ピッグちゃん (R-18)
「師匠、ただいま戻りました」
出たときと同じキャンバスを背負い、魔女の住む家へとコリンが帰宅する。長旅で疲れた顔をしているが、それよりも懸念材料があることに溜め息もつく。
「師匠、寝ているんですか?」
玄関をくぐっても尚、師匠であるアルテからの返事は特にない。夜にはまだ早い夕暮れ時だが、家の中は実に静かだった。
ギシギシと軋む狭い廊下を進んでいくと、
「わぁ! コリンくんおかえりっ!」
角からアルテが飛び出してきた。
「はい、ただいま」
今の驚かしポイントに対し、ほぼノーリアクションでスルーする。
「何よ、暗いわね。報酬ケチられたの?」
「いえ、師匠の絵が無事に盗人を捕らえて上乗せもされましたよ」
そこでようやくコリンがキャンバスを背負っていることに気付く。
「ふふん、さすがは私の作品だわ」
よいせとキャンバスを下ろし、それを受け取ったアルテは作業部屋へと飛び込む。イーゼルに乗せると、豚と盗人少女の描かれた絵を目の当たりにした。
「あらまあ。気持ちよさそうね。コレ相当ぶっ飛んでるんじゃないの?」
一目見ただけでその状態を把握する。
「長旅させられちゃって壊れてるかもね」
「この人、どうにかなりますか?」
触診するように絵画に向けて手をかざす。ぼんやりとした光がアルテの手のひらと絵画の間を行き交いする。
「ぁー、完全に心までメスブタになりきってるわ。ずっとブヒブヒ言ってるもの。もうこれ手遅れよ。コリンくんも絵から出せる魔法くらいできるようにしなきゃ」
「面目ないです……」
コリンもピクトマンサーとしてはまだまだ未熟だ。絵を描くことも、絵から出すこともろくにできない。
もう少し自分に実力があったら助けられたのかもしれない。そう胸中で嘆く。
城からここに戻ってくるまでも相当な時間を掛けている。ただでさえ発見された時点でもう手遅れに近かったのだから、そうもなって当然だろう。
「っといっても、こういう感じの絵にしたのは私なんだけどね。いやぁ、勢いのままで描いちゃったから、まさか直ぐに掛かっちゃう子がいるなんてね」
てへ、と笑い、してやったり感の顔する。
「ぁーぁ、どうしよっかなぁ~」
などと呟きながらも、絵筆で絵画をなぞり、絵の中の少女にラクガキをしていく。豚鼻をつけたり、尻尾を描き足したり、好き勝手に弄られる。
「ま、どうせ城に盗みに入ったドロボーさんでしょ? 死刑にならなかっただけマシと思わなきゃ」
言い訳っぽく言う。気付けば絵の中の少女はもう殆ど豚と化している。
「あまりラクガキしないでくださいよ」
「ぁー、ごめんごめん。つい」
コリンに言われて絵筆をちょいちょいと弄る。とりあえず人の形には戻される。
「んー、じゃあ、とりあえず出してみるかぁ」
面倒くさそうにアルテは絵筆を構えて、少女をなぞる。
すると絵が光を帯びていく。キャンバスから飛び出して、床へとソレが落ちた。
「ブヒィィ! ブヒイィィィ!」
それは見るに堪えないという言葉が相応しかったと思われる。
床の上、腰をヘコヘコと動かし、ゴスゴスゴスと股間をすりつけ、アヘり狂った笑顔で豚のように鳴き続けるソレを何と呼んだらいいのだろう。
本人はとても楽しそうだ。理性の一欠片も残っていなさそうで、本当のまま、交尾を続けようとしている。もうとっくに番の豚などいないのだが。
「ぁぁ……? おちんぽどこぉぉぉ? ブヒィ! ブヒヒィィ! もっとズコバコ突いてぇぇぇ!」
ベニスがないことに気付いたようだったが、それでも腰を動かすのを止める気配はなかった。
「うーん、とりあえず、ピッグちゃんって呼んであげようか」
命名されたが、コリンはどうとも答えられなかった。
※ ※ ※
「おまんこ! おまんこぉ! ブヒブヒブヒィィ!」
にちゅぐちゅ、ずぶずぶ。ピクトマンサーの作業部屋の片隅でテンション高く騒ぎながら秘所に絵筆を何本も抜き差ししていたのは、ピッグだった。
よだれを垂れ流し、呼吸も荒く、理性のタガが外れているソレは、人間としての尊厳すらなくなっていることも一目瞭然だった。
「こううるさいと作業も進められないわ」
やれやれと呆れた顔をしつつ、事の元凶が溜め息をつく。
「どうするんですか、この人。いつもの師匠みたいになってますけど」
さらっと暴言を吐く弟子。
「あのね、コリンくん。私はね、レディなのよ。こんな下品じゃないわ」
どの口が言っているんだ、という冷ややかな目を送りつつ、
「ああ! いいっ! おちんぽちょーだいぃぃ!」
ズボズボと、硬骨な顔を浮かべて秘所を弄り倒すソレに視線を戻す。
「あーもう、面倒くさい!」
そういって、アルテは無造作にそこいらに転がっていたキャンバスをむんずとつかみ取り、両手で思いっきり振りかぶってそのままピッグの頭目掛けて叩き込む。
すると、次の瞬間にはピッグの姿は忽然と消え、色めいた鳴き声も消失する。
代わりに、アルテの手に持っていた真っ白なキャンバスの中には、なんともはやいやらしく踊り狂った少女の肖像画が描かれていた。
「さてと……」
そそくさとイーゼルに少女の肖像画を置き、鉛筆や絵筆を手にとって、いかにも面倒くさそう呼吸を整えて余白の部分に何やら書き込んでいく。
かなりの集中力と魔力を消耗するようで、額に汗をかきつつ、無言で作業を進めていく。常人からしてみればその絵描きのペースは尋常じゃないくらい早いものだったが、それでも夜が更けるくらいの時間を要した。
「ふひぃー……」
アルテはよろけるほどの疲労感を見せつつ、袖で汗を拭う。
「お師匠様、お茶が入りました」
「うむ。くるしゅうない」
「それで、そのピッグさんは?」
アルテはコリンからティーカップを受け取り、グビっと紅茶を一口飲むと、無言で絵筆の先をそのキャンバスにピンと向けて「ん」と答える。
キャンバスの中を覗いてみると、花の咲き乱れる庭を持つ貴族の屋敷のような場所をバックに、使用人と思わしきエプロンドレスを来た少女の姿があった。
その見るもほほえましいあどけない笑顔には格式の高ささえも窺い知れるほど。
とてもではないが、数刻前まで股間に筆をずぶずぶと抜き差しして悦び狂っていた少女と同一人物には思えない。
「見違えましたね。さすがは師匠」
「っつっても、こんなの催眠みたいなものだし、心が壊れちゃってると本質的なとこは変わんないのよね。砂で人形を作ったようなもんよ。さぁて、仕上がりはどうかなぁ」
アルテの絵筆が光を帯び、キャンバスを包み込む。少女の肖像画はムクムクと実体化し始め、中からエプロンドレスのピッグがスルリと現れる。
最初はキョロキョロとよく分かっていないように辺りを見回すピッグだったが、目の前に立っているアルテに気付くと、ドレスの裾を掴み、深々とお辞儀した。
「ご主人様……」
その様子を見てコリンは成功か、と思ったが、
「どうかこのメスブタめにおちんぽをお恵みください」
ニヘラァと下品な笑みを浮かべて、よだれをたらす顔を見たら落胆せざるを得なかった。そして裾を掴んだまま、グッと持ち上げて、下着も下ろす。秘所は愛液でドロドロだ。太ももまでトロリと筋が走っている。
「ちょっとダメかもしんない」
やれやれ、と言わんばかりに深い溜め息をつき、肩を落とす。
ブヒブヒ騒いでオナニーを始めないだけマシといえばマシではあったが、快楽に依存してしまっている心までは塗り替えられなかったようだ。
「ご主人様のためなら何でもします」
ジュルリと舌なめずりし、コリンに視線を向けた。