生きている壺のアレキサンダーと別れた後。
聖人橋でやたらと頭を地面や手にした槌に打ち付け、自傷行為に走るカボチャ頭に、【回帰性原理】という状態異常を治す祈祷術を掛けるも無視され。
【呼び水の村】で明らかに幽霊だと分かる、船を漕ぐお婆ちゃんを見なかったことにして迂回し。
淡々と地図を見ながら東に向かっていると、段々と景色が変わっていくのを感じた。
瑞々しい木々や生い茂った草が枯れ、これまで以上に荒涼とした景色が広がっていく。
「あ、教会だ。……【燻り教会】か。本当に燻ってるな……」
名前の通り、教会全体が燻っている。石造りのため燃えていないだけで、外にいても熱が伝わってくるほどの温度だ。
中に祝福があるようだけど、流石にここは考え物だ。
取りあえず、此処の祝福は一端スルーして先に進むと石垣が見えるのだが、燻り教会のように燻っている。
トレントの得意技である二段ジャンプで触れないように石垣を越え、その先の祝福に触れて一段落。
それにしても、異様な土地だ此処は……。
爛れたような紅い空がどこまでも続き、地面も赤く染まっていて、土壌汚染が凄まじいことになっている。
事前にメリナから聞いていたが、目隠しを取らなくても解る。此処は腐敗に侵された土地なのだと。
腐敗という名の菌がここら一帯に広まっている。腐敗を菌と称したのは、その性質がカビなどの菌類に近いから。
どうやら澱んだ水に生息していて、触れたものに感染していくようだが、これ以上視ると情報量で頭がバァンしてしまうため、思考をカットする。
「ここがケイリッドですか? なんだか、怖いところですね……」
「破砕戦争の頃、将軍ラダーンと戦ったマレニアが、内に宿していた腐敗を解放した。その結果がこれよ」
「マレニア……」
マレニアもマリカの子供だよな。こんな菌を大量に内に貯めていたとは、普通に人体にも根付くぞコレ。
謂わば土地を一つ汚染するほどの人食いバクテリアを宿していたことになるのだから、きっとマレニア本人は菌と親和性があるんだろう。
全身がカビだらけの化け物を彷彿とさせるが、それにしても規模が凄まじい。神の子ヤベェ……。
そんなマレニアと引き分けたデミゴッドに今から挑もうというのだから、俺の身もヤバい。
「ご、ご主人さま、見てくださいアレ!」
「ありゃ、鴉か? 突然変異にしちゃ異様過ぎるだろ……」
枯れ木の枝に止まっているのは鴉と思わしき漆黒の鳥なのだが、見た目からしてヤバい。
異様に大きいことはこの際置いておいて、まず目につくのは肥大した顔だ。シュッとした首に対し一回りも二回りも大きい。
当然嘴もそれに見合った大きさで、通常のシャープなそれでなく正三角形に近い形をしている。
顔だけデカイ鴉とか気持ち悪っ! そもそも飛べるのかアレ……。
「腐敗に侵されたカラスね」
「まんまゾンビじゃん」
リエーニエとかでも【死に生きる者】というゾンビを見かけたけど、あれとは根本からして在り方が違う。
あっちは黄金樹に還ることが出来なかった死者なのに対し、こっちは菌に感染した動く死人。バイオのゾンビに近い……っていうか、まんまラスアスか。
明後日の方角を見ていた巨大鴉だが、俺たちの視線に気付いたのかこっちに顔を向けてくる。
そして、大きく翼を羽ばたかせると、こっちに向かって飛んで来た!
「ギャアアアアア、こっち来たアアア! ていうか飛べるんかいお前!?」
「ヒイイイイィ! ご、ご主人さまぁぁー!」
「カラスだから飛べるに決まっているでしょう」
情けなくもボックと抱き合い体を震わせていると、前に踊り出たメリナが鴉を撃退してくれた。め、メリナ様ァアアアア!
頼もしい巫女様の姿に思わず抱きつく俺。
困ったような顔で見下ろしてるけど拒まないメリナさん好きっ!
「意外ね。貴方にも苦手なものがあったなんて」
「グロい系は大丈夫だけどキモい系は無理なんだよぉ!」
「あぁ、そういえばユビムシも苦手だったわね。貴方にしては可愛らしいところがあるじゃない」
クスッと微笑むメリナさんだが嫌なことを思い出させないで!
ユビムシとはカーリア城に居た手の化け物のことだ。奴らを回避するため態々切り立った崖をショートカットする羽目になった。
この世界は悍ましい生き物が蔓延っているのだと、改めて突き付けられた気分だよ……。
「ご、ご主人様……! あそこに大きな犬たちが……!」
「きんめぇええええええエエエェッ!」
1
巨大鴉のように頭だけ肥大化して前足が退化した、ティラノサウルス擬きの犬を【エーゴンの大弓】で射抜く。
近づかれる前に殺せばいいという簡単な真実に気付いた俺は、メイン武器を【エーゴンの大弓】にして目に映る巨大キモ生物を射殺しながら、牛歩のように遅く、しかし確実に目的地に向かって進む。
弓などの遠距離武器を使用すると自然とホークアイモードになって、鴉や犬の顔がドアップになるが、このくらいならまだ耐えられる。ユビムシ? あれは例外です。
地図を見ると戦祭りが開かれる【赤獅子城】は南東の外れにあるため、この分だと明日には到着する見込みだ。それまでに終わってなければいいけど。
今のところ見掛けたのは巨大鴉と犬のキモ生物と、干からびていたり腐っていたりするゾンビ犬。元々この地で暮らしていたと思われる普通のゾンビ。
そして、赤獅子城の兵士たちだ。
ただ、この兵士たちもゾンビなのだが、他とは違って会話が可能なほど知力と理性がある。
対話で戦闘を回避しようとしたが、俺たちが戦祭り参加希望者であることを知ると「我らは、誉れ高き、ラダーン将軍の兵……。将軍の敵は、我らの敵……。いざ……」と語り剣を取ったのだ。
ゾンビになっても将に仕え続ける、その忠道に感銘を受けた俺は、メリナたちの助力を得ずに自らの手で終止符を打った。
倒された兵士たちは皆将軍のことを案じていて、とある兵士は「将軍を、頼みます……」と敵である俺の手を取り息を引き取った。
ここまで部下たちから慕われているラダーン将軍。彼が敵でなければ色々と話を聞いてみたかったが、刃を交えなければならない運命に感慨深いものを感じる。
それと、なんかエビとムカデを合体させたような亜人らしき生物もいた。
群れで行動する種族のようで、道中見つけた【ケイリッド街道南】の宿場跡地のような場所に多く生息しているのだが、驚いたことにあの見た目で意思の疎通が可能なのだ。
例によって地下室を見つけたから、お宝だー!と飛び込んでみたものの、そこは彼らの巣でして。
フジツボのような形をした赤白い菌を生やした石造りの棺が、所狭しに並んでいた。
宝箱はなく、そこに居たのは幼体の亜人たち。侵入者の姿に幼体たちはキーキー鳴きながら動き回り、その光景にメリナが青ざめた顔で霊体化し、ボックは俺の足にしがみついて離れない状態。
俺も思わず火の魔術や祈祷で燃やし尽くそうかと思ったが、彼らの面倒を見ていたであろう成体の亜人が、持っていた武器で地面に文字を書いたことで免れる結果となった。
『こどもたち、ころさないで』
文字を書けるほどの知能があることに驚き、子供たちを背に庇っている成体とコミュニケーションを図ってみた所、彼らが腐敗の眷属であることを知る。
敵対しないのであれば争う理由はないことを伝えると、成体の亜人はホッとしたように頭を下げた。
お宝ゲットしたら即去るつもりだったため、外の亜人たちも殺さないでおいて良かったと、つくづく思う。
その後、俺を追って慌ててやって来た外のヒトたちとも改めてコミュニケーションを取り、この地にいる腐敗の眷属とは戦わないことを約束した。
この時、今度からは筆談用のスクロールとペンも持ち歩くことを決めたね。
友の証しとして【腐敗眷属の歓喜】というタリスマンを渡された俺は、お礼として【獣肉の塊】を十個ほどプレゼント。
そうして腐敗の眷属たちに見送られながら、改めて赤獅子城に向かっているのだが、本当にこの地はヤバイわ。
血を滴らせたキノコや、内臓のような実を結ぶ枯れ木、フジツボのような形をした赤白いカビが至る所に生えていて、見た目からしてかなりグロい。
俺は集合体恐怖症ではないけど、睡蓮の実とかは普通に鳥肌立つし、なまじ眼が良い分まともにピントを合わせると精神的に来るものがある。集合体恐怖症を患っている人にとっては正しく地獄だね。
遠目に物見櫓が見えるため城が近いと推測した俺は、取りあえず櫓を目印にケイリッドを行く。
霊体化したメリナに索敵してもらい、見つけた巨大鴉と犬は【エーゴンの大弓】で一方的に射殺し、ノーマルゾンビやゾンビ犬はボックとのタッグで殺し、ラダーン将軍の兵士たちは哀悼の意を込めながら介錯し、襲い掛かる腐敗の眷属たちには【腐敗眷属の歓喜】を印籠の如く突きつけて謝罪され。
そんなこんなで櫓近くまで前進していた時だった。
「ギャオオオオオオオオォォォ──!」
菌で覆われた岩場だと思っていた背景が、突然動き出したのだ。
それは、体全体を白い菌糸に覆われ、皮膚や鱗から血が滲んでズタズタに爛れた竜。
目隠し越しに解析した俺の眼には『腐りゆくエグズキス』という名と、『竜餐を行う人間に対し、強い憎しみを抱いている』という情報が読み解ける。
竜餐ってなんだ? という疑問はあるが、それ以上に、この竜に対して深い慈しみと悲しみを抱いた。
この感じは、ラニ様のところに居た竜──アデューラに抱いた感情に似ている。
「……」
武器を構えるメリナたちを制して、目隠しを取る。
それまで警戒心を露わに威嚇していたエグズキスだが、俺の素顔を見るや動きを止めた。
アギールの時のように顔を近づけて俺の眼をジッと見つめてきたかと思うと、広げていた翼を折り畳み、その巨体を縮こませた。この行動もアギールと同じだ……。
「竜が、伏せた……? これって……」
「まるで、忠誠を誓う騎士のようね。御子なだけあるわ。記憶がなくても」
この光景に驚きを隠せないボック。
対して、アデューラのことがあったからかメリナは平静としている。いや、アデューラの時も平然としてたっけ?
「そういえば、メリナは俺の正体を知ってるんだよな。そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
メリナと出会った時、まだ知る時ではないと言って教えてくれなかった。
あの時はこの世界を歩き始めたばかりで、俺の素性について気を配るほどの余裕がなかったのと、特に知らなくても問題はなかったから敢えて先延ばしにしていた。
けれど、流石に二度もこんな事態に陥ったら、そりゃ気になるわ。
「え、なに? 竜餐を広めた王をとっちめて? それと、腐った体を何とかしてほしい? いや、そんなこと言われてもな……」
低い唸り声を上げて何かを訴えかけて来るエグズギス。
あらゆるものを解析するこの眼は、感情を読み解き、読心機能まで付いている。言葉が分からなくとも十全に理解出来てしまった。
とは言っても、竜餐って何なのかそもそも知らないし、王とやらも誰だか分からんし。腐った体は……視たところ体に蓄積した菌を取り除けば何とかなるっぽいけど、キミの場合だと細胞レベルで菌に侵されてるから、ちょっとやそっとじゃ治せないぞコレ……まあ、やってみるけど。
取りあえずやってみるけど無理だったら許して、と伝えて【聖人橋】にいたカボチャ頭に使った祈祷術【回帰性原理】を発動してみる。
戦技のように体が勝手に動きをトレース。スイッチを入れるように水平に伸ばした腕を上下に入れ替えると、黄金の魔法陣が足元に展開され──。
「グギャァアアアアアアアアァァァ──!」
「んおっ!? っと、これは……」
魔力量によって規模が変わるのか、体感的にほとんどの魔力を費やして【回帰性原理】を発動させると、巨体を誇る竜が魔法陣の中に収まった。
黄金の魔法陣が一層光り輝くと同時に、エグズキスを蝕んでいた菌糸が解けるように溶け、全身から血が吹き出る。
夥しい量の血で色はどす黒く、それがエグズキスの体内に蓄積していた菌であるのは一目で分かった。
想像を絶するほどの痛みなのだろう。悲痛な声で叫ぶエグズキスに直ぐ様、回復の祈祷を施す。
「お、おぉ? これが、MP切れか……」
祈祷術【黄金樹の回復】により失われた生命力を最大限まで回復させると同時に、軽い眩暈や吐き気に襲われた。
どうやら今のでMPがすっからかんになったようだ。
だが、そこまでした甲斐があった。
ぐずぐずに化膿していた傷が無くなり、エグズキスの目に力強い光が宿る。
「──ふぅ……随分と印象変わったなぁ」
MPを回復する【青雫の聖杯瓶】を飲んで一息つけた後、改めて目の前の竜を見上げる。
元々、灰色だったようで色合い的には大きな変化はないが、体表を覆っていた繊毛のような菌が無くなり、かなりスマートな見た目になった。
皮膜も鮮やかな緋色でコントラストが素晴らしい。
そして、腐り果てていたエグズキスは治すことが出来たのに、何故【聖人橋】のカボチャ頭には効かなかったんだろうか……。
「グルルルルルル」
「はいはい、どういたしまして」
嬉しそうに体を動かしていたエグズキス。人懐っこい動物のように頭を擦りつけてくる。
え? これで竜餐をしようとする人間たちをもっとぶっ殺せる? よく分らんけど、まあ頑張れ!
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある