「んー……」
レヴィは創世器を眺めながら目を細め、頭の中でうんうんと考え込む。
あのお仕置された訓練以来、レヴィは使えもしないコモン武器を握らされて訓練しているのだ。
創世器の力を引き出すことが必要だと思っていたのに、【敗者】は打って変わって創世器に頼らなくても力を出せるように、と言って別の訓練をしている。
こんなにふらふらやることを変えていては成長するものも成長しないだろうとレヴィは心の中でモヤモヤと鬱憤を膨らませていた。
今度【敗者】に抗議しよう。せめて創世器とサブウェポンとの組み合わせの訓練だ。創世器の使用禁止などありえない。創世器をより強く扱えてこそ強きアークスだろうと……
「レヴィ」
そんな所に後ろから【敗者】の声が掛かり、レヴィはゆっくりと顔を上げる。
だる絡みや世間話をしたいという雰囲気ではなく、異様なほどしっかりとした研究者モードであるゆえレヴィは背筋を直して創世器を置き、【敗者】の方に体を向けた。
「どうしたの?」
「前に貴様の体に対して調べたいことがあるという話をしたのを覚えているか?」
「え?うん……まあ、そうだけど」
「その検証を今から行おう」
「あっ、うん」
レヴィは雑な返事をしたあときょとんと丸い瞳で【敗者】のことを見つめる。
彼はこれから行う検証という物でどれ程彼女が苦しむかというのを想像し、上っ面だけの優しい言葉を掛けることも忘れじっと凝視するだけだった。
「……」
レヴィはどこでも行くと言わんばかりの目線で【敗者】を見上げる。
どこでもとは言いつつ、十中八九は前身体検査したあの研究室だろうと思っていたが、【敗者】は彼女を連れたまま部屋を出ることはなくそのままベッドの方にレヴィを押し込んだ。
「【敗者】?なんでベッドなの……?あの……研究室じゃなくていいの?」
「ここで構わない。大体目処はついている。これは唯の確認だ」
「確認……?」
【敗者】が何を考えているのか、具体的に何をするつもりなのか。
そういう情報は彼の表情や様子からは一切読み取れない。
【敗者】が掛布団を剥がし、床に落としていく様子を見ながら、レヴィは部屋を見渡していた。
知らない人間の肖像画等が無いのは嬉しいが、それにしてもゴシックテーマの割にはずいぶん淡白だ。
いや、自分の知っているゴシックテーマを使った部屋があまりにもごちゃごちゃしすぎていたのかもしれない。
それにしても、なにかしらインテリアは増やしてもいいんじゃないかとは思うが……
「とりあえず……全て脱げ」
「え?脱ぐ?」
「服を着たままで検査が出来ると思うか?」
「いや、えっと……」
確かに全ての検査が普段着のままできる訳では無いが、【敗者】は術服も何も手に持っていない。
となれば着替えるものはなく、全裸になれという話になる。
全裸になって、ベッドの上でする検査などあっただろうか……
「本当に大丈夫……?検査って名目でエッチなことしたい訳じゃないよね……?」
「僕がそこまでして貴様の体に触れる理由などあるか?」
「それは……ない、けども……」
レヴィは怪訝な顔で彼をチラチラ見ながら服を脱いでいく。
当然のように髪も解こうとしたが、そこには【敗者】の静止が入った為ツインテールはそのままだ。
セックスは彼から求められてしているのでは無いかと一瞬錯覚したこともあったが、やっぱり彼はそういうことに本質的な興味は無いのだろう。自分に無理矢理付き合わせているだけだから、あと一年くらいは性行為しなくてもいいはずだ……
とレヴィの頭の中で思いつくのは先行き不明の検査のことではなくセックスの事ばかりで。
「脱いだ」
レヴィは一言だけ告げると座り込んだまま【敗者】の指を見つめていた。
目は合わせたくなかったから、他に肌の露出している所を探した結果だ。
「あぁ」
普段はねっとりと身体中に触れて愛撫してくるところだが、今の【敗者】は研究者モードらしく真っ直ぐに目的の場所に触れる。
レヴィの頭を布団に押さえつけながら、尻を鷲掴んだ。
「ッ?!【敗者】……?ちょっと、何この姿勢?!」
なんというか、まるで座薬を入れる時みたいだ。
そんな風な考えがレヴィの頭をよぎると、ちょうどその部分に冷たい水の感覚が触れる。
「ひぃぃぃっ?!!」
「……」
レヴィの尻には粘着質な液体……アナルローションが塗りたくられており、秘孔の皺の一つ一つをなぞるように、桃色で締まりきった醜いというより卑猥なそこを、液だまりが出来るほど濡らす。
「ちょっと!待って……説明して!わたしは何させられるの?!あんたが医者気取りっていうなら説明する責任はあるでしょ?!」
「はぁ……」
【敗者】は面倒臭そうにため息をついたあと、秘孔を指で撫でながら呟いた。
「結論から言うと、貴様の体の中にはとある機械が入っている」
「え……?わたしの臓器はいろいろ機械だけど」
「貴様の管理ソフトの中には記載されていなかったデータだ。自分で入れたものではないだろう」
「えぇ……?そんなものあるかなぁ……」
確認するとしても、カメラのひとつもないのだろうか。なぜ素手なのだろうか、なぜわざわざこんな場所でなのだろうか……
そんな不満が募りながらみっともない姿勢で考え込んでいるが、【敗者】から投げかけられたキーワードにも首を傾げるだけだった。
「浄化腺という言葉に聞き覚えは?」
「……何それ?」
レヴィは聞きなれないワードに思わず尻を落としてうつ伏せになり、拝聴モードに移る。
「それは昔虚空機関所属の研究所が作り出したアークスに付けるアタッチメントだ。ダーカー因子の汚染や人体実験の中でフォトン適性を後天的に失ったアークスの為、浄化機構の代わりとして作られたものである」
先天的にフォトン吸収・放出障害を持っているレヴィとは違い、後天的にフォトン適正を失うアークスはそこまで珍しくもない。
特に、長年の戦闘により浄化能力が低下するという事例もあり、フォトン適正を他者に移植するという実験なども行っていた虚空機関にとって、後付けの浄化機構というのはアークスの強化において夢のようなものだった。
その結果のうちの一つが、浄化腺である。
「それが私の中に?……どこに?」
「もう分かっただろう?」
「え?……お、お尻……?」
「普通、アークスは己の体内に蓄積されたダーカー因子を体内のフォトンを使って中和する。中和されたダーカー因子は形も無く、浄化された分は無くなるのが普通だが、これはそうではない。
ダーカー因子を浄化腺の中に搭載されたプログラムによって強制的に浄化し、排泄物として排出するというのが浄化腺のやることだ」
「えっ!でもわたし、紅茶とかしか飲まないからなんか出した覚えなんて……、いや、そもそもそんなのいつ誰が……」
レヴィにとって不可解なのは、自分でもそれを把握していないということと、実際に浄化腺が働いたという事例を認識していないからだ。
確かに、旧マザーシップで寝こけて侵食を受けても生きていられたが、浄化腺にそれほどのポテンシャルがあるというのならばレヴィが知らないはずがない。治験段階でその浄化能力の高さが示され、浄化能力が失われてなかろうがこぞってつけていたはずだから。
しかし、前者の答えはすぐに出た。
「僕が確認した限りだと、浄化腺の型番は20年以上も前。つまり、貴様が生まれた年に入れられたと考えれば……親がやったことだろう」
「……なりふり構わないって、そういうこと?」
前に【敗者】がレヴィの体の異常について話題に出した時、彼は親の単語を出した上でその親をこう言っていた。
それはそうだ。彼らは産まれたばかりのレヴィの体に深刻なダメージが受け障害が残っても構わないと思えるほど沢山の手術をして、それら全てが失敗した。怪しい宗教の謎の儀式までやっていた。
それら全てはレヴィがフォトンを扱えるようにするため。「自分たちのような優秀なアークスから、不出来な子供が生まれたことを認めたくないから」だ。
「あぁ。僕が調査したいのは、浄化腺が正しく働いているのかどうかという事だ」
「あぁ、……まあ……好きにすれば」
親が付けたもの、と聞くとレヴィは途端に興味を無くし、つまらなそうに言葉を紡ぐ。
しかし【敗者】は先程よりなおさらに冷たく……深刻そうに説明を続けた。
「……一応言うが、浄化腺には深刻なデメリットがある。今の貴様は運良くそれが働いていないが、普通の人間ではコンプレックスや障害と言っていいほどの物になるだろう……貴様の親はそれを承知で入れたんだ。僕から貴様の親への感情は侮蔑に値するだろう」
「あんたが、わたしの親に対して憎悪を抱く理由なんてあるワケ?」
「当たり前だろう。貴様は僕のものだ。僕より前に貴様を所有していた愚者が余計なことをして貴様の肉体的・精神的にダメージを与え傷物にした事は不愉快極まりない」
【敗者】の言葉はレヴィを気遣うものでは無いし、どこまでいっても自分勝手だったが、レヴィは何となく彼の言葉に癒されていた。
「わたしの欠陥って……、【敗者】から見たら、どういうものなの?」
「環境の愚かさ、前所有者の愚かさ、アークスの愚かさ、それによって作られた圧倒的に未熟な部分だ」
「……体質は?」
「未知。可能性だ」
その言葉に思わずレヴィは泣きそうになり、彼とこのままこの会話を続けていたら本当に泣いてしまうかもしれないと思って頭を振り切ってなんとか話題を変えた。
「で、その……デメリットって……?」
【敗者】はその話には興味無いと言わんばかりに先程の話題を続けることは無いまま直ぐに切り替え、先程まで続けていた浄化腺の話に戻る。
「浄化腺は体内のダーカー因子に反応してそれを蓄積し、排泄物に変換して放出する……それほどのプログラムを積んだ機構は随分とデリケートで、そしてとても敏感だ」
「……?つまり?」
「普通の人間なら排泄の度に強い感覚を覚えることになる。それが痛みか快楽かは分からないが……なんであれ、余程苦しむだろう」
「痛みならわかるけど……なんでそこに快楽が入るわけ?」
「……」
【敗者】は虚空機関の報告書を思い出した。
浄化腺の損傷事例に関する話だが、尻に埋め込んだ浄化腺を刺激する自慰行為があまりにも気持ちよかったせいで原生種を模した硬い形のフィギュアを尻の穴の中に入れ、その尖った部分が浄化腺に当たって損傷し、激痛になったと……
研究者達はかなり笑っていたが、【敗者】……いやその時のルーサーからしたらあまりにも愚かで醜くて笑みなどはなくドン引きしていた。
実際、【敗者】は目の前のレヴィとか言う女を相手に尻穴で"出来る"かと言われれば……全然出来る。
なんなら前やろうと匂わせたこともあった。あの時は言葉を言いつつもほとんど冗談のつもりだったが、今はかなり本気寄りだ。
二章で大体どれくらいの話数になるかを計算していた所、それなりに長くなりそうなので三章もしくは四章以降を続編という形で作品を分けるか検討しています。話数が長すぎると管理が少々面倒なのと、読者からしても見にくいのでは?と思ったため。
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続編として作品を分ける
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分けないで一つの作品でまとめる