「何すればいいわけ?」
「今すぐに此処ら一帯のダーカー因子観測装置をハッキングし、データを偽造しろ」
「検知しないようにって事ね。それならついでに警備マシナリー辺りにも手を入れとく」
レヴィは立ったまま端末のホログラフィックキーボードを起動し、直ぐに作業に取り掛かる。
回線を独自の物に変え、プロテクトも一番ランニングコストが高い代わりに強固なもの、そして技術は一日一秒たりとも忘れた事の無い文字列の数々。
「体制が変わってるらしいけど大体のシステムはまだそのままかな。でもアークスのシステム開発部を覗くと新しいシステムのソースコードが更新されてる……一旦この辺も全部チェックアウトして、それから会議の音声データとかも盗んでおく。見たければ後でデータ渡すから。あんたの分の端末も改造して後で作るよ」
「あぁ」
【敗者】はナチュラルにレヴィの腰に触れると膝を抱えて持ち、抱き上げる。
レヴィは【敗者】に抱えられてゆらゆらと柔らかく体が揺らされながらも手は瞬きも置き去りにするようなスピードで動き、ロックを解除していく。
「44番艦って、あんまり人いない船なんだね……」
「不吉な数字という理屈も何も無い馬鹿みたいな理由のせいだ。僕と貴様にはよく釣り合う場所だろう?」
「あは、確かにね」
レヴィは軽い寄り道をした後にアークスのセキュリティウォールを少しずつ解していく。
何度かやった作業ではあるが慎重性とスピードを同時に求められるのでこれをどうやって短縮すればいいかは思いついていない。
他の簡単なデータの書き換えやハッキングはある程度形式化した上でデータをチェックした上で実行するだけでほとんどの工程を省略できるように調整してあるが、流石に管制となるとそうはいかなかった。
「あとどれくらいかかりそうだ?」
「時間に余裕しかない無職の引きこもりが急かさないでくれる?あと最低25分は使うから」
「了解した」
【敗者】はレヴィの実力をきちんと目でも見ておきたいらしく文字がしきりに流れていくディスプレイをずっと眺める。
「……貴様のディスプレイはわざわざ全てピンク色にしているのか?」
「別に青じゃないとダメな理由なんてないし……」
「この色、……お前が好きなのか?」
「うん」
赤に近い濃いピンクの色。
レヴィの中で好きだから選んだのは確かだが、それより気が散るからあんまり話しかけないで欲しいという意思が上回っている。
「なんか暇なら映画でも適当に見ててくんない?話しかけないで」
「……赤がいいのか?」
「あんたの色も好きだからとにかく黙っててくれる?」
脊髄反射でレヴィがそう言うと【敗者】はようやく黙り、全く喋らないまま時間が過ぎていく。
彼女は【敗者】を見る余裕も彼に話しかける余裕も無いが、【敗者】は上機嫌にレヴィを揺らしながら顔とディスプレイを交互に見ていた。
「よし、……管制に入った。ここ一年の観測記録を読み込ませて作ったダミーデータを使って偽造するからあと10分ね。データ収集して、ランダムなダミーデータを作って、それから監視カメラの辺りにも今のうちにある程度手加えておく。ダミーデータを送り付けたりデータそのものを削除したりするくらいのことならこうやって時間割かなくても出来るくらいのやつ」
【敗者】はディスプレイを見て、独り言のように呟く。
「独学か…」
「本とか死ぬほど見たからね。どちらかと言えば裏任務をする為にダークウェブで立ち回るためのやり方を調べて、そしたら自然にそういう方向の情報が多く入ってくるようになって身についただけ」
レヴィが真っ当に学校に通ったりインターネットの明るい部分だけ触っていたら多分こんなに上手くはいかなかっただろう。
昔のレヴィは本当にがむしゃらで、顔も名前も知らない犯罪者の大人に必死に取り繕って暗い世界で生きていた。
――今のわたしは、……なにか変わっただろうか?
「……終わったよ、【敗者】」
レヴィはカシャンと音を立てて何事も無かったかのように端末を閉じ、【敗者】の顔を見上げる。
彼は笑って「よくやった」と声をかけると、そのままゆらゆら揺らしていた。
「何時まで抱っこしてる気なの?」
「これは失礼。……赤子かと」
「ダーカーの癖にクソみたいな視力で恥ずかしくないの?」
「生憎アークスと違って目で見ないと何も分からない程脆弱ではないのでね」
【敗者】は膝をついてレヴィの体を下ろすと、頭を撫で回した後離れる。
そして何処からか気配もなくレヴィの武器――アイゼンハートを取り出すと、彼女の開いた拳の中に重ねた。
「先程も言った通り、これは戦闘訓練だ。今の僕はあのアークスのせいで大分損傷している。そんな僕相手にすら苦戦するようでは貴様の望むアークス殺しなど果たされることはない」
「それくらい分かってるし」
「なら、御託は此処で終わりだ。エル」
レヴィが名前を呼ばれた瞬間、目の前の【敗者】という存在が明らかに変化したのを感じた。
「ッ!」
全身から畏怖と恐れが立ち上り、吐いてしまいそうな程強いダーカー因子の気配が彼を渦巻く。
本調子でもない、ダーカーとしての異形を纏わなくてもこれだけの力……あのルビィだったらどう感じていたのだろうか。
いいや、ルビィなら絶対恐れることはないだろう。
服はダーカー因子で構成されたであろう戦闘衣になり、雄を剥き出しにした立ち姿は捕食者と言うのが最も相応しいのかもしれない。
レヴィを見下ろすその目は……まるで、なんて言う言葉では足りない程別人だ。
今まで見てきた【敗者】の目とは全く違う。
「……」
レヴィは【敗者】から離れ、静かにアイゼンハートを構えた。
「起きて。……行くよ、アイゼンハート」
レヴィの声に呼応するように黒一色の武器に星の輝きが宿り、キラキラと輝き出す。
空間が歪みアイゼンハートが銃に変わると、片手にアンティーク物のコインをひとつ持って【敗者】に目を向けて……
「このコインが地面に落ちた瞬間が、スタートね」
「あぁ」
レヴィはコインを弾き、絶え間なく表裏が変わりながら宙に飛ぶ。
【敗者】の目線はコインを追い、自由落下で落ちていくコインに釘付けだ。
彼の顔が項垂れ、下を向いた瞬間、レヴィは一秒も構えることなくアイゼンハートを変化させ【敗者】の頭上に大型の爆弾として落とす。
一瞬にして彼に覆われる影を見る暇もなく一気に下がり、爆風によって吹き飛ばされたコインがようやく地面に着き、カランと跳ねると同時に煙の中からあの長身の影が見えた。
「地を這う犬がフライングとは、実に小賢しい」
一瞬にして貼られたアイゼンハートの糸の結界も彼が一歩歩く度に払われ、崩れていく。
あれは強度と靱性が高く、頭蓋骨でさえ一刀両断出来るほどの硬さだというのに。
「これも、これも、そしてこれも」
意識を集中させバラけさせた糸をトラップに変えるが、彼は何事も無かったかのように踏み潰し、目くらましの閃光も浴びせようが目を塞ぐ動作すらしない。
「全てが子供の考えた粗雑な罠だ」
「ッく……」
こんな程度で折れるやつでは無いことくらい分かっていたが、動揺ひとつしないのはレヴィにとって完全に予想外だ。
【敗者】はレヴィが戦闘開始前に嘘をつくことくらいお見通しだったのだ。
本来はこの段階で相手の出方を見たかったところだが、生憎【敗者】は真っ当に目の前から立ち向かってぶつかっておきながら一切ダメージが入ってなかった。
レヴィが素手で殴った時と全く同じような余裕の反応だ。
(となれば段階は変化させるしかない。騙しは効かないから大人しく殴って相手の出方を見るか…)
レヴィはアイゼンハートを銃に変え、両手で構えて一発撃ってみる。
【敗者】は目線も向けずぼんやりと立ったままどこか遠くを見つめ、弾が当たるその瞬間にだけ小さなバリアが出て跳ね返った。
「舐めやがって……!!」
【敗者】はレヴィのことを見ないまま手にディスプレイを取り出し、スクロールしながら突っ立って眺め始めた。
完全に挑発されている。
【敗者】の方からは一切攻撃するつもりは無いらしいが、それも罠の可能性があるだろうとレヴィは疑ってかかった。
それ故に堅実にアイゼンハートを銃から変化させないままありとあらゆる方向から【敗者】を狙って撃ってみる。
それでも、レヴィの放った弾はひとつ残らず全て銃弾より少し大きいだけのバリアに阻まれて跳ね返っていく。
自動展開の障壁には見えない。
自己意思で展開させているもののはずだが、その割にレヴィを見ることもなければなにか動作をしているようにも見えず、あまりにも奇妙だ。
「どうした、エル。実戦でも貴様は動かない相手を目の前にしたら狼狽えるのか?」
「違ッ……!」
レヴィはアイゼンハートを大きな剣に変えると真っ直ぐに【敗者】に向かって正面に立ち、剣を振り上げるが、彼はその手で刃を真っ直ぐ掴み、特に苦労するような様子もなく淡々と呟いた。
「動きが雑だ。効率の悪い大振りで振りも遅い。周りを見ているか?後ろから奇襲されたらどうする」
「うるさいッ!何様のつもり?!」
「ご主人様、だろう?」
【敗者】が軽く手を振るとレヴィの剣を掴む体ごとグルグルと回す。
ぬいぐるみを振り回すかのような動作で吹き飛ばされそうになり、慌てて彼女は手を離した。
遠心力が伴って小さな体が飛び、地面に当たって尻もちを着いた瞬間腰に痛みが走った。
その瞬間、レヴィは目を見開く。
「痛ッ!……は、……え?」
痛みが……え?――痛い?
