念願の一人暮らしを始めたので、テンション高め。
このまま一気にラニ様ルートを突っ走るぜ!
ついでに円卓に立ち寄り、ローデリカたちの顔を見に行く。
ネフェリは相変わらず部屋に籠もっており、立ち直るには時間が掛かりそうだ。鬱病に必要なのは一人きりの時間なので、焦らず見守っていこうと思う。
だが、今はネフェリより懸念すべき事態か発生してしまった。
ローデリカである。
「あぁ、アンタか。⋯⋯あの嬢ちゃんなら此処にはいないぞ。なんでも伝説の遺灰とやらを探しに出掛けた」
いつもの場所にいないためヒューグ爺に聞いたところ、なんでも伝説の遺灰とやらを求めて出掛けたらしい。
少し前に強力な遺灰を尋ねてきたローデリカに、心当たりがあった遺灰の場所を教えたら、その翌日には置き手紙を残して姿を消したのだとか。
その手紙を見せてもらうと『伝説の遺灰を探しに出掛けます。すぐ戻るので心配しないで下さい』とだけ書いてあった。
「俺が教えたのは【黒き刃の長】の封牢だ。嬢ちゃんにどんなつもりがあるのか知らないが、相手は伝説とまで謳われた傑物の一人。まず勝てないだろう」
嬢ちゃんの足ならまだ辿り着いていない可能性もある。助けに行くなら急ぎな。
そう言って己の仕事に戻るヒューグ爺。
悪態の一つでもつきたいところだが、確かに時間がないため急いで円卓を離れた。
「なんて馬鹿な真似をしたんだアイツ⋯⋯!」
ローデリカも俺と同じ褪せ人であるが、戦闘力は皆無。何故急にそんな遺灰を求め出したか分からないけど、急がないと殺されてしまう⋯⋯!
ヒューグ爺に教えてもらった場所を地図にマークし、トレントに頼んで超特急で向かってもらう。休み無しで走ってもらう予定だから、後でご褒美にミラクル・フローズン・レーズンをご馳走しよう。なお、これはフローズン・レーズンの果汁のみを抽出し飴玉に加工したもので、トレントの大好物である。
トレントを走らせること一時間。件の封牢があるリエーニエの西端にたどり着いた。
元々、黒き刃の長は別の場所に封じられていたようなのだが脱走したらしく、再度捕縛した時に二度と出られないように厳重に封印を施したらしい。
その証拠に、黒き刃の長が封じられている封牢の周りには、団子状のストーンワームが直立しながら目を光らせている。
その数は優に十を超えており、視たところ重力場を形成して封牢を強化しているようだ。
「くそっ、遅かったか!」
既にローデリカは侵入しているのか、封牢の幾何学模様が光り輝いていた。
なんとか俺も侵入出来ないか、封牢の中央に触れてみる。
「お?」
視界が暗転する。どうやら無事に封牢の世界へ侵入出来たようだ。
「ローデリカ!」
急いで彼女を探すと、いた! 結界の隅!
いつの間に入手したのか、新たなはぐれ狼たちを引き連れたローデリカ。
彼女を守るように立ち回っている番犬たちだか、立ちはだかる敵に一撃で倒されてしまう。
手に持った短剣でローデリカにトドメを刺そうとする敵。ローデリカは震えながらも、最期の時まで目を逸らさずにいて──。
「うぉおおおおおおお! ローデリカのバッキャローぉぉぉおお!」
「ら、雷斗様⋯⋯!?」
間一髪割り込むことに成功!
振り下ろされた短剣を長牙で受け流し、返す刀で斬り掛かるが、ソイツはフワッとした足取りで後退。間合いをあけた。
油断なく正眼で構えながらチラッと後ろを見る。
どうやら、怪我はないようだ⋯⋯。
「雷斗様、何故ここに⋯⋯?」
「うっさいバカ! 説教は後回しだ!」
困惑した様子の声をシャットアウトして、眼前の敵を見据える。
黒衣を纏い深くフードを被った長身痩躯の女性。
身長は俺よりも頭は一つ分高く、約二メートルほど。
銀のチェーンメイルを付けており、右手には異様な短剣【黒き刃】を逆手で把持している。
「アンタが、黒き刃のリーダーか」
以前、生き字引である商人のおっちゃんから聞いたことがある。
エルデンリングが砕ける前の、古い黄金樹の時代。何者かの手引きで黒き剣のマリケスから死のルーンの欠片を盗み、黄金のゴッドウィンを暗殺した実行犯たち。その暗殺事件は後に黒き刃の陰謀の夜と呼ばれ、破砕戦争のきっかけとなった。
捻じれた短剣【黒き刃】には、儀式によって黒き剣のマリケスから盗んだ“死のルーン”の欠片の力が宿っていると言われているとか。
黒衣は姿隠しの魔術が掛けられており、少しでも注意を反らすと見失ってしまうし、確かに【黒き刃】の刀身には砕けた“死のルーン”の欠片が埋め込まれているのが視える。
あの刃で負った傷は再生できず、殺されると黄金樹に還ることもアンデッドとして彷徨うこともできない、絶対的な死が待ち受けているのを感覚で理解した。
「伝説と謳われるだけあるな⋯⋯!」
無言で短剣を構える黒き刃の長は、重力を感じさせない軽い足取りで距離を詰めてくると、イナバウアーのように体を反らしながら短剣を振るってきた。
なんというトリッキーな動き! 俺の動体視力が写◯眼並じゃなかったら意表を突かれて終わってたぞ!
風と戯れる羽根のように舞い、鎌鼬のように鋭く斬り掛かってくる、黒き刃の長。それら凶刃を紙一重で躱しながらカウンターの斬撃を放つが、身軽な動きで危なげなく回避される。
こうなったら、雲河の太刀──ラダーン戦で体得した飛ぶ斬撃(雷付与付き)の連撃で真っ向から捻じ伏せてくれる!
意気揚々と刀身に風を纏わせ、通常攻撃を全体に切り替えた、その時。
『⋯⋯』
それまで顔を隠していたフードを脱いだ彼女。
綺麗な女性だ。焦げ茶色の瞳でアジア人っぽい顔つきをしている。
色っぽいお姉さん的な美しい顔立ちをした彼女は、フッと微笑みを浮かべると短剣を仕舞い、軽い足取りで歩み寄ってきた。
俺の頭がバグる。今の彼女からは戦意の欠片も視えない。それどころか歓喜の色が視える。
居合の姿勢でそのまま固まる俺の元まで歩み寄ってきた彼女は、頬を優しく撫でてきた。
『こうして再び、主に見えることが出来るとは……』
「……え?」
鈴を転がすような凛とした声。
だが、言葉の意味は非常に不可解。
疑問符を浮かべる俺を余所に「失礼します」と一言断った彼女は、徐に目隠しに手を伸ばしてきた。
『先の戦いで見せた体捌き。そして、この美しき緋の瞳……間違いない』
片膝をつく黒き刃の長。
そして、嬉しそうに相好を崩して言う。
『解放の英雄、導きの勇者、救世の御子⋯⋯我らの光、ライドウ様』
⋯⋯⋯⋯。
「えっと、人違いですが?」
俺の名前は雷斗ですけど……。
『……あぁ、やはりお忘れであるか。こればかりは慣れないな……』
残念そうに──いや、どこか寂しそうな顔をした女性だが、それも一瞬のこと。すぐに涼しげな微笑みを浮かべると胸元に手を当てて、恭しく頭を垂れた。
『私はアレクトー。黒き刃の長を務めています。我ら黒き刃は主──貴方様の刃。我らの肉体は髪の毛一本血の一滴まで主の物であり、たとえ死すれど我らの魂は主の懐に。還樹を拒み、永久にお側へ』
「「「「「我が刃は御身のために」」」」」
「うぉっ! いつの間に……!」
気付けば俺を取り囲む黒衣の集団が。
アレクトーさんと同じ装いをした黒き刃の人たち。全員、跪き頭を垂れている。声からして皆、女性のようだ。
アサシン系のサーヴァント並みの気配遮断だ。ていうかこの封牢、アレクトー専用じゃねぇの?
今まで何処に潜んでいたのか、そしていつ近づいたのか全く分からなかった。これが本職のアサシン……。
離れた場所でアレクトーとの戦闘を見守っていたローデリカも、ポカンと口を開けて驚いている。
『申し訳ございません。彼女たちも主との再会に、些か気が逸っているようです。お前たち』
「「「「「ハッ!」」」」」
「⋯⋯」
シュバッと残像を残して姿を消す暗殺者たち。
視れば黒衣の姿隠しで気配を消しているようだ。
立ち位置を変えず、片膝を突けた姿勢で微動だにしないその様から、よく訓練されていると分かる。
「陰謀の夜と称されている一夜から、この時を待ち望んでいました。再び、貴方様に拝謁することを。どうか、今一度、我らをお導き下さいませ」
そう言うと膝をついたまま深く頭を下げる。
うーん、どうやら記憶を失う前の俺に仕えていたっぱいが、経歴が怪しすぎる。破砕戦争を引き起こした当人たちを部下にしていたって、竜の御子じゃないんか俺?
だが、当時の俺を知っており、かつアレクトーレベルの暗殺者たちが仲間になるのは心強い。
この様子を見る限り、忠誠信カンストしてるっぽいし、裏切りの心配もなさそうだ。
「⋯⋯察しの通り記憶喪失なんだ。かつてキミたちの主人だった俺じゃないけど、それでも良いのか?」
『我らは主の代理人。死の刃にして神罰の地上代行者。我らが目は主の目であり我らが耳は主の耳。我らが手足は主の手足となりて、世に主の意向を知らしめる死の刃なり』
返答にしては格好良すぎるが、それでも俺について行くという気概は見えた。
それに、ここまで忠誠を捧げてくれているアレクトーだ。きっと、主の意向として下の処理もしてくれるに違いない。
本命を絞らないといけないと思いつつ着実にハーレムを築いている現状に草が生えるわ。
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遺灰の中へと消えたアレクトーだが、その部下は今を生きる人間のようで。封牢から出るとシュバッ散開してしまった。あの、まだ何も指示出してないんっすけど、主の意向は⋯⋯?
ていうか、今の今まで現役ってことは、破砕戦争からずっと生き延びてきたわけで。ぶっちゃけ何歳なんだろうか。
まあ、寿命での死がない世界だから、生きようと思えば生きれるけど⋯⋯。
とんでもない人たちが仲間になったことを今頃悟りつつ、所在なさげに佇むローデリカと向き合う。
「あ、あの、雷斗様──」
頬を叩く。
呆気に取られた顔で叩かれた頬を押さえるローデリカ。
その唖然とした顔に苛立ちを感じざるを得ない。
「なに考えてんだ馬鹿野郎ッ!」
思わず両肩を掴んで怒鳴り声を上げると、ビクンッと肩を跳ね上げた。
冷静に話し合わなければいけないと理性が訴えてくるが、感情が振り切って自分でも上手くコントロール出来ない。
「独りで戦いに挑むなんて死にたいのか! それも伝説級の遺灰とか、巫山戯んじゃねえっ!」
伝説の遺灰を求めて独りで出掛けたと聞いて、血の気が引いて。
封牢の光を見て間に合わなかったと悟り、二度と逢えないことを半ば覚悟して。
今にも殺されそうなところを目の当たりにして、最悪の状況が頭を過った。
「死んだと、思ったんだぞ、馬鹿野郎……ッ」
華奢な体を抱き締める。
腕の中に大切な人の温もりがあることが、何よりも尊い。
自然と流れる涙。震える体。
それまで黙って俺の胸の内を受け止めていたローデリカは「申し訳ございません、雷斗様……」と謝罪の言葉を口にしながら、優しく俺の背中を撫で下ろした。
それから円卓に戻り、ヒューグ爺にも心配を掛けたことを謝ったローデリカ。
現在、俺の部屋でソファーに腰掛けながら俺の肩にちょこんと頭を乗せて、久しぶりの二人きりの満喫している。
なお、メリナたちを待たせているためベッドインはしていません。
「ご心配をお掛けしました」
「分かってくれたならもういい。俺の方も強く言い過ぎた」
俺の手をニギニギしながら湿っぽく口にするローデリカ。
俺も強く言い過ぎたことを謝罪すると「いえ⋯⋯」と言葉を濁す感じで口を開く。
「心配してくれたんですね⋯⋯」
「当たり前だろ。ローデリカは俺にとって大切な人なんだから」
「大切な人⋯⋯フフ、雷斗さんには申し訳ないですけど、心配してもらうのも悪くないですね」
おっとり微笑みながらそう口にするローデリカ。
その気持ちは分からんでもないが、俺の心臓が持たないから止めてくれと冗談混じりで言ったのだが。
今回の一件で心配される喜びを覚えたローデリカは、遺灰集めに精を出すようになるのを、約一週間後に知るのだった……。
エルデンリングはどこまで知っている?
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ストーリー考察含めて大体熟知している
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本編クリア済だが難しくてよく分からん
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本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
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大雑把な概要だけ知ってる
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タイトルは聞いたことがある