ボクは魔女の奴隷
「あれ? フェル、そういえば随分とキレイな身体しているわね」
ベッドの上、ボクの服を脱がした辺りで今更のようにルビーが気付く。確かにその通りで、今のボクの身体はキレイだ。
普段、といっていいのか、普段のボクの身体はあちこちにルビーによって刻まれた青紫の呪印が浮かび上がり、あまり見れたものではなかった。
この呪印というものはある程度の期間を置けば青あざのように自然と消えていく。1日~2日程度のものもあれば、1週間くらい要するものもある。
しかし、肌の上から消えたからといって本当に消えてなくなるわけではない。この呪印はその通り、呪いなんだ。呪印が消えた時、それは呪いの完成を意味する。
とどのつまりは、あれだけボクの全身にあった青紫の呪印が影も形もないということは、その数だけの呪いがボクという身体に完全に浸透してしまったことを意味する。
こうなるとどんな高尚な僧侶の聖なる儀式でも解呪は不可能、らしい。魔法について詳しくないのだからその辺りはよく分からない。
「ええと、どんなの付けてたっけ?」
大体ルビーはいつもこうだ。自分で呪印をつけておいて、どんな効力のあるものなのかをあまり覚えていない。
試験的に作ったものも多いからそもそも効力を自分でも分かってない場合すらある。
怪訝そうな顔を浮かべて、ルビーの手がボクの頭をなで――――んにゃああぁぁ♥ ご主人しゃま、もっと撫でて撫でてぇ♥
「確か頭を撫でると思考能力が猫になる愛猫の呪いだったかな」
ゴロゴロゴロ。にゃあん♥ ご主人しゃましゅきしゅき♥ もっともっと――――ハッ、ボクは一体何をしていたのだろうか。
一瞬にして目の前が真っ白になって気持ちいいものに包まれたかのような心地だった。心なしか、心がうきうきしていた気がする。
我を忘れる類の呪いは普通に記憶が飛んでいくのでなかなか危険だ。何があったのかまるで思い出せない。
果たして、この手の呪いはいくつくらい掛けられているのか、それさえも覚えていないわけだけど。
「うーんと、こういうのもあったかな?」
不意に、またルビーの人差し指がボクの口元にあてがわれ――――あぶぅ……♥ ママぁ、ミルク飲みたぁい♥ おっぱい、おっぱい欲しいのぉ♥ ちゅっちゅしておっぱい飲むのぉ♥
「指をしゃぶると精神が幼児化しだす溺愛の呪い、と無性に母親が恋しくなる乳児の呪いなんてのも付けてたわね」
あぁ♥ ママのおっぱいおっきいの♥ このおっぱい、とってもやわらかくてきもちよくてたのしくなっちゃって、もうとっても気持ちいいの♥ ママぁ……♥ ママぁ……♥ もっとギュっとしてぇ……♥
「あらあら、おっぱいに抱きついてきちゃった。でも今は別にミルク出る魔法使ってないしなぁ。悪いけど自分の指でもしゃぶってなさい」
あぶぅ、ちゅぱ、ちゅぱ♥ ママのおっぱい欲しいよぉ♥ 指じゃ足んないよぉ♥
ママらいしゅきぃ……♥
「なんかもうちょっと面白いの、つけてた気がするのよね。確かおちんちんを……」
ぅぁぁ♥ ママがボクのおちんちんを引っ張ってるぅ♥ の、伸びちゃうよぉ♥ ああ、ぼ、ボクのおちんちんがどんどん伸びてっちゃうぅ♥ おかしくなる、おかしくなっちゃうのぉ♥
「そうそうこれこれ。身体の一部分がゴムみたいに伸びちゃう柔軟の呪いをちょっと改良したヤツをおちんちんにつけたんだった。おお、すごいすごい。何処までも伸びてって縮まないわ。ゴムというかこれもうツルみたいになっちゃった」
んぉぉ♥ おちんちんがぁ……♥ ボクのおちんちんがぁ……♥ すごい伸びてるのにぜんぜん痛くない♥ それどころか、すんごく気持ちよくて、おなかがふわふわってなって♥ あぅぅ……♥
「ほら、フェル。指じゃなくて自分のおちんちんでもしゃぶってなさい」
「あむぅ♥」
ハッと気がつく。口元の違和感。ボクはいつの間にか何かをくわえていた。
それの正体はすぐに理解できた、いや、させられた。今、ボクがちゅぱちゅぱとその口でくわえていたものはボク自身のおちんちんだった。
普通は口まで届くはずがないのに、どういうわけか物凄く伸びている。
こんなにも伸びているのにボクのおちんちんときたら固くなっている。すぐにでも口を離してしまいたかったが、どういうわけか、できなかった。
