海賊王の息子に憑依したので子孫を残しまくる 作:ウォルマート
海賊王ゴール・D・ロジャー。
鬼の如き強さを持ち何よりも自由を愛し大海賊時代という最悪を作り出した男。
その所業から彼の血を受け継ぐものは抹殺対象となっている。
「ロジャーの息子を海軍に入れるだとガープゥ!」
「そうじゃ、他でもないオヌシだから話した。内密に頼むぞ」
ここは海軍本部のとある部屋。
そこで目の前の盟友から衝撃の言葉が発せられた。まず海軍の英雄がロジャーの息子を今まで育てていたこと、そしてそれを海軍に入れたいと言ったこと。二重の意味で頭が痛かった。
確かに元天竜人のロシナンテのように血筋に問題がある人物を海軍に入れたことはある。だがそれにしても限度というものがあるだろう。
「私は元帥だ。立場上処刑するしかないぞ!」
「まあ待て。生まれた子供に罪はない。それに本人も海軍に入りたいと言っておる」
センゴクは頭を瞬時に働かせる。確かに海賊王の息子が海軍に入ったというプロバガンダとして利用すればその効果は絶大だろう。それに鬼のように強い海賊王の息子だ。血統因子的にも将官クラスの海兵になるのは確約されたようなものだ。
だがリスクが大きすぎる。もし彼が海軍を裏切った場合、海賊王の再来になるかもしれない。安牌を取るなら公開処刑一択だろう。殺してもプロバガンダとしての効果は絶大で裏切る心配もなくなるからだ。
「ガープ。一度、会わせろ。話はそれからだ」
彼も正義を愛する人間、子供に罪はないと思っている。センゴクはロジャーの息子の人となりを見てから決めることにした。
♡♡♡(センゴク視点)
「ポートガス・D・エースです。よろしくお願いします」
黒髪黒目でそばかす顔の青年は頭を深々と下げる。どことなくロジャーに似ているが彼と違ってカリスマ…いや覇王としての才覚がないように見えた。これならば海軍を裏切っても大海賊の頭にはならなそうだ。
「君はロジャーの息子だそうだが、それについてどう思う?」
「血がつながっているだけですね。本当の親はガープさんだと思っています」
ロジャーではなくガープが親か。ロジャーを礼賛するような危険思想を表にするような危険人物ではない。裏ではどう思っているのか知らないがバカではないのは確かだ。
「なぜ君は海軍になろうとしている?」
「安全の為です」
「安全の為?ならば海軍にならず一般人になればいいのではないか?海軍は命の危険もあるが?」
「いえ、ガープのジジ…ガープさんがうっかり口を滑らせれば一般人だとオーロ・ジャクソン号を作った船大工のトムのように処刑されると思いまして。だから海軍で手柄を立てて立場を固めようかと。それと僕は強いので海軍は天職ではないかと思いました」
なるほどギブアンドテイクだが従順で悪くはない。それにガープが口を滑らせるという意見も良く分かる。海軍で手柄を立てようとする意思もある。これならば…
「センゴク、この感じなら海兵になっても問題ないじゃろう?」
「そうだなガープ。だが奴の息子であることは変わらん。よからぬことを企めばどうなるかは分かっているな」
エースは緊張した面持ちでコクコクと頷く。死を恐怖した表情だ。
まともだ。まともすぎる。本当にロジャーの息子にしてガープに育てられたのかどうか疑わしいほどだ。ロジャーは死刑の時に笑って死んだ。ガープは強者との闘争の為に死地に赴いた英雄だ。そんな異常な彼らに影響を受けてもなお自分の死に臆するのは逆に不自然だ。まるで何か別の人間の影響を受けているようだ。
いや考えすぎか。そう思いエースの目を見る。
「海軍学校への入学を認めよう。君の活躍を祈っている。それと出自は隠すように。ガープ、お前はくれぐれも黙っていろよ」
「ありがとうございます!」
彼は嬉しそうに例を言う。強さは折り紙付きで、覇王の才覚はなく、バカではなく、手柄を立てるのに積極的。海兵として見たら完璧に近い人材だ。血筋を除けば。
とりあえずロジャーの息子であることは秘匿してただの優秀な海兵として育成することにした。このまま血のことが露見することなく一生を終えてくれ。そう思い、月日は流れた。
「センゴク元帥、ご報告したいことが!」
「なんだ?」
「ドロウ中将が市民を故意に攻撃したとのこと。それを見た海軍学校の生徒がドロウ中将を叩きのめしました」
「その生徒の名前は何だ?」
「ポートガス・D・エースです」
頭が痛くなる。よりによってお前か。
話を詳しく聞くところによると、市街地近くの駐屯地で海軍学校の生徒を連れ教鞭をとっていたドロウ中将に海賊が襲撃。海賊は市民を人質にしていた。中将は気にせず人質ごと攻撃を行おうとした。それを見たエースが中将を海賊ごと叩きのめしたらしい。人質は全員無事。ついでに中将は今回の件以外にも市民へ故意に攻撃したことについても自白したと。
「ドロウ中将は軍法会議にかけておけ。それと生徒の処分については海軍学校に一任する」
中将の不祥事に加えてロジャーの息子が中将を倒すだと。
親譲りの圧倒的強さにトラブルメーカーとしての才覚。…いやガープの教育のせいもあるな。
だが彼の行動は決して責められるものではない。市民を守ることは海軍として当たり前のことだ。まだ様子を見るとしよう。若くして中将を倒せるなら将来の大将候補かもしれない。
そしてまた月日は流れる。
「ぶっはっはっ!エースの奴、左遷されおったわい」
エースは東の海の高額賞金首を殆ど倒し不正行為を行った海兵を捕縛したが、その過程で起こした独断専行の責を問われたらしい。今は第二遊撃隊なる部隊に左遷されたった数名の部下を率いることになったらしい。
第二遊撃隊とは少数精鋭で自由に行動して海賊を狩る部隊だ。まるで賞金稼ぎか何かだ。
「賞金首の討伐に加えて不正行為を行った海兵を複数捕縛か。正義感が強いな」
「儂の教育が良かったんじゃろうな」
お前の子供、革命家になったけどなと思いつつ彼はエースのこれからを予想する。
左遷、つまりは海軍という組織の中枢から離れた形になる。それは海賊に堕ちやすい状態だということだ。数年前の時点で中将を単騎で倒すほどの男だ。それが海軍の体系的教育で更に強くなった。大将以上でなければ勝てないだろう。いざとなれば私が…そう決意を固めた。だがその決意は直ぐに崩されることになった。
「大変です!クロコダイルのアラバスタ転覆計画発覚、それをエース少佐が未然に防ぎました。さらにアラバスタはエース少佐とビビ王女との結婚を発表しました」
「なに~!」
衝撃だった。七武海の優等生、クロコダイルが裏で悪行を働いていて、それをロジャーの息子が止めて、挙句の果てに大国の王族と結婚したのだ。無茶苦茶だ。
アラバスタはエースが海賊王の息子であることを知っているのか?
七武海の不祥事はあったものの海軍がそれを防いだということで
とりあえず1つ確定したことがある。エースは海軍を裏切る気はない。加盟国の王女と結婚までするということはそういうことなのだろう。
エースは結婚というカードを切ってまでそれを証明したのだ。
しかし結婚したことで新たな問題も浮上する。エースの息子、つまりロジャーの孫が出来る問題だ。それが王になるかもしれない。頭が痛い。血の件は絶対に隠蔽しないといけない。そう思った数週間後のことだ。
「ジハハハ!ロジャーの息子だなぁ、貴様の首を取りに来た」
頭が痛い。最近ずっと痛い。映像でんでん虫は全世界に向けてアラバスタの映像を中継している。
金獅子のシキがエースの事をロジャーの息子と呼んでいる。………いやここに来てはエースの血筋など些事か。金獅子がアラバスタを滅ぼす、これが一番の問題だろう。
流石のエースといえども伝説の海賊には勝てないだろう。おそらくは殺される。最後まで血の因縁に翻弄された哀れな男だった。とはいえこれでロジャーの血筋問題はおしまいだ。後は金獅子をどうするかだ。
「G‐8からジョナサン中将を先遣隊として向かわせろ。本部からは赤犬だ!」
部下に指示を出す。流石の大海賊も年月には勝てまい、大将を派遣すれば事態は収束するはずだと思っていた。
「エース大佐から報告!金獅子のシキ、捕縛完了!」
「なんだと!」
想定外だ。
エースは金獅子を倒してしまった。不可能を可能にした。まるでロジャーだ。覇王の才覚はないが彼は確かに奴の血を継いでいる。それを確信させることを成した。
そして私は今回の件で五老聖に呼ばれた。
「つまりエース大佐、いやエース准将は本当にロジャーの息子だと?」
「はい、そうです」
もはや隠し立ては無理だ。私は全てを、ありのままを五老聖に語った。すると彼らは難しい表情をした。
「ロジャーの息子、世界の禁忌に触れた男の息子。見せしめの為に殺すべきか?」
「だが功績があるのも事実。許してやるのはどうか?」
「海賊時代を終わらせる希望として演出するのも悪くない。だが事実をデマとして否定するのもそれ以上に悪くない」
「センゴク、貴様がロジャーの息子を隠蔽したのも問題だ。それ相応の処分は覚悟するべきだ」
「海賊王の血筋がリリ…いやビビ王女と結婚か………」
彼らは議論を行う。そしてエースは処刑せずシキの言動は真っ赤な嘘として扱うこと、隠蔽した責任を取り私は元帥職を解任(表向きには高齢による引退)され大目付になることが決まった。
エースめ…まあいい、ここまで来たら私もヤケだ。奴が優秀な海兵になることを祈るとしよう。
それに奴は青雉派のスモーカー大佐の元部下にして青雉の師匠は奴の後見人であるガープだ。当然、青雉派になるはずだ。クロコダイルと金獅子を倒した麒麟児が青雉派になれば私が推す青雉元帥就任も円滑に行くだろう。悪い事ばかりではない。
「赤犬派になっただとう!それにCP9と激突ぅ!?」
コイツはなんでずっと想定外ばかり引き起こすのだろうか。青雉と赤犬は決闘しだすし本当に…
まあいい、私は引退するのだ。エースに振り回される生活もこれで終わる。赤犬か青雉のどちらかが振り回されるハメになるだろう。
そうして私は最後の仕事として金獅子討伐記念式典に参加することになった。そしてそこには功労者であるエースがいる。式典後の立食パーティ中、私は奴に話しかけた。
「今度はCP9と激突か。相変わらずの暴れっぷりようだな。血か育ちか、君はどちらによるものだと思う?」
「これはセンゴク元帥、それは育ちでしょう。現に実の孫であるルフィは七武海を倒したようですし」
海賊麦わらのルフィ、全くガープには困ったものだ。実の孫を海賊にしてロジャーの息子を海兵にするとは一体、どういう教育をしているのだ。
「まあいい、これからの海軍を頼んだぞ」
まあなんだかんだ手はかかったが成果を上げているのは間違いないし可愛い部下ではある。
彼こそが海軍の麒麟児、希望だ。
もしかしたら海賊王が始めた海賊時代を息子が終わらせるのかもしれないな。