光喰らいの魔女レティシア~未亡人クーデレ敬語デカ尻エルフ退魔師が淫魔美少年に完堕ちするまで~ 作:灰鉄蝸@機甲猟兵エルフリーデ発売中
初めて成功した魔術は、泥水を真水に変えるものだった。
陶器のお椀に入った汚水が、見る間に澄んだ水になっていくのを見つめて、シグはなんとも言えない拍子抜け感を覚える。
そんな教え子の様子などつゆ知らず、微笑みをたたえてレティシアは拍手した。
ぴこっ、と長く尖った耳が動く。
「〈不浄祓い〉は成功しましたね、流石です」
一八〇センチ近い長身は彼女が北の大地で生まれ育った妖精種の先祖返りであることの証左――エルフでは珍しい青い髪が、大陸で繰り返されてきた混血の歴史を示していた。
とある昼下がり。
屋敷の中庭で魔術の鍛錬をしていた二人の周囲に、人影はなかった。
スワルヒガの屋敷に使用人の影はない。が、働く影――文字通り、黒いもやのような存在だ――はある。
この屋敷と一族そのものと契約している使い魔によって、広い屋敷の手入れとそこに住まう二人の生活は成り立っていた。
叔父の一件以来、用心深さが増したシグは使用人を雇い直すこともなく――信用しているのは、シグの成人まで財産管理をしている父の関係者ぐらいだ――使い魔だけで屋敷を維持している。
もとよりこれでいいのだ、シグは思う。
使用人を雇い入れるようになったのは、父の代になってからだ。
シグの父は結構な俗物であり、また見栄を張る人物だった。大陸にまたがる貴族社会を真似た生活様式を取り入れたのも、彼のそういう性格の表れであった。
ある種、孤独を好む性格であるシグルゥスは、どうにも馴染めない生活様式である。
肉親に暗殺されかけたという事件は、如何にも薄幸の少年が人間不信になるのにぴったりの出来事だったし、シグは存分に周囲のそういう目を利用してやろうと決めていた。
「せんせ、これでいいのかな」
先生、と呼び掛けようとする舌っ足らずな発音になるのは、密かにシグのコンプレックスだった。
一年前の初対面のときに比べて、二人の心理的な距離はずいぶんと縮んだ。
砕けた口調もその現れである。
それはたぶん、シグの側がレティシアに心を許したということなのだが、気安い呼び掛けに対しても彼の先生は素っ気なかった。
「よくできていると思いますが」
「身を守る魔術ならもっとこう、実戦的なやつをさ」
「基礎の基礎から初めて一年で素人が〈不浄祓い〉を成功させるのは並大抵のことでありませんよ? もっとよろこんでくださってもいいぐらいです。それに、これほど実戦的な術はそうありません」
レティシア曰く、この一見地味な術は万能なのだという。
毒物から病魔に至るまで、およそあらゆる「術者を脅かすもの」を不浄と見なして浄化・無害化する――毒殺防止から疾病の予防まで幅広く使えて、飲み水の確保などにも役立てられるし、魔力の消費も大したものではないから使いやすい。そう解説されてみると、つい先日、殺されかけた名家の遺児である自分にピッタリの術と言えた。
ただ、それでも不満はある。
「直接戦えるような術はないの?」
「残念ながら、そのように戦いたがっているうちは実戦からほど遠い心構えですよ」
「ぐぬう……」
「ただ殺すだけなら人族の拳銃でも練習した方がよっぽどマシです。暴漢紛いの程度の低い魔族相手なら十分でしょう」
「それってプロの意見?」
「これでも一応、退魔師でしたので」
よくよく考えると物騒な会話である。
古い淫魔の血を引く魔族の御曹司と、上古の魔族を狩ってきたとうそぶく退魔師が、師弟関係になって屋敷で会話しているなど早々あり得るものではない。
これもシグの母ナタリアが結んだ奇縁と言えるだろう。
そもそも、仮にも元退魔師が魔族の子孫の面倒を見るとはどういう心境なのだろう、とシグは思う。
数百年前の戦争の時代に比べれば、はるかに軟化してきているとはいえ、未だに大陸の人類生存圏の国家の多くは魔族を不倶戴天の敵と見なしている。
それだけの凄惨な歴史があったのだ。ましてや長命で知られる
わからないことだらけで、だからこそシグルゥス・スワルヒガはレティシアに心惹かれていた。
「まあ、わたしがいる限り、若様がご自分で戦う機会は訪れませんよ。ご安心を」
「守ってくれてるもんね、この一年ずっと」
「あなたの母君との約束ですからね。わたしはこれでも友情は大事にする方なのです」
片目を閉じてウィンクしてくるレティシアは、ただ美しかった。その美貌に、思わずシグは見とれてしまう。
綺麗な人だった。
一年前より成長したとはいえ、まだまだ華奢な少年よりもずっと背が高い長身の美女――ボブカットの青い髪の間から突き出した妖精種の耳、切れ長の両目の奥には澄み切った青い瞳、頬はミルクのように白くなめらか。すらりと長い手足に折れそうなほど細い腰が、着衣の上からでもわかる一七八センチの肢体。
控えめな胸は慎ましく男物のスーツの内側に収まっているが、パンツスーツを圧迫する尻肉の盛り上がりは、布地越しにも明らかである。
本当にどうしようもなく、シグルゥス・スワルヒガは彼女のことを意識していた。
未だ精通すらしていない少年の性の目覚めは、命の恩人であり理解不能の元退魔師という、不可思議な美女によってもたらされている。
少し見つめすぎていたらしい。
押し黙ったシグを不審に思ってか、レティシアは身をかがめて視線を彼に合わせてくる。
小首をかしげて。
いいにおいがした。
「どうなさいましたか、若様?」
「あ、いや……か、母さんとどういう関係だったのかな、って思って!」
初めての出会いこそ殺伐としていたが、あれからのシグとレティシアの生活は驚くほど何事もなく過ぎていった。叔父が生きていたころ――厳密には今でも行方不明あつかいなのだが――にあったような財産狙いの大人の跳梁跋扈はとんと消えたし、少年の心は自分でも驚くぐらいに穏やかだった。
それらがすべて、レティシアによってもたらされた変化なのだとシグも薄々察している。
だが、その理由について彼女は多くを語ろうとしなかった――母ナタリアとの関わりや、こうまでしてシグルゥス・スワルヒガを守ってくれる理由について何も。
その無言をよしとしていたのは、シグが彼女のことを深く信頼しているからだ。
けれど、気にならないわけではなかった。
――好きな人のことを、もっと知りたい。
そういう単純な理由からの問いかけだったが、やはりレティシアの反応は芳しくない。
「友人です、よくある友情というか……まあ、大したことではありません。わたしは友人が少ないので大事にしているのです」
飄々とそう言ってのけるレティシアの表情は、いつも通りに
よくわからない人だ。
なのに、もっと好きになってしまうのを、シグルゥス・スワルヒガは静かに実感していた。
◆
その日の夜、シグは寝苦しさで目が覚めた。汗で額に張り付いた灰色の頭髪が鬱陶しい。
灯を消した暗い室内で、もぞりと身じろぎ。
体が熱っぽくて、下半身に違和感がある。毛布を持ち上げて目をやると思った通りだった。
――またか。
自分自身への諦念とも失望ともつかない感情を抱きつつ、毛布をゆっくりと退けて上半身を起こす。
それだけで、痛いほど勃起した男性器がパンツに擦れた。
びくん、と股間から電流が走る。
圧迫感にたまらない快楽を感じた。
「うぅ……」
うめき声を上げながら、ゆっくりと寝間着のズボンを脱いだ。すでに先走り液で股間の部分に染みが出来ていたし、陰茎を圧迫するパンツの布地のせいで苦しくてたまらなかった。
ゆったりとした下着にもかかわらず、少年の股間はギチギチに張り詰めてテントのようになっている。
下着に指を差し込んだ瞬間、むわっと濃い臭気があふれ出した。
蒸れた汗と先走り汁の混じり合ったにおいは強烈だった。
「また、こんな……っう……」
だが、そのにおいそのものに興奮する自分がいるのも事実だった。
下着を脱ぐ。
ぬちゃ、っと糸を引いて巨大な男根が外気に晒された。
ぶるん、と躍り出たそれは、包皮に包まれた子供の陰茎だったが、悠々と二〇センチメートルを超え三〇センチメートルに届こうかという巨根だ。
まだ精液を吐き出す機能を備えておらず、排尿のため用いられているに過ぎない肉竿は、たしかに性の芽生えを経験しつつあった。
それが少年の望まない、おぞましい本性への道だとしても。
「……っうう……くぅ……♡」
包皮に包まれた亀頭をたどたどしい手つきで握ると、ゆっくりと圧迫と解放を繰り返す。
先走り汁が指にまとわりつき、ぬちゅっくちゅっと粘液質な音。
圧がかかるたびに包皮と癒着した亀頭が前後し、少年の幼い指の中で陰茎が無様に震える。
それは男性器の立派な大きさ、そして見るからに亀頭の発達した形状から考えられないほど、無様でみっともない子供の手慰みだった。
はぁはぁと息を荒げ、シグルゥス・スワルヒガは薄い褐色のほっぺたを上気させて手淫に没頭していた。
「う……あ……せんせ……♡ せんせっ♡」
シグルゥス・スワルヒガがこのような自慰行為を覚えたのは、つい先日の前のことである。
元々、淫魔の先祖から引き継いだ悪夢――彼の祖先は人間を陵辱し、性交を模した儀式で苗床に作りかえ、魔獣を産み増やさせる悪鬼であった――ゆえに、性に対してシグは奥手であった。
否、ある種、嫌悪していたと言ってもいい。
それはそうだろう。
彼が知る性交とはすなわち陵辱を加えるものの記憶であり、そこに愛はなく、生まれ出ずるものは冒涜と侵略の証に過ぎないのだ。
年端も行かぬ少年が性に好意的になれるはずもない。
だが今、シグが思い浮かべるのは先祖の忌まわしい記憶ではなく――どうしようもなく恋い焦がれてしまった想い人の姿。
レティシアの白い肌を、細い腰を、たわわと実った尻肉を、むっちりとした太ももを思い、包皮に包まれた亀頭を必死に指でこする。
それだけで快感が背筋を駆け上り、つま先がピンと張り詰める。
「せんせぇ♡ うぁ……♡♡」
びくんびくんとシグの背筋が跳ねる。
肛門がきゅっとすぼまり、汗まみれの少年の体が一瞬、反り返る。
だが、それだけだ。
射精はない。ぼうっと絶頂感のあとの虚しさだけが押し寄せる中、へなへなと硬度を失う男根を、シグは呆然と見つめていた。
先走り汁塗れになった、幼い少年の指先。
それに包まれた巨大な陰茎は、まるで死んだ芋虫の死骸のようだった。
「なに、やってるんだ、おれ……」
途方に暮れる少年の肉の薄い尻の谷間を、大粒の汗が伝い落ちた。