するとすぐさま、扉についていたさらに小さな窓が開き、門番らしき男の顔がこちらを覗いてきた。
「こんな夜更けに何用だ」
「あたしよ」
「これはこれはマリン様。どうぞお入りください」
窓が閉じられると、すんなりと小さな扉が開き、そのまま門番に中へと温かく迎え入れられた。まさか顔を見ただけで通れるなんて。
普通こういう場合って何かしらの礼状が必要だったような気がする。一体この城の警備はどうなっているのだろう。
「さてと、ノワール様に挨拶しないとね」
「え? でももうこんな夜中だし、その、ノワール様も寝ている時間なんじゃ……」
「いえ、この時間ならまだ起きているはずよ」
仮に、こんな時間に起きているとはいえ、そうそう会ってくれるものなのだろうか。あまりいたずらに不機嫌になるようなことは避けたいところだ。
「この城に入った以上、もう常識でものを考えるのは止めといた方がいいわ」
ここは、大魔導師が支配する根城。それがどういうことを意味するのか、未だにボクは理解できていない。
※ ※ ※
やたらと広い廊下だ。そしてまた長い。かがり火程度の明かりはついているとはいえ、辺りは薄暗く、少し不気味だ。
この固い大理石の上を歩くのもどうも慣れない。招き入れられた王族や貴族、位の高い兵士や護衛以外がここを歩くことなんてそうそうないだろう。
「緊張してる?」
「お城に入るのも、その初めて、だから」
ふふ、とマリンが含み笑いをこぼす。なんだか気が抜けた笑い方だ。そんなにボクの言ったことがおかしかったのだろうか。
「ここよ、ここにノワール様がいるわ」
マリンが足を止めた。やたらと装飾の凝った扉だ。ここって玉座の間なんじゃないのかな。田舎者で世間知らずのボクだってそれくらい分かる。
この国を治める王様がいる場所だ。玉座に座って、客人と挨拶したり、近況の報告を聞いたりする場所だ。まさかこんな時間に王様がいるとは思えない。
しかし、扉の向こうは何やら賑やかだった。まるで宴会でも開いているかのような、そんな賑やかさだ。ひょっとして夜の晩餐会でも開いているのだろうか。
ともなれば、なおさらボクなんかは場違いだろう。
盛り上がっている席でボクみたいなのが現れたら、その場で兵士にひっ捕らえられて牢屋に入れられてしまうかもしれない。
「入るわ」
そういうと、マリンはノックもなしに扉を開く。
そんなぶっきらぼうでいいのか。開かれた扉の向こうは、確かに玉座があった。想像していた通り、玉座の間だったらしい。
しかし、想像していなかった光景があった。
「ぶひぃぃぶひひぃぃぃ……っっ、ぁは、ふひひひ……ぶっひひっぃぃ」
「ぁはぁん……もっとぉぉ、もっとおねがぁい……きゃはは」
「うけけけけけけっっ! きゃっきゃっ! きゃきゃあっ! うけけぇ!!」
これは、どう言葉にしたらいいのだろう。宴は確かに行われていたけれど、ボクの知っている宴とは、想像していた宴とは大分違う。
礼儀とか品格とかそういうものが見当たらない。賑やかなことは賑やかだけれども、この目の前に広がる空間はあまりにも異質だった。
服も着ずに四つんばいでそこらじゅうをうろうろと歩き回る女の人。ぶひぶひとまるで豚みたいな鳴き声を出しながら何をするまでもなく狂ったように悦んでいる。
口からはよだれをだらだらと垂れ流し、下の口からも愛液やおしっこを駄々漏れにしている。これを見て、下品という言葉以外に当てはまるものが思いつかない。
「この人がこの国の姫よ」
「え?」
広間に置かれたテーブルに大股開きで仰向けになり、スプーンやら蜀台やら食べかけの肉の骨やら、とにかく細くて長そうなものを自分の膣内に挿入れた出しを繰り返している女の人。
手当たり次第にぶち込んでいるせいでもはや何が挿入っているのか分からないくらいぐちゃぐちゃな有様。
それでも痛みなど感じないのか、ただただ快楽をむさぼっているようだ。
「あのテーブルの子があの姫と親しい隣国の姫」
「うぅ……」
奇声を発しながらところ構わず飛び回り、まるで猿のように暴れている女の人。元々はキレイだっただろうドレスはすっかりボロボロで見る影もない。
見たところ、他の女の人に比べてずっと年が上で、まるでボクのお母さんくらいの年に見えるが、大人しさも慎ましさも何もない。この中で一番大人に見えるのに一番幼稚で知性も感じられない。
「あそこではしゃいでるのがこの国のお妃」
「こ、こんな……」
この国を治める王の一人娘は国の花と言われるほど清楚可憐で美しい人だと聞いたことがあった。
そして隣国の姫も、そんな花と戯れる華麗な蝶のように愛らしい人だとも噂されていたはず。どちらも話で聞いていた人物像とは大きく異なる。
妃様に至っては、国を治める者の妾として恥じない機知に富む人と聞いていたのに、もはやただの猿じゃないか。
まさか元々こういう人達だったとは考えにくいし、そう思いたくない。これが心を自在にするということなのか。
もちろん、そこにいるのはその三人だけじゃない。この城に仕える召使いらしき女の人も似たような感じだ。
狂ったようにオナニーをし続けていたり、中には女同士で激しくまぐわっていたりと、まともな人は見当たらない。
こんな不気味な光景は見たことがない。ここが玉座の間だということを忘れてしまうくらいに酷い光景。女の人たちの狂喜の宴だ。
この広間の中央、一番奥の玉座には何人もの裸の女の人がいた。そして玉座に座るのはこの狂った宴の中で唯一の男だ。
まるで王のようにその場に鎮座しているが、取り囲む女に奉仕されているその姿は悪趣味としかいいようがない。
下の女の人にはおちんちんを舐めてもらっていたり、挟むように横にいる二人の女の人にはおっぱいでマッサージしてもらったりしており、全ての女を奴隷としてしか見ていないようだ。
烏の濡れ羽色のように漆黒に染まる流れるような長髪。格式の高さを表すようないかにも高級そうなマント。
そしてその下は何も着ておらず、反り勃つ巨大なそれが部屋の入り口にいるボクからでもよく見えた。なんて大きいんだろう。
この玉座に座る裸マントの黒髪の男。
きっとマリンの言っていたノワール様で間違いないだろう。