※この作品はR-18です。

Puberty ~宙(そら)の子供たち~   作:宇藤百足

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□ Epilogue 『宙(そら)の子供たち』 □

突き抜けるような大空の青。

 

燃え上がるような森の緑。

 

聞こえてくるのは、子供たちの笑い声とセミの声。

 

燦々と照りつける強烈な日差しが、山神村に新たなる夏の到来を告げる。

 

 

放課後、大山高校の校門で誰かを待っているのは、

今年二年生になった岡本舞子だ。

 

腕で額の汗を拭く仕草が妙に堂に入っている。

 

相変わらずトレードマークは二つのお下げ。

 

これは今年の春に一度イメチェンしたのだが、

彼氏に強い要望で元に戻したセカンド・お下げだったりする。

 

ただ今日はどこか体調でも悪いのか、その顔色はいまいち優れない。

 

 

「あっ、岡本だ。

 なに、彼氏待ち?」

 

「ふぅっ……

 ……あ、長森さん。」

 

 

長森棗。

 

中学時代から去年の頭くらいにかけて有名なワルだった彼女も、

今はすっかり優等生で通っている。

 

美人で勉強ができて運動神経もいい。

 

向かうところ敵なしの彼女だが、

最近プライベートで左手の薬指に小さな銀の指輪を

はめるようになってからは、その美しさに一層磨きがかかった感がある。

 

 

「そっちも?」

 

「ううん。

 大介、今日は部活で遅いし、さっさと帰る。」

 

「んっ……そ、そっか……

 じゃ、また明日ね。」

 

 

舞子にとって、

去年はとにかくめまぐるしいくらい変化に富んだ年となった。

 

良いこともあったし、悪いこともあった。

 

特に人間関係だ。

 

 

郷田太一郎・葉子(旧姓:花見)。

 

大山高校を代表する人気教師だった二人は去年末に結婚した。

 

女子たちの噂では年齢差の関係で花見の家族が反対したらしく、

ゴールインまでこぎつけるのは大変だったらしい。

 

そして、今年からはもう郷田葉子を教壇で見ることもなくなっていた。

 

昨年度限りで結婚退職した葉子は、今はお腹を膨らませた専業主婦。

 

だが太一郎の持ってくる愛妻弁当は、

相変わらず女子たちの冷やかしの的だ。

 

 

叶浦はじめ。

 

あの事件以来、舞子と敦からは少し距離が離れた彼女だが、

相変わらず学校では気さくなキャラで通っている。

 

驚くべき彼女の秘密を知る舞子からすれば、ある意味恐ろしい光景だが、

それはそれでまったりとした関係だったりする。

 

暗躍を繰り返して新たなる獲物を狙う傍ら、舞子に困り事あらば、

頼りになる相談相手として胸を貸してくれるのだ。

 

だがさすがの舞子も、

はじめからの『うちに遊びにきいへん?』との誘いだけは断固断り続けている。

 

 

氷川沙弥。

 

もう彼女をこの村で見ることはできない。

 

去年彼女を襲った陰惨なレイプは、その心を引き裂いただけでなく、

肉体的にも大きな痛手を負わせていた。

 

事件のあと妊娠が発覚して沙弥は退学処分、

横の繋がりの強い村では家族ももうやっていけなくなった。

 

沙弥が子供を堕ろすことを決意すると、

氷川家はすぐに荷物をまとめ、ひっそりと村を出て行ったのだ。

 

長い間音信不通が続いていたが、

つい先週、舞子の元に『元気でやっている』と手紙が届いた。

 

この夏休みには感動の再会が予定されている。 

 

 

そして――

 

 

「おう、待たせたな、舞子。」

 

 

ラフすぎる着こなし、ツンツン頭に野犬のようなギラつく目つき。

 

相変わらず、どこから見ても不良にしか見えない高田敦。

 

だが去年よりはずいぶん大人しくなっていた。

 

ケンカより楽しいことが見つかり、すっかりそっちにかかりっきりなのだ。

 

 

「う……ううん?

 あんまり待ってないよ。」

 

「本当かぁ~?

 じゃ、も少し待たせておいた方がよかったかな?」

 

「げげっ……そんなご無体なっ!」

 

 

敦には去年のあの事件の記憶はなかった。

 

恐らく『彼ら』に消されたのだろう。

 

だが舞子にはそれでもよかった。

 

こうして無事に帰れたのだから。

 

 

あの不思議な事件。

 

宇宙人たちの目的が一体なんだったのか、今でも舞子にはわからない。

 

あのあと再び目が覚めると家のベッドの上だった。

 

コンビニに買い物に行った日から七日間が過ぎていたが、

何故か両親にも学校の面々にも何も言われなかった。

 

体毛を溶かされた敦ですらも、

安易に『ちょっとした病気』で片付けられたのだ。

 

虚ろげに残る、液体の中での記憶。

 

激痛の中、下腹部から大量の血を吹き、

ぼーっとする頭の中で死を覚悟した、あの出来事。

 

あの時に『死の痛み』だと思ったあれが何だったのか、

今の彼女はどこかでわかっていた。

 

あれは出産だったのだ。

 

七日間という短期間の間にどんなプロセスを踏んだのかも、

宇宙人たちが何の目的でそんな事をさせたのかも一切謎だが、

――舞子はあの時、敦の子を出産していたのだ。

 

 

「(ところでよぉ。)」

 

 

一度辺りを見回してから、敦が声を細める。

 

 

「(『アレ』はちゃんと挿れてんのか?)」

 

「(う……うん、ちゃんとスイッチも入ってるよっ。)」

 

 

舞子に言われて敦が耳を澄ますと、

何か『ヴゥゥゥン……』と機械的な振動音が聞こえてくる。

 

その発生源は舞子のスカートの中だ。

 

急にニタニタ顔になる敦に、舞子は恥ずかしいような、

それでいて何かを期待するような表情を作る。

 

 

「じゃ、今日も神社寄ってくか!」

 

「う……うんっ!」

 

 

今にもスキップを始めそうな足取りでズンズン先を行く敦。

 

舞子は足早にそれに追いつくと、敦の耳元に小声で囁いた。

 

 

「(……ねぇ、敦。

  今日は、お尻……して欲しいな。)」

 

「(いいぜぇ、ケツだったら遠慮なく中出しできるしな♪)」

 

「(もぅ、そればっかりなんだからっ。)」

 

「(べっ、別にいいじゃねぇかよぉ……

  つか、いつになったら『膣出し』させてくれるんだよ~。)」

 

「(だからぁ……

  いつも言ってるじゃない……)」

 

 

見上げる優しい瞳に映る、突き抜けるような紺碧。

 

喜びも痛みも苦しみも、全てを包み込む思春期の宙(そら)。

 

その広大な世界は、いつでも少年少女たちを静かに見守っている。

 

 

「――『膣出し』は結婚してから!」

 

 

~Fin~




というわけで、これにて短期集中連載終了です。

ここまでお付き合いいただいた方、誠にありがとうございました。

なにぶん私には他の方のような文章力がないため、
読みづらいところばかりだったかと思いますが
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

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