初めて見るゴドリックの接ぎ木。非常に原始的で何でそれで動くのか突っ込み所が満載だったが、脅威度は増した。
炎のブレスに大きな顎での噛みつき。さらには戦斧の攻撃も加わり非常に避け辛い。
俺には解析眼の未来視があるが、仲間たちは大丈夫だろうかと一瞬心配になったが、それも杞憂に終わった。
ネフェリ・ルーは歴戦の戦士としての経験からか俺の口下手な説明にも直ぐに対応し、ローデリカはいつの間にかブレスが届かない入口付近まで撤退。
クララたち遺灰組は流石にダメージを負っているのか、かなり苦しそうに戦っていたが、総じて優勢で戦えていた。
俺も弾き主体のスタイルから回避に重きを置き、主に竜のブレスから逃れているが、何だろう。火炎放射のようなブレスが真横を通り過ぎる度に感じるこのイライラ感は。
──竜の炎って。こんなにちっぽけなものだっけ?
大口を開けて噛みつこうとしている竜の顎。
斜め前方に飛び込むようにローリングで回避し、起き上がり際に無防備な脇腹を刺す。
──竜の咆哮って、こんなチンケなものだっけ?
ブレスを放出しながらの焼き払い。
姿勢を低くしながら前へステップし、懐に入り込む。そのまま左手で抜いた脇差しで奴の腹を滅多刺しに。
──竜って、こんなに弱い存在だっけ?
地面にブレスしながら斧を旋回するゴドリック。素早くバックステップを踏んで距離を開ける俺を追いかけるように転がりつつ、炎を纏った風の塊を飛ばしてくる。
冷静に時計回りに駆け抜けて回避。背後に回り込んで背中に一太刀浴びせる。
何だろう、この腹の底から沸き起こる不快感は。俺の中で「竜はこんなんじゃねぇ!」って思いが強まっていく。
その不快感は奴が竜の頭で何かアクションを起こす度に増していき、最初感じていたモヤッとしたものが、いつの間にかイライラへと変わっていた。
ドラゴンは確かに格好良いけど、そこまで夢中になるほど好きかって言われると「うーん」なんだけど。何でこんなにイラついているんだ俺は?
そんな疑問を抱きながら戦斧の攻撃を長牙で弾き、至近距離から放たれるブレスを猟犬ステップで回避した時だった。
「何故だ! 強き竜よ、汝は暴竜の末裔にして選ばれし強き者! その汝と黄金のゴドリックが手を組んで、何故褪せ人風情に……ッ!」
その言葉が、俺の心の奥底にある何かに触れ──。
「強き竜よ! かの暴竜の末裔よ! 今一度、我に力を与えたまえ!」
天に向けて「ご照覧あれぃ!」と炎を吐き出しながら放ったその言葉が。
俺の内なる何かを盛大に踏みつけた──!
「あ?」
一瞬にして頭に血が上る。
あのカニ野郎を目にした時以上の激情がこの身を燃やし、比喩でも何でもなく目の前が真っ赤になる。
「…………ネフェリ・ルー、クララたち。危ねぇから離れてろ」
千切れそうになる理性を何とか繋ぎ止めながら、最低限の言葉を残し。
理性を焦がす、絶大な怒りに身を任せた。
1
下がるように言われたネフェリ・ルーは怪訝な面持ちで雷斗を見て、その身に走った壮絶な悪寒に思わず距離を取った。
警戒した様子で離れたネフェリ・ルーに、雷斗は特に反応を示さない。
これまで主の代わりに戦っていた霊クラゲのクララも、主人の言いつけ通りローデリカの指示に従っていたはぐれ狼たちも。
皆、雷斗から感じる気配に怯え、ネフェリ・ルーと同じく距離を取っていた。
ローデリカの元まで下がったネフェリ・ルー。その視線は一瞬たりとも雷斗から外さず、褐色の頬を冷や汗が流れ落ちる。
まるで、ゴドリックより雷斗の方が危険だと言うように。
「……どうされたんですか?」
その異様な空気を察したのだろう。木に化けていたローデリカが擬態を解いて話し掛ける。
全身から夥しい汗を流しながら、雷斗に視線を向けたまま口を開いた。
「雷斗に下がっているよう言われたんだが、様子が可笑しい……」
「え?」
俯いたまま微動だにしない雷斗を緊張した面持ちで眺めるネフェリ・ルー。
その言葉にローデリカも、心配そうな顔で雷斗を見つめた。
二人は知るよしもないが、霊体化しているメリナも雷斗の尋常ならざる様子に慌て、必死に声を掛けたり体を叩いたりしているが、反応はない。
「今さら臆したか?」
あれほど鬱陶しく羽虫のように跳び回っていた褪せ人が、俯いたまま静かに体を震わせている。
眠っていた力が目覚めたのか、左腕に接ぎ木をした竜の頭から膨大な力が流れて来るのが分かるゴドリックは、勝利を確信した笑みを浮かべながら雷斗に近づいていく。
そんな時だった、その耳に、掠れた声が風に乗って入り込んだのは。
「テメェのような雑魚が、竜を騙るんじゃねェ──」
細かな震えが全身に伝わり、右手に持った長牙がカチャカチャと悲鳴を上げるように音を立てる。
吹き抜けた風が雷斗の全身を撫で、キツく縛っていた黒い布がスルリと解けた。
「テメェのようなちっぽけな存在が、竜を騙るんじゃねェ──」
閉ざされた目が開かれる。緋色の瞳がうっすらと輝き、瞳孔がまるで竜のように縦に裂ける。
その体から立ち上る濃密な魔力。
カッと緋色の目を見開いた瞬間、魔力が大きく爆ぜた。
「テメェのような翼が生えただけの蜥蜴が、竜を名乗るんじゃねええええええ──ッ!!」
衝撃波となって周囲を吹き抜ける魔力の嵐。その中央に立つ雷斗は、全身に赤色のオーラを纏っている。
竜の紋章のような印が背に浮かび、まるで後光が差すかのように周囲を明るく照らしていた。
「何だ、その姿は……!」
異様な姿に驚愕の表情を浮かべるゴドリック。
そんな彼を──正確にはその左腕に接ぎ木された飛竜を、鬼のような形相で睥睨する雷斗は刀を地面に突き刺すと、両腕を大きく開いた。
「死ねェ! クソザコ蜥蜴ッ!」
ふわっと地面から浮いた雷斗の両腕が変化する。ゴドリックの持つ飛竜のように、しかしそれとは比較にならないほど巨大な竜の頭に。
ゴドリックの飛竜との違いは大きさだけではない。
あくまでも飛竜の死体を動かしているだけのゴドリックとは違い、雷斗の竜は目に光を宿し、親の仇のように眼前の敵を睥睨している。しかも二頭とも微妙に差異があり、よく見ると瞳の色も異なることも分かるだろう。
右腕の竜からは真っ赤な炎を、左の竜からは青白い炎をそれぞれ放射した。
【竜祈禱・アギールの炎】
【竜祈祷・スマラグの輝石】
「ぐぁあああああああああッ!」
火炎放射並みの勢いで放たれた二種類の炎。咄嗟に全ての武器と竜の頭でガードするが、防げたのは一瞬だった。
飛竜とは比べ物にならない火力で竜の頭諸共すべての武器が溶されてしまう。
その様子を離れた場所から眺めていたネフェリ・ルーは驚愕していた。
「あれはまさか、竜の祈祷……!」
「知っているのですか!?」
雷斗の変貌っぷりに動揺を隠せないローデリカ。
心配げな表情で今も蹂躙している雷斗を祈るように見つめている。
「義父から聞いたことがある。なんでも竜の心臓を喰らいし者に絶大な力を与えると言う」
「それでは、雷斗様は竜の心臓を喰らって……?」
「そういうことになるだろう。しかし、一つだけならまだしも、こんなにも竜の祈祷を扱うとは……。一体、奴はどれだけ竜を倒したんだ……っ!」
戦慄した様子のネフェリ・ルーが眺める先では、両腕を様々な竜の一部へと変化させて、多彩な技を披露している雷斗の姿。鬼気迫る表情からは修羅の印象を受ける。
「ば、馬鹿な! この力は正しく竜の──!」
【竜祈禱・竜爪】
今度は右腕を竜の腕へと変化させた雷斗は、片膝をつくゴドリックの背中を鋭利な爪で切り裂く。
背中を反らして絶叫するゴドリックだが、雷斗の攻撃はまだ終わらない。反対側の腕を再び竜の頭に変えると大きく開口し、ズラッと生え揃った鋭い牙で食らいついた。
【竜祈禱・竜咬】からの【竜祈禱・霊炎ブレス】
胴体を完全に挟んだ雷斗は四肢に力を入れて、自分の何倍も体積のある巨漢をそのまま持ち上げると、天に向けて灰色の炎を吐き出す。
「灰燼と化して死ねィッ!」
「ギャアアアアアアアアアッ!」
灰色の炎がゴドリックの上半身を包み込むと、数秒としないうちに骨すら残らず焼き尽くした。
轟ッと最後に一吐きした竜の頭は粒子を散らしながら消えていく。
中心から奥にかけて扇状に焼け焦げた広場と、その中央で立ち尽くす雷斗のみが残され、その異様な光景にネフェリ・ルーは息を呑んだ。
「ら、雷斗さん、どうしてしまったのですか……?」
「──分からん。アヤツは一体何者なのだ……」
心ここに在らず、といった様子で立ち尽くす雷斗。その身を包んでいた緋色のオーラや竜の紋章も消えており、先までの強烈な威圧感はない。
普段の調子に戻ったと言っていいのか分からないが、少なくとも危険はなさそうだと判断したネフェリ・ルーたちは、ぼうっと宙を眺める雷斗に近づくのだった。
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある