ラーヤちゃんと別れた後、再び【ラニの魔術師塔】を目指してトレントを走らせた。
遠目にだが目的地となる場所を大雑把に確認したところ、どうやらラニ様の拠点は切り立った崖の上にあるようで、湖の方から侵入する経路はないらしい。最奥部の谷底まで向かったのに残念だ。
それともう一点、この世界に生息する動植物は極端にデカイ個体が普通に生息しているのも分かった。
そして、どういう進化を遂げたのかまったく分からないが、名前と見た目が一致してないケースも珍しくないらしい。
「いや、あの見た目でタコはないだろ」
谷底に向かう道程で見掛けた、もはやクリーチャーな巨大タコ。
俺の知っているそれと違い、生理的に受け付けないような見た目をしており、正直これまで見てきた生物の中でも上位クラスのキモさだった。
スルーしたかったけど、ペチペチメリナが妙に興奮した様子で倒せとジェスチャーしてくるので、嫌々戦い。
現在、陸路でラニ様の元へ向かいながら道中の祝福で、タコ料理を食している。
「──! 話に聞いていた通り、本当に美味しい」
「せやな」
メリナの目的がタコ足であることは分かっていたため、殺しきる前に二本ほど刈り取った。
正直一本でも良かった気がする。なにせサイズがバカデカく、一本が俺の脚よりも太くて長いのだ。
でも、意外なことに『タコ足』は持っていなかったんだよな。ポーチにあるタコ関連のものは『蛸たま』という卵巣の部位。卵巣ってだけで食べる気が失せるのに、赤みを帯びた色は人血によるものなんだからもう食用じゃねえ。
蛸足に人体由来の物質が入ってないのが奇跡だわ。
「本当、美味いんだよなぁ……」
タコのステーキと言ってもいいほど、豪快に塊サイズで炙ったタコ足は、噛めば噛むほど程よい塩気が口全体に広がり、正直美味い。
水揚げされたばかりのタコってこんな感じなのだろうか、とテレビ越しに見た築地を思いだしながら食べるが、やっぱりサイズ的にないなと思い直した。
「それにしても、メリナって意外と食べるよな。腹ペコキャラで行くの?」
「そんな予定ないわ。これまで私、ずっと霊体だったでしょう。この姿になってから食事をしたことがないから。雷斗と出会うまで」
なるほど、失って初めて気づくってやつか。
食事は最高の娯楽ってどこかで聞いたことあるし、美味しい物を食べると心がハッピーになるものな。その辺は分かる気がする。
個性豊かな女性たちと出逢って来たから、腹ペコキャラで存在感をアピールしてるのかと邪推してすまぬ。
1
余ったタコ足を保存食としてポーチに収めた俺は、メリナを乗せて先に進む。
現在、俺たちがいる場所は【リエーニエ湖、北岸】。道中、数匹の野良霊クラゲを見かけ、ふわふわと漂うその姿に癒され。
宇宙人とカエルを足して二で割ったような見た目の生命体や、ゴドリックの城とは違う意匠の甲冑を着た兵士たちを見つけたが、これをスルー。
特に敵対する理由がないし、無暗な殺生はしないと決めたばかりだからな。
眼前に見える廃墟、そこにはガリガリに痩せ細った老人たちが所在なさげに佇んでおり、俺を見るや否や、手にした杖を振るってきた。
杖の先端にある輝石から、エメラルド色の魔力の塊が尾を引きながら飛来する。“輝石のつぶて”かな?
廃墟の中ではトレントの機動力は活かせないため彼から降り、飛んできた“輝石のつぶて”をステップで回避。そのまま出口目指して走るが──。
「出口ないし!」
行き止まりなのか、出入口は一か所のみだった。
だけど地図を見る限り、道が続いているはずなのだが……。
お爺さんたちは会話が出来ないタイプのようで、敵意がないことをアピールしても礫を放って来る。
あまりに鬱陶しいから殲滅しようかと思ったその時、回避した礫の一つが壁に当たり、そこがスゥッと消えた。
幻術で壁に見せかけていたのか。今後はそういうトラップも警戒する必要があるのね……。
「お爺ちゃんありがとっ」
わざわざ自分からトラップを解除してくれたお爺ちゃんにお礼を言い、先に進むと丁度祝福があった。
いつものように祝福に触ってセーブして、と。
……で。
「……おや、お客人ですか。珍しいこともあるものです。褪せ人のお方とお見受けしますが、どうされましたか?」
脇に座って本を読んでいる巨人族の男。顔は兜に隠されて分からないが、非常に知性的な人であると分かる。
これまで見かけた巨人族は皆、喋らない人たちだったから、こうも流暢に話せる人がいるとは驚きだ。
そして、だからこそラニ様にお仕え出来ているのだと、その一端を知り納得する。
そう、彼はラニ様の従者の一人。ラニ様の未来に登場した巨人族である。
「俺は雷斗。ラニ様に仕えることになりました新入りです。我が主人の元へ参じるためやって来ました」
「おぉ、貴殿が雷斗殿ですか。ラニ様から話は聞いております。私はイジー。カーリア王家に仕える鍛冶師、そして、ラニ様の軍師を務めております」
俺の言葉にイジーさんは読み掛けの本に栞を挟み閉じる。巨人族サイズの本があるとは。
しかし、イジーさんは鍛冶師だったのか。断片的な記憶では鍛冶をしている光景がなかったため知らなかった。
丁度いいから、後で俺の刀とか見てもらおう。
「ラニ様の元へ向かっているのでしたな。でしたら、一つ忠告させてください。この地はかつて、カーリア王家の領地でした。この先は王家の方々が住まう城館です」
そう言い指で示した方角には大きな城がある。
「レアルカリアの学院が王家を裏切ったとき、カッコウの騎士たちはこの地を襲撃し、それを滅ぼした後に城館に迫りました。不意を突かれたとはいえ、カーリア王家の力は健在で、騎士たちは退けられました。けれど、そこで使われた恐ろしい魔術の罠が、ずっと残ってしまっているのです」
──おぉ、これはスゲェ……。
よく目を凝らして視ると、城の上空には無数の魔法陣が散りばめられている。
城門を基点に扇状に展開されているそれは、城に近づくと自動で発動するようになっているようで、視た感じ隙が無い。
見事な迎撃システムだ。そして純粋にカッコいい……。
「ラニ様はあの絶壁の向こうにある魔術師塔にいらっしゃいます。そこへ向かうためには、カーリア城を越えなければなりません。今もトラップが起動しているはずです、くれぐれも用心されよ」
すぐそばに切り立った崖が見えるが、その高さは五十メートル以上。起伏も少ないからロッククライミングはまず無理だろう。
戦技や魔術などでどうにか登れないかと、イジーさんに許可をもらい目の前で整理する。
「──これは……」
四次元ポケットの如く、様々な種類の武器を見境なく取り出す俺を見て、驚いた様子のイジーさん。
初対面の人だと絶対に驚かれる鉄板ネタです。
「……すみません、少し見させて頂いてもよろしいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」
鍛冶師として血が騒ぐのか、どこか重い雰囲気を漂わせながら取り出した武器を手に取る。
うーむ、一番いいのは飛ぶ系の奴なんだが、さすがに見当たらないなぁ。どれだけ鋭い武器でも、崖に突き刺してのロッククライミングは武器が傷むし。
「ほう、これは“慈悲の短剣”ですか。鋭くも柔らかく、入念に鍛えこまれています。腕の良い鍛冶師ですな。……これは、“夜と炎の剣”? 何故、カーリア家の宝剣を雷斗殿が? こ、これはブライヴのグレートソードに……ラニ様の暗月!? き、貴殿! これらを一体どこで!?」
流石、軍師を務めるだけはある。
早くもこれらの武器の異常さに気付いたイジーさんがどこか慌てた様子で顔を近づけて来た。
と、言ってもなぁ。
「いやぁ、それが俺もよく分からないんですよ。気が付いたら持っていたというか、ポーチの中にあったというか……」
「ふぅむ……」
主人や同僚の得物を持ってるなんて怪しいの一言に尽きるよね。
でも仕方ないじゃん、本当になんで俺のポーチに入ってるのか分からないんだから。
転生特典である可能性が極めて高いけど、それを説明するのもまた問題だ。転生云々はいいんだけど、特典のこととかどう説明すりゃいいんだって感じ。
この世界が漫画やゲームを元にした二次世界なのか、それともなろうみたいな一次創作の世界なのかも分からないし。
しばし考え込んでいたイジーさんは真剣な声で「申し訳ありませんが、ラニ様にこのことをお伝え致します」と告げられた。
「ええ、もちろん構いません。何らかの理由でラニ様の秘剣を手にしていたのなら、返すべきでしょうし」
「ありがとうございます。では、私はこれにて失礼します。次はラニ様の下でお会いしましょう」
そう言い、粒子となって消えるイジーさん。
もし俺の持っているラニ様の剣が本当に主人の物だとしたら、ブライヴのグレートソードとかもそうなのだろうが……アイツちゃんと自分の剣持ってたよな。
本当に意味不明なポーチである。
2
さて、出来れば崖を登ってショートカットしたいところだが、適した魔術などが見当たらないため仕方なく正攻法で行くことにする。
城の迎撃システムはエリア内の地面に触れると、それに魔法陣が反応するという仕組みっぽい。なので一気にトレントで突き進んだ方がいいだろう。
「頼むぞトレント!」
「ヒヒィン!」
景気づけのフローズン・レーズンを与えて、いざ行かん!
走り出すトレントに合わせて上空に魔法陣が浮かび、魔力で構成された槍のようなものが雨のように降って来る。ただ横ではなく縦一列での攻撃なためジグザグで走れば避けられる。
どの魔法陣が起動するのか俺が視て、トレントが対応する。まさに人馬一体となったコンビネーションで正門に辿り着いた。
ねぎらいの言葉を掛けてトレントから降りた俺は、意気揚々と入城したのだが──。
「キッッッモ!」
なんかね、巨大な手の化け物がね、城壁や柱に張り付いてるんだ。
スマ〇ラのマ〇ターハ〇ドのようなものならね、まだ良かったんだけど。両手を横に並べてくっつけたビジュアルで、もう生理的に無理。
蜘蛛とか見るだけでも背筋が粟立つほど苦手なのに、どことなく蜘蛛を彷彿とさせる見た目で、もう背筋がゾクゾクした。
「なにこれマジ無理キモ過ぎ! ここを突破すんの!? いやいやいやいや」
前庭には生い茂った草木やバカデカい輝石などがある。
その上、霧も立ち込めているから至る所に隠れていそう。それこそ真夏の蜘蛛のように。
目を凝らせばそういった障害物や霧なども見通せるんだけど、そうするとこの化け物の姿もよりクリアに視えてしまう。
「と、取りあえず回り込んで進むか」
本当は今すぐ回れ右をしたいところだけどな!
怯える俺の姿が面白いのか、頬をぷにぷにしてくるメリナ。普段なら鬱陶しいと思っただろうが、今の俺には気が紛れるからマジでありがたい。
「あの化け物、目とかあるのか? それとも音に反応してんの?」
壁に張り付いている巨大な手が大蜘蛛だとするなら、地面をウロチョロしてるのは小蜘蛛といったところ。
ビジュアル的に目とかなさそうなのに、時たま動きを止めてジッとこちらを伺う様子があるのマジ止めて欲しい。
弓や魔術で遠距離攻撃? 馬鹿野郎、狙い澄ますと自然とホークアイモードになってドアップで映るんだぞ! 精神的に死ぬわ!
「これで……!」
ポーチから取り出した適当な石を投げ、化け物を誘導する。
そうして一歩一歩着実に進んでいたのだが──。
「うぉおおおおおおお!? おまっ、下からは反則だろッ!」
突然、俺が立っていた場所から巨大な手が出現した! 大口を開けていたかのように広げていた手が閉じるところを寸前でバックステップ!
「マジ焦った……ぁああああああああアアアアァァァッ!」
この騒動を聞きつけ、近くにいた化け物たちが群がってきた!
大小さまざまな手の化け物が指を蠢かして、そこそこのスピードで迫って来るのは控えめに言って地獄!
「マジ無理もう無理おうちかえるうううううううっ!」
早々に来た道を引き返した俺は、トレントに乗ることも忘れて爆速で祝福に戻るのだった。
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある