王都の城に設けられた広い会場に、その作品たちは主張激しく並べられていた。絵画であったり、彫刻であったり、知る人ぞ知る美術品の数々。
今日この日は国王の計らいによって展覧会が催されており、遠方の国々の貴族や王族も招待され、なんともはや格式の高い空気が漂っていた。
そんな中、はぐれた子供のようにポツンと立っていたのは、コリンだった。一応はこの展覧会の客人で間違いない。決して迷子ということもない。
会場には師匠であるアルテの作品も飾られており、一際人の目の惹いていた。
「あれが噂の魔女の……なんと妖しくも美しい。吸い込まれてしまいそうだ」
「どんな禍々しいものかと思えば、とんでもない誤解をしていたようだ」
何処のどなたとも分からない裕福そうな出で立ちの客が口々に揃ってアルテの描いた絵画を褒めていく。驚嘆の声ばかりだ。
コリンとしては師匠の作品が高い評価を受けて誇らしい限り。そのはずだったが、その心境たるや、少々複雑なものが絡まっていた。
「特にこの色使い。なんと綺麗なのだろう。独特な色味。どのようにすればこのような表現が可能なのか」
「まさしくこの絵画が輝いて見えるようだ。これが絵の具によって成せる色だとするならば一体どんな絵の具だというのか」
コリンの表情がやや曇る。
この場にいるお偉いさん方は当然ご存じではない。
先ほどから大絶賛している絵画には、一体何を使われているのかということを。
ソレを知っているのはこの場でただ一人、コリンだけだ。
魔女アルテの絵画を彩るその独特な色彩を演出しているものは、当然絵の具によるものだが、それはただの絵の具ではない。
何を隠そう、コリンから搾り取った精液を大量に混ぜ合わせたものだ。
ピクトマンサーが成せる技術。特殊な調合によって作り出されたその絵の具はこの世のものとは思えない絶妙な表現をも可能とする。
「嗚呼、素晴らしい。是非とも描いている風景もこの目で見てみたいな」
「まったくだ。どんな道具を使っているのか興味が沸いてきた」
褒められていることに不快な思いはない。ただ、その絵画にはコリンの精液が使われているという事実が、コリン自身の顔を赤く染める。
まるで自分のおちんちんから出てきたものを絶賛されているかのようでむず痒かった。それどころか、この絵画の制作風景に興味を示されているということは、自分のおちんちんが搾り取られる光景を見たがっているというように錯覚していた。
勿論、ここにいる貴族や王族たちは微塵もそんなことは考えてもいないし、思ってもいないことだろうが、それでもコリンは奇妙な気分に陥っていた。
その絵画を見られるということ。
その絵画を褒められるということ。
その絵画に興味を持たれるということ。
どれをとっても、コリンにとっては自分のあられもない姿を凝視されているような、恥ずかしい部分を品評されているような、いやらしい光景を見たがっているような、そういったことにどうしても直結してしまう。
気付いてしまわなければよかったものを、今となってはもう遅い。
コリンはその場に立っているだけで途方もなく劣情を催していた。
さっさと立ち去ってしまおうともついさっきまで考えていたが、悲しいかな、コリンのおちんちんはこの状況で、情けないほど勃起していた。
それどころか、コリンのおちんちんの先からは汁のようなものが溢れていることを、その湿っぽい感触から察していた。
歩こうものならおちんちんがどうやっても擦れてしまい、そうなれば溢れるどころではない。
顔を耳まで真っ赤にして、思うように動けず、その上、お漏らし寸前とまできているコリンは自己嫌悪で今にも消えてしまいそうな気持ちで一杯だった。
会場には少なくとも、この王都に招待された貴族や王族、それと多くの兵士たちが巡回している。その中でコリンの姿は小さくはあったものの、目立っていた。
(うぅぅ……どうしよう、みんなボクを見ている気がする……)
何せ、コリンは悪名高きラースカ家のご子息だ。伝聞では交友関係を結んでいたブラット家に泥を塗ったことになっている。
さらに魔女の弟子になったなどと聞かされては、注目を浴びて当然ともいえる。
しかし、コリンに集中している視線の全てが全て、悪意というわけではなかった。むしろその逆で、見直すような温かい眼差しもその中には含まれていた。
それもそのはずで、この国の王は魔女の描いた絵画にご執心であることも、またその絵画がどれだけこの国に貢献してきたことも、誰もが周知している事実。
その陰の立役者となっているのが、誰でもないコリンなのだから。
今日の展覧会は実のところ、ラースカ家の汚名返上も兼ねていた。
なんといってもラースカ家は画商としては一流で、それこそこの国の王でさえお得意様だったくらい。それが謂われなき悪名を被せられているともなれば、さしもの王だって黙ってはいられない。
没落した身でありながらも、今も尚、父の意思を継ぐコリンの生き方に感銘を受けた国王からのせめてもの施しのつもりだった。
(だ、ダメ……おちんちん、ガマンしなきゃ……)
だったのだが、当のコリンはといえば、一際目立つ状況下、おちんちんはピンと勃っているどころか、染みが見えてきそうなほどに汁が漏れ出してきていた。
こんな大勢の見守る中で感極まって射精しようものなら汚名返上どころではない。汚名挽回である。
かのラースカ家のご子息は、このような場で情欲のまま堪えられない猿の如き発情した子供なのだと烙印を押されてしまうことだろう。
見られただけで射精してしまうような早漏だと永劫語り継がれるかもしれない。
(そんなことになったら……ボク、ボク……)
そうこうしていううちも、魔女の絵画は絶賛の嵐。これでもかというくらいに注目を浴びている。この会場には他にも数々の美術品が飾られているというのに。
そして、それと同時にコリン自身への注目も集まってきている。
この場でもし、漏らしてしまったらどうなってしまうのだろう。
コリンの頭の中ではそれだけがグルグルと回ってしまっていた。
(いやだ……ボクのおちんちんがいやらしいなんて思われちゃう……)
そんなコリンの心中など露とも知らず、会場の賑わいは勢いを増していくばかりで、魔女の絵画の前には人が途絶えない。
その絵画がどのようにして描かれたのかを聞かれてしまったら、はたまた自分の精液で描かれていると知ったらどう思われるのか。
それを想像するだけでももうコリンは自分の勃起を抑えられなかった。
「コリン殿。ここにおられたか」
唐突に声を掛けられて、コリンはビクンと反応する。おそらく少し射精た。直ぐさま振り返り、声の主を確認すると、そこに立っていたのは一際目立つ大男。
この会場の警備にもあたっている兵士、ヒッセンだった。
「ひ、ヒッセンさん……」
どういう顔を取り繕うか少々迷い、コリンは笑顔を見せようと心がける。
それをヒッセンはどう解釈したのか、いぶかしげに思いつつも、コリンに合わせて笑顔で返す。
「いやはや、先生の新作は今日もまた一段と映えて見えるでござるな。弟子のコリン殿としても誇らしいのでは?」
「そ、そうですね……えへへ」
酷い緊張感の中にあったコリンの心境も、ヒッセンの言葉で少しだけほぐされたかのようだった。とはいえ、気を紛らわせている程度の話であって、コリンのおちんちんが落ち着いてきたかといえば無論そんなこともない。