餌を前にした家畜のように、ボクの口はちゅぱちゅぱを止められない。
「おちんちんをしゃぶると離せなくなる口淫の呪いは確か結構前に付けたヤツだったわよね」
この状況を作り出した諸悪の根源がとぼけた顔をしながらこちらを見ている。
キッと睨み付けてみたものの、何故かルビーのおっぱいに抱き付いたまま自分のおちんちんを夢中になってちゅぱちゅぱしているこんな状態では何の強がりもできやしない。
「ろーいうちゅもりれしゅか?」
「どういうつもりかって? いやぁ、次の呪いはどんなのにしようかなぁ、ってアイデア練ってたとこよ」
この場面を見てまだ呪いを付け足そうというのか、この魔女は。
「そんな反抗的な目をしてるとアレよ? ほら、ぴゅっぴゅっぴゅうぅぅ~♪」
「ッッ! ほわああぁぁぁ♥ んっぐ、んっぐ、んっぐぅぅ♥」
ルビーが人を馬鹿にしたみたいな変な合図をした途端、ボクの口の中のおちんちんが弾けた。正確に言うと何の前触れもなしに射精させられてしまっていた。
そうだった。こんな呪いも掛けられていたんだった。あの合図を出されるとボクは否応なしに射精させられてしまう。
ボクの口の中いっぱいに甘くて美味しいソレが出てくる。ミルクだ。ボクの、ミルク。これも呪い。ボクのおちんちんから出てくるものは美味しくて栄養満点なミルクになってしまう、そんな呪い。
さらに、ボクは美味しいものは全部残しちゃいけない呪いも掛かっている。だから、ボクは自分で射精したソレを全部飲み干してしまう。そうしたくないと思っていても勝手にちゅうちゅうとしゃぶってしまう。
「んぐぅぅぅうぅぅ♥」
でも、そんなことをしたらおちんちんが気持ちよすぎて、またおちんちんからミルクが出ちゃう。それでまたボクは飲まなきゃいけない。でもそうしたらまたおちんちんしゃぶらなきゃならなくて、それでまたおちんちんが……。
「あらあら、フェルったら自分のおちんちんミルク飲むのに夢中になっちゃって」
好きでやってるわけない。止められないだけ。でも大変だ。ボクのおちんちんは呪いのせいで無尽蔵に射精し続けられるように改造されている。
このままだとボクはずっとこのまま自分のおちんちんミルクを飲み続けることになってしまう。
「んーと?」
ルビーが何かを思い出したかのように思い耽る。
そして、ボクのびよーんと伸びたおちんちんを引っ張る。でも、外れない。ボクがしゃぶっているから。別にそんな気はないけれど、しゃぶるのをやめられない。
びろーん、びろーん。思いっきり引っ張ってくる。でもおちんちんは伸びていくだけで、やっぱりボクから外れない。今、ルビーも結構強く引っ張ったような気がするんだけど。
「ぁー、やっちゃったかなぁ」
ルビーは軽く失敗したみたいな顔をしている。そんな軽い反応とは一転、ボクは全身の血の気が引いていくような、そんなおぞましい戦慄を覚えた。
「……フェル、呪いを足しておいてあげるわ。そうね、射精したら頭がバカになっていく呪い辺りでいいよね。大丈夫、呪いはゆっくりと進行していくから、いっぺんにバカにならないし、完成する頃には……」
「んーっ♥ んーっ♥」
ボクが喋れないことをいいことに、勝手に話が進んでいく。ダメだ、ダメだ、といってもこの魔女が人の話を聞くわけがない。
ルビーの指先が光る。そして、真っさらだったボクのお腹に新しい呪印が増えた。なんだか思っていたよりも小さな呪印だ。
こんなの、すぐに完成してしまうじゃないか。
「幸せにね、フェル……」
何処か、物憂げで、悲しげで、どうしてかもう二度と会えないような、そんな表情を浮かべて、ルビーはベッドから降りていくと、部屋から出ていこうとする。
まるで手のひらを返したみたいなルビーの態度に、不安を煽られた。
なんで、急に部屋から出ていくのか。
なんで、そんな顔をするんだろう。
え? まさか、そんなわけないよね? 待ってよ、ルビー。
このままだとボク、本当にずっと自分のおちんちんをしゃぶり続けてなきゃいけない。ずっと、いつまで? ねえ、ルビー。ちょっと待ってよ。
「じゅぶぶぶぶぅぅっ♥」
そうこうしているうちに、おちんちんミルクが射精てきた。
おいしい。あれ? ルビー? どこいっちゃったの?
ミルク、おいしい。ああ、また射精てきそう。
「んっぐっ♥ ゴクゴク♥ じゅるるぅ♥」
ええと、なんだっけ。このままだとまずいんじゃなかったっけ?
そんなことないか、まずくないもん。おいしいし、大丈夫だ。
どうしてボク、おちんちんしゃぶってるんだろう。
「んんっ♥ んぐ、んぐ♥」
ルビー? そういえばルビーがいないような。まあいいか、ミルクおいしいなぁ。
おなかがいっぱいになったけど、ぜんぜんとまらないや。
もっともっとのみたい。
「じゅるるるぅ♥ んぐぐ♥ ゴクゴクゴク♥」
ぁー……、るびー、って誰だったっけ?
ボク、なんで……、ええと、なんだっけ。おいしい?
よく、わかんないや。きもちいいし、おいしいし、なんかどうでもいいや。
「んぎゅ♥ んぐぐぅ♥ じゅるる♥」
うまい。いい、これ。すき。いっぱい、いっぱいのめる。
うれしい。たのしい。わからないけど、よくわからないけど、すき。
なんだったっけ? んん、おいしい。きもちいい。すき。これいい。
※ ※ ※ ※ ※
※ ※ ※ ※
※ ※ ※
※ ※
※
「フェルぅ~、おっはよ~♪」
急にルビーに抱きつかれる。なんだ、朝っぱらから妙にテンションが高い。いつもならまだ眠っているはずの時間帯なのに。また徹夜で変な研究でもしていたのかな。
眠気が度を超すと振り切れて頭がおかしくなることはまああると思うけど。
「なんですか、ご主人様」
「いやぁ、フェルは可愛いなぁ、と思って」
そういってわしゃわしゃわしゃとボクの頭を撫でてくる。本当に変なテンションだ。まあ、ルビーがおかしいのはいつも通りだから仕方ないんだけど。
「むぐっ!?」
「ほうれ、つんつん」
「っ! だから、何するんですか、ご主人様」
ボクの口の中に指を突っ込んできた。何がしたいのやら。これもからかっているつもりなのかな。からかうというか、何をしてるのか分からないんだけど。
「ああと、そういえば呪いの調子はどうだったかなぁ~?」
ちゃんとボクの話を聞いているのか。いや、全然聞いていないんだろうな。有無を言わさずボクの服をそのままガバっとめくりあげてくる。
その下は、まあいつも通りというか何というのか、呪印だらけでもはや見慣れた模様になってしまっている。
「もう! ご主人様! いい加減にしてくださいよ!」
「ごめんごめん~」
反省する気のなさそうな声で返される。
今日は本当、なんだか朝からベタベタとしてくる。
「ふわぁ~ぁ。眠くなってきちゃった。あたし寝るわ」
ルビーはそう言ってボクを押しのけるようにしてベッドにペタンと俯せに倒れる。もう朝なんだけど。二度寝という感じでもないし、やっぱり徹夜だったのか。まあ、寝ててくれるなら大人しくてボクも助かるところだ。
さてと、ボクはそろそろ起きなきゃ。畑仕事に、家の掃除に、朝ご飯。やらなきゃならないことは沢山ある。なんでボクがこんなことしなきゃならないのやら。
まあ、ボクは奴隷だから仕方ない。不本意。不本意だけど、仕方ない。
ルビーの機嫌を損ねたら何をされるか分かったものじゃないし。
そのうちうっかり変な呪いを掛けられて永久に射精させられ続けるおちんちんバカにされてしまうかもしれない。
まさか。さすがのルビーもそんなこと、……いや、しそうかも。この変態魔女、何をしでかしてくるのか分かったものじゃないし。
今のボクも、なんで今こうして無事なのか分からないくらい。細い綱渡りをしているような、そんな気分だ。
「まったく……ご主人様はなんでボクなんかを奴隷にしたんですか?」
部屋を出る間際、ルビーの眠っているベッドに向けて言ってみる。どうせ聞こえていないだろうけれど。
畑仕事の道具を一式準備して、家を出た辺りで、窓の方から何か聞こえてきた気がする。その窓の先はルビーの寝ている部屋。
「……誰でもよかったわけじゃないわよ……」
ぼそりと小さく、本当に小さく。ささやくような、あるいは寝言のような、聞き取りにくい声が窓越しに聞こえたような気がした。
他にも何か言っていたような気もするけれど、いや、そもそも今の言葉でさえ聞き違いかもしれないし、本当は何も言っていなくて、ただの寝息だったかもしれない。
でも、何故だろう。
ルビーのその声は寂しいような、そんな儚い声色だったような気がした。本当に聞こえたかどうかも分からないのに、今にも泣きそうな声だった。
そんなバカなこともあるまい。だってアレはルビーだから。ボクをいじめるのを楽しんでいる魔女だ。
ボクみたいな子供を奴隷にして喜んでいるような変態魔女なんだ。ルビーがそんな悲しげな感情を持ち合わせているなんて、到底信じられるものじゃない。
……でも、実際のところ、ボクはルビーを全部知ってるわけじゃない。
ボクの知らないルビーもきっといるのだろう。
あれから、ルビーは全くといっていいほど、あのノワール様のことを口にしない。マリンのこともだ。ボクから話を振っても、すぐに誤魔化されてしまう。
何も、教えてはくれなかった。
昔のルビーは一体どんなだったんだろう。あの口を丸ごと自分の手中に収めた恐ろしい魔術師ノワール様の下で何をしてきたのか。ボクは、何も知らない。
マリンにも色々と聞きたいことがあったけれど、多分もう会えないような気がする。あまりいい別れ方はできなかったから残念だけど、きっとボクには縁の無い世界に違いない。
想像もできない。ルビーはノワール様の下で、コツコツと修行を積んでいたのだろうか。全くそんな気配もなかったし、むしろそれこそ奴隷みたいにコキ使われていたんじゃないのかな。
ボクの目に焼き付いた光景。
あの狂った城での一夜。狂った姫や妃、狂った使用人たち。その中央に王の如く鎮座するノワール様。それに対峙するルビー。
あのとき、どんな会話が交わされたのだろう。
結局、何も分からないまま夜は過ぎ、次に城の地下でノワール様と会ったとき、ボクはどうしてか、ノワール様に逃がされたような、そんな気がした。
もう用が済んだと言わんばかりに、ボク、そしてルビーに何の関心も無い、そんな目をしていたような気がする。
ノワール様が言っていた言葉の半分も意味は理解できなかったけれど、少なくとも長年自分の傍に置いておいたルビーが、もう自分のものではなくなったことを知ってしまった、そんな言い回しのように聞こえた。
それがどういう意味なのかは分からない。
ただ。
ただ、ボク自身。
ノワール様に言われた言葉が引っかかっていた。
『奴隷少年よ、貴様は何故そうも主に歩み寄る?』
ボクが、ルビーに歩み寄っている?
どういう意味なのかサッパリ分からない。まるで、ボクがルビーのところに好きでいるみたいじゃないか。ボクはただの奴隷。無理やりルビーに捕まって、雑用やらされてるだけの奴隷だ。
不本意。甚だ不本意だ。
ボクはルビーのことをどう思っているのだろう。
ルビーはボクのことをどう思っているのだろう。
奴隷と、ご主人様。ただそれだけの関係のはず。
『……誰でもよかったわけじゃないわよ……』
耳の奥に残っている微かな声が反響する。
まったく。全く以てよく分からないものだ。
ボクはなんとなく、こうは感じている。
ボクはルビーに好かれている。愛されている、という言い方で正しいのかは分からない。そしてそれは割と根が深くもあり、手放すことを拒んでいる。
だけど、ルビーが手放したくないあまり、ボクは潰れてしまいそうなほどに束縛されている。それはあたかも、自分のお気に入りのぬいぐるみを抱きかかえるかのように。そして好き勝手に遊んで破いたり壊してしまう。
ルビーにとってのボクは、きっとそんなもの。
でも、ボクはどうやら、ルビーに好かれることが好きらしい。
そうでもなきゃ、ルビーの身の回りの世話を律儀にやったりはしない。下手に逆らって呪われたくないからとか、実験台になりたくないから、なんて建前はあるけれど、多分ボク自身もうあまりそんなのも気にしてない。
ボクも、おかしくなっちゃったもんだ。
きっとルビーに呪いを掛けられてしまったからだ。
そう思っておくことにしよう。
「ご主人様~、朝ご飯の準備ができましたよ~」
ふと気が付いたときにはほら、こうしてルビーのためにご飯の準備だって済ませてしまっている。すっかり奴隷も板に付いてしまった。
「ふわぁ? ああ、ご飯かぁ~。今行くぅ~」
寝ぼけた声が聞こえてくる。そのまま寝ててくれればいいのに、とか思いつつも、食卓の上は食欲をそそらせるように彩っていく。
ここにルビーが揃ってボクの朝が始まる。
このあと、どんなことをされるのか、何をされるのか、分からない。
分からないけれど、ひょっとしたら今度こそめっためたに壊されてしまうかもしれないけれど、ボクは諦めるかのように、あるいは期待しているかのように、受け入れようとしていた。
ああ、そうだ。認めるも認めないも関係ない。
ボクは奴隷少年。あの変態魔女に弄ばれるために、ここにいるんだ。