マリンの小さな身体をルビーは軽々と抱え込み、家の中へと連れ込んでいく。
機嫌がどんどん悪くなっていくような気がした。朝食を邪魔されたのがそんなに嫌だったのだろうか。
畑を荒らされたのがそんなに嫌だったのだろうか。
それとも、久しぶりに出会った魔女がそんなに嫌いだったのだろうか。
いずれもあっているような気はするし、違っているような気もする。
ただ今のルビーは今まで見たことがないくらいにものすごく不機嫌だ。それだけはハッキリと分かった。
せめて魔女であるマリンが魔法や呪いに強い身体でありますように、と静かに願った。
※
※ ※
※ ※ ※
ぐじゅり、ぐじゅぐじゅ、じゅじゅ。暗がりだったから、それは大きな水袋を積み上げたものだと思った。しかし水にしては音が粘っこい。
それどころか蠢いているようにも見える。暗闇になじんだ目を、よく凝らしてみると、蔓のようなものがいくつも生えていて、それらがバラバラに動き回っている。信じられないことに生き物らしい。
こんな形の生き物は見たことない。枕くらいの大きさの丸っこい体に、指二本分ほどの太さの触手が数え切れないほど生えている。見るからに柔らかそうだ。
この粘っこいぐじゅぐじゅとした音からして、きっと泥団子のように柔らかいのだろう。昔、読んだ本に載っていた海に棲むタコやイソギンチャクという生き物に近いかもしれないが、本の絵とは大分違う気がする。
なんにしても、そんな不気味な触手の生き物が二、三匹、いやひょっとしたらくっついてもう数匹見えないだけなのかもしれないが、ルビーの自室の中央に描かれた魔法陣の中にいた。
そしてあろうことか、その生き物をクッションにするかのように、裸のマリンがその上に座っていた。
引きつった表情を見る限り、座り心地はあまりよくはなさそうだ。
どうやらマリンもその生き物も魔法陣の中から出られないらしい。結界というヤツだろうか。
ぐじゅじゅ、ぐじゅり。今はまだ触手生物も大人しいようで、マリンを上に乗せてもぐじゅぐじゅと蠢いているだけだ。
魔法のせいなのか、恐怖のせいなのか、マリンは抵抗する気配がない。完全に動けないでいる。
服さえも剥ぎ取られ全くの無防備状態のマリンにとっては気が気でないようで、いつその触手生物が自分に襲い掛かるのかとビクビクした様子だ。
おそらくあの触手生物はルビーの命令ひとつで自在に動くのだろう。
「一思いに殺しなさいよ……、こんな回りくどいこと」
力なくマリンが言う。自分の下で蠢く触手生物たちに怯えた弱々しい声だ。
しかしそんなマリンの言葉も、まるでビンの中に閉じ込めた羽虫の鳴き声程度にしか聞こえていないらしい。
ルビーは先ほどからずっと何やら複雑そうな呪文のようなものを詠唱している。言葉と認識しがたい言葉がルビーの口から延々と漏れていく。
この呪文にどのような効果があるのかなんて当然ボクに分かるわけがない。しかしこうしている間にも準備は着々と進められているのだ。
ルビーの言葉が途切れる。それと同時に、マリンと触手生物を囲う魔法陣がじんわりと紫色の不気味な淡い光を放つ。
その光が侵食するように触手生物に移っていく。ただただ床を蠢くだけだったそれらが突然、知能を持ったかのようにゆっくりとその動きを止める。
不規則的な動きが最適化されていき、主から命令を与えられた兵隊のごとく、ピタリと待機する。
そうして、触手生物は既に与えられていただろう命令の通りに忠実に動き出す。
「ひぃ……っ!」
まず触手がマリンの手と足を認識し、拘束する。
柔軟なその触手は脆そうに見えて一度巻きついてしまうと引っ張っても何処までも伸びて引き剥がすことができなくなるようだ。
少なくとも、今のマリンの力ない抵抗ぐらいじゃどうにもならない。せいぜい身体を揺らすのが精一杯に見える。
手足を拘束した触手はまるで操り人形のようにマリンの格好を強引に変えさせる。
両手足を開かされ、完全に前を無防備状態に晒される。
やや頭を上に向けた仰向けで大の字に寝そべらせたような体勢だ。
あまりにも不恰好なせいか、そんな自分が無様に思えたせいか、マリンは歯を食いしばり、涙を堪えきれず泣きじゃくるほどに流していた。よほど屈辱的なのだろう。
どう考えても人前でするような格好ではない。
「そ、そこ……そんなとこ……ぃゃ……、へんなとこ、いじらないで……」
ぐじゅり、にちょぬちょ、ずるずる。
触手が器用にもマリンの開かれた足の付け根から下腹部に集中し、人間の手の指のようにきめ細かく動き、マリンのお尻の穴周辺を刺激しては、ギューっと押し広げるような動作を繰り返す。
これは何をしているのかボクでも分かる。あの触手をマリンのお尻の穴に挿入れるためにほぐしているのだ。
「ぁ……、ぁ……? ゃ、やだ……、おしり、広げないで……っ!」
キュっと閉じたマリンのお尻の穴は触手のぬるぬるのせいか、それとも触手の念入りのほぐしのせいか、少しずつじんわりと溶かされるように、くぽぉ、と開き始めていく。触手の執拗な愛撫は続く。
穴が見る見るうちに広げられていく。そうしてとうとう、遠目でも直腸が覗けるくらいの大きさにまで広がってしまう。
このくらいの大きさならあの細い触手が数本まとめて挿入れるだろう。
触手もそれを頃合いだと理解したのだろう。
「ひぃ……っ、ぐぅっ!?」
じゅるじゅる、ずるる、にゅるる。一斉に何本かの触手が侵入する。
その数は数本どころじゃない。しかしほぐされにほぐされたマリンのお尻は拒むことができず、それらの侵入を容易く許してしまう。
ほぐされて広げられてなおもあの無数の触手に無理やり拡張されてしまい、もはや拳大の大きさか、それ以上まで広がってしまっているだろう。
「ぁ……、ぎぃぁ……、が……ぁ!?」
ずるる、ずるる。お尻の穴はもはや見えない。十数本近く挿入った触手が身体の一部のようにさえ見えるほど。
しかも、触手は何処までもマリンのお腹の中に入り込んで、まだまだ伸び続けているようだ。ボコボコとマリンのお腹がうねっているのが見える。
きっと腸内を触手が暴れまわっているのだろう。じゅるる、にゅちゅり、ぐぽぽ。触手の侵入は収まらない。