ボクと紅の魔女と黒の大魔導師
じゅぶ、にちゅ、にちゃ、ぴちゅ。舌を這わせる音に水気が帯びてきて、いよいよいやらしく聞こえてくる。
燃えるように熱いソレは、一応男であるはずのボクでさえ逞しいと思ってしまうほど、天井に向けて雄雄しく勃っていた。
ボクはノワール様の肉棒を愛しいくらいに、ただただ舐め続けている。
どうしてなのか、思い出せないし、出す必要もないと思う。
こうしているだけで恍惚に心を溶かされていく。途方もない多幸感だけがボクの中を巡り、心を支配していた。
ノワール様の手が、ボクの頭のてっぺんを、ボクの髪の毛を、その指先に絡めながら、まるで愛犬でも撫でるように優しく触れる。
それがとても嬉しくて、あまりにも幸せすぎてたまらない。
ボクはノワール様に仕える奴隷なんだ。それが心の奥底に楔打つように頭の中で反芻される。
夜も更けてきた。
さすがにあごが外れてしまうくらい疲れてきているが、これだけ長いこと舐め続けているのに、ノワール様はまだ一度も絶頂を迎えていないし、射精だってしていない。
それがとても申し訳なくて、ボクは舐めるのを止めることができない。
今、ボクはどんな顔をしているのだろう。
口元がだらしなく緩んで、舌もしまえなくて、よだれが溢れる。
きっと目もとろんとしてうつろになっているのだろう。まるで発情したメス犬のよう。ボクは本当に男なのだろうか。それさえも自信をなくしてしまう。
それくらいに、ノワール様への羨望が高まる。ボクの心はノワール様に囚われてしまっていた。
ノワール様と比べてしまうと貧相なボクのおちんちんは痛いくらいに勃っている。
さっきもあれだけマリンの中に射精したのに、ゾクゾクが収まらなくて、熱も冷めない。触らなくても絶頂してしまえるほど、張り詰めていた。
そしてそれと同じくらいか、いやそれ以上に、ボクのお尻、お尻の穴はヒクヒクと疼いていた。
どうしてかなんて考えるまでもない。欲しいんだ。ノワール様の肉棒で貫いてほしい。マリンの身体を串刺しにしたように、ボクの身体にもあの快感が欲しい。
勿論、ボクなんかのお尻の穴じゃノワール様の肉棒が挿入らないなんて分かっている。
あんな太くて逞しいものを、改造されきったマリンでさえ身体ごと串刺しにしたものを、ボクなんかには無理だなんて分かりきっている。
だって銜えることだってできやしないんだ。
それを挿入するなんてどう考えたって不可能でしかない。それでも欲しくて欲しくて、早く挿入れないと頭がおかしくなりそうだった。
むしろ、いっそのこと無理やりでもいい。ボクを壊してほしい。
そう強く願っていた。
ボクは一体どうしたらいいのだろうか。答えを教えてくれそうな人は残念ながら誰もいそうにない。
これだけ広い玉座だというのに、誰一人として会話もままならない人ばかり。
豚のように鳴きながら這いずり回る姫や、一心不乱にテーブルの上でオナニーに狂う姫。猿のように奇声をあげながら暴れる妃。
女同士もいとわず抱き合い、互いの口と口を縫い付けられたようにキスを止めない召使いたち。
そして一番頼りになると思っていたマリンも、精液まみれで床に転がっていて、その上、まだおちんちんを挿入れるだけの玩具の姿のままなので喋れそうにもない。
ボクは、もう壊れるしかないんだ。この狂った宴の中に身を捧げて、心を狂わすしかない。
「どうした小僧、止まっているぞ」
ノワール様が低い声で威圧する。見上げれば、黒い宝石のような瞳が妖しく光り、ボクをまるで家畜を見るような目でただ見下ろしていた。
吸い込まれてしまいそうな淀む血の色の瞳。心を奪い、捕え、離さない、その瞳がボクの心を締め付けるようだった。
じくりと、胸を鋭い何かで深く、徐に刺すような錯覚。
ノワール様に逆らってはいけない。ノワール様のためにこの身の全てを捧げてでも尽くさなければならない。
絶対。それは絶対のこと。理由なんてまどろっこしいものはない、絶対だから。
ぺちゃ、にちゅ。もはや舌の根がつりそうなほど奉仕に疲れが見えてきていたが、ボクの都合などどうでもいい。
ノワール様の熱い肉棒の筋に沿い、舌を這わせる。こんなものがボクの中に挿入ったら、きっと全てが壊れる。
もう二度と直せないくらいに、身体ごと心まで貫かれる。でもずっとソレを期待しているんだ。そうすればボクは本当にノワール様のものになれる気がしたから。
含んだ低い笑い声が聞こえる。ノワール様が喜んでいるようだった。
ノワール様の赤い瞳が、ボクの中を覗き込むように見る。ボクの目の奥に何が見えるのだろう。
「そろそろ、姿を現したらどうだ?」
ノワール様の手がボクの身体を突き飛ばす。
一瞬だけノワール様と寸分足らずの距離が置かれたその隙に、ボクの首元が鷲づかみにされる。それはあまりにも突然のことで身構えることさえできなかったボクは息もつかしてはもらえなかった。
「っぁ……!」
ノワール様の腕一本、そしてボクの首だけで身体が宙に浮く。
首を掴まれているせいで搾り出されるように息は外に漏れていくが、逆に吸うことができない。
苦しい。死んでしまう。
この狂った宴に酔っていたぼんやり頭が、霧を晴らすように少しずつはっきりしてくる。
「俺様を騙せると思ったか、ガーネット」
ガーネット?
ギチギチ。首の根が絞まる。もはや手にも足にも力が入らず、ぶらりと垂れ下がる。苦しい。
ノワール様が何をしようとしているのか、何を言っているのか、まるで分からない。痛い。辛い。ボクはこのまま殺されてしまうのだろうか。
もう片方の腕が、ノワール様からボクに目掛けて伸びる。
腕はボクの胸ぐらに届き、そのまますり抜けていく。
痛みはなかった。それどころか触れた感触さえもない。血が出ている様子もなく、ただ、ノワール様の腕がボクの胸の中に入り込んでいた。
ぎゅうぅ。胸の奥をつねられるような、不快感。
痛みとは違う、苦しい何か。一体ボクの身体はどうなってしまっているのか。
もう考えることさえだるい。息苦しい。いっそ早く気を失ってしまいたい。
ノワール様の腕がボクの胸から引き抜かれる。その手には何かがあった。
赤いものだった。
それは血かと思った。だってボクの中から出てきたのだから。