「我が弟子よ。まずは理解することだ。魔術に関してお前はひよっ子だ。おそろしく未熟で、まだ歩くこともできない。だが、自らの未熟を知る者だけが、魔術師になる」
さあ、授業を始めようか。と言って早速教鞭を取ってくださるセレン師匠。
だが、まずは報告しなければならない。
「師匠! その前に、一ついいですか?」
「ふむ、なんだ我が弟子」
「見ていただきたいものがありますので、少し外へお願いします」
魔術そのものは扱えることを報告しなければならない。その後、セレン師匠に師事した理由も。
折角披露するのだから、ここはお気に入りのアズール砲で驚かそうと思ったのだが、師匠は首を横に振った。
「うむ――と、言いたいところだが、残念ながら退っ引きならない事情でな。この地下室から出られないんだ。ここでは無理なのか?」
「うーん、分かりました」
アズール砲をお見せできないのは残念だが、俺が魔術を扱えることを示せれば何でもいい。
セレン師匠は輝石魔術を扱うから、それに準するものの方が分かり易いだろう。
この部屋だとセレン師匠に被弾する可能性があるから、祝福のある大広間で披露することに。そこならセレン師匠も行動範囲内だから大丈夫と言う。
師匠とボックにはカボチャ頭の横に移動してもらい、皆が見守る中ポーチから【アズールの輝石杖】を取り出す。
「……!? どういうことだ……何故、我が弟子がアズール師の――」
もはやお馴染みとなった驚きの声を耳にしながら、取りあえず輝石魔術の『ほうき星』と『流星群』、ついでに『ハイマの大槌』を披露する。
魔力で出来た彗星や流星が壁の一部を穿ち、青白い光を放つ大槌が地面を砕く。
その様子を見ていたセレン師匠は、顎に手を当てた考えるポーズを続けながら、地に響くような重い声で言った。
「――どういうことか、説明してもらおうか、我が弟子よ」
「アッハイ」
怒られるようなことをした訳ではないのに、自然と正座してしまうマイボディ。
見ればボックはカボチャ頭と一緒に師匠から離れた場所へ避難していた。危機感に鋭いのは良いことだけど、ご主人さまを見捨てないで欲しかったな。
祝福の側にいるメリナはジト目を向けている。そういえばメリナって身内以外にはあまり姿を見せないよね。
なんて、現実逃避をしていると師匠の尋問が始まった。
「まずは、その杖から聞こうか。それは、最初の輝石魔術師。私の師の一人であるアズール師の杖だ。我が弟子よ、見えたのか? アズール師に」
「いいえ、出会っていません! この杖は気付いたらポーチの中にあったものです!」
「ふむ? 奇妙なことを言うな、我が弟子よ。まあ、それは後で聞くとして……先の魔術は輝石魔術の『ほうき星』に『流星群』、『ハイマの大槌』。これらは輝石魔術の中でも上位に部類されるものだが……」
すでに輝石魔術を修めておきながら、この私に弟子入りするとは。どういう了見か聞こうじゃないか、我が弟子よ。
そう言って杖を取り出す師匠。その体から青白い魔力がオーラとなって立ち昇り、今にも呪文を唱えそうなその姿はどう見ても激おこですよねそうですよね分かります!
「説明します! 説明しますから杖仕舞って師匠!」
「……手短にな」
しぶしぶといった様子で杖を下ろす師匠に安堵する。
説明するだけのはずなのに、何故こうも疲れるのだろうか……。
「えーっとですね。実は俺――」
これで何度目になるか分からない身の上話を聞かせ、その証拠としてポーチの中身を見せる。
始めは胡散臭そうな雰囲気を纏いながら聞いていた師匠だが、実際に高名な魔術師の杖やデミゴッドが持つ武器などを手に取ると、態度を改めてくれた。
「ふむ……俄には信じがたいが、確かにこれはルーサット師の杖。黄金律に支配された世界とはいえ、一体どのような理由があって我が弟子の元に……。実に興味深い」
「信じてくれて何よりッス。魔術や祈祷も多くは体が覚えてるんですけど、肝心の知識の方が全然でして」
「それで一から学びたいと、そういうことだな」
「です」
「なるほどな……」
得心がいったように大きく頷く師匠。
自室に戻った彼女は部屋の隅に置いてあったボードを引っ張り出した。
「よろしい。では一からみっちりと教えようではないか。魔術の何たるかを」
1
師匠の話によると、魔術は神マリカが黄金律を掲げる前から存在する最古の神秘らしい。
全ての生物が生まれながら持つ力――魔力を対価に世界の理を書き換え現実となす、それが魔術。
エルデンリングで世界の法則が書き換えられた時、魔術の基盤にはノータッチだったようだ。
でなければ今頃、魔術は失われた技術体系となり我々魔術師は存続しなかっただろうと語る。
「故に、魔術とは学問でもある。現在まで多くの魔術が生まれたが、これらを辿ると魔術の歴史が見えてくる。その辺りも面白いものだが、またの機会に教授するとしよう」
「はい師匠!」
「うむ。その時を楽しみにしていたまえ。時に、我が弟子よ。魔術は何種類に分別されていると思う?」
えーと、輝石魔術に重力魔術、冷気に溶岩、火……あ、これは祈祷だった。
「えっと、六つくらいですか?」
「答えはその倍だ。魔術の歴史とは人の歴史。一番新しい体系だとカーリア王家の魔術だな」
「え? じゃあ、これまでにない種類の魔術を作ったら新たな系統になるんですか?」
「そうなるな。そして、一般的な魔術師は一系統の魔術しか扱えない。何故か分かるか?」
……適性の問題か?
「適性も多少関わるだろうが、重要なのは知力にある。我が弟子よ、これを見よ」
書棚から一本の巻物を取り出す師匠。
羊皮紙のそれには魔法陣がびっしりと描かれている。
「それは『ほうき星』の魔術式だ。先ほどお前が発動したものだな。これは上級輝石魔術のため少々複雑だが、まあ大抵の魔術はこれに近しい術式で構築されている。それが何を意味するか、分かるか? 我が弟子よ」
「純粋に覚えるのが大変?」
英語みたいに文法とか、数学の算式のようなものがあるのだろうけど、これを丸暗記するのはかなり骨が折れるだろう。
ああ、そうか。だから一系統しか扱えない――いや、扱わないんだな。
「その通り。私が在籍していたレアルカリア学院では、最低でも二つ覚えることが条件だった。大抵の者は三つ以上習得していたがな」
ちなみにこの輝石頭は、卓越した女性の魔術学徒に与えられる最高位の輝石頭だ。お前の師は凄いのだぞ。と得意げに語る師匠可愛い。
でも息苦しくないのだろうか。ていうか頭重そう。
外さないのですか、と尋ねると師匠は大きく首を振る。
「レアルカリアの魔術師は一枚岩ではなくてね。素顔を晒すことは危険に繋がるのだ。私はもう門下生ではないが、これを被っているのが当たり前の生活を送っているからな。今更脱ごうとは思わん」
「へー。でも、師匠の素顔見てみたいです!」
さっき透視で視ちゃったけど、ちゃんと合意の上で見たい!
俺の熱意にたじろぐ師匠は、腕を組んだまま顔を背けた。
「そう易々と見せるほど安くない。私の素顔を見た者は片手で数えるほど少ないのだからな」
だが、お前が一人前の魔術師になった時、褒美として見せてやろう。
どこか照れが混じった声でそう呟くのだ師匠であった。
2
魔術の基礎知識をみっちり叩き込まれた俺。
師匠の説明は理路整然としていて分かりやすく、こちらの疑問にも的確に答えてくれるから、魔術初心者の俺でも何とか理解できた。
まず行ったのは、俺が扱える魔術の把握。
記憶がないとはいえ、魔術を扱っていたのであれば系統別で覚えていたはずだ、という言葉に従い、使用できる魔術を記録して系統別に分けてみた。
その結果【輝石魔術】や【重力魔術】、【カーリア王家の魔術】は最上級まで網羅しており、その他の【夜の魔術】や【冷気の魔術】、【溶岩の魔術】などはさわり程度。
他にも【結晶人の魔術】に【茨の魔術】、【死の魔術】などがあるらしいが、そちらはまったく覚えていなかった。
覚えていない魔術が存在することに安堵して、記憶を失う前の俺も完璧超人ではないのだなと感じ、少し安心した。
さて、師匠の話によると一般的な魔術師だと覚えている魔術は精々二、三個程度。優秀な魔術師でも四、五個で。自称超優秀な師匠でも六つまでしか記憶できないという。
しかし、それは一度に覚えていられる魔術の数であって、扱える魔術は別とのことだ。
師匠曰く、あの羊皮紙にびっしりと描かれた魔術式を完璧に理解して、脳内で細部まで再現出来て始めて魔術は発動するらしい。
だから違う魔術を扱うには、再度完璧に魔術式を暗記し直さないといけない。術式の理解より暗記の方が大変だな……。
だが、何故か俺は術式すら理解していないのに魔術を扱うことが出来る。当然脳裏に魔術式を浮かべるなんて作業はしたことない。
師匠の仮説では、祈祷術も感覚で扱えることから、肉体を通り越して魂に染み込むまで魔術を扱ったのではないかという。それこそ数千、数万単位で。
だとしたら、記憶を失う前のキミは生まれついての魔術師だな。とは師匠の言葉だが、そこまで来るともはや変態じゃん。
「覚えておくがいい、我が弟子よ。輝石には星の生命の残滓、その力が宿っているのだ。故に輝石の魔術とは、星と、その生命の探究なのである。今や、それを忘れた魔術師もどきばかりだからな」
なるほど、FFで言うところのライフストリームとマテリアか。
難しい話は分かりやすい例えで翻訳するに限る。教授もよくゲームで例えてたなぁ。
大学の名物教授の授業風景を思い出しながら、師匠の授業を翻訳していく。
「今日の授業はここまでにするとしよう」
「ありがとうございました!」
「うむ。時に、ラダーン祭りというのを知っているか、我が弟子よ」
ラダーンというと、ラニ様の運命を堰き止めてる人だっけ。
確か最強のデミゴッドと呼ばれた人物であると記憶しているが。
ていうか、今更ながら気付いたんだけだ、ラニ様とも血縁関係なんだよな。
肉体がないラニ様はまだしも、ラダーンって何歳なんだ?
「ケイリッドの南東にある赤獅子城、そこで戦祭りが行われるらしい。どうもラダーンに誉れある死を与えるために開催されると聞いたが、参加してみてはどうだ?」
黒板消しのようなものでボードを消し消しする師匠。細かく手を動かすタイプなんですね。
「前にも話したが、ラダーンが死ねば星とともにラニの運命も動き出す。ノクローンに続く道が拓けるやもしれんぞ?」
セレン師匠の助言により、新たな目的地が定まるのだった。
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある