マリンの肥料は想像をこえるほど上質なものだった。
植えてから間もない苗木を一晩二晩で実らせるほど気持ち悪いくらいの早さで成長させる。この肥料を使ってできた作物は味も驚くほど美味で、食べると活力もみなぎるほど栄養もある。
ルビー曰く、この肥料にはマリンの魔力も混ざるようにしてあるらしい。まさに魔法の肥料なわけだ。よほどマリンの魔力が上質なのだろう。
あれだけボロボロに壊されてしまったボクの畑も見違えるようだ。前よりもずっと畑らしくなっていた。
こぢんまりとしていたあの畑も少し広めに作り直した。少し前に村から買ってきた種や苗木を植えるにも丁度良かったし。
ほぼ毎日が収穫期なので畑仕事が倍以上、余計に増えてしまったが、それだけボクが畑にいる時間が長くなっただけなので、むしろボクとしては嬉しいことだ。もちろん、それは畑のことに関しての話だけれども。
「おはよう……フェル君」
畑の入り口、大股開きのまま柵の柱の一つに磔にされたマリンが挨拶をしてくれる。もはや専任の生きたカカシのように鎮座している。
この異様な光景にも慣れてしまったものだ。
少し前までは裸のままだったけれど、一応今のマリンには服は着せてある。
ルビーに「アイツも不老不死なんだから風邪だって引きやしないわよ」「あんなヤツのために服なんて着せたってしょうがないでしょ」などなど色々とうるさく言われたが、何とか押し切って、少しでもまともな格好だけは維持している。
さすがに異常に膨れ上がったそのカエルのような、妊婦のようなぽっこりとした腹ばかりは隠せないが。
「おはよう、マリン。今日もいい天気だね」
「うん……、とっても。ほら、あそこの作物、すごい実ってる……」
「あ、本当だ。あっちの方も花が咲いてきたし、明日には実るかな」
ボクと、柵に磔にされたマリンがまったりとたわいもない会話を交わす。すっかりこれもボクの日常になってしまったようだ。
主に、マリンの方から積極的に話しかけてくれる。きっとこうやって少しでも誰かと会話をしていないと自分を保てないのだろう。
こんな不出来な置物みたいな扱いをされてしまってはいつ自分が、自分というものが壊れてしまうのか分かったものではない。
身体中を改造されて、果てや悍ましい呪いまで掛けられて、今のマリンは常にそんな恐怖と隣り合わせなのかもしれない。
「じゃあ、マリン、朝ごはんの用意してきたから」
そういって、ボクは小脇に抱えていた鍋を持ち直し、マリンの傍に作っておいた小さいテーブルに置く。
そして、鍋の蓋をとり、かぐわしいスープの香りを、その出来栄えを堪能しつつもスプーンでそっとすくい、マリンの口へと運んでいく。
ルビーは相変わらずマリンを自由にする気はないらしく、磔を解いてくれないので食事も毎日こんな調子でボクがあげている。
「おいしい……いつもありがとう、フェル君」
どうもルビーはそれも気に入らないらしい。「肥料作らせるだけなら泥でも食わせておけばいいのよ」とか「そんなうまいもんをあげる必要なんてないわ」とかブツクサ文句言ってる。
しかし、毎日のようにこんな美味しい野菜を提供してもらっている手前、文句だけ言ってもそれ以上のことは言ってこない。やはりルビーを黙らせるには食べ物が一番効果的だ。
「ごめんね、マリン……、ボクのせいでそんな身体に」
もうこんな謝罪も何度口にしたかは覚えていない。
「フェル君は悪くないわ。全部、あの紅の魔女のせいよ……くっ」
出会ったころはもう少し元気な感じだったマリンも、この調子でしおらしくなっていた。惨めという他ない。
ボクがあんなことを願わなければこんなことにはならなかったかもしれないのに。
マリンにはいくら謝っても足りないくらいだが、マリンはボクを責めたりはしない。そりゃ確かに全部ルビーがやったことだけれど、背中を押したのはボクだ。
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「ぁ……、ぅ……、フェ、フェル君、あの……あの、ね?」
マリンの股を開いたまま固定されて動かせない脚がやや内股気味になり、小刻みに震える。そしてうつむいたまま顔を赤らめて、ボクから目をそらす。
何を言おうとしているのかはもうはっきりと分かる。マリンの身体はもうマリンの思い通りにできないから、だからこうするしかないんだ。
何も言わず、ボクはマリンのお尻の下にある台に空の桶を置く。
それだけで期待が高まってしまったのか、桶の中にぴちょり、ぴちょりとマリンの愛液のしずくが垂れてくる。こればっかりは何度やっても慣れたくない。
「マリン……、ごめん」
熱い息をもらすマリンが、うるんだ瞳で黙ったままうなずく。
けしてこちらと目をあわせようとしないが、その目は「いいのよ、フェル君」と言っていた。股を露出して開いたマリンの足の付け根、へその下、割れ目の上。
指で抓むのにちょうどいい大きさのクリトリスをそっとひねる。
「っっ、はあぁぁぁ……、んんっ!! うんちぃぃうんちでりゅうぅぅぅ、ぁはぁ♥ ぶりゅぶりゅでりゅぅぅぅ♥」
マリンの動けない身体が激しく仰け反ってビチャビチャと肥料をひりだす。
あっという間にマリンのお腹は真ん丸から平坦になり、またあっという間に肥料も桶いっぱいに溜まる。
絶頂の余韻が長いのか、マリンは深い息遣いを繰り返し、とろんと惚けたような顔をしていた。ボクもマリンも言葉にはしないが、その顔はもっと快感を欲しがっているようにしか見えなかった。
こんなことももう何度も繰り返している。お腹にあったはずの呪印はとっくに定着してしまっているし、もう抗えないほどの求めてしまっているのだろう。
きっと本人は、肥料を出しているときに自分がどんなことを口走っているのか気づいていないに違いない。
「はぁ……、はぁ……、ぁはっ……♥」
恍惚とした顔が笑みにゆがむ。きっともうすぐマリンの心は壊れてしまうかもしれない。まだ冷静をたもったフリができているだけマシだが、あともう何日もすれば、恥らい方さえも忘れて、ボクにねだり始めるのだろう。
はたしてボクはそれに堪えられるのだろうか。
心の中を空っぽにするようにボクは肥料の入った桶を手に取り、畑の中へと消えていった。