この男は狂っている。絶対に狂っている。それだけは分かる。
「ノワール様、ただいま戻りました」
マリンが玉座の下まで歩み寄り、会釈を添える。
「マリンか。随分と遅かったな。いや遅すぎるくらいだ」
「申し訳ございません……」
「言い訳はいい。結果だけ伝えろ」
「ぅっ……!」
マリンとノワール様の目が合った瞬間、マリンの身体がビクンと少し震える。するとマリンから黒く光る煙のようなものが出てきた。
すると煙はノワール様の身体に吸い寄せられるようにして消えていく。
「ふむ、そうか……失敗したのか」
魔導師はもはや言葉を必要としないのか、今の一連の所作でこれまでの経緯の全てを把握したようだった。
「来い、マリン。そこの小僧もだ」
命令が下り、マリンが玉座へと上がっていく。どうやらボクもその中に含まれているようだ。歯向かうという意思はさすがにボクの中にはなかった。
こんな光景を見せられて、少しでも抵抗しようなどと思う方がおかしい。
ボクとマリンがノワール様の目の前まで辿り着く。
この位置まで来てようやくしてノワール様の顔がよく見える。大魔導師と聞いていたからもう少し年老いた雰囲気かと思ったが、それを思わせないくらい若々しい青年のような顔つきだ。
「こんな何処の馬の骨とも分からぬ小僧を連れてくるとは、俺様も嘗められたものだな」
黒く淀んだ瞳からは真意が読めない。笑っているのか、怒っているのか、どうともとれない抑揚のない言葉を吐きかけられる。
これは失望だろうか。いや、違う。始めから関心がなかったかのようだ。
ノワール様は始めからマリンには期待していなかったのかもしれない。ひょっとすれば今回の一連のことも余興の一つとしてしか考えていなかったのだろうか。
「申し訳ございません、ノワール様」
「師への恩を忘れ、あまつさえ愚弄する弟子は教育しなおす必要があるな」
ノワール様が手を差し出し、招く仕草をする。
するとマリンの体がくいっと引っ張られたかのように、ノワール様の座る玉座の真ん前までのそのそと足を運んでいく。
その歩きのぎこちなさから見ると、どうやら魔法で強引に歩かされているようだ。
「アイツに作り変えられた身体を見せてみろ」
「はい……」
おずおずとマリンが衣服を脱ぎ捨てる。周りの女の人たちと同じように一糸まとわない格好だ。異様な光景によく馴染む。
「……ふむ。俺様も何度か人体改造の秘術には手を出したが、この程度か。内臓を取り払っただけとは。アイツも随分と甘い考え方をするようになったものだ。生温いな。手足も取っ払い、脳も潰してしまえばいいものを」
「んぁ……っ」
ノワール様がマリンの腕を、足を、撫でるように触れていく。
そして、ノワール様の手はマリンの下腹部をさするようにしていたかと思えば、まるで自然な流れでマリンのお尻の穴に指をズブリと差し入れる。
それに遠慮などなく指の根元まで挿入されて、マリンはそれだけで仰け反り、ビクンビクンと身体を震わせ、あっさりと絶頂を迎えたようだった。
「ぁんっ、ぁっ、あっ、ぁ……」
ぐちゅり、ぬちゅり。指を抜き差ししては、奥へ奥へと刺激を与える。
その度にマリンの身体がピクンと跳ねる。マリンの足元はもうとっくにフラフラで、内股のまま、ノワール様の方に傾いていた。
ぬちゅ、にちゅ。堪えきれず、とうとう足から力が抜け、マリンの身体が玉座に倒れこむ。そしてそのまま、ノワール様の片腕に抱かれるように支えられる。
マリンが倒れこんだ先には、ノワール様のソレがあった。
マリンを抱き抱えた腕が、手が、肩から首に周り、背中からそっと身体を持ち上げられ、お尻の穴に挿入されない程度にピタリとソレをあてがう。
酷く不安定な体勢ながらもまだ、マリンの身体が支えられているが、ノワール様の腕がなくなったら、どうなってしまうのだろうか。
あんな力も入らずフラフラな状態では落ちてしまうだろう。そして落ちた先には、マリンの下にはノワール様のソレがいきり立っている。
「ぁぁ……、ノワール、様……」
ノワール様の片腕一本に支えられたマリンが力なく言う。お尻の穴はとっくに無防備にもヒクヒクしているのがボクにも見えた。
あの腕がマリンの身体から離れたら、ノワール様の、あの太くて長い、ノワール様の、アレが、きっと、マリンの身体を文字通り貫いてしまうだろう。
マリンの体内は余計な臓器がないだけじゃない、身体の中全部が性感帯なんだ。もし、そこにあんなものが挿入されてしまったら。
マリンの顔はボクの立っている位置からじゃ見えない。けれど、どんな顔をしているのかは分かる。きっと笑っているに違いない。
期待が高ぶって、ガマンできないくらい、悦んだ顔をしているだろう。だって、マリンの身体は小刻みに震えている。お尻の穴も、ものほしそうにしている。
これ以上壊されたらマリンはどうなってしまうんだろう。不安ではない何かがボクの中にあった。
ノワール様の、片腕が、マリンを離す。
次の瞬間に聞こえたのは、マリンの悲鳴や叫び声でもないし、あえぎ声や嬌声ですらなかった。言葉ではない何かだった。
あまり聞きなれないようなソレは、どうすればそのように発音できるのかさえも分からない。喉ごと内側から潰したらあんな音が出るだろうか。
少なくとも声とは到底思えない、何かが詰まったかのような水音のようなソレだ。
「……ッ! ……ッッ!! ……、……ッ」
目の前の光景をどう見る? マリンの身体はノワール様の前に立っている。手も足もブラブラさせているから、きっと意識も朦朧としているのだろう。
しかし、倒れていないし、倒れる様子もない。ノワール様の腕はとっくに離されているというのに。まるで浮かんでいるかのよう。
いや、違う。浮かんでいるわけじゃないんだ。そのくらい、分かっているだろう?
あまりのことに、頭の整理がつかない。マリンの身体は小さい。とても小さい。ボクよりも小さいんだ。それは分かっている。
そしてノワール様のソレはどうだろう。大きい。
例える言葉がないくらいに大きい。そして、今それがどうなっているのか。
想像したくなどなかった。マリンは声もあげられないんだ。お尻に突き刺さるソレがマリンの身体を言葉通りに串刺しにし、喉元まで貫いているから。
一体どんな感覚なのだろう。どれだけの快感なのだろう。
「ふむ……、体の締まりはそれほどよくないな」
締まるわけがない。元々身体はそういうふうな仕組みではないから。しかし、不満げなノワール様は、おぞましい笑みを浮かべる。
待って。もうマリンは壊れている。身体も、きっと心も。
これ以上、何をするつもりなんだ。
「それらしくしてやろうではないか」
ノワール様の手のひらが不気味な色に光る。何色とも形容しがたい光を帯びたその手は、マリンの身体を撫でる。
その度に、マリンの身体が不自然にピクピクと震え、何やら聞こえてはいけない音が聞こえる。
ボキ、ゴキ、バキ……グギ。なんだ、この音は。太い枝を無理やりへし折るような、耳障りとも言える不快な音。こんな音、聞きたくもない。
マリンの身体がおかしい。いや、とっくにおかしくなっているのは確かだが、小さい身体がさらに小さくなっていく。
急速に縮んでいって、人の形とは違う何かになっている。
だらんとぶら下がっていた手や足も飾りのようになっていて、もはや手とも足とも呼べないし、掴むことも立つこともできないだろう。変化はまだまだ収まらない。