隔絶した力の差を感じさせられたラダーン将軍を、なんとか倒した。
この戦祭りに参加したのは俺を含めて十名だったが、生き残ったのはその半分以下。
俺とブライブ、葦名さん、そしてアレキサンダーだ。
あの流星群の後、健闘を称え合った俺たちはその場を後にしようとしたのだが、砂丘で蹲る生存者を発見。それがアレキサンダーだった。
「……ああ、貴公か。見事な戦いであったな。貴公らこそ、英雄よ。……それに比べ俺は、ダメダメなダメ壺であった。一撃でひび割れ、中身がかなりこぼれてしまって……。貴公は勇敢にも立ち向かい戦っていたのに、隠れてやり過ごすなど……」
貴公に合わす顔がない。そう落ち込んだ声で話すアレキサンダーは、言葉通り一度も俺の方を見ず、砂丘に散らばっている死体の手足などを、緩慢に壺の中に収める作業を続けていた。
彼は序盤で繰り広げられた遠距離射撃で深手を負い、ヒビ割れた体から中身が漏れてしまったそうだ。
己の器の頑丈さに余程自身があったのだろう。すっかり戦意を失ってしまった彼は、戦いが終わるまでの間、隠れていたらしい。
あれ程、戦士としての在り方を誇っていた彼だ。今回の戦祭りは、彼のプライドをへし折る結果となってしまったのだろう。
だが、このまま失意の底に落ちて腑抜けてほしくない。彼は尊敬する戦士の壺なのだから。
「諦めるのかよ。アンタ、戦士の壺なんだろ? 自分で言ってたじゃないか。俺は戦士の壺だって。戦士ってのは、一度の挫折で折れるようなものなのか?」
「貴公……」
俺の言葉がどれだけ彼の心に響いたか分からないが、それでも立ち直る切っ掛けにはなってくれたようで。
「……そうだな。これしきのことで立ち止まっていては、戦士として胸を張れん。うむ! 俺はまだ諦めていないぞっ!」
声に張りが戻った戦士の壺は、元気良く死体を壺の中に詰めていく。
「幸いここには戦士たちの死体が山ほどある。それを集め、俺の中に詰め込めば、俺はまた戦士の壺になれる! それに、この地の死体は皆すばらしい。さすがは、あの破砕戦争を戦った戦士たちよ!」
その在り方から戦士を名乗っていたと思いきや、戦士の遺体を詰めたから【戦士の壺】なのか……。
ヒーローショーに登場するヒーローたちの中身を知ってしまった子供たちって、こんな心境だったのかな……。
「貴公、俺はもっと強くなるぞ! 楽しみにしていてくれよ、いつかまた会う時を……! ワッハッハッハッ!」
ま、まあ、アレキサンダーが持ち直してくれたから良しとしよう。
戦士云々は深く考えない方が良さそうだ。俺の心情的に……。
赤獅子城に戻った俺を出迎えてくれたメリナたち。
多対一とはいえラダーン将軍を倒したことには変わりなく、二つ目の大ルーンを見せるとメリナの顔が綻んだ。
ボックに至っては興奮が冷め止まない様子で、我が事のようにはしゃいでいる。
「ご主人さま、すごかったです! まさに神話のような戦いで、オイラ感動しました……っ!」
「あのラダーンを相手に死なずに倒したのは快挙ね。私が見込んだ褪せ人なだけはあるわ。……格好よかったわよ」
「オイラ、ご主人さまのようなお方にお仕え出来て、本当に光栄です!」
目をキラキラさせたボックが可愛い過ぎる。とりあえず頭を撫でてやろう。
今回の戦祭りは俺にとって大きなプラスとなった。
ぶっちゃけ大ルーンを得たことより、葦名さんの刀術をこの目でしっかりと見ることが出来たし、ラダーン将軍という格上との戦いは得難い経験だ。
彼らと共にラダーン将軍と矛を交えたあの時間は、俺にとって何よりの財産である。
「雷斗」
「ブライヴ」
戦祭りの立役者の一人であるブライヴがやって来た。
葦名さんは城主のお爺さんと酒を酌み交わしているようだ。
「これで道は開けた。ラニの運命、ノクローンへの道が。お前も見ただろう、あの一際大きな隕石を。星の落ちた場所で落ち合おう。そしてまた、共に戦うとしよう。ラニのために」
「おう、ラニ様のために」
グータッチを交わすとクールに去っていくブライヴだけど、アイツ方向音痴だから目的地にたどり着けるか不安だ。
さて、俺たちもそろそろ行くとしよう。
アレキサンダーはまだ砂丘で死体集めをしているようだから、葦名さんと城主のお爺さんに挨拶をしていく。
「おぉ、お主か。此度の戦働き、見事であった! 葦の地にもお主ほどの豪傑が居れば退屈しないで済むんだがなぁ」
「俺が疲れる奴じゃないですかそれ……葦名さんもお疲れ様でした。まさに剣聖って感じでメッチャ凄かったです! あの刀術、盗ませてもらいますよ」
「ほう? 俺の剣を見ただけで真似る、と」
隻眼となった葦名さんだが、その気迫は微塵も衰えていない。むしろ箔が付いた感じで圧が増している。
真剣な表情でジッと俺の目を見据えてくる葦名さん。ラダーン将軍の重力魔術のように視線が吸い付いて離れない。
吞まれては駄目だ。下腹にグッと力を入れて俺も正面から見つめ返す。
緊迫した空気に当てられたのかオロオロするボックに、さり気なく武器を握るメリナ。城主のお爺さんは静かに成り行きを見守っている。
そんな一触即発の空気だが、不意に緊張の糸が解れた。相好を崩した葦名さんが大笑いする。
「カッカカカカ! 俺の剣を見るだけで盗むとは、生意気な小僧よ。だが、気に入った! これを持っていけ!」
そう言って投げて来たのは一本の巻物。
紐解いて見てみると、そこには『葦名流刀術』と達筆な字が。
まさか、これって……!
「俺が編み出した剣が、その巻物に書かれているが……それはまだ未完成。お主の手で完成させてみせよ!」
その言葉に胸が熱くなる。
自分の流派の技を、たった一度だけ邂逅した赤の他人に授けるというのだ。なんという器の大きさ……ッ!
俺も何かお返ししないと! 葦名さんは刀を使うから、そっち系で最高級のものを――。
「葦名さんは自分の得物がありますけど、良ければこれを」
「ほう、ふむ……」
渡したのは【名刀月隠+10】。【屍山血河】とどっちを渡すか悩んだが、葦名さんにはこっちの方が似合いそうだ。
鞘から抜いた葦名さんは、真剣な眼差しでじっくりと検める。
彼のお眼鏡に適うかどうか、ドキドキしながらその様子を見守っていると「うむ」と一言頷き鞘に戻した。
「気持ちだけ受け取っておこう」
「なっ……」
「この一振りは間違いなく名刀よ。お主もエルデの王を目指しているのだろう? ならば、今の得物が使えなくなった時、この刀は必ずお主の役に立つだろう」
将来の王に貸しを作るのも悪くない。そう言って呵呵大笑しながら刀を押しつけてくる。あ、葦名さん……ッ!!
将来、こんな格好いいおじさんになりたいと思わせる、そんな尊敬できる人に出会ったのだった。
1
城主のお爺さんとも挨拶を交わし、城を出た俺たち。
例の如く前にボック、後ろに霊体化メリナを乗せた褪せ人一行は、隕石が落ちた場所へ向かっているのだが。
何処に落ちたのか皆目見当がつかねぇ……!
あれほど大きな隕石なのだから、かなりの規模のクレーターが出来ていると思うが。
取りあえずケイリッド周辺を探してみることにする。
あと、今後用がない限りこの地には足を踏み入れたくないから、ついでに地図に記載されている場所も訪れておこう。
現代日本にいた頃は旅なんてしたことなかったし、此処ケイリッドは酷い景観を呈しているが、ディストピアチックな光景は嫌いじゃない。
折角、転生なんて稀有な経験を得たんだから、任務のついでに各所を旅して回ってもバチは当たらないだろう。
まあ、他ならぬラニ様の許可を得られればの話だけどね!
キモ生物の巨大カラスと犬を安全圏から殺しながら歩いていると、一棟のボロ小屋にたどり着いた。
小屋の前には巨大犬がお座りしているため、見つかる前に【エーゴンの大弓】でぶち殺そうかと思ったが、よく見てみると首輪がついている。
恐らく賢者ゴーリーの飼い犬なんだろうが、こんなキモ生物を飼っているのかとまだ見ぬ賢者に引きつつ、犬に見つからないように足音を殺して背後から小屋の中へ。
そこには、フードを被った老人が一人、椅子に腰掛けていた。
「──おお、お待ちしておりましたぞ。私はゴーリー。かつては賢者などと呼ばれておりました」
突然の訪問にも驚かず、俺の到着を予見していたかのような発言。賢者の名は伊達ではないのかもしれない。
腰痛持ちなのか椅子にメッチャ浅く腰掛けている賢者に一声掛けようとして、その姿を視て思わず閉口した。
人の姿を取っているゴーリーに重なる形で、腐敗の眷属の姿が同時に視えたのだ。
一瞬バグったか? と思ったが、この症状には覚えがある。リエーニエで知り合った残念系美少女ラーヤちゃんだ。
彼女も蛇人のような姿が重なって視えたが、まさか……。
「貴方様に、是非にお願いがあるのです。エオニアの朱い沼を越え、なお壮健な褪せ人様に──」
「その前に一ついいか? アンタ、もしかして腐敗の眷属だったりする?」
俺の言葉にゴーリーさんは目を見開いた。震える声で「何故、それを……?」と訊ねてくるため、彼らからもらった友好の証を見せる。
解析眼については無闇に広めるものじゃないしな。
「それは、我らの……」
「少し前に腐敗の眷属たちと交流してね。友達になった証として貰ったんだ。その姿って余所行き?」
「左様で御座いましたか……」
俺の言葉にホッとした顔をしたゴーリーさんは「ご慧眼です」と小さく頷いた。
【賢者ゴーリー】は外で情報収集をする時に使う姿と名前らしい。腐敗の眷属の姿だと敵と認識されてしまいますからな、と自嘲するゴーリーに何も言えなくなる。
事実、俺もそうだったからなぁ。意思の疎通が出来る知的生命体だと分からなかったら、あのまま根絶やしにしていたと思う。
「……我らのことを知り、なお友と呼んでくださる貴方様を見込んで、是非ともお願いしたいことが御座います」
このままの姿勢で失礼しますぞ。と一声添えながら、そのお願いを口にするゴーリー。
「此処より東に【腐れ病の教会】という場所が御座います。そこにいる、一人の娘を癒して頂きたいのです。娘の名はミリセント。腐れ病に侵され、今も臥せっているでしょう……」
一人の娘、と聞いて思わずピクッと反応してしまう。
これまでの流れからして、新ヒロインイベントの可能性が高い!
「ミリセントの腐れ病は、不治の業病です。かつて黄金樹華やかなりし頃、最も神に近いデミゴッドですら、それを治すことはできませんでした。しかし、抑えることは出来るのです」
メリナ、ラニ様、ローデリカ、ネフェリ・ルー、ラーヤ、セレン師匠、と続いて今度はミリセントか。
しかも不治の病という分かりやすいフラグ付き。きっとこの病を治した時、ベッドシーンが解放されるのだろう。股間が──胸が熱くなるな。
それはそうと、人の兜をコンガのようにペチペチしないで下さい。
「貴方様には、サリアの街の眼前に広がる、朱く深いエオニアの沼。そのどこかにあるはずの【無垢金の針】を探して頂きたいのです」
ふむ、その針があれば治るんだな。都合よくポーチの中に……ないか。
最近になって分かってきたんだが、ヒロインの攻略に関するアイテムは所持していないようだ。好感度稼ぎは自力でやれという見えざる意思を感じる。
沼かー。どのくらいの広さか分からないけど最悪、解析眼全開で捜索するか。
脳に掛かる負担? ヒロイン攻略のためなら些事!
「勿論、ただでとは申しません。私の願いを聞いてくださるのであれば、お教えしますぞ。そこに見える、サリアの街の秘密を」
ゴーリーが指差した先には廃墟となった街が広がっている。
視た感じ、魔術が栄えた街のようだが、俺はその報酬を断った。
「女の子を助けるのに報酬なんてダサい理由は付けたくないね。病に苦しんでるなら、それだけで助ける理由になるだろう?」
「貴方様……」
俺の言葉に驚いた表情を浮かべるゴーリー。
もちろん、ヒロインだからって理由が大前提だけどネ!
なにやらボックも「ご主人さま……!」といたく感動した目を向けてくるが、メリナだけはジト目で頬をグリグリしてくる。
ふっ、流石は俺の指巫女様。以心伝心の域に達しているようでなによりだが、このままだと頬に穴が空きそうだからヤメて。ね?
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある