※この作品はR-18です。

エルデンリングって何だよ   作:ポチ&タマ

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第39話 救世の御子

 ラニ様の部屋に行くと、我が主はお目覚めになられていた。約一ヶ月ぷりのお目覚めだ。

 優雅に手を組み涼し気な眼差しを向けてくるラニ様。

 

「ああ、お前だったか。ブライヴではなかったのだな」

 

「ラニ様、ご報告申し上げます」

 

「分かっている。眠りの中でも感じられたよ」

 

 片膝をつき、ポーチから取り出した【指殺しの刃】を献上すると、微笑みを浮かべたラニ様は俺の頬を優しく撫でた。

 ラニ様の体は人形のため、人が有する温もりは感じられないが、それでも従者を想う気持ちは指先から伝わってくる。これがブライブなら、ご主人様に褒められた犬公の如く尻尾を振っていたことだろう。

 俺? S嬢にイジメられているM男の如く恍惚な表情を浮かべておりますが何か? 

 

「これでようやく全てが揃った、感謝する。後は、私が行くだけだ。私だけの暗き路を」

 

 そう言い立ち上がるラニ様。冷気が足元に広がる。

 

「さて、旅立ちの前に、これを渡しておこう」

 

 懐から取り出したのは、妙なインテリア。

 砂時計のようなフォルムをした置物で、逆さまになった騎乗の像が内部にある。

 数多のアイテムを有する俺だが、これは見たことがない。きっと物語に関わるような重要なアイテムだ。

 

「この度の、見事な働きの礼だ。奇妙な品だと思うだろうが、奇人のお前ならきっと気に入るだろう」

 

 ははぁ! と頭を垂れながら受け取った俺は、いそいそとポーチに納めながら「それはそうとご報告が」と口を開いた。

 報告するのは当然、セルブスのことだ。

 秘薬でラニ様を傀儡にしようと企んでいたため、独断で処した旨を伝える。

 

「そうか、セルブスがな」

 

 頭が痛いと言いたげに大きく溜め息をつくラニ様。変人だと思っていたが、よもや愚者の類だったか、と小さく呟いた。

 

「アレを従者にしたのは私の最大の汚点だが、お前を従者にしたのは慧眼だったな。よくやった」

 

「ありがたきお言葉」

 

 利用価値があったのに、とビンタされなくて安堵する。

 

「しかし、やはりあの再会は運命であったな。トレントにも、感謝を伝えておかなければな……⋯。もう、行くがよい。短い間だったが、よく仕えてくれたな」

 

「えっ?」

 

 思わず顔を上げてしまう俺。

 短い間だったが、よく仕えてくれたって……えっ! お役御免ですか!? 

 

「私はもう不要ですかラニ様!?」

 

 イヤァアアアアアア! 捨てないでぇええええええ! 

 ラニ様の従者じゃなきゃヤダぁあああああ! 

 地獄の底までお供するのぉおおおおお! 

 

 内なら雷斗がジタバタするが、表に出さないようにグッと堪える。

 ラニ様が俺を見捨てるなんて、そんなのあり得ないよな……? 

 

「最初に言っただろう? いつか、すべてを裏切り、すべてを棄てるだろう、と。そのいつかがやって来たのだ」

 

 確かにそんなことを言ってた覚えはあるけれど、自己紹介の一環だと思ってました! 演出じゃないんですか!? 

 ラニ様は未だ混乱が解けない俺の頭を撫でると、優しい声音で告げてくる。

 

「それに雷斗には雷斗の道があるように、私には私の道がある。エルデの王になるのだろう? ならば、私にばかりかまけている余裕はないはずだ」

 

「うっ……」

 

 それを言われると痛い……。

 でも、例えエルデの王になったとしても、俺はラニ様の従者を止めるつもりはない! 

 リストラを食らって正式に名乗れずとも、自称従者としてこれからも勝手に引っ付いていくからな! 

 

「……まったく、聞き分けの悪い従者だ。そこまで言うのなら好きにしろ。私は私の都合で勝手に動くからな」

 

「ははぁー!」

 

 やった、ラニ様が折れてくれた! ラニ様バンザーイ! 

 恭しく頭を下げる中、脳内で万歳エディションが流れるのだった。

 

 

 

 準備があるからさっさと出ていけと、魔術師塔から追い出されました。

 きっとリストラした社員が自発的に戻ってきてくれて、嬉しくて憎まれ口を叩いたんだと思う。ラニ様かわゆす。

 そんなラニ様の意外な一面にほっこりした俺は、主から賜った置物の詳細を聞くため、イジーさんの元に訪れた。

 イジーさんは俺と同じくラニ様の従者であり、理性なき巨人の中で珍しく、知性と理性をお持ちの方だ。物知りなだけでなく、鍛冶師としての腕もヒューグ爺と引けを取らない。

 相変わらず道の端でこじんまりしながら読書をしているイジーさん。俺の姿を認めると、気さくな声で話しかけてきた。

 

「おや、これは雷斗殿。お久しぶりですな」

 

「ご無沙汰してます、イジーさん」

 

 ペコリと頭を下げて挨拶を交わした俺は、さっそくポーチから置物を取り出す。

 

「これ、ラニ様から貰ったんですけど。何だか知ってます?」

 

「ほう、【カーリアの逆さ像】ですか。それを雷斗殿に⋯⋯」

 

【カーリアの逆さ像】って言うんか。確かに逆さまだもんな。

 鏡面の兜越しに手に取った【カーリアの逆さ像】をしげしげと見つめたイジーさんは、感慨深そうに呟く。

 

「そうですか⋯⋯ラニ様はそれほどまで、雷斗殿を気に入っておられるのですな⋯⋯」

 

「えっと、どういうこと?」

 

「申し訳ない。ラニ様がコレを賜った真意は、憶測と言えど私から語ることは出来ません。ですが、コレの使い方なら教示出来ますぞ」

 

 カーリア書院に行きなさい。そこに【カーリアの逆さ像】を安置する台座があるはずてす。その先に何があるのかは、雷斗殿ご自身の目で確かめられるとよろしい。

 そう告げるイジーさんだが、嫌な予感がして思わず尋ねた。

 

「カーリア書院って、もしかしてこの先にある⋯⋯?」

 

 記憶の底からモゾモゾと沸き出てくるのは、狭間の地キモ生物ランキング一位のユビムシ。

 ユビムシとは、両の手首を横に揃えた形状のモンスターで、パッと見、蜘蛛を彷彿とさせる奴らだ。驚異の生命力と繁殖力を持つGより蜘蛛の方が無理。

 瞬間記憶能力を有する弊害の一つが、嫌な記憶も鮮明に残っていることで、なるべく意識しないようにしてるが時たま記憶の底から現れる。

 俺が唯一、キモ過ぎて討伐できないモンスターが、この先のカーリア王家の城に蔓延っているのだ。

 

 カーリア書院が城の中にあったらどうしよう⋯⋯。

 ラニ様にリストラを言い渡された時より深刻な悩みだ⋯⋯。

 

「いえ、カーリア書院はリエーニエの東にあります。地図を見せてくれますかな? ⋯⋯此処がカーリア書院です」

 

「ありがとう!」

 

 イジーさんが指し示した場所は、此処から南東の陸地。

 カーリア王家の城でないと分かり、嬉しさと安堵のあまりイジーさんに抱きついてしまった。

 き、貴公? と狼狽えるイジーさんにもう一度お礼を告げ、いざ出発! 

 

 

 

 1

 

 

 

 カーリア書院の近くにある祝福まで進んだため、今夜はここで寝ることにする。

 ボックは近くの木の枝を組み合わせて寝床、メリナは焚き火の用意。俺は食料の補充というように、自然と役割分担して皆、手慣れた手つきでクラフトしていく。

 あっという間に野営が完成し、特にメリナが楽しみにしていた食事を始めた。

 今回は凝った料理に挑戦しようと思い、なんとカレーを作ってみた。

 スパイスの代わりに調合したのは『火の花』『アルタスの花』『ロアの実』『赤雷花』の四種。

 今まで食べた食材の中で、なんかいけそうなのがこれらだったのだが、トライ&エラーを繰り返すことようやく、カレーと呼べるものが出来上がった。まあ、見た目が黒いからブラックカレーだけど。

 

「か、辛いっ! あ、でも辛いけど美味いです!」

 

「この舌が痺れる感じ、たまらないわね。自然と汗も掻いて、でもそれが気持ちいいなんて……新たな発見だわ」

 

 辛さとしては中辛で、少しだけ苦みも感じるから要改善か。それでも皆には好評で、メリナは三回もお代わりした。

 好評で良かったけど作るのすごい面倒だから、特別な日やご褒美以外ではあまり作らないことにしておこう。

 

「そうだ、丁度いいや。アレクトー」

 

『此処に』

 

 俺の言葉に即座に反応したアレクトーが姿を現した。

 いざと言う時に動けないとダメだから、アレクトーは常時召喚している。召喚時にMPを消費するだけで維持する分には問題ないようだからな。

 ちなみにラティナは遠慮しちゃって戦闘時以外は遺灰に籠もっていたりする。

 

「記憶を失う前の俺のこと知ってるんでしょ? 是非聞かせてよ」

 

 何故【救世の御子】やら【解放の英雄】やら【導きの勇者】やら言われているのか、すげぇ気になるし。

 メリナたちも興味があるようで、食事の手を止めてこちらを見ていらっしゃる。何気にラティナもしれっとした顔で顕現するし。

 注目を浴びたアレクトーは一同を見回すと大きく頷き「畏まりました」とフードを脱いで言った。

 露になる美しい顔。色白の肌に金髪碧眼。髪はメリナより短いショートで、涼し気な目元も相まって、なんだか親戚関係のようにも見える。まあ、そんなことないんだけど。

 立ち話もなんだから座って、と促すとアレクトーは小さく頭を下げ、たおやかな所作で女の子座りをした。

 

「では、お話ししましょう。我らが光、ライドウ様のお話を」

 

 

 

 2

 

 

 

 私たち黒き刃は、元々マリカと故郷を同じくした同胞でした。今も黄金樹の影に隠された地、影の地が私たちの故郷です。

 影の地の一角にある小さな村で、私たちは生まれ育ちました。長閑で、色鮮やかな花々が咲いている、牧歌的と言ってもよい場所です。

 人口は少ないですけど、そこは由緒正しい血族の村で、村人は皆家族。私も多くの姉や妹がいます。黒き刃の構成員も全員同じ村出身なので、私の妹ということになりますね。

 女性しか居ない村ですが、何不自由なく過ごせていました。あの時までは。

 

 村では十二歳になると、村の近辺にあるボニ村という場所へ向かわなくてはいけません。ずっと昔からある風習で、故郷を発つ十二歳が大人として扱われる歳でもありました。

 大人になるまで村の外に出てはいけない。そう言い聞かされて育ってきたので。村の外には何があるのか、どんな世界が広がっているのか、それを楽しみに十二歳まで待つ子たちが沢山です。

 私もそんな子供の一人で、外にはこの村のような美しい景色が広がっているのだと信じて疑いませんでした。

 ですが、それは幻想に過ぎないのだと。本当の世界は非常に恐ろしくて、残酷で、血と悲鳴に満ちているのだと、大人になって初めて知ったのです。

 

 ──食事ですか? はい、村の外から定期的に男の人たちがやって来て、肉や飲み物などを分けてくれました。今思うと、村にやって来る男たちは皆親切で優しいので、外の世界は素晴らしいんだと拍車を掛けていましたね……。

 

 そんなある日、村の外からライドウ様が、一人の女性を連れてやって来たのです。

 その女性は、先日村を発ったばかりの娘で。衣服は所々が裂けて、夥しい量の血が付着していました。

 その娘が言うのです、酷く怯えた顔で。

 外は地獄だ、ボニ村は地獄の村だ、と。

 

 ライドウ様の話によると、汚い歯が埋め込まれた鞭で嬲られていたとの話です。ボニ村で。

 ボニ村には、その娘のように歯のついた鞭でズタズタになるまで嬲られ、罪人と呼ばれるバラバラになった人と一緒に壺の中に閉じ込められる。そんな姉妹たちが大勢いたとのことでした。

 そしてライドウ様は、そんな悲惨な現場を偶然、美しき緋色の瞳で視てしまい、助けるために故郷を飛び出して駆けつけてくださったのです。

 

 ──ライドウ様ですか? とてもお優しい方ですよ。いつも笑顔で元気一杯で、まるで子供のように天真爛漫な方でした。

 

 ボニ村の実態を知り混乱する私たちを、ライドウ様は類稀なるカリスマで宥めてまとめ上げると、これ以上被害が拡大しないようにと村の周囲に結界を張ってくれました。

 更には、自分たちで自活出来るようにと家畜を何頭か譲ってくれて、お世話の仕方など必要な知識を授けてくれた上に、攫われ地獄の苦しみを受けていた同胞たちを救って下さったのです。

 ライドウ様のおかげでそれ以降、姉妹たちはボニ村の手に掛かることなく平穏な生活を送ることが出来ましたが、ボニ村の奴らは諦めた訳ではありませんでした。

 

 奴らは、まだ幼い子供を⋯⋯マリカを言葉巧みに唆し、結界の要石を壊させたのです。

 ライドウ様が家を空ける時間、影の地を散策される時間を狙っての計画的犯行でした。

 私を含め多くの姉妹たちが誘拐され、大壺師と呼ばれる奴らに鞭で叩かれ⋯⋯細切れにされた罪人たちとともに壺の中に入れられました。

 全身に走る激痛、腐った食べ物のような悪臭、一切の光がない閉鎖感。鞭打ちされた傷から、罪人たちの肉が入り込んでくる悍ましさ。

 あれは、地獄です。この世の地獄です。

 

 そんな地獄から救い出してくれたのは、またしてもライドウ様でした。

 村の子供たちから話を聞き駆けつけてくれたライドウ様は、不思議なお力で私たちの体を癒し、醜く変わり果てた同胞たちも救ってくれたのです。

 

 一度ならず二度までも私たちを救ってくれたライドウ様は、私たちのためにお怒りになられ。ボニ村に住まうすべての角人を鏖殺してくれました。

 そして、囚われた姉妹たちを解放し、治療を施して下さり。私たちをお救い下さる【救世の御子】と讃え崇め、信者となったのです。

 ですが、この地に永く留まって頂くため、あらゆるおもてなしをさせて頂こうとした矢先に、ライドウ様は攫われてしまいました。

 神肌たちが崇める、宵眼の女王によって⋯⋯。

 

【狭間の地】に連れ去られたと知った私たちは、ライドウ様をお救いするため刃を取りました。

 そして、最も力があったマリカは大母のお力を受け継ぎ神へと至り、その絶大な力の加護を受けた私たちは黒き刃と名乗り、狭間の地へ向かったのです。

 

 エルデの王を傀儡にして国を乗っ取ったマリカは兵を派遣し、部下となった私たち黒き刃を狭間の地の隅々まで放ち、ライドウ様の行方を追いましたが、何一つ手掛かりを掴むことが出来ず。

 ついには大いなる意志の介入により、マリカも狂い始め⋯⋯。

 

 

 

 重々しい空気が辺りを包み込む。

 なんていうか、想像以上に重い話だった⋯⋯。

 影の地における俺のムーブは、今の俺からしても百点満点で、よくやったと言いたいところだが。

 なに攫われとんねん。

 

「⋯⋯そう。貴女たちとマリカは姉妹だったのね」

 

 話を聞き終えたメリナがしみじみと呟く。俺も情報量の交通事故で頭がパンクしそうだよ。

 女王マリカってエルデンリングを砕いた張本人だよな? 大いなる意志の介入で徐々に狂っていったって言ってたけど、それが本当ならエルデンリングが砕けた原因って大いなる意志やん。介入ってことはマリカ様は望んでなかった可能性があるし、そうなると完全に被害者やん。

 

 そして、ボニ村の悪虐非道っぷりがヤバい。

 何でいたいけな女の子を歯の付いた鞭で叩けるん? 

 どんな神経してたら傷付けた女の子をバラした遺体とともに壺に入れられるん? 漬物ちゃうぞオイ。人の心ないんか? 

 そりゃ、滅ぼして当然だわ。よくやった当時の俺! 

 

 他にもマリカ様関連で色々聞きたいところだけど、大分夜も更けてきたからまたの機会にお願いすることに。

 こうして、祝福の優しい光に照らされながら一夜を明かすのだった。

エルデンリングはどこまで知っている?

  • ストーリー考察含めて大体熟知している
  • 本編クリア済だが難しくてよく分からん
  • 本編未プレイだが、考察動画で大体履修済み
  • 大雑把な概要だけ知ってる
  • タイトルは聞いたことがある
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