覆っており、レヴィはぼんやりとしたまま【敗者】に口付けられた。
「んふ、ちょっとぉ……距離感近すぎなんだってばぁ……」
「まだまだ僕は抑えている方だが?」
【敗者】はそそそ、と布団を捲るとレヴィの側部を撫で、彼女に跨り体重を掛ける。
「えっちはダメだからね〜?」
「嫌なのか?」
「嫌ってより眠い」
レヴィは掛布団を引っ張りながらそう言うと、【敗者】は唇を尖らせレヴィの頬を引っ張った。
「起きろ」
「断固拒否〜」
体をよじようとすれば【敗者】が腹に乗り込んで抑え込み、攻防が続いていく中レヴィの顔のいっぱいにキスの雨を降らせレヴィを攻撃?で動揺させていく。
「うっ、このキス魔め〜!」
「僕は魔物じゃなくてダークファルスだ」
「ダークファルスキス魔……」
「ダークファルス【敗者】だ」
「変態スケベ男」
「怜悧健全の覇者。それ以外に語る言葉などない」
三秒か、二人は目を合わせた後ふっと噴き出し二人でくすくす笑い出した。
「ふふっ、……あははっ!」
「だらけるのも楽しいだろう?」
「まーね!疲れた分休むからさ」
二度寝するほどの眠気も残っていないとレヴィは布団から起き上がり、顔を洗いにいった。
「貴様はアークスより医者の方が向いてそうだな」
「長時間労働できるから?その次は貨物車のドライバーとか言わないでよね」
「思考盗聴でもしたか?」
「してないし!」
【敗者】に招かれダイニングテーブルへ向かっていくと、ちょうどよくシャーロットも現れ暖かな紅茶と豪華な朝食が並べられていく。
「しかし、目は覚めたんじゃないか」
「はーぁ、まんまと嵌められちゃった」
パンケーキをナイフで切り分けていき、口に運ぶ。
最初と比べればテーブルマナーも大分マシになった方だ。
【敗者】はレヴィの様子を見ながら彼女の半分以下ほど少ない食事をゆっくりと食べ進めている。
シャーロットも含め、家族三人での静かなテーブル。
カトラリーの音が響く中、【敗者】は顔を上げた。
「今日は映画でも見ようか?」
「んー……、どうしようかな」
「一応、お前に来客の連絡が入っている」
「わたしに?」
「ジグだ。断ってもいい」
断ってもいいと【敗者】は言っているが、その部分は恐らく【敗者】が勝手に決めたことだ。
「あー、武器の確認かな?いいよ」
レヴィもそれを察してか直ぐに了承する。
ライデンシャフトはともかくローズウェポンは大体ブラッシュアップが済んでいる。
アークスの味方であるジグに全てを見せることは出来ないが、彼に協力を仰いだブラックローズの完成品は見せる必要がある。
「とりあえず、ご飯食べたらトレーニングするから」
「ここ最近は十分動いていただろう?
休暇を取らないと疲労が蓄積していくだけで体は作らない。今日は大人しくしていろ」
「お金とか大丈夫なの?」
「資金運用はもちろんだがシャーロットにアークスの任務を行かせている。
僕達の生活レベルに合わせるといくらあっても足りないほどだが、シャーロット一人でなら十分生きていける程の収入は入っているさ」
【敗者】はシャーロットに目を向けると、彼女はこくりと頷いた。
「そう……、まあ、いてもたってもいられなくなったらオンラインカジノとかで稼ごうかな」
「そうするといい」
レヴィ達は食事を終えると立ち上がり、【敗者】はワゴンから服を取ってレヴィをドレッサーの前に連れて行った。
「服くらい自分で着れるけど?」
【敗者】の手が彼女のナイトウェアに触れると、レヴィは目を細めた。
「装飾を勝手に外すだろう?」
「不要なものは外してるだけ」
「必要な物だから付けるんだ」
レヴィは不満を言いつつ抵抗することはなく【敗者】に体を任せ、服を変えアクセサリーを付ける。
彼の骨ばった長い指はメスを操るような繊細な動きで金具を持ち、レヴィの足先から頭頂まで余すことなく銀色の煌めきが纏うと、彼女はスラム街育ちとは思えないほど高貴に仕上がっていた。
「それと、シルンから落し物を預かっている」
「え?」
落し物などした覚えがない、とレヴィは振り返るが、その落し物は既にレヴィの胸元に携えられており、金属の冷たい感覚にレヴィは目を見開くと、そこには高級の一言に尽きる大粒のレッドダイヤモンド……レヴィがかつて付けていた偽物の婚約指輪がそこにあった。
「カジノに行った時泥酔してそのまま落としたらしいな?身に付けていろといつも言っているだろう」
「あ、いやそれは……」
怒られると身構えていたものだから、レヴィは尚更驚いた。
(売るように頼んだはずなのに……)
シルンはどうやら売らずに保管していたらしく、その上【敗者】に事情を話さず落としたものとして嘘をついたようで。
仲直りすることまで見込んでいるとは、シルンは流石の処世術だ。
「落とさないようにちゃんと付けておけ」
【敗者】は再三と言わんばかりに繰り返すと、レヴィの頭をポンポンと叩き、レヴィを解放した。
一人になりぐぐ、っと大きく伸びをしていたレヴィにアクセサリーを運んでいた小さな眷属がレヴィの足首をつついた。
「どうしたの?」
眷属はレヴィには認識不可能な鳴き声を出すとさらに体を擦り付ける。
レヴィは座り込み、眷属の頭部を撫で回すと喉を鳴らしてご機嫌そうに返した。
「ふふ、いい子だね……」
「何をやっているんだ?」
【敗者】には其れの言葉が聞こえる。
かまって、うれしい、きもちいい、という眷属の幼子のような鳴き声と、レヴィの甘く微笑む表情に【敗者】は嫉妬心を感じた。
(……)
「ほら見て、可愛いでしょ?あんたも撫でてあげなよ」
【敗者】は一歩レヴィの方に寄ると、彼女の頭を撫でる。
「へ?」
レヴィは自分の頭に置かれた手に困惑するも、彼はダメ押しと言わんばかりに左右に手を揺らし撫で続けた。
「……どうして呆ける?
可愛い奴を撫でればいいと言ったじゃないか」
「は、……え、……」
――可愛いやつを撫でる?【敗者】は誰を撫でた?わたし?わたしが可愛いって?
レヴィは動揺して思わず眷属から手を離し、頬を抑え後退る。
「あ、え、……はっ、はっ、……あ、……あう、あう……」
真っ赤に火照った頬に潤んだ瞳。
レヴィの狼狽える姿は誘っているようで、【敗者】は目を細め彼女を眺めたあとツンと額をつついた。
「違うなら怒ればいいものを。もっと可愛い反応で返してどうするんだ」
「うああぁぁぁあ……!!」
「フフ……」
しゃがみこんだ彼女から眷属がそそくさと離れていくと、【敗者】はレヴィの脇に手を入れ持ち上げる。
「ひゃっ!」
ぎゅうと抱きしめたあと、【敗者】はパッと手を離した。
ドタ、と大きく音を立てながらレヴィは床に落ちると【敗者】の足を掴み睨みつける。
「ちょっと!もっと丁寧〜に下ろしてよ!」
「……」
【敗者】はその光景を見て懐かしい、と思った。
出会ったばかりの頃、レヴィに罰と言ってくすぐり続けたあと彼女は目を潤ませながら彼の足首にしがみついて許しを乞うていた。
「ふふ……」
「むぅう……」
レヴィは不機嫌そうだったが彼からしたら愉快なだけだ。
これが休み、かと。
レヴィはそう思いながら、【敗者】へ身を委ねた。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる