口の中に広がる甘い甘い蜜が、お腹をたぷんたぷんになるまで満たしてくれる。その心地よさは快感そのもので、延々と終わらない絶頂といってもいい。
また少し、頭の中が白くもやもやになってしまう。飲みたい、もっと飲みたいという激しい欲求が理性をかき消しているかのよう。
自分が自分の意思で動いている感覚がほとんどない。
どうしてこんなことになってしまったかなんて言うまでもない。
今まさにこの蜜を出している張本人が全ての元凶だ。怒りよりも食欲が上回りどうにもならないから一番弱いところを舌の先で攻撃する。
蜜とは違う、また美味しい汁が奥の方からぴゅっぴゅっと吹き出す。美味しい、ああ、またこれだけで背筋がぞくぞくするほど気持ちいい。
「んっ……ふぅ、また巧くなったわね。よしよし」
ご主人様が頭を撫でてくれる。まるで犬のような扱いなのに、こうやって褒められるのもだんだん嬉しくなってきた。
でも顔を見上げるのも惜しく、ボクはご主人様をすするのに夢中だった。
尻尾もない。大きな耳もない。よく嗅げる鼻もないし、全身を覆うような毛むくじゃらなもふもふの体毛もない。それでもボクはまだ犬のままでいた。
犬との融合魔法の後遺症か、そのときに重ねた呪いの副作用か、それとも調教の賜物か。
はっきりとは分からないが、ご主人様が欲しい。それだけが頭の中を占領して離れない。
「さあ、フェル。そろそろ交代よ」
「わぅぅ……」
もっと飲みたかったのにボクの身体はピタリと動きを止めて、のそのそとおもむろに引っくり返って仰向けになる。まるで服従の格好。
何も隠すことなく、ピンと勃ったおちんちんがご主人様に向く。恥ずかしくないわけではないが、もうすっかり慣れてしまった気がする。
もう条件反射だろうか。ご主人様の一声にボクの身体は僕自身の意思よりも早く本能的に従ってしまう。
そうすれば甘美な美味しい餌も、上り詰めて降りられない至高の快感も全部貰えると分かっているから、逆らえない。
「ふふ。いい子、いい子よフェル」
ああ、嬉しい。ご主人様がまた褒めてくれる。
「それじゃあ、いただきま~す」
ご主人様がボクのおちんちんを一気にしゃぶる。さっきとは一転して、今度はボクがご主人様にあげる番だ。
ご主人様の舌が執拗に絡み付いてくる。左右からねぶり、まるで巻きつくように、おしっこの穴まで的確に狙ってくる。一秒だってガマンできるわけない。
だってさっきからずっと張り詰めていたんだから。すでに射精る直前だったんだから。
ご主人様の口の中でボクのおちんちんが弾ける。
そしてご主人様の喉に直接流し込まれる。ごくごくと一適とこぼすこともなく美味しそうに飲み干す。理性がまた一つ砕けたような気がした。
それでもご主人様は容赦ない。口を離しもしない、舌の動きを止めようともしない。そしてボク自身も抵抗する意思さえ微塵もない。
もっと飲んで。言葉にする前に、身体は快楽に服従し、またご主人様にソレを差し出す。ああ、もっともっと飲んでほしい。
ボクは何度も、何度も何度も繰り返し、ご主人様に理性ごと捧げる。ずずず、ずるずる、ごく、ごくん、とはしたない音さえも、心地よく聞こえてしまうくらい。
「はぁ……ぁふ……、ぁぁ……、はぁ……ぁ」
捕食される獲物ってこんな気分なんだろうか。いや、きっと違う。服従することはあっても、捕食されたいなんて望む獣なんてそういない。
息をつくのも忘れてしまいそうになるくらい、快楽の波がボクを調教していくのが分かる。もう逆らえない。逆らいたくない。奴隷とも違う絶対服従が心に深く、深く刻み込まれていく。
「うふふ……おいしいわ、フェル」
ジュルリと舌なめずりする顔を覗かせて、ご主人様がまたなでなでしてくれる。
「くぅぅ……ん」
冷めない興奮が、ボクのおちんちんをまたピンと大きく反らせる。どうぞご主人様。どうぞ、もっと飲んでください。身体はそう言っている。
「さぁて、メインディッシュと行きましょうか」
そういうとご主人様は身体を乗り出し、ボクの身体に覆いかぶさるようベッドに這い登ってくる。
そして馬乗りになり、そのままゆっくり腰を浮かせると、ボクのおちんちんに片手を添えて、ご主人様のソレにあてがう。
ついさっきまでボクがぺろぺろしていたからあのおいしい蜜が滴るほどにぐじゅぐじゅだ。
ああ、ダメだ。そんなことされたらボクの理性はもう欠片も残らない。また犬になっちゃう。
でも待つわけがないし、もう待てない。待ちきれない。ご主人様の腰がグンと下がり、ボクのおちんちんが一気にご主人様に飲み込まれていく―――――。
※ ※ ※
※ ※
※
「はぁー……」
憂鬱としか言いようのない、ひどく儚くも重い吐息が漏れる。
箒が床の上のゴミをザッザと埃が立つほどに引っ掻き回す。
別に、ベッドやシーツなどの洗濯物の数の多さや、散らかった道具や家具の多さを見て思っているわけではない。
何が憂鬱かって、少しずつ自分が今の自分の順応しつつあることが何よりも憂鬱なんだ。
例えば、首輪。今はこれを付けていないと理性が保てない。
無論、ただの首輪ではない。ご主人様の魔法が掛かっている。
これは、身に付けているものに知恵を与えるという大層な魔法が掛かっている。
動物に付ければ言葉も理解できるようになるし、喋るようにだってなれる。
人のように二本足で立つことだって教えればできるようになるのだろう。ボクがこのようにできるのだから。
この首輪を外せば、ボクは元のボクに戻る。
元のボクは犬ほどの知能も、理性もない。
獣とさえ呼べるかも怪しいくらい、ただただ本能で快楽をむさぼることしかできない。どうしてそうなったか、なんて考えるまでもない、全てご主人様のせいだ。
ボクを壊すほどに快楽で全部塗りつぶしてしまうからこうなったんだ。
壊してからやりすぎと気付いたのか、奴隷として使えなくなったのを危惧したのか、何にせよ、こんな首輪を付けてこれまで通りの仕事をできるまで無理やり回復させられたわけだ。
壊れたままでは洗濯や皿洗い、掃除なんて当然のこと、下手すればおちんちんが壊れるほど延々とオナニーし続けていたかもしれない。
しかし、首輪があるからといって、完全に理性を保てているわけでもない。
今でも身体がうずうずして収まりがつかない。ご主人様の顔ばかり浮かんで、持っている箒を放り投げたくなってしまう。
ああ、そうだ。そろそろ朝食の時間だ。スープも出来上がっている頃合いだ。
おいしそうな匂いを漂わせてきているから、もう間もなくご主人様も目を覚ますだろう。
そうしたら、もう……。
「フェルー、朝食まだー?」
「ぁ……」
振り向いた先にご主人様が寝ぼけた顔で立っていた。
ボタ、ボタと、足元が濡れる。
口元を押さえたって無駄だ。こぼれ落ちるほど溢れてくる。
止められない。止められるわけがない。よだれがだらだらと口からこぼれ出てしまう。欲しいんだ。もう待ちきれないくらい。
「ちょ、朝しょ、食の準び、はできてま、ず」
ズズズとよだれをすする。それでもよだれはだらしなく、ボタ、ボタと落ちる。
「んふふ、どうしたの? ガマンできない? じゃあフェルが先に召し上が――」
言葉の続きを待つよりも早く、ボクはご主人様の足元にしがみつくように跪いていた。
もちろん、よだれを垂らしながら。くすくすと笑うご主人様が、スカートの前をたくし上げ、下着を脱ごうとしていたときには、もうボクの理性なんて―――――。