※この作品はR-18です。

エルデンリングって何だよ   作:ポチ&タマ

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第20話 第一の従者

 その後、ギデオンのオッサンを始め、円卓にいた褪せ人たちにノクローンへの道を尋ねて回ったが、結果は空振り。

 オッサンは何か知っている感じだったが教えてくれなかった。

 それと、地味にビックリしたのがネフェリ・ルーの言う義父がオッサンであったことか。オッサンを呼び出して「将来の伴侶となる男だ」と紹介された時は、流石に驚いていたな。

 娘はやらんムーヴをかますかと思いきや存外その辺は寛容なのか、そうかの一言で終わったけど。

 

 案の定待たせ過ぎということでペチペチメリナが降臨し、機嫌直しにエビ・タコ・カニの三種串焼きをご馳走する羽目になり。

「最近、私の出番がないのだけれど、もう飽きたのかしら……」と何処か寂しそうな顔で呟くものだから、メリナとも大自然の下で繋がり、ようやく一息をつけて。

 円卓では情報を得られなかったから、情報と言えばこの人だろうと、生き字引きであるスーパー商人のおっちゃんの元を訪ねたのだが、残念なことに旅に出てしまったようで見つからず。

 こうなったらイジーさんに聞こうと彼の元を訪れたのだが。

 

「我らの長年の調査の結果、ノクローンの場所は既に分かっています。リムグレイブの霧の森にある井戸から地下に潜り、見上げた先にそれはあるのですが……どうにも、そこに至る道が見つからない、という訳なのです」

 

 ブライヴもよくやってくれているのですが、今はそこで手詰まりのようですね。

 最初に出会った場所で槌を振るいながらそう答えるイジーさん。

 なるほど、場所は既に分かっているんだけど、そこに通じる道が不明なのね。俺の啓蒙ではラニ様のお言葉の真を捉えることが出来ないとは、なんと情けない……! 

 

「……セルブスなら、何か知っているかもしれませんな」

 

 隠し事の多い男ですが、知恵だけは本物です。

 そのアドバイスに従い、渋々セルブスの元へ向かった。

 奴の拠点はラニ様の魔術師塔の近くにあり、内部のデザインは若干異なるが塔である。魔術師の拠点は塔と相場が決まっているのだろうか。

 

「──ほう、本当に訪ねてくるとはな。世辞も分からぬとは、まったく田舎者には困ったものだ……」

 

 何やら書棚を漁っていたセルブスは俺の姿に気づくと、息を吐くように皮肉を口にする。

 こめかみが引き攣るのを感じるが、ぐっと我慢する。

 その仮面ごと顔を打ち抜きたいところだが、お願いする立場なのだから。抑えて抑えて……。

 

「まあ、来てしまったものは仕方ない。君に一つ、使いを頼もうじゃないか」

 

 散らかった机。その引き出しから小瓶を取り出した。

 青黒く濁った液体で満たされている。

 

「ネフェリという女を探し出し、この薬を飲ませるのだ。それくらいなら、君にもできるだろう?」

 

「ネフェリだと?」

 

 コイツの口から彼女の名が出てきて思わず反応してしまう。

 

「もしや知り合いかね?」

 

「…………いや、風の噂で聞いたことがあるだけだ。ネフェリという女の戦士がいるってな」

 

 何故、ネフェリを探しているのか分からないが、コイツの性根を考えると絶対に碌なことではない。

 咄嗟に嘘を口にするが、セルブスは特に怪しむことなく追求の矛先を下ろした。

 

「まあいい。とにかく、ネフェリという女にその薬を飲ませるのだ。吉報を待っているぞ」

 

 言いたいことを一方的に告げたセルブスは、既に関心がないのか書棚に戻っている。

 怪しい……メチャクチャ怪しい……。

 この薬は一体なんなのか。奴が背を向けているのを確認した俺は、こっそり目隠しをずらして中身を視た──。

 

「……ッ!」

 

 衝動的に小瓶を握り潰さなかった自分を褒めてあげたい……! 

 怪しいこの液体は、飲んだ人を仮死状態にするというものだった。

 何のつもりか知らないが、こんなものをネフェリに……俺のネフェリに飲ませようとするなんて……! よりによって、この俺の手で! 赦さねェ……ッ! 

 同じくラニ様に仕える従者という立場も、ノクローンに至る道を尋ねるという本来の目的も、もはや些事! 

 この愚物は俺の手で始末しなければ……! 

 

 何も知らず吞気に書棚を漁っている愚物に向き直った俺は、静かに愛刀を抜き放ち、その頭をかち割ろうと振り上げ──。

 

『……!』

 

 刀が奴の頭に触れる直前で、メリナに止められた。

 思わず彼女を睨みつけてしまう。

 いつになく真剣な顔のメリナは首を横に振るとジェスチャーを示してきた。

 ジェスチャーそのものの意味は分からないが、何を伝えようとしているのか眼が解析してしまう。

 

 ──ここで殺すのは勿体ない。利用すればいい……? 

 

 彼女の意思を目にし、少しだけ熱していた頭が冷める。……いわばアリバイを掴んでいるわけだから、脅しの材料にはなるか。

 ここで殺すのは確かに時期尚早だ。然るべきタイミングで処すとしよう。

 正常な判断が出来るくらいには頭も冷えた俺が納刀すると、同時にセルブスが振り返る。

 

「ん? まだいたのかね。無駄な話をするつもりはない。私が聞きたいのは遣いの成就、その報告だけだ。分かったらさっさと出て行きたまえ。私は忙しいのだ」

 

 ~~っ! このクソ野郎が……血管がブチ切れそうだぞ俺ァ……! 

 

 血が出るほど拳を握り締めて内に怒りを溜め込むことに成功した俺は、大きく息をする。

 落ち着け、コイツは人形だ。セルブスの本体を見つけるまで、我慢するんだ俺……。

 

「おいおい、俺はまだ了承してねぇよ。交換条件だ、ノクローンについて知ってることを教えな」

 

「……ほう、この私を相手に交渉をしようというのかね。私は君に頼まなくても支障はないのだが」

 

「アンタが探してるのって、ネフェリ・ルーだろ? 彼女の居場所なら心当たりあるんだがなァ」

 

「ふむ……まあいいだろう。そろそろ頃合いだ、特別に教えてやろう」

 

 ハッ、負け惜しみが。

 

「リムグレイブの地にセレンという輝石魔術師がいる。あれが学院を追放された時に世話をしてやった縁でな。彼女ならお前の探し物の答えを持ってるだろう。紹介状を書いてやる、詳しい話は彼女に聞くといい」

 

 そう言い、適当な紙にサラサラっと筆を走らせたセルブスは、それに封をすると投げて寄越してきた。

 

「確かに。じゃあ、俺も心当たりがある場所に行ってくるよ」

 

「ふん。さっさと行きたまえ」

 

 すっかりヘソを曲げた様子のセルブス。

 その様子に少しばかり溜飲が下るのを感じながら、セレンという魔術師を探しにリムグレイブへ向かうのだった。

 

 

 

 1

 

 

 

「おーい、そこのアンタ! 助けておくれよー!」

 

 セレンの場所まで書かれている、もはやチートアイテムそのものに思えてきた地図を見ながらトレントを走らせていると、不意に声が聞こえてきた。

 足を止めて周囲を見回すが人影はない、が。奇妙な猿がいる。

 服を着て帽子を被った小さな猿だ。木に擬態する魔術を掛けており、踞った姿勢で俺の方を見ている。

 今のはコイツが? まあ、今さら猿が喋った程度で驚かないけど……。

 木に化けて通り掛かった人を脅かして遊んでると思い、軽く鞘で小突いて擬態を解いた。

 

「いてっ! 何するんだい、乱暴なんて酷いじゃないか!」

 

「木に化けて脅かそうって寸法だろ? 残念だけど、俺には効かないよ」

 

「……ん? ああ、そうか。オイラ、魔法で木にされてたんだっけ……アンタはその魔法を壊してくれたんだな、ありがとう」

 

「ん? どういうこと?」

 

 自分で擬態してたんじゃないのか? 

 

「オイラはボック。洞窟の皆に嫌われて追い出されて……挙げ句、木にされてたんだ。だからホント、助かったよ」

 

 姿勢を正した猿は、そう言うとペコリと頭を下げてきた。

 マジか。群れで生きる動物も時に迫害することがあるって聞いたことがあるけど……。

 

「でも、ごめんよ……。オイラ、洞窟を追い出された時に大事な物も全部取られっちゃって。だから、こんなお礼しか出来ないんだ。ホントこめんよ……」

 

 そう言うとボックは小さなキノコを差し出してきた。申し訳なさそうに、本当に申し訳なさそうに。

 正直、助けたつもりがなくその実感も皆無な俺は、茫然とキノコを受け取る。 

 

「けど! 少し時間をもらえるなら、こっそり洞窟に戻って大事な物を取り返してくるよ。そうすればオイラ、きっとあんたの役に立てると思うんだよ!」

 

 ボックの勢いは留まらず、こちらの話を聞こうともせずに恩返しを続けようとしている。

 流石にそこまでしてもらうつもりはないし、恩返しにしてはちょいと強引過ぎだ。

 まずは落ち着いてこちらの話を聞くように促そうとするが、数歩進んだボックは立ち止まったかと思うと、唐突にしゃがみ込む。

 

「おい……?」

 

「あ、ああ、ちょっと待っておくれよ……。やっぱり……オイラ、あいつらが怖いから、心の準備が必要なんだ……足がすくんじまうんだ。あいつらと、あの洞窟のことを考えると……」

 

 体を震わせ縮込まりながら、必死に自分の心を奮い立たせようとするボック。

 そこは彼にとってトラウマに近いのかもしれない。

 嫌われ苛めていた奴らの所に自ら向かう。それも、取るに足らない出来事だと思っている俺に恩を返すため……。

 

「……」

 

 ボックを指差して何かを伝えようとしているメリナに頷き返す。

 さっきまでは恩の押し売りのようであまり印象が良くなかったが、こんな姿を見せられて、何も感じないほど落ちぶれちゃいねェ……! 

 

「よっと」

 

 踞ってるボックを片手で抱き上げてトレントに騎乗し、俺の前に下ろす。後ろはメリナの席だから勘弁な。

 

「わわっ! あ、あの、一体なにを……」

 

「大事なもん、取り返しに行くんだろ。乗り掛かった船だ、俺も付き合ってやるよ」

 

 一人で行かせたら心配で任務に集中出来やしない。

 さっさと取られたもん取り返して、優しいコイツに茹でエビでも食べさせてやろう。

 

「そんな! アンタに助けられたのに、そんなことまで付き合わせるなんて……!」

 

「怖いんだろ、そいつらに会うの。独りよりはマシだと思うぜ?」

 

 悪いけどこう見えて頑固でね。一度決めたことは大体曲げないのよ。

 ていうことで、道案内よろしく。

 

「──ぅ、うぅ……アンタは、なんてイイ人なんだ……オイラ……オイラ……」

 

 肩を震わせるボックの頭を帽子越しに撫でるメリナ。

 彼が泣き止むまで、しばらくトレントを走らせるのだった。

 

 

 

 2

 

 

 

 

「お前の元仲間……なんつーか、中々な蛮族だな」

 

「お恥ずかしい限りだよ……」

 

 ボックの案内の元、彼の仲間が住まう洞窟へ訪れた俺たちだが、なんて言うか予想の斜め上を超えていた。

 てっきりジャイ○ンみたいな親玉が居て、その手下であるス○夫たちが大勢いるのかと思いきや、全員ジャイアンだった。いや、この場合は下っ腹海賊とかの方が適切か? 

 入り口には不良ヤンキーのようにウンコ座りしている小鬼のようなチビども。俺を見るや否や「ヒャッハー! 獲物だー!」と襲い掛かり、ボックを見るや否や「弱虫ボックがいるぞ! ヒーハー!」と襲い掛かる。

 言葉を交わす知性はあるのに挟撃や囲むといった戦術はなく、バカ正直に正面から。獣でも戦術と言うものを知ってるぞと呆れたものだ。

 

 ヘイト的には人間の俺よりボックを狙っていて、動きも読み易かったから飛び込んできたところをカウンターで刎ねた。

 峰打ちでも良かったけどコイツらを生かしておいても良いことなさそうだったし、ボックもその辺は分かってくれていて。

 それでも悲しそうな顔を止めなかった彼に、改めて優しい猿なのだと思ったね。

 

 で、子分が全員そんな感じで、肝心な親分はというと。

 

「ギャハハハハハ! 泣き虫ボックが戻ってきやがった!」

 

「どうやって戻ってきたか知らねえが丁度いい! そこの人間をぶっ殺したら、また俺らの手下にしてやるよ!」

 

 と、現在小物ムーブをかましております。

 親分は双子のようで、獣のような頭を持つ大型の個体だ。

 親分の甘言にボックは一瞬体を震わせたが、護身用に持たせたダガーを強く握り締めると、声高に叫んだ。

 

「い、イヤだ! オイラの、オイラの針を返せ……!」

 

 反抗されるとは思っていなかったのか、キョトンとした顔の親分たち。

 強く握り込んでいる余り、カタカタとダガーを震わせるボックの肩を優しく叩く。

 

「よく言ったボック」

 

 コイツは今、自分の中の恐怖に打ち勝った。

 こんなカッコいい奴、そうそう居ない。

 お前は凄い。誇っていいボック。

 

「後は俺に任せな」

 

「こ、コイ──」

 

「喋んなボケナス。息が臭ぇんだよ」

 

 喚き散らかそうとした親分の一人に猟犬ステップで間合いを詰めると、その腹に体重を乗せた横蹴り。

 口から零れた汚い唾を斜め前に踏み込んで回避し、そのまま旋回。振り返り際の水平斬りで胴体を真っ二つにしてやった。

 続いて驚いた顔のまま硬直しているもう一体に向かって猟犬ステップ。

 瞬時に間合いを殺すと同時に抜き放った脇差しで、奴の眉間を突き刺す。が、勢いが弱かったのか刀身の半ばまでしか刺さらなかった。

 

「ちぇええええええいッ!」

 

 腹の底から吐き出す裂帛の声とともに、飛び退きながら反した峰で脇差しの柄を叩く。

 半ばまで埋没していた刀身が根元──(はばき)まで埋まり、奴の目が裏返った。

 残心を取り、動かないことを確認してから、血振るいして納刀する。

 ……これで、殲滅完了かな? 

 

「す、すごいや……あの親分たちがあっという間に……」

 

「おーい、ボック。探し物はこれか?」

 

 側にあった宝箱から小さな縫い針を見つけた。

 縫い針を受け取ったボックは大切そうに針を撫でる。

 

「オイラの母さまは、お針子でさ……これは母さまの形見なんだ。オイラ、母さまみたいになりたくてさ……」

 

 お母さんの形見か。そりゃ大切な物だよな……くそ、泣けてくるぜ。

 何を思ったのか、針を眺めていたボックは神妙な面持ちで俺に向き直ると、小さく頭を下げてきた。

 

「アンタ──いや、ご主人さま! お願いです、お針子として貴方にお仕えさせてください! まだ、ゼロから仕立てることは出来ませんが、衣装の調整なら何なりとお申し付けくださいませ!」

 

「マジか」

 

 まさか俺に仕えたいなんて言い出すとは思わなかった。しかし、ふむ……。

 ボックの人となりは大体分かったし、服の仕立ては正直かなり有り難い。

 俺の持ってる服や防具の大半がオーダーメイドだから、微妙にサイズが合わなかったりする。もはや普段着代わりとなっている白備えの鎧は奇跡的にサイズが同じだけど、その他はぶかぶかだったり逆にキツ過ぎる物ばかり。

 サイズ調整が出来るなら、是非とも頼みたい。

 

「ほ、本当ですか!? あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 むしろ俺の方から頼みたいと伝えると、ボックは俺の手を取り、何度も頭を下げるのだった。

エルデンリングはどこまで知っている?

  • ストーリー考察含めて大体熟知している
  • 本編クリア済だが難しくてよく分からん
  • 本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
  • 大雑把な概要だけ知ってる
  • タイトルは聞いたことがある
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