「まっ、待って、わたしは痛覚を無くしたはずじゃ、これはなんかのバ、グ――」
レヴィがブツブツと呟いていると真上から【敗者】の足が降りかかり、彼女は反射的に転がって避ける。
「ひっ?!」
【敗者】はレヴィの戸惑う様子に一切関与する気はないようで。
レヴィが逃げた先、背中に心当たりのない壁が当たり、彼女は振り返ると……そこには見たことも無い模様が描かれた赤い魔法陣が見えた。
――マズい!
「あぁぁっ?!!」
瞬間横から風が吹き、レヴィの体が吹き飛ばされる。
どうにかしてアイゼンハートを槍として地面に突き刺し、実質的な棒になったそれにしがみつくと、一回転した後飛び上がる。
なんとか着地した後、急いでアイゼンハートを取りに行き、それを片手剣へ変化させて握り締めた。
――痛い。体が痛い。こんな痛みは何年ぶりだろうか。
それでも、【敗者】の目は訓練する相手に向けるものとは思えないほど殺意に満ちており、立ち向かってきたものを本気で殺すような紅い瞳で立っていた。
これは体が鈍ってるとか痛いとかそんな言い訳で済んでいい話ではない。
訓練ではなく完全に実戦だ。
レヴィが真剣にやらないと、【敗者】は本当に彼女を殺す……
「創世器だというのにフォトンはないのか。主人が主人なら武器も武器か?揃って無力では無意味だろう」
【敗者】の言葉に彼女の武器を握る手から全身に苛立ちが広がる。
明らかにアイゼンハートが憤っている。
そしてレヴィもこんな現状では無力だと言われても仕方ないというのに、【敗者】に無力と言われることがとても苛立たしかった。
「まだ本気出したとか一言も言ってないんですけど」
「無尽蔵の体力を持つ訳でもないのに無駄な時間稼ぎをするのか?それとも、いついかなる状況であっても増援が来ないという驕りか?」
「うるっさいなぁー!わたしは参謀じゃなくて鉄砲玉なワケ!いちいちそんなこと考えられるわけないでしょーがっ!!」
レヴィは足を踏み込み、一瞬で【敗者】の元に近付くと首を狙って振り上げる。
相手に当たるほんの一瞬だけ刃にフォトンを纏わせれば、彼女の体質に阻害されない範囲で相手にダメージを与えることが出来るはずだ。
しかし相も変わらずバリアばかりで、あれを破る所からになりそうだが……
「あんたこそソレ頼りの防御でいいわけ?」
「プランは一つである必要性はない。幾重にも用意し、どんな状況であっても対応出来るようにすることが重要な事だ」
「ふーん、なら次のプランって奴を見せてよッ!」
レヴィは先程と同じように剣を振るうが、がむしゃらにではない。
彼がバリアを出すその瞬間にそのバリアをしっかりと目視する。
脳をフルに活動させ、アイゼンハートに命令すると、バリアが展開された瞬間にそれは霧散して砕け、代わりに刃にフォトンが纏われて【敗者】に向かって思い切り突き刺す。
「やぁッ!」
しかし彼は目にも留まらぬ速さで後退し剣を避け、踏み込んで前のめりになるレヴィの体に膝を入れ込む。
「う゛ッ!!」
【敗者】に腹を思い切り蹴り上げられた衝撃はあまりにも大きく、内臓が痛めつけられる。
しかしそれよりもずっと、レヴィが今まで感じていなかった痛みが全身を駆け巡り、吐いてしまいそうなくらいの鈍い痛みが脳に負担を掛けていた。
(負ける、このままじゃ、傷一つ付けられずに、負ける……)
「痛みを感じる程度で怖気る奴がルビィを殺すだと?頭が高いにも程がある!」
「ッ!!」
(ルビィ……ルビィを殺す。そうだ、わたしはルビィを超えるんだ。
だから殺さなきゃ、……殺す、殺せるはずだ、きっとわたしは【敗者】の事を殺せるはずだ……)
レヴィを見下ろす目は【敗者】であるはずだが【敗者】とは似ていない。
違う、気配も、雰囲気も、何となく【敗者】じゃない、目の前の男は【敗者】だが、【敗者】ではない。
……【敗者】ではないのならレヴィに殺せる?
いや、【敗者】であっても迷わず殺せなければ意味が無い。
「【敗者】……」
ボソリと言葉を呟くと剣を振り上げ、レヴィの出せる最高の速度で【敗者】の心臓と首を狙い薙ぐ。
【敗者】はバリアを出そうとしたが次の瞬間アイゼンハートの転換によって砕かれ、また出そうとしても砕かれ、防御の手段がひとつ潰れても尚まだ表情を崩さぬまま剣を素手で受け流す。
刃が触れそうになっても、肌にのめり込む直前の、レヴィが完全に当たったと確信した瞬間に【敗者】は後ろに下がって知らん顔だ。
「はぁッ、はぁッ……」
レヴィは疲労と痛みに打ちひしがれる体を無理やり動かしながら、ボソリと小さく呟いた。
「力を寄越せ……」
周囲から装飾品が次々に消えていき、次の瞬間【敗者】の周囲にフォトンの刃となって降り注ぐ。
レヴィはぼーっと彼を見ながら言葉を呟くとアイゼンハートが手の中でひとりでに変化し、レイピアとなった。
「……遅い」
【敗者】の罵倒の言葉にも反応せず、レヴィが近付くと飛び上がり、彼の目を狙って刃を突き立てる。
周りの景色がじんわりと変化していき、真っ暗な闇に包まれるとレヴィは【敗者】の肩に乗り、彼のタイを掴んで引き寄せて、アイゼンハートを銃に変化させ額に突きつけた。
――しかしその引き金を引く指はあまりにも重い。
こんな設定にしたつもりはないというのにギリギリと永遠にもかかりそうな時間の重力に押し潰され、レヴィの手の内から感触が消えたかと思えば【敗者】は既に遠く離れレヴィを見下ろしていた。
レヴィは反射的に構えて引き金を引くが、先程までの現象が嘘のように直ぐに弾は発射されていく。
しかし【敗者】が手を出したかと思えば銃弾を指で挟んで止め、何処かに跳ね飛ばした。
(つ、……強すぎる……)
血の繋がった己の片割れはこんな奴を本当に倒したというのか。
ヒューナル形態になり、ダークファルスとしての本体になってさえも、これよりもずっとずっとダーカー因子も強くなって、万全の状態の時に……全アークスに敵対したあと待つ暇もなくこの男を真っ向から立ち向かって倒したと?
(もっと早くしないと、もっと相手の予測出来ないような行動で、パターンを外して、それから…)
レヴィは頭を最大限に使い考え込みながらアイゼンハートを変化させる。
剣を振るうと同時に辺りに糸を張り巡らせ、避けられた次の瞬間糸を全て燃やし、同時にクロスボウを構え一発、二発と撃ち込む。
さらにダメージが入っていないと分かればすぐに炎を収縮させ【敗者】に向けて撃ち込み、長槍を地面に突き立て大きく飛び上がるとアイゼンハートを再構成し再び長槍を手に握り、そのまま突き落とす。
「ッ!」
「アークスシップのフォトンを用いた戦闘に対する抑制を、管制に観測されない一瞬のみの構築……アイゼンハートの他物質からの転換によって対策し、クラスを設定しない事で武器の制限もなく無尽蔵に変化する創世器を利用して多岐にも渡る戦闘手段を手に入れる、という事か」
【敗者】は未だ汗ひとつかいておらず、消耗し足や手が震えていくレヴィをじっと見つめていた。
「なんなのッ?!擬似フォトンでも、一切効いてないって……?!」
「効いていないのでは無い。効かないように避けている。そして貴様のする事は、避けられる前に当てるだけ。単純だろう?」
「それが出来たら苦労しないっての……!」
レヴィはアイゼンハートを短いステッキのような物に変えて掴むと、頭の中でイメージを構築していく。
辺りから絶え間なく物が消えていき、口の中は濃い血の味で満たされる。創世器の負荷に耐えきれず肉体に恐ろしい程の負担が掛かっているがそんな場合ではない。
口端から零れ落ちた血液が地面にポタリと落ちた瞬間、ステッキを振り上げてくるくると回した。
「ショータイム!!」
血に塗れた叫び声と共に濃いピンク色の魔法陣が現れ辺りを埋め尽くすと、半透明のレーザーが彼に向かって迸り、着弾する瞬間に実体を持つ。
空中には金箔のようなものが舞うとそれらがひとつの線で繋がり、雷となって絶え間なく降り注いでいった。
レヴィは広範囲の攻撃からアイゼンハートの剣に乗って直ぐに離脱し離れると、地面に目を向け項垂れる。
「ごほッ、……は、ッ、はぁあッ……はッ…」
喉が裂けるような痛み。枯れた咳、ボタボタと大量の血液が地面に落ち、血で真っ赤になった口を手で拭うと、また武器を剣に変えて構えた。
レヴィとしては一番頑張った方の攻撃だが……
光に包まれる視界の中で【敗者】は黒いもやを孕んだ手でレーザーを払い、雷を掴むとまるで剣のように振って全てを消し去る。
【敗者】が全ての攻撃に対処した後、手を払っている間にレヴィは背後から直ぐに回り込み、首を切ろうとする。
しかし彼の体が揺れたかと思えば腰を曲げて避けられ、彼の目の前に目を閉じても明るさが分かるほどの極光を出すも直ぐに闇に覆われてあっという間に消えた。
レヴィは目の前の視界が半分暗くなっている中、死にそうな目で【敗者】に向かって剣を振ると、【敗者】がぐるりと体が彼女に振り向いたと思えば軽い蹴りで吹き飛ばされる。
「がッ……!」
地面にしがみつくレヴィの手がガタガタと震えている。
恐怖などとは違う、単純に立つこともままならない損傷だ。
「なんだ。もう終わりか?かすり傷ひとつ付けられないで一体誰に勝つと?もっと殺す気で来い」
「うる、……さいッ!」
【敗者】の足がレヴィの頭の上に乗り、ぐりぐりと動かされる。
地面に押し付けられる感覚は痛みと共になにかが奇妙に混じり、体が震えた。
「はッ、………、わ、たし、……まだ、やれ……」
「ならば、これくらい退けられるだろう?」
【敗者】の足が信じられない程に重い。
周りの空間の中で、レヴィだけが異様に遅くなっているみたいな……そんな感覚だ。
「ッう゛……ぅ゛ぅ゛ーーッ!!」
レヴィは呻き声を上げながら拳を握りしめ、内側に血が滲むのも気にせず少しずつ立ち上がる。
ミシミシと軋む頭蓋骨が割れてしまう前に彼の足裏と頭の間にアイゼンハートを変化させた薄く硬い板を乗せ、力を入れてめいっぱいそれを押し上げる。
「っは、はッ、ぁッ、……」
「あと何日やれば貴様の頭が僕の腰を超えるだろうか……。いや、仮に立てたとしてもその後まともに戦えるようには感じられないな。諦めろ」
"諦めろ"なんていう【敗者】の言葉に、レヴィは今日一番の苛立ちが籠り、体にグッと力が入った。
――ムカつく、ムカつく、こんなに煽られて、精一杯やってるのに、力がないって分からされて、わたしが今までやってきたことはなんなんだ、何人殺してもルビィにはたどり着かないのか……
「自分とか言っときながら……
なんてそんなレヴィの強い怒りと苛立ちと焦燥と悲愴と苦しみが体を龍のように駆け巡り、そして全身の筋肉に宿ると一気にそれを吐き出した。
「バッカじゃないのーーッ?!」
「ッ!」
【敗者】の足がガクンと上に上がる。
レヴィはすぐに彼の足元から逃れて立ち上がり、アイゼンハートを己の背後に構え、目の前の【敗者】を見ながらも
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる