第1話 エルデンリングって何?
今流行りの転生というのを果たしたらしい。
前世ではそこら辺にいるただのゲーム好きな大学生だった俺。
東京で一人暮らしをしていたのに、気が付けば古びた教会の中だ。
壊滅的被害を受けたのか内部は滅茶苦茶で、そこら辺に瓦礫の山が出来ている。
俺はそんな今にも崩落しそうな教会の一角に横たわっていた。
「すげぇマッチョ……! 腕とか丸太じゃん!」
中肉中背で肥満気味なお腹だったのに、摘まめる脂肪がない。むしろ、滅茶苦茶筋肉がついてるし、なにこのぶっとい腕!?
一流もかくやという仕上げっぷりに驚きを隠せない。ていうか身長高っ! 二メートルくらいはあるんじゃないか?
首には罪人のような木の枷が嵌められ、服は中世の平民が着るような見窄らしい格好をしている。
持ち物も腰に巻かれたポーチだけで、靴すら履いていないのだから、かなり貧乏な生活を送ってきたようだ。
(ん? 目に何か……)
ふと目を覆っている何かに気づく。
裸眼と変わらない視界良好っぷりだったため気づくのが遅れたが、覆っている物を解いてみると、それは黒い布だった。
まるで包帯を巻くように目を塞いでいたのに、視界良好ってどういうことだ?
「痛ぅ……っ」
裸眼を晒していると強烈な頭痛が俺を襲う。頭を締め付けられるような強烈な痛みだ……。
目を閉じると頭痛も治まるが、何故か視界はクリアなまま。もしかして、千里眼とか透視の能力が転生特典ですか?
「……そういえば、全然動揺してないな」
黒い布を巻いた俺はふと気づく。
空想の話だと思っていた転生を受け、この世界の記憶は何一つ持ち合わせておらず、前世の両親や友人たちとはもう会えないというのに。
俺の心は変えようのない事実として受け止めていた。
もちろん悲しい気持ちはあるが、何がなんでも前の世界に戻ろうという気にはならない。
精神が肉体に引っ張られるというやつだろうか。まあ、こんな健全な体をしていればメンタルも相応に頑丈な気もするが……。
「……! 大丈夫ですか!」
周囲を見回してふと人影に気がついた。
壁に背中を預けたその人はシスターのような格好をしており、生気の抜けた顔で微動だにしない。
「死んでる……」
彼女は、すでに事切れていた。
そして、初めて見る死体だというのに、俺の心は微塵も動揺しない。
何で死んでいるのか、ここは何処なのか。この体に同調してしまったかのように平常心を保ち続ける俺の心は、どうなってしまったのか。
そして何より、彼女の手元にある一枚のメモ。
そこに書かれた『エルデの王になりなさい』というのは、一体何を意味しているのか。
「行くか……えっ、なにこの扉メッチャ重いんだけど……。まさかの鉄製ェ……!」
名も知らぬシスターに黙祷を捧げた俺は、意を決して教会から出ることを決めた。
1
教会は秘境の地と言うに相応しい断崖絶壁の場所に建てられていた。滅茶苦茶空気が薄い。
しかも塗装されていたであろう石畳の道はボロボロ。なろう系のように中世ヨーロッパ的な街並みが見えるかと思いきや、山と岩しか見えない。少なくとも、人が住んでいそうな場所はなさそうだ。
「初っ端からハードかよ……」
とりあえず道なりに進み、今にも崩れそうな橋を渡ると、開けた場所に出た。
いい景色だなと景観を眺めながら歩いていると――。
「な、なんだっ!?」
突如、人型の何かが空から降って来る!
背中に何本もの腕を生やし、剣や盾などを装備したカニっぽい感じのそいつは、俺を見るや否や問答無用で襲ってくるではないか!
「ふざけんな! こんなの聞いてねぇぞオイッ」
慌てて走りその場から逃走しようとするが。
「はぁっ!? なんで出れねぇんだよ!」
出口と思わしき場所は障壁のようなもので塞がれていた。
なら、来た道を引き換えそうと振り返ったところで――。
「あ」
剣を思い切り振りかぶっている化け物と目が合い、俺の意識は闇に包まれた。
2
「――死にゲーかよ……ッ!」
次に目が覚めたのは、洞窟のような場所。
脳天を勝ち割られて殺されたはずなのに生きていることや、衣服に付いた血が消えていること。
そして何よりも、チュートリアルが勝ち目のない敵であるという点から、此処が死にゲーを元にした世界であると当たりをつけた。リゼロのような死に戻りを前提とした可能性が高い。
ていうか、武器の一つもないのに戦わせるとか、死にゲー以前に無理ゲーじゃん……!
「マジかよ……俺、何度も死ぬ運命なの……?」
そしてよく見ると、如何にも幽霊ですと言いたげな老人が離れた場所で椅子に腰かけているし。
幽霊を始めとしたホラー系は大丈夫なタイプなので恐る恐る話し掛けてみるが、何を言っているのか今一要領を得ない。幽霊は皆こんな感じなのかな。
巨大な両扉を開くと、通廊に躍り出た。石造りで遺跡チックな感じだ。
「うげっ、また死体……いや、遺体だ」
隅に横たわっているミイラのような人。その干からびたお腹の上にはアイテムらしきものが置かれているが、正直触りたくない。
ゲーム序盤で獲得できる必須アイテムかもしれないが、潔癖症の嫌いがある俺は見なかったことにした。
そして、通路のど真ん中にある、見るからに怪しげな光の塊。穏やかな渦を巻いており篝火のように周囲を照らしている。
ゲームならセーブポイントなのだろうが、まだ確証がない。触れた瞬間爆発して死ぬかもしれないし。
触らぬ神に祟りなしということで取り敢えずスルー。明らかに封じられた脇道も見なかったことにして先に進み、スイッチを踏むと起動するお洒落な昇降機で地上へ。
「重いなこれも……! ていうか引き戸でもスライドドアでもないんかいっ!」
スライドはスライドでもまさかの持ち上げ式の扉を越えてようやく外に出た。
「おぉ、すげぇ……」
遠目には世界樹を彷彿とさせる巨大な黄金の樹。荒野然としたディストピアチックな光景が広がっていた。
丘の上から見る限り人工的な建物は少なく、街らしきものは見当たらない。
もう決まった。ここはなろう系ファンタジーじゃないでファイナルアンサーだ。
「あ、人だ……」
ここでようやく、生きている人に出会った。
丘の上から景色を眺めている白い格好をした人だ。チェーンメイルの上から白いマントを羽織り、顔には白面。
怪しさ満載の男?だが話し掛けない訳にはいかない。
「おや、これはこれは……」
声を掛けると、白面の人は穏やかな声で振り返った。やはり男の人のようだ。
「貴方は褪せ人ですね。エルデンリングを求めて此処、狭間の地へとやって来た。そうでしょう、私には分かります……」
「汗人?」
えっ、俺そんなに汗臭いの? ていうか、汗が臭いからって初対面で汗人なんて名づけるなんて……なんて奴だ。
一気に白面の男に対する印象が悪くなる。さっさと話を切り上げて立ち去りたいが、見知らぬ地に独りきりなのは些かリスキーなのも事実。
仕方なく不満を内に秘めて、男と言葉のキャッチボールをすることにした。
「あの、ここは――」
「ですが、悲しきかな。貴方は巫女無しのようです。導きも知らず、ルーンの力を得ることも出来ず、円卓に招かれることもない」
「ちょっと――」
「貴方はここで名もなく死んでゆくことでしょう……。ただし、貴方が巫女無しでも一つだけ希望があります」
「おい――」
「それは、この私。ヴァレーに出会えたこと――」
「いい加減言葉のキャッチボールをせやッ!」
一方的に話すだけでずっと俺のターンを止めようとしない男にブチ切れた俺は、思わず得物を抜いていた。
斬馬刀の如く長い刀が弧を描き、男の首にピタッと添えられる。
一瞬で首元に刃が迫り驚いたのだろう。男は腰を抜かしてしまった。
そして、無意識にこの長刀を、腰のポーチから引き抜いた俺自身も、自分の所業に驚いている……!
(今、俺この刀をポーチから出したよな……? えっ、なんでこんなデカイ武器がポーチに収まってるの?)
当然、ポーチは刀が収まるような大きさではない。これが本物の刀ならパッと見て五キロ近くありそうなのに、ポーチの中にあった時は全然そんな重さは感じなかった。
本当に何がどうなっているんだ……誰か教えてくれ……。
「な、なにをするんです……!」
「――! それはこっちの台詞だ! まったく人の話を聞こうとしないでペラペラぺラペラと訳の分からんことを……! 大体、此処どこよ!?」
「お、落ち着いてください。ここは狭間の地の南部にある『リムグレイブ』というところです」
狭間の地? そういえば、そんなこと言ってたな。
刀を下ろすと男――ヴァレーはホッと小さく息を吐いた。
あ、いつの間にか腰に鞘が……。もしかして刀を抜いたから自動的に出て来たとか……?
「どうやら不快な思いをさせてしまったようですね、申し訳ございません。祝福はご存知ですか? 貴方たち褪せ人に休息を与える黄金の灯です」
ヴァレーが指差した先には、穏やかな渦を巻いている光の塊があった。
さっきスルーしたものと同じやつだ。どうやら爆発はしないらしい。
「あの光ってる奴か?」
「そう、それです。その灯から光の筋が生じ、ある方角を示すことがあります。それこそが貴方たち褪せ人が進むべき道なのです。なので、もし行き先が見当たらないのであれば、手始めに祝福が示す光の先――断崖の城ストームヴィル城に向かってみては?」
「ストームヴィル城?」
「ええ。あれは老醜のデミゴッド、接ぎ木のゴドリックの居城。貴方たち褪せ人が打倒しなければならないデミゴッドの一人です」
デミゴッドとやらは何なのか分からないが、城なら人がいるだろう。
色々と情報収集が出来るかもしれないし、もしかすれば身寄りのない俺を保護してくれるかも。城主や領主と仲良くなるのは序盤でよく遭遇するイベントだしな!
何だかんだで色々と教えてくれたヴァレーに礼を言い、刀を鞘に納めた俺はストームヴィル城とやらを目指すことにした。
「おっ、あんなところに金ピカの騎士様がいるじゃん。すみませーん! 道を尋ねたいのですが、って……ぬぉおおおオオオッ!?」
3
「この世界の敵、物騒過ぎだろ……!」
話し掛けた途端、軍馬を嘶かせて突進してきた騎士は問答無用で手にしていたハルバードで攻撃してきた。
まさかの不意打ちをもろに食らってしまった俺。逃走を試みるも呆気なく追い付かれ、天高く飛び上がった馬に踏み潰されて死亡。
気づいたらヴァレーの近くにあった光――祝福に帰還していた。
旅立つ前に触れておいてよかった。やっぱりセーブポイントだったんだな。
「ソウルライク系なのは確定したけど、それにしては充実し過ぎじゃね?」
殺された恐怖は理不尽な怒りに塗り潰され、野郎ぶっ殺してやると息巻く。
こんな序盤のステージにいる敵だ。少しレベリングすれば手が届くだろうと、改めて祝福に腰掛けた俺は持ち物を見直すことに。
長刀が入っていたんだから他にも何かあるかもしれないと、四次元ポーチに手を突っ込み、中身を片っ端から出したのだが……。
「このラインナップなんだよなぁ……」
用途不明のアイテムが百種類以上、様々な武器や防具が盛り沢山ときたものだ。
思わず我が目を疑い、そう言えば目隠ししてたんだっけと裸眼で見直すと、これまた驚きの真実が――。
【長牙+25】
・分類 刀
・戦技 猟犬ステップ
・物理 281+366
・能力値補正 筋力D、技量B
・出血の状態異常を蓄積する(45)
これが今、俺が装備している長刀のステータスだ。
そう、どうやら俺の眼はオートで鑑定スキルを発動する魔眼だったのだ!
鏡のように磨かれた刀身で確認したところ、瞳は鮮やかな赤色。透視能力があって鑑定スキルがオートで発動なんて、まるで六眼みたい。
目を隠してるところもどことなく五〇悟ムーブだし、ああいうタイプのイケメンではないけど堀の深い顔立ちも相まって男前な顔付きをしている。
歳は二十歳半ばくらいだと思うけど、この世界の俺は十分イケメンだった!
この疑似六眼を解析眼と名付けた俺は、片っ端から武器や防具、アイテムを鑑定してベストな装備を模索。
その結果――。
【右手装備 長牙+25】
・分類 刀
・戦技 猟犬ステップ
・物理 281+366
・能力値補正 筋力D、技量B
・出血の状態異常を蓄積する(45)
【左手装備 夜の刃+10】
・分類 刀
・戦技 夜闇の斬撃
・物理 269+291
・魔力 80+91
・能力補正 技量B
・出血の状態異常を蓄積する(45)
【防具 葦の地の兜、白備えの鎧、白備えの手甲、白備えの足甲】
<カット率> <耐性値>
・物理 19.8 ・免疫 159
・打撃 20.6 ・頑健 100
・斬撃 22.1 ・正気 130
・刺突 24.7 ・抗死 120
・魔力 23.6 ・強靭 37
・炎 23.6
・雷 25.6
・聖 22.1
【装飾品一 竜印の大盾のタリスマン】
物理カット率を、きわめて大きく上げる。
【装飾品二 真珠竜印のタリスマン+3】
物理以外のカット率を最も大きく高める。
【装飾品三 緋琥珀のメダリオン+3】
生命力を、最も大きく上昇させる。
【装備品四 青羽の七支刃】
生命力が減少したとき、防御力を高める。
一部ステータスの意味が分からないけど、命大事にをコンセプトに組んでみた。
防具? 刀を使うんだから甲冑じゃなくて鎧でしょうが。盾? 武士は盾など使わぬ!
ちなみに兜は手持ちの中では性能がメッチャ低いのだが、日本風の兜がこれしかなかったから渋々使うことに。シリーズで揃えるなら翁面というのがあるが、結構息苦しいからボツ。
兜が心許ないけど、そこだけ警戒すればいいだけだし。もう負ける気がしないね!
「なにコイツ全然倒せないんだけど!? あ、あぶっ、危ねっ! 今かすったあああッ!」
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある