※この作品はR-18です。

エルデンリングって何だよ   作:ポチ&タマ

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第27話 星砕きのラダーン

 転移した先は、辺り一面が赤い砂丘。

 破砕戦争の名残だろう。夥しい量の矢と剣が地面に突き刺さっており、その様はまるで墓標のようだ。

 吹き荒ぶ風が砂を巻き上げる中、鋭い殺気が俺の体を射貫く──! 

 

「うぉおおおお!?」

 

 反射的に体を投げ出すようにして回避出来たのは奇跡だった。

 紫色の重力場を纏った巨大な矢──いや、槍が、今し方立っていた場所を貫き轟音を轟かせて砂浜に突き刺さった。

 槍が飛んできた方向を見ると、砂丘の彼方に大きな人影。

 遠目からでも分かるほど巨大な弓を構えている、獅子を彷彿とさせる甲冑を身に纏った巨漢。

 巨躯の背中には多くの槍が突き刺さっており、破砕戦争の名残を生々しく物語っている。

 そんな赤髪を靡かせる巨漢を支えるのは、一頭の痩せた馬。

 あまりにもアンバランスな組み合わせだが、俺の眼には重力魔術で負荷を軽減している様子が視て取れた。

 やはり、本来はとても優しい御仁なのだろう。

 

 俺よりも先に戦場へ飛んだ人たちは、巨漢──ラダーンの元に辿り着くことすら出来ず、地に膝をつけている。

 一分にも満たない極僅かな時間で、すでに二人も脱落。

 しかし、どうもラダーンの様子が可笑しい。遠目からだがら詳細は分からないが、力の大半を別のリソースに割いているように視える。

 

「──! 矢の雨が降って来るぞ! 避けろぉおおお!」

 

 未来視で見たその光景に、思わず叫びながら全力で横へ駆ける。

 俺の注意喚起に敏感に反応したのは、ブライヴとアレキサンダー、そして葦名さんだった。

 ラダーンに向かっていた三人も、同じように進路を変えて次の攻撃に備える中、背中に突き刺さった槍を無造作に引き抜いたラダーンは、大弓につがえると空に向かって射る。自分の体に突き刺さった槍を矢にするとか、ワイルド過ぎるだろっ! 

 

 魔術によるものなのか、空中で分裂した槍は雨のように勢いよく降り注いで来た。

 しかも範囲が広い。ラダーンを基点に扇状に降り注ぐ矢の雨。寸前のところで範囲外に逃れた俺だが、他の人たちは足止めを食らっている。

 俺の声に反応した三人は何とか対処出来ているが、他のメンバーは無数の矢を浴びて、あっという間に針ネズミになってしまった。

 残るはブライヴ、アレキサンダー、葦名さん、そして俺の四名のみ。

 

「おいおい、もう半分かよ……! マジかっ!?」

 

 ラダーンの攻撃が止まらない。一気に三本の槍を取り出すと、穂先を紫色の重力場が覆い、砂中から浮き出た瓦礫が纏わりついた。

 岩の瓦礫により只でさえ大きな槍の面積が倍となったそれらをつがえると、一気に放ってくる。

 俺目掛けて! 

 

 横、は駄目だ避けきれない。後ろも障害物無し、あっても意味なさそう。上は矢の大きさからして当たり判定。弾きにしても矢尻に纏わりついてる岩の質量と矢の速度から多分無理。

 となると、残された選択肢は──! 

 

「う、うぉおおおおおおおおッ!」

 

 思いきって大の字に倒れると、鼻先を矢が通過した。

 大気が唸り肌がひりつく中、直ぐさま立ち上がると、走りながら俺も弓を射る。

 愛用している【エーゴンの弓】は移動しながら射るには非常に不向きだが、弓を水平に寝かせることでなんとか可能にする。

 走りながらの上、力強くで弦を引いているため狙いもろくに定まらないが、それでいい。

 槍の雨を降らせようとしていたラダーンだが、側を通過する俺の矢に弓を下ろした。

 

「──っ!」

 

 彼我の距離は約十メートル。後もう少しで距離を潰せる、という段階で逆に間合いを詰めてくる。

 背中から大振りの剣を二本取り出すと、二刀流のスタイルで突撃してきたのだ。

 巨体に見合わぬ俊敏さで間合いを詰めてきたラダーンは、二刀一対のぶ厚すぎる大剣を叩き付けるように振り下ろしてくる。

 

「なんつー馬鹿力だ!」

 

 力にものを言わせた一撃。

 だが、その威力は目を見張るもので、まるで爆発物が爆破したように地面が爆ぜた。

 巻き上がる砂塵がラダーンを覆う。猟犬ステップで真横に移動していた俺は、ラダーンの膝裏目掛けて水平斬りを放つ。

 

「◼️◼️◼️──!」

 

 カウンターの形で具足に覆われていない膝窩を斬り裂くも、気にした様子を見せないラダーンは振り返りながら大剣を凪ぐ。

 豪腕から生じる剣風は砂塵を吹き飛ばし、振り抜くことで生じる僅かな硬直を狙ってくる。

 が、未来視でその攻撃は既に把握済み。タイミングを合わせて脇差しの戦技【霧の猛禽】を発動。

 瞬間的に沈んだ体は、鴉の羽根を纏いながら瞬時に上空へ移動。真下を大剣が通過していくのを感じながら、重力に身を任せた振り下ろしを見舞う。

 だが、有効打にならず。兜で受け止められてしまった。

 

「俺を相手に隙を晒すとは、舐められたものよなぁっ!」

 

 いつの間にか背後に迫っていた葦名さん。 

 独特な足捌きによる運足で一瞬で距離を詰めると、そのまま流れるように、すれ違う。

 その刹那とも言える僅かな間に、刀を抜き放つと、胴を薙いだ次には右手の小手を打っていた。

 残像となった銀閃が十字を結ぶと同時に、剣圧によって砂塵が真っ二つに割れる。

 思わずラダーンから意識が逸れてしまうほどの、あまりにも美しい太刀筋。

 写〇眼並みの動体視力を持つ俺が、ギリギリ視認できるレベルの抜刀術。

 

 この一太刀で理解してしまう──いや、理解させられる。

 達人なんて言葉じゃ言い表せない、剣の極致に立つ人間なのだと。俺のなんちゃって剣術とは比べ物にならない。

 まさに剣聖。

 

「あれを防ぐか。最強と謳われるだけあるわ」

 

 そんな剣聖の太刀を、純粋な身体能力だけで防いでみせたラダーンもラダーンである。

 完全に不意を突いた攻撃だったのに、驚異的な反射神経で防具の部分で受けたのだ。

 

「◼️◼️◼️!」

 

 刀身に紫色の重力場を纏わせたラダーンは再び、叩き付けるような斬り下ろしを繰り出すが、葦名さんは二歩下がるだけで躱してしまう。完全に見切っているようだ。

 振り下ろし後の隙を狙い、前傾姿勢になる葦名さんだが──。

 

「駄目だ、下がれ!」

 

「ぬっ!」

 

 一秒先の未来に思わず制止の声を掛けると、葦名さんは敏感に反応して後退する。

 その直後、埋没していた剣を勢い良く持ち上げるラダーン。爆発したように飛び散る砂の中から現れたのは、刀身を瓦礫でコーティングした大剣だった。

 さっきの矢でも思ったが、ラダーンは卓越した重力魔術の使い手。主に纏うのが得意なようだ。

 

 それにしても、恐ろしいヒトである。力の八割を別の重力魔術の制御に回しているというのに、この実力! 

 二割の力で俺たちを相手取るその力に、最強の称号は伊達ではないと悟る。

 

「でも、だからって下がる理由にはならねぇよなぁ!」

 

「よく言った、雷斗!」

 

 これまで影のように身を潜め、機を窺っていたブライヴが飛び掛かった。

 ラダーンの大剣に比べると些か無骨だが、頑丈さは折り紙付きのグレートソードを両手で握りしめ、力強く振り下ろす。

 頭上で剣を交差させて受け止めようとするラダーンだが、もちろんそうはさせない! 

 

「シッ!」

 

 がら空きとなる脇腹、その少し上の脇の下を狙って逆袈裟斬りを放つ。

 ここも防具の構造上、隙間を作る必要がある場所だ。そして脇の下は人体の急所の一つ! 

 理性を失ったバーサーカー状態のラダーンではどちらを優先すべきか分からなかったのだろう。中途半端に腕を上げた姿勢で止まったため、俺たちの攻撃を諸に食らうことになった。

 

「シャア! 有効打!」

 

「集中を切らすな。一瞬でも気を抜くと死ぬぞ」

 

 兜越しに頭部をグレートソードでぶっ叩かれ、脇の下を長牙で斬られたラダーンだが、堪えた様子はない。

 相変わらず血走った目で荒い息を吐きながら、重圧すら感じる殺気を向けてくる。

 

「カカカ! 善き戦士が集っておる。これだから戦は辞められんわ!」

 

 葦名さんもしかして戦狂いですか!? そうですよね、その剣も実戦で研ぎ澄ませた感じですもんね! 

 でも戦争はダメ絶対! 武力で解決する平和なんて、そんなの可笑しいよっ! 

 

「キェエエエエエエエエエエエイッ!!」

 

 猿叫を響かせながら狂ったように刀を振りつつ、そんなことを思う俺であった。

 

 

 

 1

 

 

 

 どうやら二割の力で俺たちと拮抗するようで、どちらもそこそこの痛手を被っていた。

 数多の斬り傷を負ったラダーンは出血が酷く、その獅子の鎧を血に染めている。依然バーサク状態であるのは変わりないが、その動きは当初と比べて鈍っている。

 だが、こちらの損害も大きい。俺はすでに回復薬が尽き、体感的に残りライフは半分。

 ブライヴは先ほどまで健闘していたが、致命傷一歩手前の大痛手を追い、現在は後方に離脱。

 悔しそうに歯噛みしているが、グレートソードを握る手に力が入っていないのはお見通しだ。

 そして、剣聖こと葦名さんだが──。

 

「カカカカ! 血が滾ってきたわッ、行くぞラダーン!」

 

 まさかのスロースターターであることが判明。

 ラダーンの一撃が右目を掠り、片目を潰された途端スイッチが入った。

 刀と槍に炎を纏わせると、見事な一刀一槍スタイルでラダーンを押し始めたのだ。

 一寸の見切りで大剣を躱し、流麗な足捌きで素早く立ち位置を変えながら、炎を纏った刀で確実に一太刀を入れて、距離を取ろうとするものなら肩に担いだ槍を回して対応。

 何故か凄まじい踏み込みで火柱を上げたり、燃え盛った刀で辺り一面を薙ぎ払ったりと、この人も無茶苦茶な動きをしているが。

 まあ、俺も人のことを言える立場じゃないんだけど。

 

「こっちも忘れられちゃ困るぜぇ!」

 

 長牙に風と雷を纏わせることで雷属性の斬擊を飛ばす。刀を振る度にエンチャントされた斬擊が飛ぶものだから、テンションも爆上がりだぜ! 

 メリナから俺の出生を教えてもらったのが切っ掛けになったのか、それともこの極限状態での集中が覚醒に至らせたのか分からないが。

 段々と自分の内にある力の引き出し方が分かってきた。

 神竜と同じように風と雷をある程度操ることが出来るみたいで、葦名さんを見倣いこれらを刀にエンチャントさせてみた。

 すると、まさかの飛ぶ斬擊が生まれたではないか! しかも雷も付与されているというおまけ付き! 

 

 前衛を勤める葦名さんをなるべく巻き込まないように立ち回りながら、遠距離からズバズバと斬擊を浴びせていると、ようやくダウンが取れた。

 膝を突くラダーンに止めを刺そうとする葦名さんだが、彼の目はまだ死んではいない。

 天に向かって咆哮を轟かせると、大きくジャンプ。そのまま空の彼方へと消えていった。

 

 ……。

 ……え? 

 

「よもや怖じ気づいたわけではあるまい。なにか仕掛けてくるぞ」

 

 なんなのあの超人的ジャンプ、とか。

 もしかして敵前逃亡、とか。

 一瞬色んなことを考えてしまった俺だが、葦名さんの言葉にハッとする。

 これまでの戦いっぷりを見れば逃走という考えはないだろう。となると、何か大技を仕掛けてくるのか……! 

 

「ていうか葦名さん。目、大丈夫ですか?」

 

「カカカ! この程度唾をつけとけば治るわ!」

 

 いや、凄い出血してますけど。

 

「──来ました! って、隕石ぃ!?」

 

 未来視で視た通り、全身に岩を纏ったラダーンが隕石となって降ってきた。

 ラダーン自身、熊並みの大きさのため隕石状態となると、直径およそ十メートルにも及ぶ。

 天然の隕石と違い魔術で再現したのだろうが、それでも空気摩擦で燃えながら落下してくるその光景は、控え目に言って大迫力。

 飛ぶ斬擊を浴びせるも表面を軽く削るだけで効果は薄い。迎撃から回避に切り替えた俺はトレントを喚び、出来るだけ遠くへ駆けてもらった。

 

「──っ! ジャンプだ!」

 

 着弾の間際、トレントが跳躍し、空気を踏みしめてもう一度大きく跳ぶ。

 後方から轟音とともに爆風が押し寄せて来たが、なんとか無事にやり過ごすことが出来た……! 

 方向転換してラダーンの元へ駆けるトレント。今のはラダーンにとっても体力を削る大技だったようで、膝をついた姿勢で大きく息をしている。絶好のチャンスだ ……! 

 それはそうと、葦名さん大丈夫か!? 爆心地にいたけど! 

 

「……ようやく隙を見せたな」

 

 砂煙から葦名さんが姿を見せる。白備えの鎧は完全に砕け、その下に着ていた服も消し飛んでしまっていた。

 上半身には無数の切り傷と痣が出来ているが、葦名さんの闘気は微塵も衰えていない。

 無防備な姿を晒すラダーンに一瞬で詰め寄ると、体ごと刀を突き出し、心臓を貫いた。

 ラダーンの体から生命力が大幅に失われていくのが視える。

 本来ならこれで勝負ありなのだろうが、相手は最強のデミゴッド。再び大剣を持ち上げようとしていた。

 

「殺れぃ! 雷斗ッ!」

 

「──応ッ!」

 

 丁度ラダーンの元にたどり着いた俺は、トレントの背中を蹴って大きく跳躍。

 葦名さんを飛び越える形でラダーンの目の前に躍り出た。

 

「チェエエエエエエエストォォォォオオオッ!!」

 

 ラダーンの兜を叩き割り、その頭蓋に刀身がめり込んだ。

 ラダーンの体がぐらつき、膝立ちになる。

 まだ立ち上がってくる可能性があるため次の攻撃に備えていると──。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️……」

 

 巌の顔がフッと和らぎ、何かを呟いて倒れたのだった。

 今の、聞き間違いでなければ「善き戦であった」って聞こえたんだけど……。

 ラダーンの生命力は欠片も感じられない。

 俯せに倒れたまま沈黙するその姿を見て、ようやく倒したのだと実感が湧くのだった。

 

 

 

 2

 

 

 

「つ、疲れたぁ……」

 

 これほど神経をすり減らす戦いは初めてだ。俺だけだったら恐らく敵わなかっただろう。

 ラダーンの体から大ルーンが浮き出る。ふわふわ浮いているそれはゴドリックのとは違ったマークをしている。

 宙に漂っていた大ルーンは何故か俺の方に近寄ると、勝手に体の中に入ってしまった。

 いや、葦名さんとかメッチャ活躍してたのに俺だけ報酬を受け取るのはちょっと……。

 

「受け取っておけ。ラダーンがお主を選んだ証よ」

 

「でも、葦名さんは……」

 

「なに、俺にとって此度の戦いが何よりの報酬よ。これほど血湧き肉踊る戦いは久方振りだからな」

 

 そう言って大笑いする葦名さん。

 確かに満足そう、というか充実してそうな顔をしてますね。

 

「凄まじい戦い様だったな。途中で退場する羽目になるとは、我が事ながら情けない」

 

「あ、ブライヴ」

 

 グレートソードに寄り掛かりながら歩み寄ってくるブライヴ。

 自慢の毛並みは血と砂で汚れ、甲冑の所々が破損してしまっている。

 満身創痍といった様相を呈しているが、力強い眼差しは健在なようだ。

 

「この祭りの誉れは間違いなく、ラダーンと、そしてお前たちのものだ。その男が譲るというのであれば素直に受け取っておけ」

 

 他ならない葦名さんたちがそう言うなら。

 

「それより、見ろ……」

 

 ブライヴが空を見上げる。

 彼の視線に釣られるように、俺も上空を見上げた。

 

「ほほぅ……アヤツめ、とんでもないものを隠していたな。まさか幾多の星々が降り注ぐとは」

 

「すげぇ……」

 

 赤く染まった空を、幾筋もの星々が切り裂いていく。

 流星群。前世でも見るのは初めてだが、数十──いや、百以上の隕石が地上に降り注いでいく。

 その中でも一際大きな隕石が、赤獅子城の向こう側に消えていき。

 その直後。眩い光が視界を貫き、大きな揺れが大地に響き渡った! 

 め、目がぁぁぁぁあっ! 目が良いだけにリアルバルスウウウ! 

 

 ブライブに声を掛けられるまでの間、赤い砂丘の上で転がり続けるのだった。




 ストックが切れたので、週1投稿に切り替えます。
 毎週月曜日に投稿しますので、よろしくお願いします。

エルデンリングはどこまで知っている?

  • ストーリー考察含めて大体熟知している
  • 本編クリア済だが難しくてよく分からん
  • 本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
  • 大雑把な概要だけ知ってる
  • タイトルは聞いたことがある
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