※この作品はR-18です。

エルデンリングって何だよ   作:ポチ&タマ

33 / 45
第33話 遺灰系ヒロイン

 結局、救助できた人はたったの十名だけだった。

 声を掛けると皆一様に錯乱して攻撃をしてくるのだが、俺の姿を目にした途端呆けた顔で固まる。

 

 まあ、それも無理はない。

 何せ、筋骨粒々の目隠しをしたナイスガイが、褌だけ巻いた姿で歯を見せて笑んでいるのだから。

 寸鉄一つ帯びず「大丈夫ですかーッ! いま助けますからねッ!」や「もう大丈夫ですよ! 何故なら、私が来たからさ!」と熱い言葉を掛けながら祈祷術で回復させていれば誰だって驚く。俺も驚く。

 だが、その甲斐あって助けたご老人方は皆、発狂することなく落ち着いて会話が出来るようになった。

 

 しろがね人だからと侮蔑の眼差しを向けず攻撃してこないことや、弱っていたところを回復系の祈祷術で救ってくれたことから敵ではないと判断してもらえて。

 そのうちの一人から長老の居場所を聞くことが出来た。

 

「あ、ホントだ。長老じゃん」

 

 なんと長老は壺の中ではなく、壺そのものに化けて隠れていたのだ。

 擬態のヴェールのように背景によく溶け込めているが、俺の解析眼からは逃れられないぜ。

 

「長老、助けに来ましたぜ」

 

「ひいっ! ひいい……っ! やめてくれ、やめてくれ……っ! わ、儂は何も知らぬ……! 何も、隠しては──」

 

 そう言い肩を叩くと、踞って壺に擬態していた長老は他のご老人の方々と同じく錯乱してみせるが。

 

「……裸の男?」

 

 長老も他のご老人方と同じくキョトンとした顔でフリーズする。

 その隙に祈祷術【黄金樹の回復】で怪我を治した。

 擦り傷だらけだった体が癒されるのを見て、正気に戻る長老は再び俺と、そして背後に立つネフェリ・ルーを見て、大きく息をつく。

 

「──あんた、あいつらの仲間じゃあないのか……そうか、よかった……」

 

 その言葉に歯軋りの音が背後から聞こえてきたが、振り向くことはせずに膝をついて長老と目を合わせた。

 

「俺は雷斗。後ろの女はネフェリ・ルー。旅の者だが、偶然この村の惨劇を知ってな……」

 

「……儂はアルバス。見ての通り、しろがね人じゃ。だが儂らは……この村は、もう終わりじゃ……。忌まわしい呪殺者どもが、すべて壊してしまった。もう、まともな者など、誰もおらん……」

 

 落ち込んだ顔で細々と喋るアルバス老。彼の心情は察するに余りあり、掛けるべき言葉が見つからない。

 取りあえず生存者の報告と村を襲った張本人は始末した旨を話すと、アルバス老は目を丸くした。

 

「じゅ、十人も生き残りが……? それに、あの呪殺者どもを倒してくれたのか……? おぉ、なんということじゃ……ありがとう、ありがとう……!」

 

 枯れ枝のような手で俺の手を弱弱しく握り、何度も頭を下げてくるアルバス老。

 その目から透明の雫が滴り落ちるのを見て、しろがね人は蔑まれて良い存在じゃないと認識を新たにした。

 生まれが違えども、赤い血が流れてなくても、人の心を持っているなら彼らもヒトだ。

 今後はカエル頭のしろがね人含めて敵対しないことを胸に誓う俺に、懐からある物を取り出したアルバス老は、それを渡してきた。

 

「助けてくれたあんたに、頼むのは厚かましいが……もう頼れるのはあんたしか居ないんだ。どうかこの割符を、ラティナという、しろがね人の娘に届けてくれんか」

 

 アルバス老が手渡してきたのは、メダルの片割れ。

 金色のメダルには繊細な彫刻が施されており、エメラルドのような宝石も確認できる。

 どうやら二つ揃えるタイプの重要アイテムのようだが、もしかしなくても、これってギデオンが求めてた秘割符ってやつだよな……。

 

「我らしろがね人には、約束の地があるのじゃ。その割符は、その地に至るための鍵なのじゃよ。……もっとも、もう旅などできぬ我らには過ぎたる宝じゃが、あの娘──ラティナの使命のためには、きっと必要になるじゃろうて」

 

 そう言い、肩の荷が下りたような表情を浮かべるアルバス老。

 すると、彼の生命力が唐突に減少していくのが視て取れた。

 

「アルバス老……」

 

「もうすぐ、儂の脚はすべて消え、命も終わる……。それはしろがね人の、決して避けられぬ宿痾なのだ……」

 

 ここより南に結晶洞窟がある。その最下層に、ラティナは居る。猟犬騎士が守っているが、彼とは盟友じゃから儂の名を出せば通してくれるはずじゃ。あの娘を──ラティナを頼む……。

 そう言い残したアルバス老は、粒子となって消えたのだった。

 

 

 

「──私は、一度円卓に戻り、義父から話を聞いてくる。その割符は雷斗が持っていてくれ」

 

「……あまり無理はするなよ」

 

「ああ……」

 

 硬い表情のまま祝福経由で円卓へと帰還するネフェリ・ルーを見送ると、霊体化していたメリナが現れた。

 心配げな表情で祝福に視線を向けている。

 

「あの娘、大丈夫かしら」

 

「さて、こればかりはな……。俺も気に掛けるようにするけど、メリナの方でも」

 

「ええ」

 

 理解のある巫女様で助かるぜ。

 秘割符をポーチの中に入れた俺は、ラティナという女性を探しに結晶洞窟へ向かうのだった。

 

 

 

 1

 

 

 

 後ろ髪を引かれる思いはあったが気を取り直し、アルバス老の言っていた結晶洞窟にやって来た。

 ボックが暮らしていた亜人の洞窟と似たような構造になっており、亜人たちが住み着いている。

 アルバス老が口にした最下層という言葉から、もしかしてと洞窟内の崖を覗くと、崖下に光源が。

 丁度いい感じで飛び乗れる岩場もあったため、すいすい降りていき奥へ進んでいくと──。

 

「褪せ人が、何用だ」

 

 結界とともに猟犬騎士が姿を現した。

 元同僚の変態猟犬騎士ダリウィルと同じ甲冑に、曲剣と鉤爪というスタイルだ。

 警戒した様子で隙を窺う猟犬騎士に、アルバス老から託された秘割符を見せる。

 

「ラティナという女性に渡してくれと、アルバス老から頼まれた。彼とは盟友であると聞いているが」

 

「……奴との関係を知っているなら、噓ではないようだ。ラティナならこの先にいる」

 

 俺がアルバス老から正式に遣わされた者だと分かると、殺気を引っ込めて道を開けてくれる猟犬騎士。

 いつの間にか結界も解かれているが、洞窟の実質的支配者の意思で結界を張れるのか? 

 今度、セレン師匠に聞いてみよう。と頭の片隅にメモった俺は、猟犬騎士にお礼を言って先へ進む。

 

「お、外だ」

 

 洞窟を抜けると辺りを一望できる開けた場所に躍り出た。

 崖になっており眼下には美しい景色が広がっている。神戸の六甲山からみた夜景のキャッチフレーズにも負けない、絶景の穴場スポットだ。

 そんな絶景スポットにボロ屋が一棟。屋根こそあるものの基礎となる柱は剥き出しで、壁も所々壊れている。

 ボロい小屋の前には血塗れの狼と、それに寄り添う一人の女性の姿が。

 彼女が探し人のラティナだろう。蒼みがかったチェーンメイルを着ており、同色の鎖帷子付きのフードを被った女性だ。二十歳前後といったところか。矢筒を背負っているが、肝心の弓はない。

 そんな彼女が寄り添う相手は、うちのはぐれ狼たちとは違い、優に騎乗できるほどの巨体の狼。浅い息を繰り返しており、地面には大きな血溜まりの跡がある。

 狼の頭を優しく撫でていた女性は、俺たちの姿に気が付くと、強い敵意とともに睥睨してきた。

 

「──褪せ人よ、何のためにやってきた。あの百耳の男に伝えたはずだ。私の手に割符などないとな。それとも、まだ足りぬか、我が半身を奪ってなお……!」

 

 敵意バリバリで睨みつけて来るラティナだが、一先ず後回しだ。

 悠長にしている時間はない。

 

「ロボに近づくなッ!」

 

【黄金樹の聖印】を握り締めながら狼の元に近づくと、血相を変えたラティナが彼を庇うように両手を広げた。

 浅い息を繰り返している狼も、鋭い牙を見せながら低く唸る。

 そんな彼女たちの前で膝をついた俺は、問答無用で【黄金樹の回復】を発動させる。

 

「──ッ! ……これは」

 

 回復系の最上位祈祷により、尽き果てて消えそうだった命の灯が大きく膨れ上がったのを感じた。

 失われていた生命力が補填され、それに伴い深手を負っていた傷も塞がり。

 一通り視て、問題ないと判断した俺は「もう大丈夫だ」とサムズアップして見せた。

 

「わふっ」

 

 体調が良くなったのを肌で感じたのだろう。起き上がり調子を確かめるように体を動かした狼は、呆然としているラティナの頬を舐めた。

 

「……君は、彼奴の仲間じゃないのか……?」

 

 正気に戻ったラティナは狼の体を確認し、傷がないことが分かると困惑した顔をこちらに向けて来る。まあ、敵と誤解してたんならしょうがないわな。

 

「アルバス老に頼まれて来たんだよ。はい、これ」

 

 論より証拠と、預かっていた秘割符を渡すと、ラティナはどこか悟ったような顔で呟いた。

 

「……そうだったのか。アルバス老は、割符を貴方に託したのだな……」

 

 ならば、私も信じるとしよう。彼の遺志を。

 そう言うと膝立ちの姿勢で頭を下げてくる。

 

「改めて、私はラティナ。アルバス老と同じ、しろがね人だ。先だっての礼を失した対応、詫びさせて欲しい。貴方が褪せ人というだけで、百耳の男と同じだと愚かにも決めつけてしまった。すまなかった」

 

「ええんやで」

 

 事実、奴と同じ円卓に所属してるからなぁ。

 騙してるようで罪悪感を感じざるを得ない。円卓に戻ったら一発ぶん殴ろう。

 いや、ネフェリ・ルーの分も含めて二発か。奴のヘルムが凹む程度の力でぶん殴ってやると決意していると「この割符は、貴方が持っていてくれ」と割符を渡された。

 ……アルバス老はラティナに託したんだけど、良いんだろうか。

 

「貴方なら信頼に値すると感じた。アルバス老も許してくれるだろう」

 

 その代わりと言ってはなんだが、貴方にお願いがあるのだが、聞いてくれるだろうか。と言葉を続けるラティナ。

 割符を渡して断りにくい心境にさせつつ願い事を頼む。詐欺師とかがよく使う手口だが、他ならないラティナの頼みだ。聞こう! 

 

「私は、帰らなければならない。私の狼──ロボとともに果たすべき使命があるのだ。だから、連れていってくれないか。ミケラ様の聖樹の地に」

 

「いいよ」

 

 ミケラというのもデミゴッドの一人だよな。確か、マレニアの兄という。

 大ルーンを持っている可能性が高いし、こんな美女が旅のお供になってくれるなら喜んで歓迎しようではないか。

 パーティーに追加される美女とくれば、絶対にこの娘も攻略対象キャラに違いないし。

 きっとミケラの元に辿り着ければベッドシーンが解放されるはず。

 

「ありがとう……。もう一つの割符は黄金樹の北、禁域の先にあると聞いている。ロルドの大昇降機を昇った先、巨人たちの山嶺にあるソールの城に」

 

 そう言うと、ラティナとその相棒の狼の姿が粒子となって消えていく。

 ……消えていく!? 

 

『いつでも、私を喚んでくれ。貴方のために戦おう』

 

 残されたのは、遺灰でお馴染みの正方形のブロック。

 肝心のラティナたちは霊体となって遺灰の中に引っ込んでしまった。

 

 ……。

 

「メリナ」

 

 現れた祝福を起動してメリナを呼ぶ。

 いつのもように涼しげな顔で実体化した彼女に、最大の疑問を投げ掛けた。

 

「遺灰って、死んで黄金樹に還れなかった人たちがなるんだよな?」

 

「ええ」

 

「……何でラティナは自力で遺灰になれたの?」

 

「さあ?」

 

 無情! なんか、ご機嫌麗しくない? 

 

「別に。また新しい女を引っかけたとか思ってないわよ?」

 

「語るに落ちる」

 

「……最近、ヌいてあげていなかったわね。丁度ここなら人目につかないから、ヌいてあげるわ」

 

 あ、余計な一言だった。

 

「ボックさんが居るんですけど!?」

 

「お、オイラ、誰か来ないか見張ってますね!」

 

「貴公……!」

 

 逃げよったな我が従者よ!

エルデンリングはどこまで知っている?

  • ストーリー考察含めて大体熟知している
  • 本編クリア済だが難しくてよく分からん
  • 本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
  • 大雑把な概要だけ知ってる
  • タイトルは聞いたことがある
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。