体内の許容量をとっくに超えているとしか思えないくらい、触手はマリンの中を埋め尽くしていた。まさかこのまま圧迫死させるつもりなのか。
そう思ってしまうほど、触手でブクブクボコボコと膨らんでくるマリンのお腹を見ているといつか破裂してしまいそうで、目をそむけたくなるほどおぞましい。
傍から見ているだけでこんなに不安に駆られるんだ。
それを実際に体感している本人は一体どれだけの恐怖を味わっているのか。
「がぁ……っ! ぉぇ……、ぅぉぉ、げぇっ……、ぁぁぐ……」
ビクン、ドクン、ゴポゴポ。触手のうねりに、マリンは踏み潰されたカエルのような声しか出ない。本当に生きているのかどうかさえも怪しい。
つい先ほどまでは女の子だったのにこんな見るも無残な仕打ちを受けて、今ではもう泣き喚くだけのソレだ。言葉らしい言葉もろくに口に出来ていない。この地獄は一体いつ終わるんだろうか。
「ぁぁ……? ぁぁぁ……っっ!? ぁぎぃぁっ!?」
突然、侵入してくる触手の動きに揺らされているだけだったマリンの身体が大げさなまでにぐねんぐねんと上下、前後に跳ねる。
見た目には何が起こったのかが分からない。
ただ、抵抗もろくにしなかったマリンがここで初めて暴れるように身体を震わせている。いや、これは抵抗なんだろうか。
あまりの痛みにのたうち回っているようにしか見えない。
「どうやら始まったようね」
「な、何が起きているんですか……?」
「あああっっ!! ぁひぃぃぁあ、おなかっ! おなかがぁあ! とけ、とけてぇえ、いゃああっっ!!」
ぐにゅん、ぐじゅじゅ、ぐりゅんぐりゅん。マリンの中の触手がまた一層暴れ回っている。
「あの生物はね、寄生生物なの。自身の身体から分泌する特殊な消化液で他の動物の身体を少しずつどろどろに溶かして、それを自分の身体と繋ぎ合わせてくっついちゃうのよ。そうやって宿主を自分の住み心地のいいものに作り変えていくってわけ」
死にゃしないわ、とルビーが語尾につける。
寄生生物というのはよく分からない。そんなもの見たことも聞いたこともないし、多分恐ろしいものなのだろう。
それってつまり、今見えている触手がマリンの体内でマリンの身体とぐちゃぐちゃに混ざって融けあっているということなんだろうか。
外から見えるくらいに埋め尽くされたあの触手に体内を丸ごと溶かされるなんて一体どんな気分なのか、想像もできないし、想像もしたくない。
「おなかぁなくなっ、あああ、とけとけ、なくなっちゃ、ああひぎぃぃぃ!!」
「ちゃんと痛覚は感じないようにしているわ。宿主に負担かけてショック死したら本末転倒だしね」
「え? でもこんなに痛がってるじゃないですか」
「逆よ、逆。そもそも内臓に痛みを感じる神経なんて通ってないの。あの寄生生物は宿主の身体とくっついて快楽を感じる神経を埋め込んでるのよ。そうやって強烈な快感で宿主をメロメロにしちゃうってわけ。自分がいないなんて考えられないくらいにね」
「それじゃ、マリンの身体の中は今……」
「そうね、腸や胃の中も丸ごと感じるような身体に作りかえられてるわね」
「ひぎぁぁ、ぁぁっっ!! ひぬぅっ、ひんじゃぅぅぅ……っ!!」
「あ、でも改良加えてあってね。アレはもうただの寄生生物じゃないのよ。あたしの望むとおり、思い通りに身体を作り変え、作り直す生き物に変えちゃったからね。寄生する機能は失われてるわ」
腰が抜けそうなほどゾクリとする。
「やろうと思えば手足を短くして芋虫みたいな身体にしてやって一生地面を這いつくばらせるなんてこともできるけど、まあ、そういうのは勘弁してやるわ。見た目くらいは人間のまま残しておいて、身体の中だけをちょちょいと変えるだけにしとくつもりよ」
それははたして優しいうちに含まれるのかどうか。少なくとも今のボクには理解しようもないことだ。
「ぁが……、あごぉ、ごごぐ……、あひ、はひ……」
ルビーが解説している間にも、マリンの身体がどんどん改造されていってしまっている。ルビーの言ったとおり、見た目は変わっていないように見える。触手でボコボコになっているお腹のことはさておいて。
裸のマリンが触手の上に座って、お尻の穴に何十本もの触手を挿入されているだけ。さっきまでと全く光景が変わっていない。
しかし、マリンの引きつった涙や鼻水まみれのぐじゃぐじゃ顔からは変わり果ててしまったことが読み取れる。
ずっとマリンのうごめくお腹ばかりに気をとられていたから気がつかなかったけれども、その下、下腹部が酷いことになっている。
触手のぬるぬるだけかと思っていたら、ずっと愛液がだらだらにふやけてとけてしまいそうなほどあふれていて、もはやおしっこのように延々ぴゅーぴゅーと潮を吹いていた。
いつから絶頂していたのだろう。何回絶頂していたのだろう。いやそもそも今もずっと絶頂し続けているのか。
「さて、そろそろ完成かしら」
ずるずる、ぬぷぬぷ、ぐにゅり。触手の動きがおだやかになり、ゆっくり、ゆっくりとマリンのお尻の穴から抜けていく。じゅぶぶぶ、と引き抜かれていく。
しかし、相当の長さが挿入っていたせいで、それがなかなか終わらない。
触手が脈を打つとその波に揺れてマリンの身体も絶頂させられているようだ。
きっと数えるのもバカらしくなるくらい、ずっと絶頂しっぱなしなのだろう。
じゅぶじゅぶ。ようやくして触手が全部抜けきった。やっとマリンのお腹は普通のぺたんこに戻る。
ずっと触手に侵入されていたせいか、腕一本くらい簡単に入りそうなほどマリンのお尻の穴はかぱぁっと開きっぱなしになってしまっている。
マリンの身体もぐったりとしていて、舌もだらんと垂れるくらいに口元も緩みっぱなしだ。
うつろな目は一体何を見ているのか。まだ余韻が残っているようで、小刻みにビクン、ビクンと短い絶頂を何度も繰り返す。
「よし、ちょっと試してみますか」
そういうとルビーは片袖をめくり、ぐったり仰向けに倒れるマリンの元に近寄る。何をする気なのか。
ルビーの握った拳が、閉じ方を忘れたマリンのお尻の穴にぴたりとつけられる。
そうして特別に勢いをつけているわけでもないのに、そのままズブズブ、ズブズブとルビーは拳をあっさりと飲み込ませた。
すごい。まるで何も拒まない。突っかかることもなくどんどん飲み込まれていく。
拳が、手首が、肘が、二の腕が……。
あれ? ちょっと待てよ? 何処まで飲み込んでいくのか。気づいたときにはルビーは肩までマリンのお尻に入り込んでいた。
人間のお腹の中ってもっと何か色々な器官があるはずで、どこかで引っかかったりするはずなのに、まるで何もない空間ができているかのよう。
「ほら見てみなさい。内臓ほとんどを溶かしちゃったから、コイツの身体の中はもう空っぽの空洞よ。あ、一応呼吸とか消化器官自体はちゃんと残しておいて機能もしてるけどね」
ズズブ、ぬぽ。ルビーの腕が引き抜かれる。
そしてマリンはまたのけぞり、小さく絶頂する。見た目は人間のままだが、マリンはすっかり人間ではない何かに作り変えられてしまったのだ。
言葉も出ないくらい、ボクはその場で硬直してしまっていた。
しかしそんなボクの心境をよそに、ルビーはマリンの小さな身体をひょいと担ぎ上げると、そのままボクを残し、外へと出て行ってしまった。
目の前であまりにもとてつもないことが起こりすぎて、ボクはまだ少し、その場から動くことができなかった。
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