もう二度と得られないと思っていたベッドの柔らかい感触。
レヴィはゆっくり体を起こすと、【敗者】と目が合う。
「わっ、……その……」
夢や嘘のようだがここは現実だ。
レヴィはこの状況をどう乗り越えればいいか分からなかったが、【敗者】はあまりにもいつも通りの平常な様子だった。
「遅い。もう13時だぞ」
「ご、ごめん……」
【敗者】は無言で立ち上がりベッドから離れる。
去る彼の後ろ姿は相変わらず大きかったが、髪の後ろに少し寝癖が付いていて、レヴィはそんな些細なことなのにどうしようも胸が熱くなって、知らない感情に蝕まれた。
暖かく、柔らかく、それなのに胸が締め付けられる。
守りたい、彼の笑顔が見たい、彼に幸せになって欲しい、幸せにしてあげたい……
そんな思いが一気に襲ってきて、レヴィはこの感情に何て名をつければいいのか分からなかった。
「わたし、えっち……しちゃったんだよね、【敗者】と」
レヴィは顔を真っ赤にし、布団を抱えて足をバタバタと揺らした。
昨日の情事は欠片も忘れていない。
いやらしくて気持ちいいキスをして、全身触れられて、そして大きなおちんちんでたくさん奥を虐められて、中出しされて……
「きもちよかったなぁ……」
顔を真っ赤にして頬を抑えていると、扉が開き、また【敗者】が帰ってくる。
「【敗者】……」
「ん?」
「き、きもちよかった、……いっぱい。その」
「それくらい見れば分かることだ」
(あ……)
【敗者】は自分の意思と違うのかもしれない。
あれはたまたまで、【敗者】は性欲処理に付き合ってくれただけかもしれない。
レヴィはとにかくネガティブに考えて、己を抑えて、恐る恐る微笑んでみた。
「あ、ありがと……ね?【敗者】……あなたは優しいね……」
「僕は優しくしたつもりなどない」
【敗者】のぶっきらぼうな口ぶりは相変わらずだが、レヴィはそんな彼の様子に救われていた。
「ゆ……夢じゃなくていいの?」
「まだ寝惚けているのか」
「いや!ちゃんと目覚めてるんだけど、でも、そのっ……」
レヴィはチラチラと【敗者】の股間に視線を向けながら、ボソボソと呟いた。
「夢だったら、二度としないよ……?」
【敗者】はレヴィのいう"夢"の意味を理解し、顔を顰めた。
レヴィは彼がどうしてそのような表情をしたのか全く理解出来ず、首を傾げていたが、【敗者】は返事を返すことはなく、代わりにレヴィの頭に手を置いてぽんぽんと撫でた。
「わ……」
肌の温かみも消えぬレヴィにその手は甘ったるく、思わずへにゃへにゃと微笑み、体を揺らして楽しげだ。
【敗者】からしたらそんなレヴィの様子は不愉快で仕方なかったが、レヴィにそれが伝わる訳もなく……【敗者】はため息をつくだけだった。
己の醜態を晒した相手だ。おまけにその責任を押し付けようとまでする。
【敗者】からしたらこの場で殴っていないだけかなり優しい対応をしている方だが、笑顔で応対出来るほど平常でも居られない。
「食事を取れ」
「あ……うん!」
【敗者】に食事であるサプリメントと水を渡され、レヴィは笑顔のままそれを飲む。
もう何日も彼が嫌がらせで用意した食事未満の物で繋いでいたが、レヴィは一つの文句も言わなかった。
「……嫌じゃないのか?」
「え?何が?」
「何か食べたいとか、そういう事を言いたければ言っても構わない」
「無いけど」
【敗者】はその言葉に眉を顰め、レヴィを凝視する。
食べたいものがない、なんて一部分が少女のような感性の女から出る言葉とは思えなかった。
「……今、なにかしたい事は?」
「え?何も無い」
「どんな事が出来ると言っても?」
「訓練したい」
レヴィの言葉に【敗者】は頭を抱えそうになった。
外に出せと懇願したり、特技とも言えるものがあったり、好き嫌いという概念を理解していたことから、目の前の女には常識は無くても人間としての感情はきちんと備わっていると思っていた。
しかし、聞いてみればやりたいことも無い食べたいものもないと……娯楽にあまりにも欠けている現状を【敗者】は何故か危機的に思った。
彼にとってはそんなこと無関係であり、レヴィはただの駒で兵器なのだから、衛生さえあれば彼女がどんなに虚しい人間であろうが意味はないというのに、【敗者】は不思議とレヴィが自分の望む人間でない事が嫌だった。
「なんでそんなこと聞くの?」
「要望はないのか聞いたつもりだったが…」
【敗者】はレヴィから目を逸らしてベッドを見ると、彼女はそれで全てを理解した気になったのか裸体のまま立ち上がり、ベッドから直ぐに降りた。
「なーに、動いて欲しかったの?ならさっさと言ってよ。基礎訓練でも検査でも、あんたが言えばやるよ」
「貴様は自分からしたいことは無いのか?」
「ん?だから訓練だって言ってんでしょ」
「それは僕がさせているからやりたいだけだろう?もし今日は休みと言って貴様に休暇を与えたらどうする、何がしたい」
「んー……寝る」
「外に出られたら?」
「仕事する」
「なら、仕事が終わったら?」
「え?トレーニングして寝る」
「はぁ…」
【敗者】の返事は酷く冷たい。
普段の彼は話せば回りくどく、独り言も多く、口煩いが、今は思考を整える為できるだけ淡々とした会話を繰り返していた。
「全く…分かりきったことを聞いても無駄だと思うよ」
レヴィは自然に何も敷いていない硬い地面に座り、【敗者】の事をぼんやりと見上げる。
柔らかい肢体が木でもない硬い床に乗り、快適とは程遠い状態だったがレヴィはさも当然のように座って平常な顔をしていた。
「……何故そこに座る?」
「え?だって……無いし」
「何が?」
「わたしのもの。此処、何も無い」
【敗者】はその言葉を聞いた瞬間、盛大なため息をついた。
「貴様は何時になったら己の立場を理解出来るんだ?」
「え……?あぁ、そういうこと?」
レヴィはその場から動くことはなくちらりとベッドに視線を向ける。
「少しの間だったけどベッドありがとね。その、布団をくれとかは言わないから大きめのタオルとか貰えたら嬉しいんだけど……」
「は……?」
【敗者】はパチクリとレヴィの顔を眺め、彼女の言葉が嘘や挑発かもしれないと疑ったが……どう見ても本心からの言葉だ。
「……」
「風邪引いてた時はフワフワで有難かったんだけどね、わたしいつもは床で寝てたの。野宿もよくしてたから、ワガママ言ったりしないよ」
「ワガママ…?」
【敗者】はレヴィの手首を掴むと無理やり引き寄せ、彼女を立たせた。
「えっ?何……?」
「貴様は一体何のつもりでこの僕にそんなつまらない挑発をしている?それで貴様に何か益があるのか?」
「ごめん、言ってる意味がわからない……」
「……わかった、レヴィ。なら、貴様のような未就学児未満の赤子に常識と言うやつを教えてやろう」
【敗者】は彼女の手首をしっかり掴んだままベッドに乗り上がり、彼女を無理やり柔らかい布団に押し込んだ。
クッションの柔らかいヘッドボードに背を預けると、レヴィを横に付き添わせる。
彼は自分の頭の中で「自分は一体何をやっているんだ」という一日に十万回は繰り返しているような言葉を吐いた後、色々な思考でそれを塗り潰した。
――大丈夫だ。レヴィの精神を安定させ、人間としての当然の常識を得ることは彼女のパワーを強化させるのに役に立つはず。
レヴィの弱点である慢心や驕りは、その愛らしい美貌と、世間知らずな所から来ているに違いない。
この女に社会性を手に入れさせることは謙虚さを身に付けて堅実に立ち回りさせ、隙を減らすことに繋がるだろう……
という言い訳で塞ぎ、【敗者】はとにかくレヴィに声をかけた。
「いいか。まずこの家の全ての物は貴様のものだ」
「は?」
「それで貴様は…」
「待ってくれる?まずその最初の一言が意味わからないんだけど」
【敗者】はレヴィの困惑する様子に訳が分からないといった顔で、さも当然のように呟いた。
「ダークファルスには睡眠も食事も排泄も何もかも必要ない。故にこの家にある生活するための物の全ては貴様が主に使用するもの。故に貴様のものだろう」
「別にそんなら檻でも良かったけど…?床も天井もあるし、土とかじゃないからぬかるむことも無いし、それから外がある程度見れるし……」
「分かった。貴様は黙れ。もう喋るな」
「は?……むぐっ!」
レヴィが反論しようと口を開くと、すぐに【敗者】の手が彼女の口を覆う。
今まではなんだかんだ言っておきながら実力行使で口を塞ぎに来ることなどなかった故に、【敗者】は本気でレヴィに喋らせたくなかったというのは見て分かることだ。
「それで、この家の物は貴様の物。そして貴様は僕の物。だから貴様の物であるこの家は同時に僕の物でもあり、結果的にどちらのものでもあるという訳だ」
「……別に最初から二人のものだって言えばよかったじゃん…」
「何故だ?僕は使用する意味もないものを貴様に合わせて使っているだけだ」
「わたしあんたに使えなんて一言も言ったつもりないけど?!」
「……」
【敗者】の顔が寂しそうに歪んだように見えると、レヴィは反論するのを辞め口を噤む。
彼はレヴィに"使わせたがっている"という事を察したのだ。
何を?生活するための道具を。
生活するための道具を何のために?
――まともな人間生活が出来ていなかったレヴィに人間としての日常を送らせるために。
「……分かったよ」
レヴィの返事はぶっきらぼうだったが、同時に顔は赤らめていた。
【敗者】はレヴィに体をくっつけて、彼女に布団を被せる。
「貴様はここで寝るんだ。椅子だっていい物をわざわざ買ってやってるんだからそこに座らなければ意味がないだろう」
「うん……」
レヴィは何故【敗者】がレヴィのために尽くすのか分からなかった。レヴィが【敗者】の駒で兵器だというのは【敗者】から言い出したことで、レヴィはそれをよく分かっていたからだ。
【敗者】の中では駒に優しくするというのは人心掌握の為の手段でしかないし、レヴィの中では駒は物であり優しくする必要などなく、忠誠は暴力を持って服従させることしかないと思っている。
それでも、この奉仕はどうしてもその域を超えるような、甘さすら感じられたのだ。
そうでなければ同衾などしないだろう。
「うん、やっぱり【敗者】は本当に優しいね」
「優しい…?僕は貴様を利用してるだけだ。勘違いするな」
そんな突き放すような言葉さえ、レヴィにとっては甘ったるい。
どうかもっと厳しくして欲しい。嫌いだと言って、全てを奪って、痛めつけて、苦しめて欲しい。
そうじゃないと駒でいられないから。
「あのさ……訓練とか……しなくていいの?」
「作戦会議も当然必要な事だ」
レヴィが諦めてため息をついたあと、枕に頭を預けると、【敗者】はそのまま話を続けた。
「まず、貴様はアークスの管制をハッキングで掌握出来ることから……」
「えっ照れ隠しとかじゃなくてマジで作戦会議だったの?!」
「は?僕が照れ隠しなどする訳ないだろう」
レヴィは完全に先程の流れから【敗者】は照れ隠しをする人間だと認識していた為、彼のやっている事が理解出来ず首を傾げた。
がしかしそれで【敗者】が止まる訳もなく、レヴィが口答えをしないのを確認すると当然のように会話を続ける。
「貴様のやり方だと全管制を握ることは難しい。管理者権限を手に入れる訳ではなく、プログラムにウイルスを送り付け、それによって遠隔から操作するということは、全管制を掌握するには何かしらの形で伝染させないと不可能だが……生憎そういう物を担ってくれるような馬鹿は上にはいない」
「まあ別に……慣れてないけど管理者権限を乗っ取るやり方は出来なくはないよ?あんたの協力が欲しいところではあるけど」
レヴィはいたずらっ子のようなあくどい笑みを浮かべる。
悪巧みを話す時の二人はまるでいついかなる時も付き添ってきた関係のようで、主人と駒ではなく唯一無二の相棒みたいに見えた。
「僕の協力……かつて持っていた管理者権限を貰い受ける……ということか」
「そそ、データをちょちょーっと弄って、あんたの管理者権限を掘り起こしてから、それをちょっと借りるだけ」
「ふむ……」
今管理者権限を持っているのはシオンの後継であるシャオとはいえ、ルーサーの管理者権限が剥奪されていてもその権限自体は削除されていないだろうと【敗者】は考えた。
「ルーサーの持つ管理者権限」がないと開く事が出来ない機密データがそれなりの量存在するからだ。
アークスはそれを知りたがっている故に手に入れるまでは消すことはないだろうし、手に入れてもなお今後の為に残しておく可能性の方が高いだろう。
【敗者】の生存により管理者権限を奪われるかもしれないというリスクも、シャオの力と、本人を直接抑えに行くルビィさえいれば実際なんとかなるからだ。
「それでは不十分だ。今マザーシップの核となっている演算機構そのものに立ち向かって相手を捩じ伏せる力が無ければ不可能だろう」
「そもそも、管制全部手に入れる必要はあるわけ?アークスシップの酸素供給を止めたりとか、ダーカー対策のプロテクトを解除した上であんたの力を使ってアークスシップに一気に襲撃させたりすれば結構被害出るでしょ?」
「アークスは貴様の想像以上にしぶとい生物だ。甚大な被害程度では止まらない。完全に機能を停止させ、滅ぼさなければ勝利とは言えないだろう」
「むぅ……、……だからわたしの体が気になるってことね?」
「よく分かってるじゃないか」
【敗者】の目的、レヴィの得意とする領域、それを達成するために必要な事……それらを掛け合わせると、最も効率的にアークスシップを沈めることが出来る手段こそレヴィの肉体にあるフォトンアレルギーになる訳だ。
「貴様のそれの原理を解明さえ出来れば、意図的にフォトンを阻害するウイルスとしてばらまいて、実質的に全管制を握った時と同様の状況に出来る」
「オラクルはフォトンありきだから……フォトンがなければ戦うことも出来ないし、ありとあらゆるエネルギーが停止して、呼吸も出来なくなって、宇宙に行ってもフォトンがないから呼吸が出来なくて……、わたしの体と同じだから何も対処できない」
治療法さえあればこんな体なんてすぐにおさらばしたいのだ。レヴィは苛立ちを抑えたつもりだったが、発せられた声はレヴィの想像よりずっと低かった。
「アークスのデータベースをもっと細かく探ってみれば、類似したデータは出てくるかもしれない」
「そういうのでもなんも出なかったから今ここにわたしがいるんだけど?」
「いや、……フォトンを阻害するという面でなら似たようなものを知っている。そこから突き詰めていけば分かる可能性はある」
彼の言葉にレヴィは起き上がり、目をぱちくりと開いて見つめる。
【敗者】が彼女の目を覗くと、あの死んだような瞳が明るくなっていることに今更気づいた。
レヴィの顔をあれだけ見ていたと言うのに、こんな事実に気付かないなんてありえない。
――いつの間に?何がきっかけで?
「えっ……ほ、本当に?!」
「……」
「【敗者】?」
【敗者】の疑問はレヴィの問いかけで強制的に遮断され、思考を揺り戻す。
とは言え彼の目線はレヴィの瞳にあり、波のように揺れる紅の混じったその色を鋭く凝視していた。
「いや、惑星調査隊の記録なんだが、データ自体がごく最近に送られてきたものでね……艦長の報告文書から此方側で独自に解析したアークスシップの解析データも含め、軽く中身を確認しただけで語るには足りないものだ」
【敗者】の時間間隔から考えれば"ごく最近"は数ヶ月でも数年でも同じような言い回しを使ってもおかしくないと考えられるが、実際そのデータは本当の本当に最近……一ヶ月ほど前に送られてきたばかりのデータだ。
「惑星のデータ……?そんなのがフォトンアレルギーと関係あるわけ…?」
――オラクル船団からのフォトンワープの届かない範囲での惑星探索は、遠征を前提とした特殊な部隊を編成し可能な限りフォトンワープを行い星間航行をする。
その後、コールドスリープ等で眠った状態で移動……
そして、現地での活動後、回線の届く範囲に戻ってくるなりデータを転送し、後は人が戻るだけ……
と言った感じで説明されていた気がする、とレヴィはぼんやり思い出した。
レヴィにはその時期を全く予測できなかったが、【敗者】が軽く見たあとに機密情報の所に保存したと言っていた以上、データは確実にある上、帰還者がいれば少しくらい話は広まっていてもおかしくないが……。
そういう様子が毛ほどもないということは、データはあったとしても手がかりになるであろう人自体はまだ戻ってきていないだろうか?
しかし、アークスシップは存在すると言っていた。
つまり、人員の方は特殊惑星調査を終えたあとの身体検査や集中浄化のような療養などを挟んでいる所……もしくは、あそこに搭乗していた人間全員に何かしらの情報統制が敷かれていて、それがきちんと守られているという可能性もある。
「一言で言うならば、"フォトンを阻害する兵器という概念は有り得る"という事だ。それも、フォトナーの時代から……」
「えっ?!そうなの……?でも、対策取られるんじゃ……」
「覚えている限りであれば、それに対する対策はフォトンを阻害する兵器そのものを破壊する事しかない。それは対策というには不十分だ」
有毒なガスへの対策はガスの発生装置を止めればいい、というのはおかしな話だろう。それは対処ではあるが対策ではない。
薬か何かを使ってその毒に対しての抗体を作るか、何かしらのマスクを使うなりして毒を吸うこと無く立ち回れる状態じゃないといけない。
フォトンを阻害するものにおける対策は、フォトンを阻害する何かに対する抗体もなければ、それを無かったものにして普通に活動できる手段がないからこそ、【敗者】は強いと考えたのだ。
「破壊するねぇ……、何かしらの粒子をばら撒くとか……そういう感じ?」
「それよりかは高性能な物だが、所詮ままごと遊びの範囲だろう。
そこは艦長からの報告書によれば随分と美しい星らしい。いやむしろその程度しか書かれていなかったが……」
レヴィは「ふーん」とつまらない返事をしたあと、端末を取り出そうとした。
もちろん、手掛かりとなる資料をハッキングで持ってこようとしたのだが、端末を持つレヴィの手を【敗者】が覆うと、彼はレヴィをベッドに押し込む。
「……なに?」
【敗者】はその手を離さないまま、レヴィの上に跨るとじっと顔を近づけていく。
「えっ?!何?!ほんとに、そのっ、わたし…」
【敗者】の浮世離れした美しい顔を見て、レヴィの顔がボンと真っ赤になった。
顔に熱が集まり、肌が赤らむのは勿論、彼女の揺らぐ目もじわりと燃えるように明るく、……レヴィが好きだと言った、キラキラと輝く韓紅の濃いピンク色になる。
(……緊張か?)
「レヴィ」
「ひゃいっ?!」
レヴィの慌てた顔を見ると、【敗者】は己の高い鼻でレヴィの鼻をつつく。
それだけでレヴィの肩は跳ね上がり、そして彼女はモノ欲しげな瞳で【敗者】のことをジッと見つめた。
「う、……何考えてんの、あんたは……その、わたし」
「……していいか?」
「へ?」
「キス」
【敗者】は検証の為にわざわざいう事でもないような言葉を紡ぐ。
レヴィはそれにあわあわと忙しなく態度を変えた後、最後に顔を俯かせるように頷き、きゅっと目を閉じた。
「目を開けろ、……レヴィ」
「やっ、やだよ、わたし」
「開けろ」
そう言われるとレヴィはさすがに開けるしか選択肢が無い。
じんわりと甘とろい目が【敗者】を刺すように見つめ、彼女の体が火照り少し汗ばむ。
【敗者】は髪を撫で彼女の首に手を掛けると、唇をくっつけて合わせた。
ぷに、と小さく柔らかいレヴィの唇が【敗者】に当たる。
少し舌を出すと彼女の歯が当たり、なぞれば八重歯の鋭角をなぞった。
「るぅ……ひゃ……」
どうしてここまでいやらしい女なんだ、という言葉が【敗者】の頭で過ぎる。
彼女の体を求める肉欲は偶然ではないというのが、唇に触れた時の甘い感触から絶えず伝えられる……
「っは、……」
顔を離しても沸き立つ感覚は消えず、レヴィは涼しく通るような甘い匂いを纏って【敗者】を幸せそうに見上げていた。
その口に舌をねじ込み、体をまさぐれば甘ったるい雌の匂いを纏うというのに、何を気取った風に見上げているんだか……
「……【敗者】」
レヴィが手を広げ、【敗者】に微笑む。
【敗者】は倒れ込むようにして彼女に体を預けると、レヴィは手を回して彼の背を覆うように抱き寄せ、【敗者】の頭を撫でる。
「……」
「考えること一杯あるね、……でも、みんな上手くいけばいいだけだよ」
「それは貴様次第だ」
「うん。分かってる……」
互いにそれは分かってはいるのだが、今はこの甘い時間を無かったことにはしたくなかった。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる