一階に降りるとブライヴの他に、つばの広い帽子にローブを着た仮面男が立っていた。
仮面の男がセルブスというもう一人の従者なのだろう。
ラニ様の未来にはあまり登場しなかったが、縁の下の力持ち的なポジションなのだろうか。
身を寄せて何やら話し合っていた二人だが、ブライヴが一早く俺に気がついた。
「おお、雷斗か。久しぶりだな。改めて、俺はブライヴ。お前を歓迎する。共に、ラニに仕える者として」
「おう、よろしくな」
固く握手を交わす。手甲を着けている掌は俺の手を軽く覆えるほどの大きさだ。
相変わらずデケェなコイツと思いながら、隣に立つ男にも手を差し出す。
「ラニ様にお仕えさせて頂くことになった雷斗だ。同じ主に仕える者同士、仲良くしよう」
「……君がラニの推薦かね。まあ、話は聞いているよ。私はセルブス。魔術教授だ。田舎者の褪せ人に何を期待しているのかは知らないが、精々、役に立つことを願っているよ」
差し出した手を一瞥しただけのセルブス。
中々、気難しい男のようだ。
「んで、ブライヴのそれは?」
ブライヴの手には手作り感満載の人形があった。
見た目からして恐らくラニ様を模したものだと思うが、正直クオリティが……。
目を輝かせたブライヴは、手芸初心者が頑張って作った感のラニ様人形を見せてくる。
「雷斗も見てくれ。どうだ、俺のラニ人形は。可愛いだろう?」
「……ラニ様にプレゼントするのか?」
「いや、これは俺の私物だ。ラニに会えない時はこれで寂しさを紛らわしている」
「お、おう。正直だなオイ……」
堂々と言われると何も返せねぇよ。
一方でセルブスはラニ様人形を一瞥すると、軽く鼻で笑った。
「この程度の出来で満足するとは、所詮は駄犬か。人形のなんたるかを全く理解していない」
おい、テメェ! ブライヴが傷つくだろうが! 人の悪口は言ってはいけませんってママに教わらなかったのかァ!?
陰湿な野郎め。その性根を叩き直してやる!
聖印を握り締めて、愛のパンチをくれてやろうとした時。
機を制するようにブライヴが口を開いた。
「──悔しいが、その通りだ。今の俺ではラニの良さをすべて引き出せていない。だからこそ、お前のアドバイスを求む。お前以上の人形師を知らないからな」
真剣な眼差しとともにラニ様人形をセルブスに突き出すブライヴ。
ここまで純真な奴だったとは……。寧ろ天然?
しかし、セルブスは人形師なんだな。なら、ラニ様のように人形を使っている理由も分かる。
そう、今目の前にいるセルブスは人形なのだ。
ただラニ様と違うのは、あちらは魂を移して仮初めの肉体として動かしているのに対し、こっちは人形そのものに魔力を宿し、それを媒体に遠隔操作しているみたい。
魔力反応からして、本体はそれほど遠くない場所にいるようだが。
「……生憎、私も暇ではないのだがね。駄犬の道楽に付き合う必要はない──と、言いたいところだが、人形を愛でる気持ちは分からんでもない。特別に、与えよう」
魔術教授セルブスの教えを受ける、大いなる名誉を。
そう尊大に自分を持ち上げる、ある種のナルシスト野郎なセルブスだが、ブライヴ的には気にならないのかパァッと顔を輝かせた。
「ありがたい……! 感謝するセルブス……!」
そして、ふと思い出したように俺へと向き直ると、平静な声で言った。
「あぁ、そうだ。ラニから与えられた任務についてだが、俺はこの後リムグレイブに向かう。永遠の都ノクローンは、リムグレイブの底にあるからな。俺は霧の森の井戸に潜ってみるつもりだ。お前の方でも他に道がないか探してみてくれ」
「……うっす」
伝えるべきことは伝えたのか、再びセルブスに向き直ると人形談義を始めるブライヴ。
任務のことよりラニ様人形の方が大切なのか……。
……。
やっぱ駄犬だわ。
1
情報収集とローデリカたちに逢いに円卓へやって来た俺。
円卓には祝福を経由しないと入れない仕様になっているらしく、一度円卓に足を踏み入れたらどの祝福からでも辿ることが出来る。
ここにやって来るのは二度目で、今回は以前出来なかった挨拶回りとノクローンの情報。そしてローデリカとネフェリ・ルーの様子を見にやって来たわけだ。
「おお、初めての方ですね。円卓にようこそ」
早速、ローデリカたちに会いにいくか、と脇の道に入ろうとした時、不意に声をかけられて思わず肩が跳ね上がった。
壁際に立つ一人の男。使い古したえんじ色の服を着ており、その首には車輪のような大きな枷。
俺と同じく褪せた色の布を目に巻き付けている。
「私はコリン、聖職者です。二本指様が我らに与え給うた力、祈祷を伝えながら黄金律を探求しています。いつか、この円卓に集う誰かがエルデの王となるとき、それを補佐し正しい律の修復と、正しい治世がなされるようにと」
マジか。メッチャ優しいじゃん。
それにしてもまた出てきたな、エルデの王。狭間の地はエルデっていう地名……国名なのかな?
「雷斗です。よろしくお願いします」
「おお、貴方が雷斗殿ですか。なんでも黄金のゴドリックを倒し、大ルーンを手に入れたと」
「あ、もう噂になってるんっすね」
「狭いコミュニティですからね。……時に、二本指様の祈祷を学んで行かれますか? きっと雷斗殿の手助けとなるでしょう」
祈祷術か。今のところあまり世話になっていないが、今後強敵と対峙した時には重要になるかもしれない。
俺の知らない祈祷術はあるかな、とコリンさんが教えてくれる術を聞いてみたが、残念。
どれもラーニング済みのものだった。
「そうですか。雷斗殿は祈祷にも明るいのですね。私の助けが必要になったら何時でも声を掛けてください」
「その時は是非」
コリンさんか。
物腰が低く親しみやすい人柄のようだ。
一階の広間を一望できる場所で腰掛けていた魔術師ロジェールと挨拶を交わし、壁に寄りかかっているエンシャ殿と『貴公、何用だ』のポーズ対決を図り、一ミリも動かないパントマイムの達人である双子の老婆に投げ銭代わりのルーンを送り、一階の廊下にいたネフェリ・ルーから熱烈なハグとキスを受け。
通路の端で一心不乱に剣を鍛える鍛冶師と、その反対側で細々と調霊をしているローデリカを見つけた。
この鍛冶師がヒューグさんなのだろう。ローデリカに調霊の才を見出だしてくれた人。
ただ、その風貌は普通の人とは少し違った。
体の所々には小さな角が生えており、頭には海辺で見掛けるフジツボのようなものが出来ている。
足には枷が嵌められ、鎖が壁に打ち付けられている。まるで囚人のようだ。
「あ、雷斗様! いらしていたんですね」
「やっ、ローデリカ。調子はどう?」
「ヒューグ様から教えて頂けました。調霊のお仕事を。私にどれほどのことが出来るのか分かりませんが、それが少しでも貴方のお役に立つのなら……。そしていつか、接がれた皆を慰めることができるのなら、私はやってみようと思います」
「良い顔になったな。焦らず少しずつ前に進んで行こう。……貴方がヒューグさんですね。ローデリカがお世話になっています」
「……あぁ、アンタがあの娘を連れてきたのか。礼には及ばん。武器を打つしか知らぬ醜い混種のワシに教えを乞うなど、変わった娘だが……真っ直ぐな目がな。どうにも昔世話になった調霊師に似ている。せめてもの恩返しだ」
熱心に剣を叩いていたヒューグは額に浮かんだ汗を一拭いすると、初めて俺の顔を見た。
歳相応の歴史を感じさせる顔をしている。額に寄っている皺と鋭い眼光が、この人の職人気質っぷりを物語っているようだ。
「アンタ、良い面構えだな。挑み、殺す者の顔だ……。まあワシがやることは変わらん。武器を出せ、打ってやる」
「ありがたい! 知り合いのイジーさんからはこれ以上ない出来と言われましたけど、ヒューグさんから見てどうですかね?」
愛刀の長牙と大刀、そして脇差しを見せる。
細部まで丹念に調べるヒューグさんは、感心したような顔で呟いた。
「ほう、イジーの知り合いか。懐かしい名前が出てきたな……。……これは驚いた。ここまで研ぎ澄まされた業物は中々……。まさに殺すための刀だ。お前さん、誰にコイツを?」
「いや、元から持っていた物で。鍛冶師のお世話になったことはまだ」
「そうか……。少しガタついてるな。直してやろう」
「あざーっす!」
手入れの仕方とかも分からないから、その辺のノウハウも教えてもらう。
厳つくて頑固な印象のあるヒューグさんだが、話してみると存外理知的で冗談も通じる御仁だった。
こういう人だからこそローデリカも慕っているのだろう。
これからもローデリカをよろしくお願いします、と言うと渋い鍛冶師は鼻で笑い。
「ワシが知っている限りの知識は与えたが、それをどう活かし研鑽を積むかはあの娘次第だ。ワシの出る幕はない」
どこか優しい声で剣を打つのだった。
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある